象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

ローラン展開と積分公式〜Laurentが奏でる妖艶なるツール

2024年03月13日 05時19分45秒 | 数学のお話

 「テイラー展開とその定理」では、”ローラン展開は特異点(正則でない点)の周りで展開する”と言いましたが、当然ながら”領域内は正則である”との条件が付く。これは、領域内に極や特異点があると展開できないからです。但し、以下でも述べるが、正則関数とは(領域内)全ての点で何回でも微分可能な複素関数の事で、微分回数が制限される実関数とは性格が異なる。
 つまり、ローラン展開の考え方として、”正則関数でなくともべき乗を掛ければ正則になる”有理型関数を考える事で展開を可能にする。
 仮に、f(z)=1−z+z²−z³+=1/(1+z)=g(z)を考えると、f(z)から見た解析接続はg(z)により成されるが、逆にg(z)から見れば、f(z)によって原点周りでテイラー展開されてるとも言える。例えば、φ(z)=f(z)/z²=1/z²(1+z)はz=0にて2位の極を持ち、正則ではない。が、z²を掛けるとz²φ(z)=1/(1+z)と、z=0でも正則となる。故に、φ(z)のz=0近傍でのローラン展開は、φ(z)=1/z²(1+z)=(1−z+z²−z³+…)/z²=1/z²−1/z+1−z+z²となる。 
 以上より、正則関数を適当なべき乗で割り、テイラー展開の次元を一斉に下げ、”負のべき乗”を含んだ式に展開したものをローラン展開と呼び、テイラー展開の拡張版ともいえる。
 一般に、複素関数を特異点周りで積分するにはローラン展開し、多項式の各項を積分するだけでいい。つまり、複素積分には欠かせないツールとも言えますね。
 

複素関数のテイラー展開

 一方で、「前回」で述べたテイラー展開はローラン展開同様に複素関数でも使えますが、その展開の形は全く同じです。が、その展開可能性の条件は異なります。
 以下、「前回」と同様に「高校数学の美しい数学」より大まかに纏めます。
 複素関数のテイラー展開を厳密に言えば、関数f(z)がaを中心とする半径Rの閉円盤Δ*(a,R)=|z−a|≦Rで正則とする。この時、円盤内部の任意の点z∈Δ(a,R)に対し、f(z)=∑ₙ[0,∞]aₙ(z−a)ⁿ、aₙ=f⁽ⁿ⁾(a)/n!が成立する。
 但し、閉円盤をΔ*(a,R)={z∈C||z−a|≦R}、開円盤をΔ(a,R)={z∈C||z−a|<R}で表す。
 ここで、複素関数で”正則”とは、1回複素微分可能であれば、”C∞級関数(無限回微分可能=「グルサの定理」)かつテイラー展開可能(解析的)になる”との便利な性質がある。だが、実数関数では無限回微分可能だからとて、テイラー展開できるとは限らない。これは剰余項が0に収束する必要があるからで、複素関数での正則性は実微分可能性より強くなる。言い換えれば、使い勝手がいい。

 そこで、複素関数でテイラー展開が出来る事の証明ですが、以下でも述べる「コーシーの積分公式」「グルサの定理」を使います。
 円盤内部の点z∈Δ(a,R)より、c=|z−a|=Rを閉円盤Δ*の円周とし、∫[c]をc上の周回積分とすれば、fは閉円盤Δ*で正則となるので「積分公式」:f(z)=1/2πi・∫[c]f(w)/(w−z)・dwー①が使える。そこで、1/(w−z)=1/((w−a)−(z−a))=1/(w−a)・1/(1−(z−a)/(w−a))=1/(w−a)・(1+(z−a)/(w−a)+(z−a)²/(w−a)²+(z−a)³/(w−a)³ )=Σₖ[0,∞](z−a)ᵏ/(w−a)ᵏ⁺¹と①式の被積分部は展開でき、f(z)=1/2πi・∫[c]f(w)Σₖ[0,∞](z−a)ᵏ/(w−a)ᵏ⁺¹・dwと変形できる。
 ここで、この級数が閉円盤Δ*(a,R)の円周c上で”一様収束”する事から、項別微分が可能になり、∫とΣを交換できて、f(z)=Σₖ[0,∞](z−a)ᵏ・1/2πi・∫[c]f(w)/(w−a)ᵏ⁺¹・dwと変形できる。
 つまり、aₙ=1/2πi・∫[c]f(w)/(w−a)ⁿ⁺¹・dwとおくと、f(z)=∑ₙ[0,∞]aₙ(z−a)ⁿとの級数展開を得る。更に、「グルサの定理」よりf(z)のn回微分が可能であれば、f⁽ⁿ⁾(a)/n!=1/2πi・∫[c]f(z)/(z−a)ⁿ⁺¹・dzとなり、aₙ=f⁽ⁿ⁾(a)/n!を得る(証明終)。
 因みに、一様収束の確認ですが、w∈|z−a|=r(<R)とすると、sup[w]|1/(w−z)−Σₖ[0,∞](z−a)ᵏ/(w−a)ᵏ⁺¹|=sup|1/(w−z)・((z−a)/(w−a))ⁿ⁺¹|≦1/(R−r)・(r/R)ⁿ⁺¹→0,(n→∞)。
 但し、supとは上限の事で、lim[n→∞]sup[x]|fₙ(x)−f(x)|=0の時、関数列fₙ(x)はf(x)に”一様収束”するという。つまり、関数列全体が一気に(一様に)収束するイメージです。一方で、xをaに固定すれば、fₙ(x)はf₁(a),f₂(a),⋯と数列として扱え、f(a)に収束する時”各点収束”と呼ぶ。”絶対収束”との言葉もあるが、これは数列の収束を言う。

 そこで、複素関数でのテイラー展開の例を上げる。R<1として、f(z)=1/(1−z)をΔ(0,R)で展開すると、f(z)=Σₙ[0,∞]zⁿを、またg(z)=sinxをΔ(0,R)で展開すると、g(z)=Σₙ[0,∞](-1)ⁿzⁿ⁺¹/(2n+1)!を得る。 
 以上、少し記号のお遊びっぽくなりましたが、ご勘弁をです。


ローラン展開の基本

 冒頭での述べた様に、一般に、点aを中心とする半径Rの円盤領域:0<|z−a|<Rで正則(無限回微分可能)な複素関数f(z)の点aの周りのローラン展開とは、f(z)=Σₙ[−∞,∞]aₙ(z−a)ⁿ=a₋₂/(z−a)²+a₋₁/(z−a)+a₀+a₁(z−a)+a₂(z−a)²+⋯という(テイラー展開に)”負のべき乗を許した”級数展開で示されます。
 つまり、中心と領域を決めれば、この表示は一意的となり、これをf(z)のローラン展開と呼ぶ。但し、aₙ=1/2πi・∫[|z−a|=r]f(z)/(z−a)ⁿ⁺¹・dzで、∫[|z−a|=r]はzが|z−a|=r,0<r<Rを満たす円周上を走る周回積分となる。
 以下、今度は「趣味の大学数学」を参考に纏めます。

 そこで注意したいのが、ローラン展開で正則に出来るのは”孤立特異点”の事で、その近くに他の特異点が存在しない。つまり、特異点が密集した所ではローラン級数と言えど展開できないのだ。
 例えば、f(z)=1/z(z−1)において、z=0,1は孤立特異点となる。半径として1/2を選べば良いが、0<|z|<2という領域の選び方をすると、z=1との特異点が含まれ、ローラン展開できない。故に、半径を適切に小さく選ぶ事でローラン展開を可能にする様な特異点が孤立特異点となる。
 一方で、logzにおいてz=0は特異点であり、同時に孤立特異点ではない。これは、z=0だけでなく負の実部でも正則ではないので、z=0を中心とする小さい円周領域を考えても必ず特異点を含む。この様に、ある点の周りに無限個の特異点が集まる時の特異点を”非孤立特異点”又は”集積特異点”と呼ぶ。以下、特異点と言えば孤立特異点とする。
 定義で言えば、0<|z−a|<Rにて、fが正則である様な半径Rが存在する時、z=aがfの”孤立特異点”となる。

 そこで、孤立特異点の例を幾つか上げると、f(z)=1/zではz≠0では正則となり、z=0が孤立特異点となり、同様に、g(z)=1/z(z+1)は0と−1が孤立特異点となる。また、h(z)=1/sinzはz=nπ(n∈Z)で正則ではないが、R<πとすれば正則となり、z=nπが孤立特異点となる。但し、f(z)とg(z)の孤立特異点は有限個だが、h(z)の孤立特異点は無限個存在する。
 つまり、ローラン展開の孤立特異点の近傍でのべき級数展開だが、特異点では微分ができないから、テイラー展開f(z)=∑ₙ[0,∞]aₙ(z−a)ⁿのaₙ=f⁽ⁿ⁾(a)/n!が使えない。一方、「グルサの定理」より微分可能な場合は、f⁽ⁿ⁾(a)/n!=1/2πi・∫[|z−a|=R]f(z)/(z−a)ⁿ⁺¹・dzが成立する。
 因みに(以下でも述べますが)、「グルサの定理」とは、コーシーの積分公式が正則関数f(z)を積分で表現する公式に対し、f(z)のn階導関数も積分で表現出来るものです。

 そこで、微分できない場合も係数をaₙ=1/2πi・∫[|z−a|=R]f(z)/(z−a)ⁿ⁺¹・dzと定めて、べき級数展開できないかと考える。結果から言えば、この時(nが0からではなく−∞から動くので)f(z)=∑ₙ[−∞,∞]aₙ(z−a)ⁿが成立する。この証明は後に回すとして、実際にz=aで正則ならローラン展開とテイラー展開は一致する。なぜなら、n≦−1の時、aₙ式の被積分関数は正則になり、「コーシーの積分定理」より、aₙ=0になり、負の部分が消えるからだ。
 

ローラン展開と孤立特異点

 そこで、f(z)=1/sinzをz=0近傍でローラン展開してみる。
 1/sinz=1/z⋅z/sinz=1/z⋅{1/z(z−z³/3!+z⁵/5!−⋯)}⁻¹=1/z⋅(1−z²/3!+z⁴/5!−⋯)⁻¹=1/z⋅(1−(z²/3!−z⁴/5!+⋯))⁻¹=1/z⋅∑[0,∞](z²/3!−z⁴/5!+⋯)ⁿ=1/z⋅(1+(z²/3!−z⁴/5!+⋯)+⋯)=1/z⋅(1+z²/6+7z⁴/360+⋯)=1/z+z/6+7z³/360+⋯となる。但し、途中でsinz=z−z³/3!+z⁵/5!+と1/(1−z)=1+z+z+z+のテイラー展開を使った。

 ここで、孤立特異点の分類を説明する前に、②1/z(z−1)をz=1の周りで、③sinz/zをz=0の周りで、④e^(1/z)をz=0の周りで、ローラン展開する。②はまず、1/(z+1)=−1/z+1/(z−1)と部分分解し、1/(z−1)=1+z+z²+z³+の等比級数の展開式を用い、1/z(z−1)=1/z+1+z+z²+z³+を得る。
 ③は、sinzのテイラー展開を用い、sin⁡z/z=1/z⋅(z−z³/3!+z⁵/5!−⋯)=1−z²/3!+z⁴/5!−⋯を得る。④もeᶻのテイラー展開より、e^(1/z)=1+(1/z)+(1/z)²/2!+…を得る。  

 そこでまず、f(z)=∑ₙ[−∞,∞]aₙ(z−a)ⁿの∑ₙ[−∞,0]aₙ(z−a)ⁿ=+1/aₙ(z−a)ⁿ++1/a₁(z−a)の負のべき乗の展開部分を主要部とする。但し、正のべき乗の展開部はテイラー展開となります。
 つまり、孤立特異点はローラン展開の主要部により、”極・可除特異点・真性特異点”と3つに分類できる。
 主要部が0でなく、かつ有限項の場合の孤立特異点を”極”(pole)と呼ぶ。上の例で言えば、①の1/z(z−1)のローラン展開の主要部は1/zのみで、孤立特異点z=0は極となる。一方で、その負のべき乗の最大次数を”位数”(order)と言い、故にz=0は位数1の極(1位の極)とも呼ぶ。
 因みに、極という名の由来だが、|1/z|をグラフにすると、z=0にて、その絶対値は無限大になり、ポールの様になるからとされる。
 次に②のsin⁡z/zの場合、sinzは複素数全体で正則でz=0は孤立特異点となる。だが、sin⁡z/zのローラン展開は負のべき乗が含まず(主要部が存在しなく)単にテイラー展開となり、特異点が消える。この様な特異点を除去可能特異点(可除特異点=見かけ上の特異点)と呼ぶ。
 ③のe^(1/z)のローラン展開は主要部が無限項あり、極でも可除特異点にも属さない。この様な特異点を真性特異点と呼ぶ。また、その点付近で極端な挙動を取る様な”真に悪い”特異点とも呼ばれる。

 以上、除去可能特異点は実質正則とみなせるので、特異点と言えば、極と(極以外の)真性特異点だけを考えればいい。


ローラン展開とコーシーの積分公式

 最後に、ローラン展開の証明ですが、(「グルサの定理」を使うのは)前述の正則複素関数のテイラー展開とほぼ同じだが、特異点を避ける様に「コーシーの積分公式」を適用する所が異なる。故に、図3の様なユニークな領域を周回する事になり、反時計回りの外側の円C₁と時計回りの内側の円C₂に分かれ、積分公式は2つの項に分けて表される。
 これを頭に入れとけば、ローラン展開と言えど、難しくはない。
 以下、最後は「何となく分かるローラン展開」から簡潔に纏めます。

 因みに、「コーシーの積分公式」を簡単に言えば、”閉曲線Cの内部に特異点aがある時、関数f(z)/(z−a)の閉曲線Cに沿った周回積分の値は2πif(a)になる”との事で、式で表せば、∫[c]f(z)/(z−a)・dz=2πif(a)となる。
 但し、閉曲線Cやz,aは(図1)の様になり、関数f(z)は閉曲線Cの内部で正則とし、∫[c]は閉曲線Cを回る周回積分とする。
 そこで、Cの周回上を動く変数をw、C内部の特異点aをzと置き換えると(図2)、上の積分公式は冒頭の①式と同じく、∫[c]f(w)/(w−z)・dw=2πif(z)、又はf(z)=1/2πi⋅∫[c]f(w)/(w−z)・dwと書ける。この時、f(w)はC内部で正則である。

 次に、閉曲線Cの外部に特異点a₁があるケースを考える。この特異点a₁を包み込む様に閉曲線Cを伸ばして変形する(図3)。
 但し、閉曲線を変形しただけの赤色の部分では関数f(w)は正則だが、wはC₁上を反時計周りに進み、C₂上を時計回りに進むので、C₁とC₂では互いに逆向きになる。更に、C₁とC₂を繋ぐ2つの経路でも互いに逆向きになる事に注意する。
 そこで、C₁とC₂を繋ぐ線積分は打ち消し合うので、関数f(w)/(w−z)の閉曲線C₁とC₂に沿った積分の値は2πf(z)になるので、積分公式は、∫[c₁₋c₂]f(w)/(w−z)・dw=2πif(z)と出来る。
 一方、f(z)=1/2πi⋅∫[c₁₋c₂]f(w)/(w−z)・dw=1/2πi⋅∫[c₁]f(w)/(w−z)・dw−1/2πi⋅∫[c₂]f(w)/(w−z)・dwと変形でき、”領域D内のある点zにおけるf(w)の値f(z)を求める”式に変わる。
 そこで図4の様に、点zはf(w)/(w−z)の特異点となる為、zは領域D内ならどこでもいい。但し、aはC₁とC₂の中心の基準点になるので、そのまま固定です。
 因みに、領域Dはドーナツ型で穴がありますが、コーシーの積分公式は”単純曲線に囲われた領域に当てはまる”ので、穴があっても適用できる。

 そこで、上の式の2項を計算します。まず1項目の被積分部は、f(w)/(w−z)=f(w)/((w−a)−(z−a))=f(w)/(w−a)⋅(1−1/((z−a)/(w−a))=f(w)/(w−a)⋅∑[0,∞](z−a)ⁿ/(w−a)ⁿとなり、この無限級数は|ζ−a|=C₁の半径で一様収束となる為に、1項目は積分∫と極限Σを交換できる。2項目も同様に、−f(w)/(w−z)=f(w)/((z−a)−(w−a))=f(w)/(z−a)⋅(1−1/((w−a)/(z−a))=f(w)/(z−a)⋅∑[0,∞](w−a)ⁿ/(z−a)ⁿとなり、この級数も|ζ−a|=C₂の半径で一様収束となる為に、2項目も積分∫と極限Σを交換できる。 
 以上より、f(z)=∫[c₁₋c₂]f(w)/(w−z)・dw=1/2πi⋅∫[c₁]f(w)/(w−a)⋅∑[0,∞](z−a)ⁿ/(w−a)ⁿ⋅dw+1/2πi⋅∫[c₂]f(w)/(z−a)⋅∑[0,∞](w−a)ⁿ/(z−a)ⁿ⋅dwとなり、ここで(2つの項で∫とΣを入れ替えると)=1/2πi⋅∑[0,∞](z−a)ⁿ⋅∫[c₁]f(w)/(w−a)ⁿ⁺¹⋅dw+1/2πi⋅∑[0,∞]1/(z−a)ⁿ⁺¹⋅∫[c₂]f(w)/(w−a)ⁿ⋅dw=∑[0,∞]aₙ(z−a)ⁿ+∑[0,∞]a₋ₙ₋₁(z−a)⁻ⁿ⁻¹=∑[−∞,∞]aₙ(z−a)ⁿを得る。この時、aₙ=1/2πi⋅∫[c]f(w)/(w−a)ⁿ⁺¹・dwとなる(証明終)。
 一方で(冒頭で述べた)「グルサの定理」ですが、コーシーの積分公式:f(z)=1/2πi⋅∫[c]f(w)/(w−z)・dwにて、f(z)がn階導関数の時、この式をn回微分すれば、f⁽ⁿ⁾(z)=n!/2πi⋅∫[c]f(w)/(w−z)ⁿ⁺¹・dwと表現出来るものです。
 証明は、帰納法と簡単な極限の計算を使いますが(長くなりすぎるので)ここでは省きます。


最後に

 複素関数でのテイラー展開は、コーシーの積分公式とグルサの定理を使って求めましたが、ローラン展開はテイラー展開に加え、正則領域の外部に特異点があるケースを考え、この特異点を包み込む様に領域を変形し、特異点を避ける様にして、グルサの定理と積分公式を使って同様に求めました。 

 複素関数は、テイラー展開やローラン展開によりベキ級数に基づき定義されますが、正則な複素関数を閉じた特異点なしの経路で複素積分すると、その値は0になる。更に、閉じた経路内に特異点があれば、複素積分に留数が出る。
 当初の複素関数論では、実数の楕円積分などの値を得る為に関数を複素化し、べき級数に展開し、留数によって値を出す事が大きな動機になっていました。 
 故に、ローラン展開の本質は、展開公式の主要部の係数により複素積分が計算できる”留数定理”への応用にあります。
 因みに、ローラン展開の”Laurent”とは”妖艶さ”を意味しますが、特異点周りのべき級数展開を作る事で留数をつまみだす。この流れが実に妖艶なんでしょうか。
 そこで次回は”留数定理”について述べたいと思います。



2 コメント

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複素積分 (paulkuroneko)
2024-03-13 18:28:34
言われる通り
ローラン展開の本質は、複素積分の計算を簡略化出来る”留数定理”にあり、留数定理こそが複素積分の基礎とも言えるのでしょうね。
実関数だと複雑に厄介になるのに、複素関数になると扱いやすくなる。

アーベルやガロアの論文の紛失等、色々とお騒がせの天才数学者ですが、こうした複素関数の本質を見抜いたコーシーには頭が下がります。 
paulさん (象が転んだ)
2024-03-14 07:15:52
”複素積分の基礎としての留数定理”
言い得て妙ですよね。
テイラー展開もローラン展開も留数定理も
自分では解ったつもりでいて解ってない。
故に、敢えて記事にしたんですが、自分で書いてて色々学ぶ事が多くありました。
ただ、ダラダラと引用が長すぎて、書いてて自分でもウンザリでしたが、こんな駄文を読んでくださったpaulさんには感謝してます。
これからも宜しくです。

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