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リーマン予想と素数の謎、番外編その7(19/2/27更新)。〜振動アーベル総和法とオイラーの定理と〜

2018年03月11日 17時18分45秒 | リーマンの謎

 今回は、前回飛ばした無限項における自然数和の"振動アーベル総和"の公式、"1+2+3+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)=−1/12、 0<x(≒0)の証明です。

 この自然数和の振動アーベル総和法では、非常にゆっくり減衰振動する収束因子(e⁻ᵏˣとcos(kx))を発散級数にかけ収束させるんですが。x→0+の時、e⁻ᵏˣ→1とcos(kx)→1により、明らかなような気もしますが、結構ややこしいです。

 

有限項の振動アーベル総和_______

まず、通常の有限項の自然数の総和を、
Sn=Σ[k=1,n]k、
有限項の振動アーベル総和を、
Hn(x)=Σ[k=1,n]ke⁻ᵏˣcos(kx)、と定義します。

Sn=1+2+3+•••+n、より
lim[n,∞]Sn=1+2+3+•••、
lim[x,0+]Hn(x)="1+2+3+•••+n"、
lim[x,0+](lim[n,∞]Hn(x))="1+2+3+•••"、となりますね。 

 つまり、有限項の振動アーベル総和("1+2+3+•••+n")を無限に拡張したのが、無限項の振動アーベル総和("1+2+3+•••")という事で、ご理解をです。

 すると、
lim[n,∞]Sn=1+2+3+•••=∞、は明らかで、
"1+2+3+•••+n"=1+2+3+•••+n、
"1+2+3+•••"=−1/12、
つまり、
lim[x,0+]Σ[k=1,n]ke⁻ᵏˣcos(kx)=Σ[k=1,n]k、
lim[x,0+]Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)=−1/12、
と、2つの”命題”が成立します。

 因みに、命題とは”真偽を判断できるお題”という事で。

 一方、””で括った、この"新しい和"という概念ですが。無限項では、通常の総和Snは発散するが、この新しい和("1+2+3+•••")は、有限項では従来の総和Snと等しい(命題1)。しかし無限項での”新しい和”は、−1/12に収束する(命題2)と。
 この”新しい和”の概念を”命題”という形で提出するんですが。少し抽象的すぎますかね。


 まず、命題1の証明ですが。
Hn(x)=Σ[k=1,n]ke⁻ᵏˣcos(kx)と定義したので、"1+2+3+•••+n"=lim[x,0+]Hn(x)=Σ[k=1,n]ke⁻ᵏ⁰cos(k0)=Σ[k=1,n]k=1+2+3+•••+n、となり、簡単に証明出来ますね。

 

無限項の総和とオイラーの定理と____

 次に命題2の証明です。この無限項の自然数の振動アーベル総和の時が、ホントややこしいです。長くなりますが悪しからずです。

 まず、S=1+2+3+•••=Σ[k=1,∞]kの無限項の自然数の総和を考えます。
 この時、H(x)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)、0<x(≒0)と関数を定義します。H(x)とHn(x)の違いに注意ですが、H(x)=lim[n,∞]Hn(x)と覚えときましょう。

 ここで有名な”オイラーの定理”です。eⁱᶿ=cosθ+i*sinθでしたね。これにe⁻ⁱᶿ=cosθ−i*sinθを加え、cosθ=1/2*(eⁱᶿ+e⁻ⁱᶿ)と変形。θ=kxとし、cos(kx)=1/2(eⁱᵏˣ+e⁻ⁱᵏˣ)と。

 故に、H(x)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣ1/2(eⁱᵏˣ+e⁻ⁱᵏˣ)=1/2Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏ⁽ˣ⁻ⁱˣ⁾+1/2Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏ⁽ˣ⁺ⁱˣ⁾ー①と。少しゴチャしてますが辛抱です。

 ここで、G(z)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏᶻ、z∈C(複素数)、と定義すると、G(z)=1/z²−1/12+O(z)と表現できます。O(z)はランダウの記号(微妙に揺れ動く挙動値)ですよ。
 以降、x∈R(実数)とz∈C(複素数)の間を行き来しますので、ゴッチャにならん様に(追記)。

 G(z)=1/z²−1/12+O(z)の証明ですが。
 
 まずアーベル総和法により、この証明を試みます。アーベル総和Sa="1+2+3+•••"=lim[z,0+]Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏᶻにより、Sa=lim[z,0+]G(z)となりますね。
 そこで、自然数を係数とした、初項e⁻ᶻ、公比e⁻ᶻの無限等比級数の公式より、G(z)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏᶻ=e⁻ᶻ/(1−e⁻ᶻ)²、となります。
 故に、Sa=lim[z,0+]G(z)=e⁻⁰/(1−(−e⁻⁰)²=∞となり発散します。つまり、アーベル総和法の限界です。

 

ベルヌイの定義とマクロリン展開と____

 ここからが、ベルヌイ数とマクローリンの登場で、少しややこしくなりますが、恐れずに進みます。数学には度胸や勇気が必要ですね。

 このベルヌイの定義式、zeᶻ/(eᶻ−1)=Σ[n=0,∞]Bn/n!*zⁿの両辺を2乗し、z²で割ります。それから左辺にe⁻ᶻを掛け、右辺にはe⁻ᶻのマクローリン級数=Σ[n=0,∞]1/n!*(−z)ⁿを掛けます。

 すると、e⁻ᶻ/(1−e⁻ᶻ)²=1/z²(Σ[n=0,∞]Bn/n!*zⁿ)²Σ[n=0,∞]1/n!*(−z)ⁿとなり、右辺にx=−zを入れると、G(z)=1/x²*(Σ[n=0,∞]Bn/n!*(−x)ⁿ)²Σ[n=0,∞]1/n!*xⁿ、ー②を得ます。
 ゴッチャしますが、辛抱です。

 ここで、Σ[n=0,∞]Bn/n!*(−x)ⁿ=1−x/2+x²/12+O(x³)、Σ[n=0,∞]1/n!*xⁿ=1+x+x²/2+O(x³)と、zeᶻ/(eᶻ−1)とe⁻ᶻをマクローリン展開した2式を使います。  
 因みにO(x³)とは、xを無限大に飛ばした時のx³以降の挙動値です。マクローリン展開には、剰余項としてランダウの記号O(x)が出てくるので、よく理解をです。

 この2式を②式に代入し、1/x²で括ると、G(x)=1/x²(1−x²*1/12+O(x³))=1/x²−1/12+O(x)を得ます。この1/x²が発散の原因になるので、次に、これを取り除きます。

 そこで、H(x)とG(x)の両式を比較します。
 G(z)=1/z²−1/12+O(z)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏᶻにより、G(x−ix)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏ⁽ˣ⁻ⁱˣ⁾=1/(x−ix)²−1/12+O(x)と表現。因みに、O(x)=O(x−ix)とします。

 次に、H(x)はオイラーの定理を使うと①式により、H(x)=1/2*G(x−ix)+1/2*G(x+ix)でしたね。
 故に、H(x)=1/2*(1/(x−ix)²−1/12+O(x))+1/2*(1/(x+ix)²−1/12+O(x))=1/2(x−ix)²+1/2(x+ix)²−1/12+O(x)=−1/4ix²+1/4ix²−1/12+O(x)=−1/12+O(x)。出来るだけ関数を崩さぬように計算です。

 すると、Hn(x)=Σ[k=1,n]ke⁻ᵏˣcos(kx)により、両辺に極限をかけると、lim[n,∞]Hn(x)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)=H(x)=−1/12+O(x)ですね。H(x)=Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)、0<x(≒0)と定義した事をお忘れなく。
 
 従って、"1+2+3+•••"=lim[x,0+](lim[n,∞]Hn(x))=lim[x,0+](−1/12+O(x))=−1/12となりました。O(0)=0という事をお忘れなく。という事でめでたく、”命題2”の長く険しい証明の終りです。

 

オイラーとアーベル総和法_______

 結局、アーベル総和法では発散した、自然数の無限項の総和("1+2+3+•••")ですが。
 まず、振動アーベル総和の公式:Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)をオイラーの定理を使い、指数関数のみで表現しましたね。
 次に、ベルヌイの定義とマクロリン展開を使い、アーベル総和の公式:Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣを、1/x²−1/12+O(x)と展開し、発散の原因になった1/x²を、振動アーベル総和の公式H(x)を使って消し去り、その結果、lim[x,0+]H(x)="1+2+3+•••"=−1/12を得たんです。

 つまり、アーベル総和と振動アーベル総和との間に、オイラーの定理とベルヌイの定義とマクロリン展開を噛ませる事で、自然数の無限項の総和("1+2+3+•••")を収束させたんです。

 事実オイラーは、このマクローリン級数とベルヌイ数を使って、ゼータの特殊値の公式を発見するんですが。故にオイラーの総和法は、アーベルにもちゃんと受け継がれてたんですかね。  

 特に、マクロリン級数とベルヌイ数がいきなり登場した時は、無理っぽと思いましたが、やってみるもんです。

 様々な見慣れない公式や定義が登場し、頭が混乱しますが、落ち着いてやれば、そこまで難しくはないです。

 

アーベルという人(補足)________

 アーベル(Niels Henrik Abel 1802〜1829)は若くして悲劇的な死をとげた19世紀の数学者として広く知られている。”その5”でも少し触れましたね。

 アーベルが、当時世界最高レベルといわれた数学の総本山パリ科学アカデミーへ提出した、"超越関数の中の非常に拡張されたものの、一般的な性質に関する論文"こそが、後に“青銅よりも永続する記念碑”と謳われ、後代の数学者に500年分の仕事を残してくれた、とまで言われた、不滅の大論文だったのです。

 楕円関数にて、研究上のライバルであったヤコビ(カール・グスタフ・ヤコブ・ヤコビという人で、ベルヌーイとは別です)は、このアーベルの論文を目にして"私には批評もできない大論文"と、最大限の賛辞を送ったとされる。ヤコビはアーベルの定理を使い、ヤコビの逆問題を示し、その後の研究に大きく貢献したんです。

 可換な群を指す”アーベル群”など、多くの数学用語にも名を残している。無限級数の収束に関する”アーベルの定理”も有名だが、他にも無限級数の一様収束を初めて注意した事で知られる。

 ”アーベルの証明”と言われる”5次方程式の解の公式は存在しない”は、一般的に知られてる偉業です。アーベル方程式、アーベル積分、アーベル関数、アーベル多様体、遠アーベル幾何学などアーベルの名を冠している数学用語はとても多いのです。

 

最期に________________

 数学の超人ガロアすら怖れた、この数学の超新星であるアーベルですが。ゼータの特殊値という級数の総和を通じ、先人オイラーとやはり密に繋ってたんですね。
 そして、オイラーやアーベルの総和法が正しい事をリーマンが証明したんです。

 そう考えると、”群”を通じてガロアと繋ってたアーベルは、この総和法を通じてオイラーを受け継ぎ、リーマンにバトンを渡したと言えますかね。

 ”リーマンの謎”とは何の関係もないと思い、何度も消そうかと思ったブログですが。オイラーやリーマンと密に繋がってた事を知り得ただけでも、この記事を更新した甲斐があったと言うもんですね。勿論ラマヌジャンともですが。

 次回の番外編”その7”ですが、振動アーベル総和法の一般公式の証明で、この番外編を締め括りたいと思います。



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