象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

いつかは真実を知らされる時が来る〜”人間機雷”という名の特攻

2021年08月16日 15時55分15秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 特攻兵士を兄に持つ遺族の涙が全てを物語っていた。
 彼らは国の為に潔く死んでいったんじゃなかった。”死にたくない”と震え慄きながら、仕方なく敵艦の砲撃に晒されながら無残にも死んでいったのだ。
 特攻美談が大ウソなのは分かりきっていた。しかし、明確な証拠がない。戦後、彼らの遺族たちは故人の名誉を汚すまいと、必死で口を閉ざしていたのだ・・・

 九州大学の研究チームが自ら水深40mまで潜り、特攻隊によって沈められたアメリカ駆逐艦の写真を撮影、7年にも渡って調査した。どのようにして、特攻隊の彼らが亡くなったのかを徹底究明する(NHK「特攻、知られざる真実」より)。

 ”迎撃機能を一切持たず、通常の飛行機より速度の遅い偵察機で特攻した誠隊の存在。 しかも彼らは飛行隊員養成所の教員で、本来なら特攻隊員になる筈ではなかった”
 ”特攻訓練とは名ばかりで、実は死に行く為だけの隊員も教官も本当につらい訓練だった”

 Twitterから一部拝借したが、これだけでもブルーな気持ちになる。
 とても我らの祖先がこんな無茶をしでかしたとは・・・ それも海軍がである。


知らされるべき真実

 毎年この時期になると、戦争の悲劇がドキュメンタリーとして放送される。
 昨晩も少し見ただけで胸が一杯になった。この手の番組はよくブログのネタにしてきたし、”知ってるつもり”だったが、改めて等身大の悲劇を目の前に見せつけられると、恐ろしく胸が締め付けられる。
 戦後、特攻は長らく美談化され、映画やドラマでも英雄視された。しかし逆にそれは、軍司令部の無能と残忍性をさらけ出す結果となる。
 特攻兵士の悲劇に関しては、過去3度(その1その2その3)に渡り紹介したので、今日はもう一つのもっと悍しい(未完に終わった)特攻兵器を紹介したいと思います。

 「人間機雷”伏龍”特攻隊」(瀬口晴義 著)では、太平洋戦争終戦間際の1945年8月、人間機雷部隊が極秘に組織され、ひたすら死に向かうだけの特攻潜水訓練がなぜ行われたのか?徹底取材で解き明かします。
 以下、読者レヴューから一部抜粋です。

 特攻隊とは名ばかりで、粗末なゴム製の重さ80kgの潜水具を背負い、3m強の竹槍の先端に25kgもの機雷をつけ、海に潜り50m間隔でじっと待機する。米軍の上陸用舟艇が来たら船底を突いて自爆する、いわばクレイジー過ぎる“人間機雷”だ。
 人員は主に、海軍飛行予科練習生(予科練)や志願兵の10代の若者だ。しかし、この少年たちが搭乗する飛行機は既になく、彼らを水際特攻隊に仕立て上げるのは”余剰人員の有効活用”の意味もあった。
 最大の訓練地は横須賀市野比海岸が伏龍特攻隊の陣地になる予定だった。予定で終わったのは、実際の特攻前に敗戦となったからだ。
 故に伏龍の悲劇は、特攻で死んだのではなく、その練習で死んでいった事にある。

 潜水服は防水が不完全で、水が入ってきてしまうと呼気清浄機内の苛性ソーダと反応し、それが口から体内に入ると高熱で胃や肺が焼かれ、壮絶な苦痛の中、息絶える。その上、呼吸法を間違えると炭酸ガス中毒になり死に至る。
 海の中の特に夜は視界が悪く、訓練中に行方不明になるなど訓練自体が死と隣り合わせにあった。故に、訓練中の死亡者数は相当な数に昇ったとみられる。 
 まるで、命を爪楊枝の様に使い捨てる愚かな作戦でもあったのだ。
 
 ”文句を言うんじゃあない。特攻の目的は戦果にあるんじゃなく、死ぬ事にあるんだ”
 この飛行長の言葉が、特攻の矛盾と悲劇を全て言い表している。


最後に

 14、15のまだ子供の様な若者が呆れ果てた作戦の為の訓練で命を奪われてた事を、私たちは覚えておく必要がある。

 戦争を綺麗事に置き換えるのはバカがやる事だ。オリンピックを平和なお祭りに例える連中も愚かだが、特攻を編み出し、国家の為にと若者の命を無残にも死に追いやった軍司令部の責任は、重い軽いという次元じゃない。
 彼ら指導部のA級戦犯の多くは、温々と極刑を免れ、今では靖国神社に国家の英雄として奉られている。
 靖国に眠ってるバカ参謀どもの幼稚な思いつきで、その犠牲となった子供達の無念さは、戦争を知らない私には想像もつかない。

 伏龍特攻隊に志願し、戦後は近畿大学で教鞭をとっていた牛尾茂夫の言葉だ。
 ”政治家は自衛隊に戦地へ行けと言う。私は、だったら<お前が行け>と思う。アンタらは政治家を辞めて戦地に行くのか?自分の息子を自衛隊には絶対に入れないでしょ”

 元首相の安倍は、自衛隊を軍隊にして世界の紛争に参加させ、日本を栄誉ある国にしたいと考えていた。しかし自分は安全な所にいて、危い目に遭いそうになれば、病気を理由にすぐ逃げる。
 戦時の軍司令部には、安倍みたいな”責任逃れ”系のA級戦犯が数多くいた。
 そして安倍みたいな人種が、何も知らない子供みたいな多くの若者を戦地に送り込み、まざまざと死に追いやるのだ。

 それでも日本人の40%近くは、安倍を支持していた。そういう日本人が1人でも存在する事が、私には信じられない。



8 コメント

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Unknown (瓊花)
2021-08-17 07:12:56
私の政治家への唯一の期待は、戦争を回避する、それだけです。
孫子が兵法で冒頭に掲げています、戦争なんかしちゃダメだ、何やっても回避できなかったときに初めて手を出すものだって。それもまあ、詭弁かもしれませんが。
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現在に通じるものが (平成エンタメ研究所)
2021-08-17 08:41:38
こんな愚かな行為をする前に終戦の決断をすべきだったんですよね。
本土では空襲を受けて焼け出され、前線では兵士が餓死していたのですから。

国民がコロナで不安で苦しんでいるのにオリンピックを決行した現在にどこか通じるものがあります。
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瓊花さん (象が転んだ)
2021-08-17 11:41:15
米英はどんな汚い手を使ってでも戦争を仕向けようとしました。日本の奇襲は米英共に想定内でしたが、日本には戦争を回避する方法はあった筈です。
しかし、五輪開催と同じで踏み出したからにはそのまま行っちゃえと、最悪の結果を招きました。
1942年の事が2021年にもそのまま繰り返された訳ですね。悲しい限りです。
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平成エンタメさん (象が転んだ)
2021-08-17 11:46:31
コメントの一部を引用させて頂いて、ここにてお礼申し上げます。
今回の五輪開催と特攻と”国民の命を危険に晒す”という点では共通するものがありますよね。
どうも日本島民には”自虐”という美学が今の時代にも受け継がれてるようです。
NHKではパラリンピック特集を必死で流してますが、人間機雷とダブらなくもないですね。
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パラリンピックと人間機雷 (#114)
2021-08-19 07:35:58
こんな状態で
パラリンピックを開催するのかな
障害者アスリートには悪いけど
中止という選択肢は
今となっては現実的だと思う
オリンピックが終った直後だから
感動の余韻に酔ってる日本人は少なくないだろうけど

コロナ感染の視点からだけで見ても
五輪が失敗に終わったように
パラリンピックはもっと大きな失敗になる
こうした現実に政府は早く気づくべき
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#114さん (象が転んだ)
2021-08-19 08:47:08
新規コロナ感染者が日本全国で2万人超えです。感染大国フランス並みになってきましたね。
五輪直前の6月末は僅か2千人を切ってたんですから・・・五輪開催が大きな引き金になった事は揺るぎない確証です。

一時深刻なパンデミックに陥ったドイツもイタリアも5千人以下という事を考慮すると、やるせない気持ちになりますね。
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人間魚雷 (unknown)
2022-01-11 08:31:13
とは聞いたことあるけど
人間機雷とは
旧日本軍司令部もやる事はおぞましい
彼らの末裔が今の日本政府の中核をなしていると思うともっとおぞましい
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unknownさんへ (象が転んだ)
2022-01-11 10:06:27
ブログのタイトルも、人間機雷と人間”嫌い”を掛けた方が良かったですかね。
これこそがおぞましさの連鎖です。
特攻や人間魚雷やバンザイ攻撃もショッキングだったんですが、この人間機雷には同じ日本人として情けなくなりますよね。
コメントありがとうございます。
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