教科書採択を考える会ブログ

愛媛県松山市内の中学の歴史教科書が「育鵬社」版に変わるのを機に発足した会です。教科書比較の学習会も行っています。

第23回学習会報告「81 世界の奇跡・高度経済成長(p.262-263)」

2017-10-27 11:45:57 | 学習会
第23回学習会は、2017年10月10日(火)13時よりおこなわれました。

範囲はこちら。

育鵬社「81 世界の奇跡・高度経済成長(p.262-263)」

「82 冷戦と昭和時代の終わり(p.264-265)」


東京書籍「5 緊張緩和と日本外交(p.250-251)」

「6 日本の高度経済成長(p.254-255)」


学び舎「(8)豊さとその代償ー高度経済成長ー(p.272-273)」

「(10)基地の中の沖縄ー沖縄の本土復帰ー(p.276-277)」

「(12)問い直される戦後ー日中国交正常化と東アジアー(p.280-281)」




今回のチューターは元小学校教員のDさん。

戦後の「高度経済成長」を中心に、高度経済成長にともなう「公害問題」の記述、「沖縄返還」の記述、「中国残留日本人孤児」の記述を

育鵬社・学び舎・東京書籍の三社で比較しました。

Dさんが気になった点。
育鵬社
「高度経済成長」
○高度経済成長が、日本人の勤勉さや技術力によるものと自画自賛の記述。

○写真は、オリンピック・東京タワー・万国博覧会など、高度経済成長・経済大国・戦後復興を強調するものを大々的に掲載し、集団就職の写真は小さい。

「公害」

○「公害の歯止めに有効な対策をとらなかった政府や自治体、企業の責任がきびしく問われました。(p.263 L9)」とあるが、水俣病など公害病で苦しむ人とその家族の苦しみの記述が全くない。そのように苦しむ人とそれを支援する人々が企業の責任を問うたのに、そのことをきちんと書いていない。

○「政府は公害対策基本法を制定し、環境庁を発足。こうして公害防止と環境保護に努めた結果、大きな改善が見られた。(p.263 L11)」とあるが、公害病の患者や家族の怒りを根底にした裁判や公害反対の世論が、法律や環境庁をつくったと思う。あたかも政府が自発的につくったような記述だと感じる。

○写真は、四日市コンビナートのみ。

「沖縄」

○3行のみの記述(p.264 L18)。

○学び舎、東京書籍にくらべて沖縄の写真が一枚もなく、沖縄にアメリカ軍基地が集中していることなど気づかせることができない。

「中国残留日本人孤児」
○記述なし。

○戦争の記述が一貫して「仕方なかった」という論調。加害者としての記述は無いか、巧妙にぼかした表現で、被害者の立場に立った記述が多い。


育鵬社の教科書記述にかんして、総じて、

◎出来事の負の部分を隠したりぼかしたりしていると感じる。

◎被害者的な視点で戦争を記述しており、戦争や公害の被害に遭った人の描写が無い。

東京書籍

「高度経済成長」


○高度経済成長を社会情勢・政治情勢と絡めながら説明している。

○高度経済成長がさまざまな社会問題を生み出したこと(農村の人口流出・過疎化、都市の交通渋滞・住宅不足・ゴミ問題など)に触れている。

「公害」
○5行で簡潔に記述(p.255 L6)。

○p.268-269の見開きで詳しく記述。




「沖縄」
○p.251に記述。


○アメリカ軍基地が、沖縄の土地のかなりの部分を占めていることが分かる地図を掲載。

「中国残留日本人孤児」
○p.242に写真と文がある。




学び舎
「高度経済成長」

○高度経済成長を支えた労働力として、集団就職で上京した若者や貧しい地方から出稼ぎにきた農民の存在が大きいことに触れている。

「公害」

○具体的に工場名や病気の原因、どんなに恐ろしい病気かわかるような記述。

「沖縄」


○米軍機の事故による民間人の死亡、少女への米軍兵の暴行事件など、アメリカ軍の存在が沖縄の人々の平和な生活を脅かしていることに触れている。

○東京書籍と同じように、沖縄の基地負担がわかるよう地図を掲載している。

「中国残留日本人孤児」



○p.280で詳しく記述。

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