静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

マーラー/交響曲第8番をアバドの指揮で聴く

2012年08月03日 15時35分04秒 | マーラー
 8月に入っている。7月は二つの記事しか上げていない。「上げられなかった」のではなく、「上げなかった」ということ。パソコンの前に座ることがめっきり減ったし、できた「自由な」時間は、CDを聴いたり録画を観たり・・・ということで過ぎていった。それに、何度も書いているけど、どうも文章を書くこと自体が億劫になっている。やはり、ツイッターやフェイスブックは、そのあたりの抵抗がほとんど無く、それこそ「テキトウ」に呟き綴っていける。
 この安易さと手軽さ、そして気楽さにハマってしまうと、かつては何でも無かった「長文をダラダラと綴る」ことさえ煩わしくなってしまうのか?そのあたりはよく分からない。

 昨夜、久しぶりに聴いた「一千人」のことを、ちょこっと書いておこうと思う。



マーラー/交響曲第8番


シェリル・ステューダー
シルヴィア・マクネアー
アンドレア・ロスト
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
ローゼマリー・ラング
ペーター・ザイフェルト
ブリン・ターフェル
ヤン=ヘンドリク・ローテリング


ベルリン放送合唱団
プラハ・フィルハーモニー合唱団
テルツ少年合唱団


管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


指揮:クラウディオ・アバド



録音:1994年2月




 マーラーの8番は、そんなに頻繁に聴いていないけども、聴く度に感動させられる。
 昨日のような時間的、気持ち的にゆとりのある時は、スコアを広げて聴くのがよろしい(もちろん、スコアを持っている曲の場合のみ)。聴きながらいろんなパートを目で追っかけていると、毎回、新しい発見があって楽しいと言うか、いつも、その音楽に引き込まれてしまう。

 昨日聴いたアバド盤は、オーケストラ、合唱、独唱、どれもが上手くて、どの瞬間もキラキラしているかのようだった。
 冒頭は(こういうところがアバドらしさなのか)ほんの少し余力を残した98.5パーセントくらいの鳴りっぷりで開始。
 テンポも音量も節度ありながら物足りなさは全く無い。
 そして、展開部後半の二重フーガから再現部へ至る、あの聖なる熱狂は雑味ゼロのすごい完成度で突き進み、第1主題の再現でアルプス交響曲のクライマックスの倍くらいの頂点に辿り着くと、もうスピーカーの前でポロポロになってしまった。
 アバドの指揮は「ちょっとクールだけど恐ろしいほどの秘めた激情」という感じであり、やっぱりすごい指揮者なんだなぁと今さらなから思う。
 第2部で、法悦の教父に始まり、いろんな登場人物(?)や天使たちが入れ替わり歌い継いでいくところ、以前はちょっと退屈もしたけど、今は全然違う。
 そして、なんと言っても「マリア崇拝の博士」による愛の賛歌のあとに来る、あのオーケストラだけの部分!
 何度も繰り返される「復活」のモチーフに続いてハープとホルンと第1ヴァイオリンだけが残り「天上の音楽」となるところ。
 ここはマーラーの書いた音楽の中でも、最も美しく光が差している部分だと思う。
 そして、人の弱き心に寄り添い共感的に歌う合唱が入り、3人の女が最初は一人ずつ、次いで三重唱となり、悲壮感のない贖罪の言葉を重ねていく。
 3人に次いで「かつてグレートヒェンと呼ばれた」贖罪の女の一人も嘆願の歌を歌うと、それに応えるように天上から「栄光の聖母」が「来なさい、来なさい、より高い天へ・・・」と歌い、音楽は歩みを止めて沈黙一歩手前まで行くと、マリア崇拝の博士が天を仰ぎ見るように「すべて、悔い改める優しい人たちよ、救い手の眼差しを仰ぎ見るのです」と歌いだす。
 この辺りから終結までは、もう固唾を呑んで音楽の歩みに身を任せるほかは無い。
 チェレスタ、ピアノ、ハープの「後光」も退くと、その後は、もう見たこともない景色のような圧倒的な音楽。

移ろいゆくものは、これ、すべて映像にすぎない
及び得ないものが、ここに実現され
言い表し難いものが、ここに成し遂げられた
永遠に女性的なものが、我らを引いて昇り行く


Ewig!(永遠に)の繰り返しが、シチュエーションは違うけども、「大地の歌」のそれと重なって、マーラーの前向きな願いの叫びのように聞こえる。
合唱の消えた後の最高に高潔なオーケストラにダメ押しを食らって、私も昇天。


マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」
アバド(クラウディオ),ステューダー(チェリル),ロータリング(ヤン=ヘンドリク),ザイフェルト(ペーター),マクネアー(シルヴィア),ロスト(アンドレア),ベルリン放送合唱団,ターフェル(ブリン),ラング(ローゼマリー)
ユニバーサル ミュージック クラシック



Symphony 8
輸入盤
Dg Imports






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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
千人 (yokochan)
2012-08-11 00:22:09
どうもご無沙汰をしております。
アバドやマーラーと聞くと、吹っ飛んでくるのですが、反応遅くなってしまいました。

アバドの唯一の千人は、期待通りの凄演でして、指揮も演奏者も、一期一会的なライブ感がでてますね。
今年のルツェルンで予定されながら、モツレクに変更になってしまい、やはり主催側も含めて大変な曲なんだなと痛感してます。

わたしも成り行き上、フェイスブックをはじめて、その気軽さに、ブログの効能を忘れつつある日々です。
自分の視聴記録みたい思ってだらだら継続そてます(笑)
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>yokochanさん (親父りゅう)
2012-08-12 11:32:58
アバドのマーラー、いいですね。
ルツェルンの映像も、録画しそこなったのもありディスクの入手も検討中です。

あっ、FBの方、厚かましくもさっそく押しかけましてスミマセンでした。あっちでもよろしくお願い致します。

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Unknown (ももパパ)
2012-11-03 13:28:17
突然の乱入ですみません。たまに立ち寄って勉強させて頂いております。これからも宜しくお願いします。

アマゾンの中古CDで購入し聴いてみました。
決定的に違うのはスコアを読める方とそうでない小生のような素人とは感じ方が違うのかと思う次第です。スコアを読めるのが羨ましいです。曲への知識・読み取り方が次元が違いますね。

またいろいろ勉強させてください。
小生はブーレーズの録音がなぜかす~っと体に入ってきます。今後も他の録音も聴いて勉強していきたいと思います。
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ももパパさん (親父りゅう)
2012-11-03 17:11:46
こちらでもありがとうございます。

私の場合、聴きながら譜面を辿っている程度ですので「スコアが読める」とは言えないと思います。
でも、聴いているだけの時よりはいろいろと見つかることや楽しいこともあります。毎度毎度ではありませんし、何より、スコアを持っている曲は限られています。聴いて感じることが何よりいいと思いますし、そういうことを私も大事にしたいと思っています。
ブーレーズのマーラーは何曲か聴いて良い印象を持っています。8番は未聴ですが、3番、5~7番、9番とか、いずれもよかったです。「大地の歌」もよったですね。
いずれ全部まとまって箱物で出そうなので、それまで待っているような所です。でも、早く聴きたいですね。

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録音について (もも)
2012-11-04 20:25:43
「父親りゅう」さんは録音についてどのくらい関心がありますか?
小生の場合、指揮者の語り口やオケの演奏もそうですが、どうしても録音も気になります。録音がよければなお音楽の世界に入っていけるような気がします。
たぶんブーレーズ版が好きな要素としてそれもあるような気がします。
しかし、小生はオーディオマニアではないですよ!
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録音 (親父りゅう)
2012-11-05 14:29:16
ももさん、録音は「聴きやすい」音であれば特に気にしていません。新旧よりも音楽を聴くのによいか悪いか、とでも言ったらいいでしょうか、そんな判断基準です。もちろん、装置もそんなに大したものではありません。
「千人」の録音だったら、例えばミトロプーロスのモノラル録音でも、十分に鑑賞に堪えると思います。
逆に新しいものでも、妙に耳障りだったり不自然だったりすると聴きたくなくなります。
ヒストリカル音源、SP復刻は「聴き慣れ」ていて、むしろ、そっちの方が主流かも知れません。
ブーレーズの録音は(特にDG時代のものは)クセのない自然な音像だと思いますので、演奏の味わいも細やかに伝わるのではないでしょうか。
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