夕陽丘

時事問題とロースクールの日常など

◆製造業の空洞化

2006年01月29日 20時29分27秒 | 企業法務学習日記
 29日付日経朝刊7面に,FOMAの開発・生産が一部中国に移管されていることが明らかになったとの記事があった。現在は,NECと三菱電機が一部移管を実施しており,パナソニックも移管を検討しているという。

 移管の理由は,開発・生産コストの削減にあるという。今年中にはLG電子等の海外メーカーが日本市場に本格参入するため,コスト削減が喫緊の課題だという。

 その理由自体には合理性があるし,やむを得ないかなとも思うのだが,長期的に見ると,日本の製造業の空洞化に一段と拍車がかかる気がしてならない。

 携帯電話は,意外にも労働集約型の側面があることを何かで見聞きした記憶がある。微細な部品の組み立てが必要な上,頻繁に生じるモデルチェンジに対応するため,専用の機械設備の導入は困難なのだそうだ。

 しかも,コスト削減のため,未熟練の工員をパートや季節雇用で集め対応するのだという。その意味でコスト削減は相当行っているはずだが,生産移管が行われるということは,それでもやはり日本の労働コストは高いということなのだろうか。

 しかし,微細な部品の組み立てや臨機応変の対応ができる工員の存在は,かつての日本の製造業の力そのものだったと思われる。現在の製造業の花形である自動車産業も一つ一つの部品に関与する幾万の工員の総合力で生み出している。

 コスト削減を第一として未熟練の工員を使っている上,生産そのものを海外に出してしまうことは,日本の中から精緻な作業を臨機応変に行える熟練工を消滅させてしまうことになりはしないだろうか。

 何だか不安である。