象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

二級酒のススメ〜貧乏だけど贅沢、貧乏でも心地良い

2022年03月22日 05時12分18秒 | お題

 沢木耕太郎さんの著書に「貧乏だけど贅沢」というのがある。
 人はなぜ旅をするのか?なぜ旅に惹かれるのか?旅における”贅沢な時間”をテーマに語り尽くした対談集である。
 そこで、”旅”を”二級酒”に置き換えると面白い。
 人はなぜ二級酒を呑むのか?
 なぜ二級酒に惹かれるのか?
 二級酒がもたらす”贅沢な時間”とは何か?

 千円以下の二級酒が数万円もする大吟醸や純米酒に劣るのは当り前である。 
 高価なものにひたすら贅沢を求め、いや無限の自由という権利を求め、無意味にデモを引き起こし、暴動に発展し、無駄な血を流す。しかし、当の本人達は自己満足に耽ってるという奇妙な現実。
 プーチンが描く”強いロシア”も幼稚な領土的野心も、高価なブランド品を買い漁る腐った富裕層と同質である。
 権力とお金が全てを支配するという独占的で傲慢な野心こそが、無意味な戦争や侵略を引き起こすと言えば、言い過ぎだろうか。
 そこまでしてお金と権力にすがる人種は、お酒にもアホ臭な大金をつぎ込むのだろうか?


二級酒=料理酒?

 年代物のワインとか、何年もののコニャックとか大騒ぎし大枚を叩く、脊椎反射系人種の俗物根性には辟易する。
 高価な酒が美味しいのは当り前である。高価な食事が優雅な時間を提供してくれるのも当然である。
 私だって若い頃は、小コップ1杯で600円ほどする”雪中梅”を呑み、優雅な酔いを楽しんだもんだ。漫画「美味しんぼ」でも紹介された様に、辛口では究極の日本酒の1つかもしれない。
 しかし、その雪中梅も呑み続ける内に飽きてくる。それに日本酒ブームが去ると客足も遠のき、店頭に並べられた純米酒の鮮度も悪くなり、次第に不味くなっていく。
 もっと安くて鮮度のいい辛口の日本酒はないのか?庶民の誰もが気軽に呑めるような日本酒はないのか?

 色々と自分で探す内に、様々な純米酒を買っては試すも、満足するレベルには遠かった。(庶民が手を出すには)高価なお酒だから不味くはないんだけど、鮮度が低く味に濁りがあるものが多い気がした。
 かと言って、美しい女優がCMで優雅に演出する二級酒は典型の料理酒で、エチルアルコールに砂糖を混ぜた様なのが多い気がする。
 今の日本人には”二級酒=料理酒”というイメージが根強い。
 私が飲んでる”蔵だより”(小山本家酒造=写真左)は2Lで599円と料理酒としても安い部類に入るが、ソコソコは飲める。
 ただ、エチル臭さを打ち消す為の(糖類の)甘い香りが余分で、冷やさないと上手く飲めないし、飲みすぎると多少気分が悪くなる。
 が、最近人気が出たらしく、地元のスーパーでは(フライドポテトと同じく)在庫がなくなってしまった。

 スーパーには同じ類いで、”蔵のすけ”(小山本家酒造)という3Lで999円の二級酒がある。しかし、中身が殆ど同じなら安い方がいい。
 私は週イチで、隣の大川市に肉と野菜を買いに行くが、ここはお酒も安い。多分、福岡県南部では一番安いだろう。事実Amazonよりかは確実に安いのだから・・・
 そこで、”蔵人三代”(写真右)という同メーカーの奴が目に入った。成分は”蔵のすけ”と全く同じだが、3Lで858円。2Lに換算すれば何と572円である。
 ”ウン、これは買いだ”
 アルコール度数は”蔵だより”の13%に対し14%と若干高めで、早速飲んでみると、わざとらしい糖類臭さが全くない。
 それに、冷やさなくても美味しく飲める。多分、純米酒とエチルのバランスがいいのだろうか(多分)。


二級酒と心地良い貧乏のススメ

 私は、(「美味しんぼ」みたいに)日本酒にエチル(醸造様アルコール)を混ぜるのが悪いとは思わない。それは、お米だけで度数の高い日本酒を作ろうとすると、コストは勿論、味わいも濁ってくるからだ。事実、エチルが入った高価な日本酒も存在する。
 「美味しんぼ」が慢性的にツマラナイのは、その理屈っぽさでも真面目臭さでも政治批判でもなく、高価な食材で美味しい食事を作る事に致命傷(に近いもの)があるからだ(と思う)。
 安い食材で最高のものを作ろうとする思考と意欲こそが”究極のメニュー”を生む筈だが、海原も山岡も”至高”を追い求めすぎて、庶民の現実を見つめてはいない。
 食の贅沢なんて(娼婦と同じで)3日で飽きる。食や売女に、至高も究極も最初から存在しない。

 人間付き合いもそうだが、大人になれば悪ガキの時の様に、自分を100%さらけだした所で、友だちなんて出来る筈がない。
 つまり、食と大人の付き合いは(外交と同じで)妥協の産物なのだ。自分の良し悪しと相手の良し悪しも、互いに理解し合い、歩み寄り、はじめて本当の良さと本当の悪さが理解出来る。
 二級酒もそうではないだろうか。
 高価なお酒ばかりを一方的に自慢し評価する。「後悔の経済学」(M・ルイス)じゃないが、(自分に都合のいい)直感と幼稚な思い込みと浅はかな経験則で、全ての価値を決めつけるのは(プーチンみたいな)悪ガキのやる事だ。
 人生と価値観には”重さと深さと濃密さ”が必要だ(と思う)。
 大人なら、二級酒の善し悪しを平等に評価し、客観的で多様的な視点でお酒を愉しむべきだろう。

 ”安酒探し”もこれまた贅沢な風情と見れば、悪くはない。
 貧乏だけど贅沢、お金の自由はなくても心地良い。”優雅な絶望”も最悪じゃない。
 最悪なのは、権力も自由もお金があっても、自分では全く気付かない壊滅的な絶望が待ち構えてる事だ。
 野望はやがて絶望に変わり、権力は暴力に成り下がる。お金だけを当てにする生活で日々の贅沢は腐敗し、自らの存在は浅薄になり、最後には歴史上の廃棄物として処分される。

 権力やカネに対する幼稚な思い込みや陳腐な野心は、やがて大きな事故や戦争に繋がる。つまり、(高級ワインに群がる人種の)傲慢なる直感は最後には(最悪という)負に帰着する。
 人生とマラソンは(平和ではなく)平坦な方がいいように、世の中もおおかた平等で”心地良い貧乏”がベストなのだ。



8 コメント

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象が転んだ様へ。 (りくすけ)
2022-03-22 07:23:01
お邪魔します。

足るを知る者は富み、
強めて行なう者は志有り。

忘れないようにしたいものです。
一方、貪欲な餓鬼で、
無理無体な志に邁進するプーチンの末路は悲惨。それに付き合わねばならないウクライナとロシアの民はたまったものではありませんね。

では、また。
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りくすけサン (象が転んだ)
2022-03-22 11:33:10
”足るを知る者は富む”とは、
老子の言葉で”知足者富”とも書きますが、
これを直訳すれば、”知が足りる者はそれだけで裕福(贅沢)である”とも言えますね。

お陰で、色々と勉強になります。
ではまた
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プーチンのダウンジャケット (tomas)
2022-03-22 14:29:37
は約180万円するらしいです。
狂った独裁者の悲しい行く末も決まったようなもんですよね。

一方でロシア国内は国外逃亡劇が始まってますね。少なくとも20万人は国外に脱出してるみたいで
ロシア兵の損失は8千人を超えるとされ、1万人に達すれば、ロシア軍の停戦や撤退もありうるとされてます。

そろそろ大きな進展が起きるような気もしますが、転んだサンはどぉ〜考えますか。
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tomasさん (象が転んだ)
2022-03-22 17:24:45
多分、羽毛の代わりに
暴落したルーブル紙幣が沢山詰まってるんでしょうか(笑)
プーチン崩壊の序章を露呈する展開に入って来たのかなとも予測します。
少なくともロシア国民のレヴェルでは、国家は崩壊しつつありますね。

プーチンの側近だけで一方通行的に行ってる戦争です。ロシア軍も大半はこの侵攻に反対か疑問を感じてるでしょう。
停戦合意にはもう少し時間が掛かるでしょうが、呆気なく終る展開もあるかもです。
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二級酒は体に良い (UNICORN)
2022-03-22 19:46:11
当時のお酒は”三倍醸造”と言って原酒にその2倍の醸造用アルコールと水を加え、糖類や化学調味料などを加えていました。
特級酒一升には茶碗一杯分の砂糖が入ってましたが、辛口のピリっとした味わいは醸造用アルコールがもたらすものです。

今では製法も進み、アルコール添加は味覚や味わい調整の為に行われ、悪酔いの原因にはならないとされてます。
「美味しんぼ」では、醸造アルコールの原料であるサトウキビの廃糖蜜を悪者にしてましたね。

現在、特定名称酒(吟醸酒、純米酒、本醸造酒)には使用米の1割以下の、普通酒には約3割以下のアルコールが加えられてます。それに最近は、米から作った米アルコールも多く使われてます。
純米酒は一合で茶碗一杯のご飯に相当すると言われ、カロリーを低くする為にも、アルコール添加は必要なんでしょうか。

信用ある酒蔵なら、二級酒の方が美味しくて体にもいいのかもしれません。
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UNICORNさん (象が転んだ)
2022-03-23 02:48:55
フォローして頂いて恐縮です。
今の二級酒は(結局は昔で言う)”2倍醸造”みたいになるんですかね。
糖類とか入れずに、そのままアルコール添加でもいいとも思うんですが、それだと風味が落ちるんでしょうか。

でも、純米酒って(二級酒も含め)結構な量の糖分が入ってるんですが、その糖分が腸の餌になるというのも皮肉ですよね。
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アル添酒 (tomas)
2022-03-24 15:03:04
気になって私も少し調べました。

従来の日本酒に使用される醸造アルコールは、サトウキビなどの廃糖蜜などを原料にそれも安価な海外産が大半でした。
この悪者にされてきた廃糖蜜は今ではモラセスと呼ばれ、ミネラルを多く含んだ栄養価の高いシロップとして注目されています。

ワイン版"アル添酒"であるシェリー酒やポートワインなどは、ブドウから造られたアルコールの使用のみが義務付けられてます。
そこで日本の酒造業界は、無味無臭な醸造アルコールに代り、お米の香味をもつ”純精米アルコール”の開発に乗り出しました。
製法はもろみまでは日本酒と同じですが、それから蒸留させ、100%精米アルコールを生成します。

精米の過程で多く出る米ぬかですが、これに米麹と水を混ぜた米糠糖化液で作ったアルコールを用いると大幅なコストダウンが得られ、色や香味とも淡麗辛口でアミノ酸の少ない酒質が得られるとか。
米糠もかつては雑味が出るとして敬遠されてたけど、廃糖蜜と同様に再利用が図られたんでしょうね。

これまで"アル添酒"とバカにされてた二級酒ですが、醸造アルコールの進化により二級酒の多様性も大きく広がっていくんですよ。
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tomasさん (象が転んだ)
2022-03-24 17:03:03
色々とお調べくださって恐縮です。
廃糖蜜も米糠糖化液も一時はとても悪者にされてきたんですが、製法も進化し、再利用も進んでるみたいですね。
安い二級酒でもうまいお酒が飲める時代になってほしいです。
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