象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

大場政夫アナザーストーリー”その3”〜決戦当日〜

2018年11月02日 17時22分27秒 | ボクシング

 大場ストーリーも3回目を迎えます。大場ブログの人気もしぶとく、このサラテ戦の後は、井上尚弥とのドリームマッチを計画してます。今日の3回目は少し長いですが、ご勘弁をです。


 さてと、サラテ陣営は意気揚々と日本に乗り込み、苦しかった筈の減量も何とかクリアします。

 互いに当日計量を無事にパスしたが。サラテ陣営は記者会見が終わると、急ぎ早に席を立ち、会場となる蔵前国技館を下見する事なく、足早に去っていく。

 一方、大場陣営は余裕からか、記者会見後もメディアと談笑したり、軽い朝食を摂るなどして、減量が上手く行った事を周囲にアピールした。


 サラテは早速、豪華なリムジンの中で、地元メキシコから連れてきた娼婦や愛人と戯れた。何しろ減量中は一切の性行為が禁止されてたのだ。よほど鬱憤が溜まってたのか、ホテルに着く前にヤり始めたのだ。

 娼婦、愛人、娼婦と代わる代わる相手を変え、激しい性の交換が行われた。その行為は荒々しく、まるで獰猛な野獣のそれに近かった。減量に悩んでた時は、あれ程までに弱々しく小さく見えた背中が、眩い程の光り輝く茶褐色を呈してた。
 老トレーナーは、ホッと胸を撫で下ろした。”何とか間に合ったな、一時はどうなるかと思ったぜ”、セコンド陣にも笑顔が戻る。


 普通、試合前のボクサーは性行為が禁止されてると言われる。それは俗説らしく、やりたい事を我慢して試合に悪影響を及ぼす位なら、腰に負担を掛けない程度にヤれば問題はないと。ホントかな(笑)。

 しかし、この時のサラテは違った。減量の鬱憤が心身ともに鬱積し、計量後に一気に爆発した。試合まで9時間しかないのに、かなり激しくヤりあった。3人を相手に延べ6回の性行為に及んだ。それも正常位でやるもんだから、当然腰には負担が掛かる。

 老トレーナーも流石に注意するが、サラテは聞く耳を持つ筈もない。当り前の事だが、このチームはサラテのワンマンなのだ。スタッフにとってサラテは”金のなる木”である。すぐに階級を上げさせないのもそのせいだ。


 サラテ自身は、バンタム級のベルトを獲得した後直ぐに、今年から新しく創設されたJrフェザーに転向する予定だったが。当然、周囲は猛反対し、何とか彼を説得した。
 そういった経緯もあり、サラテはスタッフの言う事に耳を貸さなくなっていた。

 初防衛戦では、格下のアモレスを軽々と始末し、この大場戦を最後に転向する予定でいた。サラテにとって大場とのタイトルマッチはエキジビションの様なもので、王者になった後は妻と離婚し、この試合は、新しいブロンドモデルの愛人との東京観光も兼ねていた。


 実はサラテにも階級を上げれない理由があった。まずは慰謝料の問題。当時のJrフェザーには”KOキング”のゴメスがいた。流石のサラテも彼を警戒した。

 ゴメスが直前の試合で顎を砕かれた時、挑戦状を叩きつけようとしたが。ゴメスは日本へ逃げた。ロイヤル小林との防衛戦でお茶を濁したのだ。

 サラテ陣営は、もしロイヤル小林がゴメスに勝つ様な事があれば、すぐさま階級を上げ、小林に挑戦するつもりでいた。しかし、結果はゴメスの壮絶なKO劇だった。
 流石にサラテは震えた。今のままじゃゴメスには勝てないと。


 それに、アモレスとの初防衛戦のファイトマネーは僅かな額で、慰謝料には程遠かった。そこで、サラテ陣営はジャパンマネーに目をつけた。アジア最大のボクシングジム”帝拳”のファイトマネーは、異常なまでに魅力的に映った。

 ファイトマネーを釣り上げる為に、わざと交渉を長引かせた。帝拳サイドに興行権を譲る事は最初から織込み済だったのだ。
 ただ一番拗れたのは、キャッチウエイトの要求だった。減量に不安のあるサラテ陣営は、バンタムとJrフェザーの中間でのタイトルマッチを要求したが。もつれた挙げ句、帝拳はWBCに訴え、キャッチウエイトでの防衛戦は却下された。
 
 一方、帝拳もこのタイトルマッチは何としても成功させたかったので、ファイトマネーを上乗せする事で話が付いた。

 
 サラテは直ぐにでも妻と離婚したかったので、ファイトマネーの半分を前借りとして要求した。このタイトルマッチは日本列島を揺るがすほどの大騒ぎになってたので、前売り券はあっという間に完売状態となり、リングサイドは破格のプレミアが付いた。
 お陰で帝拳側は、あっさりとサラテの要求に応じた。

 そのファイトマネーの前借りの半分を慰謝料として元妻に払い、すぐさま追い出した。残りの金は勿論、愛人に貢ぐのだが。

 故に、サラテの頭の中には大場の事など眼中になかった。大場がどんなボクサーかも知らなかった。初防衛戦のアモレスと戦った事すら知らなかったのだ。彼の眼中にあるのは、ブロンド娘だけであった。

 勿論、これは全くのフォクションですよ。大場が生きてる筈もないし、サラテが離婚した筈もない、多分ですが(笑)。

 
 サラテの愛人も恐ろしく狡猾な女で、一人ではサラテの”夜”の相手をするのは無理と考え、娼婦を二人用意してたのだ。

 サラテはこの女がひどく気に入り、いつも一緒にいたがった。練習の時も記者会見の時も買い物も何時も一緒だった。勿論減量中も彼女は一緒であった。しかし、SEXは許されなかった。故に流石のサラテも、相当に堪えてたのである。


 大場陣営は、こういったサラテの内輪話は知り尽くしていた。情報戦でも帝拳に手抜かりはなかった。どんな事があってもこの興行は成功させなければならないし、その為には何としても、どんな手を使ってでも、大場には勝つ必要があった。

 でも、いくら相手を舐め切ってるとはいえ、スパーで見たサラテの破壊力は殺戮そのもの。アモレスの野望を粉々に打ち砕いたサラテの左右のフックとアッパーは、大場にとっては驚異を超えてたのである。

 それにサラテは、思った以上に減量が上手く行ったと大場サイドは見ていた。計量の後のリムジンの中での”6連発”はその証拠でもある。


 サラテはトレーナーから注意を受ける度に声を荒げた。”勝ちゃいんだろ、勝ちゃあ。今迷ってる所なんだ、何Rで倒そうかなってな”

 ”ああ、それを聞いて安心したぜ。女に夢中で今晩の試合の事を忘れてるかと思ったぜ”と、老トレーナーは言い放つ。

 ”彼なら心配いらないわ。ほらこんなに元気一杯よ。獰猛な?SEXのお陰で、減量の疲れも吹っ飛んじゃったみたいよ。私が連れてきた娼婦のお陰ね、少しは役に立ってるでしょ?”
 と愛人はサラテの耳元で囁く。

 ようやくサラテの機嫌も良くなり、顔色が随分と良くなった様だ。性という獲物を貪ったお陰で、野獣としてのカンと生気を取り戻したのだろうか。


 ”そうだよな、今の俺は絶好調だ、誰か文句あっか。嗚呼、試合まで8時間もあるのか。何だか待ち遠しいぜ”
 サラテのここ2週間の減量苦は、何処かへ吹っ飛んだ感じだった。

 ”でも程々にね。SEXは今日はこれでオシマイよ。後はリング上で発散してよね。私も待ち遠しいわ”

 ”ああ、すぐに終わらせるさ。豪華な料理と高級なワインと、お前のとびきり上等な”ジッパー”を用意して待ってな”


 一方、大場陣営は打ち合わせに余念がない。長野ハル会長はいつものようにソワソワしていた。タイトルマッチになると何時も落ち着かなくなるのだ。そんな時決まって勇気づけるのが、大場であった。

 ”お母さん、何だか落ち着かないね。そんなに心配なら寝ててもいいよ。起きたらベルトが横にある筈さ”

 ”ねえ政夫、とにかく注意してよ。油断は絶対に禁物。あのフックをもらったら、命さえ保証はないわ”


 その時桑田トレーナーが入ってきた。
”大場は大丈夫だ、何も心配いらない。これまでで最高の戦いを見せ、そして最高の勝利をプレゼントするんだよな、大場”

 ”ああ、勝つのは分ってる。桑田さんの言うとおりにやればね。早く始まんないかな、何だか待ちくたびれちゃったな”


 そう言って大場は独りホテルへ戻り、仮眠を取る事にした。寝てる間いろんな事を考えてた。家族の事、娘の事、長野ママの事、桑田トレーナーの事、自分を支え続けてくれたスタッフの事。彼等がいなかったら今のボクはいない。
 今度は自分の為ではなく、彼らの為にリングに立ち、サラテを打ちのめす。彼と彼の愛人には悪いが、オレの狂気が彼の驚異を挫く番だ。

 サラテの破壊力は半端ない。しかしオレの狂気も半端ない。狂気は凶器となり、オレはピラニアみたいに獰猛で冷酷な殺戮者となる。一瞬にしてカンバスに沈め、そして二度と這い上がれない様に打ちのめす。立ち上がってきたら何度も何度も打ちのめす。ただそれだけだ。


 アモレスの時もチャチャイの時も、試合前になると弱気を吐いた。勿論減量苦もあったが、正直ボクシングを続けるのが辛かった。試合に減量、そして練習の繰り返しで、全く休む暇がなかった。狂気だけが頼りだった。周りに当たり散らす事もしばしばだった。

 はけ口は夜の街に向けられた。毎夜毎夜、分厚く派手な化粧を施し、パトロンに群がり媚態を振り撒く、クラブの闇のマドンナだけが唯一の息抜きだった。
 あまりに荒んだ私生活に、”俺はチャンプなんだ”と、壁に殴り書きをした程だ。


 しかし、今は違う。愛する妻がいる。その上、可愛い娘たちにも恵まれ、スタッフとは家族同然の付き合いだ。永野ハル会長は母親以上に心配してくれる。桑田トレーナーは兄弟以上の存在だ。

 これだけ恵まれた環境にいながら、オレの狂気は益々磨きが掛かり、鋭い刃物の様にプラチナ色に光り輝いてるではないか。獰猛さを増し、狂気と化した拳には一つの生命が宿ってるみたいだ。

 大場は色々と考えてる内に、深い眠りに付いた。夢は一つも見なかった。まるで死んだ様に深い眠りに落ちた。


 一方、サラテ陣営は生気を取り戻したサラテとその愛人を中心に異様なまでに盛り上がってた。彼の頭の中にはKOする事だけしかイメージできなかった。
 老トレーナーは大場のビデオを見せようと必死に諭すが、愛人とイチャつくのが常で、対戦相手の大場をまるで、死刑台の囚人かオモチャみたいに思っていた。
 
 ”相手が誰であろうと、殴り倒すだけさ、相手を知って何になる。ビデオを見て何になる。オレはこのスタイルでずっと戦い続け、全ての相手をKOで下してきた。オレにとって相手とは単なる獲物に過ぎない。
 それに変に相手を知ると、情けが湧いてしまう。ボクシングに殴り合いに情けは禁物だろ、違うか”


 老トレーナーは苦笑するしかなかった。

 ”ああ、見たくないなら見なくていい。ただ、相手は予想以上に手強い。物凄く完成されたボクシングをするし、フットワークは完璧だ。ヤツの左右のストレートは、減量で疲弊したお前のボディを、執拗に正確に狙ってくるだろう。
 接近して打ち合えば、難なく倒せると高を括ってるらしいが。大場はそんなヤワじゃない、お前の懐にはまず入ってこない。少しでも油断すれば、今度はお前が獲物になる。
 トレーナーとしてこれだけは言っておく。とにかく油断はするな。横にいる愛人を悲しませたくなかったら、真剣に勝負に徹しろ”

 サラテと愛人は、呆れた様な微笑みを浮かべ、睦まじく部屋に戻っていく。トレーナーにはサラテの後ろ姿が少し弱々しく映った。



4 コメント

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早く観たいな (hitman)
2018-11-03 02:39:35
バンドルネーム長過ぎなので、hitmanにします。

怪人サラテは相当大場を舐めてますな。うーん、流石メキシコが生んだ殺戮兵器。いや、オッペンハイマーも真っ青の悪魔の兵器です。(*^^*)

でも大場はどうやってこの殺戮マシーンを攻略するんでしょうか。転んださんの青写真も予想できなくはないんですがね。ここで言っちゃうと不味いかな?

一応はボクシングには詳しいんで、転んださんの読みが透けて見えそうですが。きっと想定外を用意してるんでしょうね。

とにかく大場はガードを固めて後半勝負と言うことで。オッズは6:4程でサラテ有利が。好き勝手に予想してますが。今から楽しみです。
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Re:早く観たいな (lemonwater2017)
2018-11-03 05:39:01
hitmanさんお早うです。

 いい線いってますな。結構読み当たってます。オッズは最初は8対2ほどでサラテ有利だったんですが。試合直前となると、hitmanさん言う様に、6:4位で収まるでしょうか。

 でも勿論、想定外も用意するつもりです。
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イラストがgooです。 (paulkuroneko)
2018-11-04 11:53:24
イラスト変えましたね、とてもgooです。大場ブログではこのイラストが最高です。転んださんのイラストの才も相当なものです。

オッズは6対4でサラテ有利となってますが。この差をどうやってひっくり返すかが、キーとなりますが。

レナードvsハーンズを勝手に想像しますが。似たような展開になるのでしょうか?サラテとの戦い如何では、井上戦のドリームマッチもドリームではなくなるかもしれません。

まさに、明日はどっちだです。
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読み鋭すぎ (lemonwater2017)
2018-11-04 14:44:32
paulさんコンニチワです。

イラストお褒め頂いて有難うです。我ながらよく出来たと思います。

 何でもそうですが、インスタンスにスンナリ出来上がったものって、シンプルで納得いくものが多いです。逆も真しんなりで、手の混んだやつ程駄作が多い。

 レナードとハーンズの再現ですか。中々鋭いです。もうお手上げといった所なんでしょうが、いいヒント与えてくれました。

 さてと、どんなシナリオに仕立て上げようかな。
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