教科書採択を考える会ブログ

愛媛県松山市内の中学の歴史教科書が「育鵬社」版に変わるのを機に発足した会です。教科書比較の学習会も行っています。

第6回学習会 「62 第一次世界大戦」

2016-05-22 15:35:06 | 学習会
第6回教科書学習会は、5月17日(火)の13時から、24名の参加者で行いました(於 教育会館 1階会議室)

今回のチューターは、元小学校教諭のSさんとYさん。

学習テーマは「第一次世界大戦」でした。

育鵬社版「62 第一次世界大戦」(p.210-213)
東京書籍「第一次世界大戦」(p.198-199)
学び舎 「(7)すべての力を戦争へ」(p.206-207)

まず、第一次世界大戦の単元は、近代史のはじめに位置するものでそれぞれの教科書とも章立ての冒頭にきており、

それぞれ章の冒頭の導入の部分を比較することになりました。

育鵬社


東京書籍


学び舎


育鵬社は、「「絵巻」としながら写真でなく漫画風の絵なのが気になる」という意見が出ました。

「絵でまとめることで、戦争の悲惨さが伝わらないのではないか?」

「「日露戦争に勝った日本は、その後どうなったのだろう。」との記述に違和感がある。」との指摘もありました。


東京書籍は、「並んでいる資料はどのようなものだったでしょうか。」「人々はどのような生活をしていたでしょうか。」との記述で始まり、資料も写真です。

学び舎は独特で、世界大戦のなかで変わった女性たちの姿に光をあてています。


そして、本文の比較。

育鵬社




東京書籍




学び舎




学び舎版では、「戦意を高めるための宣伝や教育の強化」との記述や、当時の戦意高揚のためのポスター資料、

本文中にもドイツ学生兵士の手紙をそのまま掲載しており、


「独特の切り口で当時の人びとの様子をありありと伝えている」との感想が出ました。

東京書籍版では、
「大量の兵士と物資を総動員して、国力を使い果たす総力戦になる。

総力戦には労働者や女性、さらに、植民地の人々も貢献したため、戦後には、こうした人々の要求が無視できなくなる。」との記述で、

塹壕戦や、機関銃、戦車・飛行機・毒ガス・潜水艦などが使われたこと、

兵器工場で働く女性の写真も資料できちんと紹介されており、

「“教科書らしく”整理されている」という感想が多かったです。

「もう一歩進んで学習したい子には、学び舎を渡したい」という感想が出されました。


育鵬社版では、本文記述に「国力のすべてを動員する総力戦」とありましたが、「国民の窮乏状態の表現が少なく、分けて書かれているので分かりにくい」、





写真資料も「東京書籍版に比べても、悲惨さが分かりにくいものが使われている」との指摘がありました。



また、本文記述のなかで「日本を「わが国」と書いていることに違和感を感じる」との指摘もありました。


そして一番特徴的だったのがこれ。

p.211の真ん中ほどにある、6️⃣地中海の日本海軍艦隊 の資料。

これは育鵬社だけに見られる資料でした。

資料説明には、「ドイツ軍の潜水艦の攻撃から、三国協商側の輸送船や商船を守るために活躍した。」と説明がありますが、

実際には1度出動しただけだそうなので、歴史に詳しいYさんいわく「「活躍した」とは言えない」とのこと。


また、【学習のまとめ】の部分でも、

育鵬社は「第一次世界大戦後、世界はどのように変わったのか、次の語句を使って説明しましょう〔ロシア/ヨーロッパ/アメリカ〕」

と「教科書を読んだだけでは分からない、何を問われているか分からないようなまとめだ」と指摘されていました。


東京書籍での【学習のまとめ】

「第一次世界大戦がそれまでの戦争とちがう点を、次の三つの語句を使って説明しましょう。〔新兵器/総力戦/女性〕」

学び舎での記述(p.220)

「第一次世界大戦には多くの国が参戦し、世界を巻き込んで大きな被害を出した。戦争中や戦後、各地で新しい動きが起こった。(後略)」



次回学習会は、6月14日(火)13時から15時 教育会館(松山市北持田町131-1)です。

「ロシア革命」についての記述を比較、学習します。


気になる新聞記事

2016-05-17 17:24:23 | 事務局日記
5月5日付愛媛新聞にこんな記事がありました❗️



育鵬社採択の大阪市で、他社版を副読本に、とのことですが、

「やっぱり、育鵬社版では歴史の授業ができないということの証明では?」と事務局では話題になりました。



大阪市立中学校長会が教科書記述の違いを項目別に並べた比較表を作成…って、

校長先生方が資料作られたというのがスゴイですよね。


「偏らず公平公正に教えるため…」と比較表を作成した方は話されています。

こうした観点で動いてくださる先生は愛媛には居ないものでしょうか?

Nさんより学習会報告

2016-05-11 14:13:28 | 事務局日記
4月12日の第5回学習会でチューターをしてくださったNさんから学習会報告が届きましたので、ご紹介します。


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<近代産業発展の意味するもの>

 学習会の結果報告というよりは、進行した学習の反省、こうありたかったを交えた報告です。

テーマから外れた長話の再来と批判をいただくかもしれませんが…。


資本主義という経済システムが字義どおり経済の自然的発生過程として現れたのはイギリスで、

ゆえにイギリスの近代経済史は、マルクスなどが提唱する資本主義経済の言論と扱われます。

イギリスを典型とし、それ以後、相次いで近代産業を取り入れ発展させた国々の経済を、イギリスと比較考証することで、

その国の近代史の特殊性と一般性が明らかになり、その歴史認識が鮮明になるというわけです。


 イギリスは産業技術の発展とともに近代産業が発達し、世界の工場として農村人口を吸収し近代都市が生まれ大都市化する。

それが都市住民の地獄化につながったのは、土地の持ち主層が羊の飼育が利益につながるため。農民を農村から追っ払ったというイギリス史の特殊性ゆえ。


 これに比し日本は、近代化をイギリス化・西欧化だと思い込んだ明治のリーダーが、犠牲を恐れず、遮二無二資本主義化を進めたので、

近代産業部分は、婦女子がまかなう繊維工業か、炭鉱・鉱山くらいで、その労働市場もごくわずかだったので、人口の大半は農村に留まることになった。



 そんな農民におしつけられた極めて重く、かつ勝手知らない金納の地租は過酷で、

農民が地租を払えず土地を手放して、しかしほかに行き先もないので、かつての自分の土地を重い年貢の支払いを約束して借り受けて耕作し、

家族総出で必死に働いても、極貧で絶糧農民さえ珍しくない、これが昭和の前半までの日本の農村でした。


 こうした地主制下の極貧の農村からは、最低賃金や賃金は無く食事だけで働く農村出の子女や次三男が、工場・鉱山そして軍隊(兵士)を無尽蔵に供給したのです。


 しかし、そんな条件下の日本は、安価な工業製品は作れても、

人口の大半が農村住民か、低賃金の都市住民では、工業製品を買う力がないという矛盾を、明治の初めから抱えていたのです。

その対策は輸出で、その安定した市場の確保のための海外への植民地的進出で、活路を得ていたのです。


 文科省が望む歴史の教科書(育鵬社)は、こうした農民の貧困が、日本の軍国主義をもたらしたことを無視し、

この間の経済状態をまるでめでたい財閥の形成・発展史のように描かせようとしていますが、

こんな教科書でいくら勉強しても、子どもの財産にはならないと思われます。

会のチラシを折り込ませていただきました

2016-05-05 21:53:01 | 事務局日記



入学式チラシにアレンジを加えた会のチラシを、5・3憲法集会の資料に折り込ませていただきました。

たくさんあるうちの一枚でしたが、数人でも手にとって読んでもらえるといいなと思いを込めて作成しました。

5・3憲法集会の情報はこちら。

森英樹先生のお話はとてもわかりやすかったので、今度著書を買って読んでみようと思います(o^^o)