教科書採択を考える会ブログ

愛媛県松山市内の中学の歴史教科書が「育鵬社」版に変わるのを機に発足した会です。教科書比較の学習会も行っています。

中学校の道徳教科書採択の傍聴

2018-09-25 13:40:03 | 傍聴日記
中学校の道徳教科書の採択について。

傍聴の書き起こしです。


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平成30年 第8回 松山市教育委員会定例会傍聴記録

2018年8月21日15時

(敬称略)
教育長 藤田仁(元教育委員会事務局長)
教育委員 一色 昭造(石崎汽船社長) 牛山 眞貴子(愛媛大学教育学部教授 体育・ダンス)
     豊田 克文(元松山市東中学校校長・元学校教育課長) 白石 直美(松山市立北条北中学校PTA会長)
教育委員会事務局次長 大本 光浩


藤田:平成31年度使用中学校教科書「特別の教科 道徳」の採択について議題といたします。大本事務局次長から説明を求めます。大本次長。

大本:学校教育課 大本です。よろしくお願いします。
   議案第22号 平成31年使用中学校教科書「特別の教科 道徳」の採択について説明をいたします。

   本件は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」および「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に基づき、平成31年度使用中学校教科書「特別の教科 道徳」の採択について本定例会で審議いただき、採択を求めるものです。4ページをお願いいたします。


   道徳は8社教科書がございます。
   今回の教科書はいずれも、教育基本法や学校教育法の理念や目標等を踏まえ文部科学省の検定に合格したものです。
   各種報告書については、調査・研究していただくために、小学校と同様に事前にお渡しさせていただいていますが、改めて説明させていただきます。


   まず一つ目は、調査部会による報告書です。
   資料作成委員は、道徳において特にすぐれた知見を持つ教員にお願いしました。
   実際の調査では考え、議論する道徳の授業が展開できるよう適切な教材の工夫や配慮がある問題解決的な学習や体験的な学習につなげることができるかなどの観点について報告書をまとめています。


   二つ目は、市内すべての中学校に対し、8社すべての教科書について調査研究を行い、気づいた点などを学校ごとに報告書にまとめています。
   
   
   三つ目は、教科書採択に関する懇話会の報告です。
   今回では、校長および教員ならびに保護者の方やその他有識者の方が委員として集まり、すべての教科書についてご意見をいただき、事務局がまとめたものです。


   四つ目は、教科書展示会におけるアンケート結果です。
   これは展示会場において教科書を閲覧した一般の方からアンケートに意見を記入してもらい、それを回収して、事務局がまとめたものです。


   以上が採択及び資料についての説明です。次に一社ごとに出た意見の一部を紹介します。

【東京書籍】
 調査部会や学校報告書では、心情円やホワイトボード、といった授業支援ツールなど話合い活動に有効なツールが盛り込まれている。

 体験的な学習を主体としたページがあり、多様な学習が展開されるよう工夫されている。

「話し合いのてびき」により、議論する道徳を意識しているのだろうが、各校ごとのやり方に合わないことが考えられる。

 懇話会では、題材が話し合いの材料として扱いやすい。生徒の主体的な見通しや振り返りが可能であるなどの意見がありました。


【学校図書】
 調査部会や学校報告書では、巻頭に「学級づくり」のページがあり、学期初めに、人間関係が円滑になるような工夫がされている。

 各学年3か所に学びの記録が設けられており、学期の終わりに振り返ることができるような工夫がされている。
 
 「心のとびら」や「学びに向かうために」は、価値観の押し付けになることが心配である。懇話会では、教科書が大きいため、重く文量がやや多すぎて読みづらいなどの意見がありました。


【教育出版】
 調査部会や学校報告書では、1年生では「オーロラの向こう」「受け継がれる博愛の精神・ロシア人墓地の清掃」という松山にゆかちのある内容が取り上げられている。

 「まなびの道しるべ」や「やってみよう」のコーナーにより、活動を通してさらに理解を深めることができるよう工夫されている。

 挿絵が古典的で絵柄で心情を左右されない一方、やや古さを感じる。

 懇話会では、郷土の身近な話題があるなどの意見がありました。


【光村図書】
 調査部会や学校報告書では、全体が4つのシーズンで構成されており、教材順の指導で内面の成長を促すよう配慮されている。

 教材ごとに手引きのページがあり、指導の方向性を立てやすい。

 用紙が白くないので写真映えがしない。

 懇話会では、学びのテーマや考える観点が複数示されており、教師が選択できるなどの意見がありました。


【学研教育未来】
 調査部会や学校報告書では、巻頭・巻末を使って、1年間の自分の成長が感じられるように工夫されている。

 特設ページが充実しており、考え方の選択肢を増やしたり、視野を広げたりすることができるように工夫されている。

 サイズは大きいが文字は小さい。使用するのに不便。

 懇話会では、多用なところから資料を持ってきているなどの意見がありました。


【廣済堂あかつき】
 調査部会や学校報告書では、文字量や書き込みのスペースが適切であり、イラストも大きく扱っており生徒にとって見やすい工夫がされている。

 別冊道徳ノートが巻末に収納でき、生徒が携帯・保管するのに便利な工夫がされている。

 道徳ノートが付随しており記録を残すことが出来るのはよいが、学校や授業者の自由度が減ることが心配である。

 懇話会では、道徳ノートは使い方によっては有用になるなどの意見がありました。


【日本教科書】
 調査部会や学校報告書では、「考えてみよう、書いてみよう」などのページがあり、言語活動を充実させる工夫がされている。

 「考え、話し合ってみよう そして深めよう」が教材ごとにあり、考えを深めることや振り返りを促している。

 資料は長く、特に1年生がしようするには理解に時間がかかる。

 懇話会では、内容はよいが、子どもにとってはとっつきにくく、入っていくまでがしんどい、などの意見がありました。




 また、展示会での一般の方からのアンケートでは、子どもの心を揺さぶる話を一人一人が読んでいくことが大事。

 どの出版社も写真入りでよくわかるようにできている。

 しかし、人物が多い。伝記で読むものは良いが、徳目に無理に結び付けているようである。

 採択にあたって、教育の専門家である先生の意見を取り入れてほしい、などの意見がありました。以上で説明を終わります。




藤田:それでは、採択する教科書の審査を行います。

   本日までそれぞれの委員さんにおかれましては、教科書の研究、調査部会・学校報告書、懇話会の記録、教科書展示会におけるアンケートなどを参考に、研究を重ねてこられたことと思います。
  
   まずは、各社の教科書について順に各委員のご意見や感想をうかがっていきたいと思います。採択する教科書の決定は、その意見なども踏まえ、無記名の投票によって決定したいと思いますが、よろしいでしょうか。

   それでは、それぞれの教科書について、教科書目録の順に意見などをうかがっていきたいと思います。まずは、東京書籍についてご意見をうかがっていきたいと思います。


【東京書籍】
牛山:報告書にもありましたように、問題解決的な学習や体験的な学習が○○ページや□□など、随所に工夫がなされていると思います。

   多様な学習過程、心情円やホワイトボードの授業支援ツールや○○コーナーなど新しい発想も見られて、タイトルの通り「新しい道徳」というのが良いと思いました。
   学校報告書でも、多くの学校が言語活動の充実に寄与できるというような指摘があっていいと思うのですが、一方懇話会の意見は、「考えてみよう」が本当に必要なのかという意見もありました。
   それからA4版でやや大きすぎるなどがあげられていて、実際これをみてちょっと不便かなと思うことがありましたので、使いやすさという点で判断の参考になりました。


藤田:牛山委員とその他違った観点で何かありませんか。

一色:牛山先生のご意見とあまり違わないです。
   読ませていただきましたが、全体的にイラストとか色とかバランスのとれたよい題材が多くて、よい教科書ではないかと私は思いました。
   特に、いじめ問題についても最近問題になっているSNSについても特に取り上げているのでいいと思った。
   情報モラルが言われていますが、時代にマッチしていると思われます。
   ただ、評価の分かれる点だと思いますが、先ほど牛山先生も言われていましたが「考えてみよう」の終わりの方でこれが必要なのだろうか、逆にこれがあると生徒は気が散って板書に注意がいかないのではないか、生徒は散漫になるのではないか、この点について評価が分けれるのではないかと私は考えます。


豊田:二人の委員さんと共通する点があります。
   新しい試みというか、ホワイトボード・心情円があるんですよね。
   これは先進的な研究で非常に好評で、こんなやり方があるという、代表的なものかなぁと思います。


   これは考え方によったら松山の先生の意識を変える道徳の授業をしていくようになる期待ができる。
   それからこの教科書は、「いじめのない世界へ」と「命を考える」を非常に大事にしている。
   複数教材に合わせたユニット構成という形をとっている。

   ですから、主教材が30しかないということは、本来2時間扱い・3時間扱いでやっていくということです。
   今までの道徳で、2時間扱いという取り組みという経験がないという先生は多いのではないか。
   そういう意味でも先生方は戸惑う方もいると思うが、逆に言うと勉強になるということです。



【学校図書】
藤田:学校図書についていかがでございましょう。


豊田:学校図書の特徴がおもしろいことに気が付いたのですが、学習指導要領に道徳的価値として22の項目が示されているのですが、22項目のうち13項目が各学年で2時間ずつ、他の9項目は1時間ずつあった。
   きちっとそのように分かれている。
   命・自然と社会・世界・文化と4つに分けていて、バランスのよい構成になっていて、他社にない特長になっている。
   環境・学級づくり、すべての教材の導入にその時間の方向付けができるように工夫されている。

   これは、本市が目標にしている「それぞれの授業のはじめに問題課題をはっきりして取り組んでいく、授業の終わりに振り返る」ということに合致している。



白石:「心の扉を開ける」というページがありますが、そこでは自分自身と向き合うような内容になっていて、意見交換があるんですが、それは周りの人との話し合いを中心にするように工夫されている。
   2年生の教科書で、私が女性だからかもしれないが、主人公の男性のお話であるとか、男性目線である、語り手が男性というようなものが少し多いのかなと思いました。


一色:一つ一つの題材が長い。
   これは、子どもにとってある面負担になるのかな。読むのに時間がかかるのかなという感想を持ちました。形式的なことですが、A4版はとても大きいですね。
   ページ数も多く、重い。



【教育出版】
藤田:教育出版についてお願いします。


豊田:調査部会が書いてあることですけれど、他教科とか特別活動とか配慮した構成。
   年間を通してやりやすい全教材のその時間を構成し、非常にシンプル、ページ数が少なくて形状的に重くなっていない。
   軽い。話し合いに時間をかけるという感じがする。

   内容項目でみると非常にバランスよく3年間で3時間しか扱わないのもある。1番少ないということも言えるのかな…以上。



一色:この教科書に、松山に関係するロシア人墓地の清掃活動、あるいは松山市に関係のある松本紀生さんというオーロラの写真家の記事も取り上げられていますので、松山の子どもにとっては非常に身近に感じられるのではないか。



牛山:私は写真が他と比べて少ない、懇話会の報告書では少なくて良いという判断もあり、ちょっと分かれるところかなと思いました。




【光村図書】
藤田:光村図書出版について。


白石:小学校で学んだことを学び直すということが、各学年にある。
   もう一度学び直すことで自分の成長が感じられる。
   各教材の終わりに学びのテーマ、毎回実践や意欲を問いかける内容になっている。
   3年間通して書かれている。

   ヨシタケシンスケ作・絵「なんだろう なんだろう」という教材が2年生にあったのですが、絵本作家の彼の他面的・多角的な視点を絵本チックなハードルを下げて高さを感じさせないような教材になっているのではないかと思います。



一色:この教科書は命の尊さを深く考えさせるような教材が各学年にわたって、自分や他者を喜びを感じさせることが出来るという点では素晴らしいと思うんですが、ただいじめ問題、もう少しオープンで取り上げられた方がよかったのではないかという感想を持っている。




【日本文教出版】
藤田:それでは、次に日本文京出版。


一色:この文教出版さんの「明日を生きる」については、評価が分かれると私は思います。
   別冊ノートについて、これをどう評価するのか。これがあった方が先生方は教えやすいか。
   物理的にこの別冊に分けていると子どもさんは持って行きにくいのではないか。別冊になっているのがはたしていいかどうか。

   私はこの評価が分かれるのではないか。私は別冊ではない方がいいのではないかという感想を持っています。




豊田:別冊の評価で分かれると思う。
   ただ、教科書に書いていると年間行事に合わせた構成、年間指導計画だという気がするんですけれど、それからいじめと向き合うというユニットが○○については各学年とも力を入れている。様々な視点から  計画的に考えを深めていくことができる。




【学研教育未来】
藤田:では学研教育未来についてご意見をお願いします。



一色:この教科書は、別冊ではないけれど大きくてジャンボサイズ。
   これは他の教科書とはたして子どもさんたちこれでいいのか。
   本は大きいけれど、文字が小さくて文章は長くて読みづらい。大きくて取扱いが難しいのではないかという気がします。

   それからいい点では、SNSについては時代にマッチしておりいいのではないかと評価しております。



白石:2年生の教材の中に「お通夜のこと」というのがありました。
   ちょっと珍しくて他の出版社には無いものでした。

   核家族の現代では、話題にのぼりにくいことでありますが、知ってほしいことを学校で学べるのはいいなぁと思いました。
  



【廣済堂あかつき】
藤田:廣済堂あかつきについてご意見をお願いします。


一色:この教科書を読ませていただいて、1年生の教科書に「アイツ」という物語があるんですけれど、この物語はシンイチという少年と、ナツキという少女が出てくるんですけれど、ナツキさんが伝えなかった。
   それから恋愛ものでこれを読んで、どう教えたらいいのかと先生たちは戸惑うのではないか。
   それから先ほどから言ってますように、別冊の道徳ノートの評価、評価の分かれるとことではないかと思っています。




藤田:そこの部分では、授業の展開の工夫が必要になってくる感じがします。


豊田:この教科書も非常に特色がある。
   内容項目22項目の4項目については学年3時間ずつ、5項目については2時間ずつ、残りの13項目については1時間ずつですね。
   極端な軽重の付け方をしている。




【日本教科書】
藤田:最後、日本教科書についてご意見をお願いします。


豊田:この教科書は、評価が極端に分かれてくるのではないかという気がします。
   ただ、根本的なところで、道徳教育というのは他の教科の授業と違い、休み時間などの生活の場面でも行う。

  
   授業として行う道徳の時間は、それらを統合して特化して価値を深めていかなければならないと思うのですが、この教科書は目次からわかるとおり、学習指導要領に示された22の内容項目、その順番に並べている。
   系統的に、発展的に構成されているというとらえ方もできるとは思うんですが、学校で実際に扱う教科書としては不向きではないか。
   たとえば、こんな実践が入りますよという教材集として、学校の実態に合わせて見直さなくてはいけないという感じがしました。

   主教材が37並べている。これも異例である。
   一つ一つの内容もですが、全体の構成を見たときに、先生たちが非常に使い勝手が悪い教科書だと思います。



牛山:懇話会では、いのちの取り扱いは難しい。





藤田:投票します。


   予備投票を行って、8社のうちから2社に絞ります。まず2社に丸印をしてください。


   記入が終わったようなので回収します。


   立会を牛山委員、お願いします。


   (開票)


   それでは投票結果を発表します。時点が2社あるので3社になりました。


   【東京書籍】【教育出版】【日本文京出版】この3社から1社だけをご記入お願いします。


   (投票)


   立会を豊田委員、お願いします。


   決定をいたしました。


   教育出版4票、東京書籍1票。決定をいたしました。

…だから、教育出版の道徳教科書は問題なんですね。

2017-09-21 09:33:05 | 傍聴日記


8月8日の松山市教育委員会定例会で否決された「教育出版の道徳教科書を採択しないことを求める請願書」の中身です
(他団体が提出したものですが、傍聴者全員に配られた公開資料となっていますので掲載させてもらいます)。


「…だから、教育出版の道徳教科書は問題なんだ!」というポイントが、具体例とともにくわしく書かれていました。


来年度から「松山市内の小学生」が使う教科書です。15ページ分と長いですが、ぜひチェックしてみてください。


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教育出版の道徳教科書を採択しないことを求める請願書  2017年7月18日



【請願事項】
一  教育出版の道徳教科書を採択し、子どもたちに教え、使わせることは、憲法及び子どもの権利条約に反するので、それを採択しないこと。

二  道徳教科書を採択する教育委員会(会議)においては、採択する教科書の内容が憲法及び子どもの権利条約に反していないことを、当該教科書に即して具体的に説明すること。
  上記を、保護者・市民らに対し、公開の場で行うこと。

三  貴教育委員会は、請願権に基づく「晴眼者による当請願の趣旨説明」を受けた後で、本『請願書』についての審議を行うこと。


 なお、請願者らは、次回教育委員会会議に、請願権に基づく請願者として出席する予定なので、貴教育委員会において、あらかじめそのための席を用意されるよう要請する。



【請願の趣旨及び理由】

 一般行政だけでなく、教育もまた、立憲主義に基づいて行わなければならないことは言うまでもない。

 そして、日本国憲法の各条文を導き出す基本原理は<人権原理>と<人民主権原理>であり、その核心にある価値は<個人の尊厳>である。
これは、個人よりも集団や国家に価値を置く「全体主義」に対して、全体よりも個人に価値を置く、個人を価値の根源とする原理である。
したがって、教育も、「個人の尊厳」を原理とし、その原理に基いて行わなければならない。


 子どもたちは、憲法13条及び26条により、「個人の尊重」に基づく教育を受ける権利を有する。
また、憲法19条及び子どもの権利条約14条(注1:14条の1 締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する。)により、
個人の内心に対する国家―公的機関からの介入・干渉・操作を受けない自由を有する。したがって、公的教育機関は、「個人の尊重」に基づく教育を保障しなければならない。
また、子どもの「内心の自由」を侵してはならない。



また、最高裁は、学校教育に対する以下のような判示を行っている。

(最高裁大法廷「旭川学力テスト事件」判決)
 教育内容に対する右のごとき国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請されるし、殊に個人の基本的自由を認め、その人格の独立を国政上尊重すべきものとしている憲法の下においては、子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法26条、13条の規定上からも許されないと解することができる


 つまり、「子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなこと」は、憲法13条・26条に反するのである。

 以上から、公的教育機関は、<人権原理><人民主権原理>―<個人の尊厳>に反する教育を行ってはならない。

個人より全体―集団・国家に価値を置き、それを愛し、尊重させるような教育を行ってはならない。
また、国家―公的機関が決めた特定の価値観を「善きもの」として、一方的に「子どもに植えるけるような内容の教育」を行ってはならない。これらの行為はすべて憲法・子どもの権利条約及び最高裁判決に反するからである。


 来年度からの「道徳教科化」に向けて、文科省による検定を受け、各教育委員会の採択対象となっている各社道徳教科書は、そのほとんどが、憲法等で禁止された上記のような内容をもつものである。

 さらに、教科書の読み手が「日本人」のみであることを当然の前提とし、「日本人」以外の日本国民(日本国籍保有者)や在日外国人の児童の存在を全く無視していることも、ほとんどの教科書に共通している大きく、かつ深刻な問題である。

 貴教育委員会が、それでも、これらの教科書の中から一社の教科書を選び、採択を行わなければならない状況にあることは、私たちも周知のことである。

 このとき、各自治体における教育を立憲主義的に行う責務を有する各教育委員会がすべきことは、それらの教科書を現場の教員を中心によく調査・吟味し、それらのなかから、憲法等に反する程度の最も小さい教科書を選ぶことである。(注2)

 そして、憲法等に反する程度の最も大きい教科書を、決して選び、採択しないことである。

 ここにおいて各社の教科書を見るとき、教育出版の教科書は、下記の如く、憲法等に完全に反する内容で一貫しており、その違反の程度は、他社と比べてはるかに突出している。

たとえば、子どもたちを過剰な日本賛美へと誘導するなど、偏狭で自己中心的なナショナリズムに基づく、「一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施す」程度の強さ・大きさは他社に突出している。

 以上から、教育委員会が憲法違反の教育出版教科書をあえて採択し、子どもたちに使わせることは、公的機関に属する者の「憲法尊重擁護義務」を定めた憲法99条に反する行為である。

 また、それは、偏狭なナショナリズムに基づく「一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制する」という違憲行為を意味する。


 したがって、貴教育委員会は、教育出版道徳教科書を採択してはならない。



【教育出版教科書の内容・特色とその違憲性】

一  教育出版教科書の内容・特色

 教育出版教科書は、上記・憲法の原理及び13条に反するところの「個人より全体―集団・国家に価値を置き、それを愛し、尊重させるような」内容を基本としている。

また、上記・最高裁判決が13条・26条違反であるとして「一方的な観念を子どもに植えつけるような内容」の教科書となっている。

 この教科書が上記のような目的を持っていることは、具体的記述の形・方法に表れている。そこでは、ひとつのテーマにおけるさまざまな考え方や価値観などについて、子どもたちが比較し、考える機会が提供されておらず、あらかじめ決められた一方向に子どもたちを誘導していく記述方法―「仕掛け」がとられている。

 これは思想・良心の自由な形成を妨げるような「内心への干渉・介入・操作」を禁じた憲法19条に違反する。

 ここに、以上のような内容の全てを紹介することはできないので、少しだけ例示することとする。


<教材1> 4年生【くにやきょう土をあいする】

 上記タイトルの項において、まず、読み手である子どもたちに、「みなさんは、わたしたちの国のどんなところが好きですか。わたしたちの国や生まれ育った地いきのよいところをさがしてみましょう。」と呼びかける。

 ここでまず、「わたしたちの国のきらいなところ」「わたしたちの国のわるいところ」について考え、探す作業(の可能性)は、あらかじめ遮断―封印されている。


 そして、次に、<日本人が世界に広めたすごいもの>との見出しが躍る。

ここでは、「わたしたちの国=日本人の国」という前提―構図が当然視されていて、この国―社会に住む「日本人」以外の日本国民(日本国籍保有者)や在日外国人の存在は全く無視され、完全に視野の外に置かれている。

 続けて本文では、「日本人が発明したり、くふうを加えたりすることで、世界に広まったものに、次のような品物があります。」として、レトルトカレー・カラオケ・インスタントラーメン・シャープペンシル・温水せんじょう便ざ・電気すい飯器が紹介されている。

 そして、上記を前提に、「あなたは、どの発明やくふうがすごいと思いますか。」という問いかけが、子どもたちに発せられている。

ここで問いかけられているのも「すごいと思うもの」だけであって、それらの「発明」について「すごくない―たいしたことはない」と感じたり、考えたりすることはできない仕掛けになっている。

 さらに、この教科書では、「問いかけ」だけでは終わらない。

続けて、その「問いかけ」に対する次のような「答え」―「模範解答」が用意されており、子どもたちの思考はそこへと<一方的に誘導されていく>仕掛けとなっているのである。



「電気すい飯器が発明されたことで、くらしがとても便利になったと思うよ。」

「便利さだけじゃなく、ぎじゅつの高さもすごいと思うな。」


 ところで、『小学校学習指導要領「生きる力」』の「第1章 総則」には次のように書かれている。

学校の教育活動を進めるに当たっては、各学校において、児童に生きる力をはぐくむことを目指し、創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開する中で、
基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくむとともに、
主体的に学習に取り組む態度を養い、個性を生かす教育の充実に努めなければならない。



 子どもたちが「生きる力」をつけていくうえで必要なものは、上にいうようにさまざまな「課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力」だろう。

しかし、ひとつのテーマについて多角的に見、考えることをあらかじめ排除して、唯一の「模範解答」へと誘導していく上記「教材」によっては、
そのような思考力や判断力が決してつかないことはあまりに明らかだろう。

 それだけではない。

上のような「教材」によって、私たちは、「思考」も「判断」も為し得ぬまま、無批判かつ過剰な「日本賛美」の心性を一方的に持たされるのである。
また、上に見たように、「わたしたちの国=日本人の国」という構図―非常に自己中心的で排外主義的な「一方的な観念」を、あたかも当然の事実であるかのように「植えつけられる」のである。

 すなわち、この「教材」は、偏狭なナショナリズムに基づく「一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制する」ものであって、上の最高裁判決が示したように、憲法13条及び26条に違反するものなのである。そしてそれは、思想・良心の自由な形成を妨げるような「内心への干渉・介入・操作」を禁じた憲法19条にも違反するものである。



<教材2>  3年生【くにやきょう土をあいする】

 この「項目―徳目」の見出しは、<わたしの見たニッポン>である。

「外国の人たち」が見た「日本や日本人」という設定で、古いお寺や神社・茶道・温泉・鉄道・お花見・日本の食文化を、「日本の素晴らしいもの」という前提で羅列している。

そして、「どこがどのようにいいのか、日本のでんとうや文化のすばらしさについて話し合いましょう。」と子どもたちに促している。


 ここでも、子どもたちに話し合うよう促していることは、「日本の伝統や文化のすばらしさ」のみであって、悪いところや問題点などについても思考をめぐらす作業は、あらかじめ排除されている。
そして、上の(1)の「教材」同様、「促し」や「問いかけ」に対する次のような「回答」もすでに用意されている。


「日本のりょう理は、きせつの食ざいを生かしている」


「食事の作ほうもすてきな文化だと思うな」


「れきしのあるたて物を、長い間守ってきたことがすごいと思います」


「自ぜんの美しさを大切にする心が、すばらしいと思うよ」



 もう、説明を繰り返す必要はないだろう。この「教材」もまた、子どもたちに「思考」も「判断」もさせぬまま、無批判かつ過剰な「日本賛美」の心性―自己中心的な「ものの見方」を、一方的に「植えつける」ものである。

 すなわち、偏狭なナショナリズムに基づく「一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制する」教材なのである。




<教材3> 2年生【せかいのひとたちに親しむ】

 この項のタイトルは、上記のように「せかいのひとたちに親しむ」である。

しかし、その本文はその冒頭から、すでに「ひと―個人」は消え、次のようになっている。


「せかいにはたくさんの国があります。みなさんはどんな国を知っていますか。知っている国の名前をあげてみましょう。」


 ここで、「ひと」は「国」に、知らぬ間にとって代わっているが、それは、さらに、次のような見出しと本文に突然、移行する。



<大切な国旗と国歌>

「せかいにはたくさんの国があり、どの国も国旗や国歌があります」

「国旗や国歌は、どの国でも大切にされているんだって。」



 この項のタイトル―テーマは、「せかいのひとたちに親しむ」ということであったはずが、子どもたちは、何ら理由・根拠も示されることなく、「大切な国旗と国歌」というテーマへと連れて行かれる、つまり、誘導されているのである。

 これは、「せかいのひとたちに親しむ」とは「国旗と国歌を大切にすること」である、あるいは、「せかいのひとたちに親しむ」ためには「国旗と国歌を大切にしなければならない」という「一方的な観念」を、子どもたちが意図的、誘導的に「植えつけ」られていることを意味する。


 そして、「せかいのひとたちに親しむ」がタイトル―テーマのはずのこの項目の終わりでは、「日本の国旗は『日の丸』、日本の国家は『きみがよ』だね。」と、日本の国旗・国家の確認が行われている。

また、この見開きのページに掲載されている写真は、海外のものではなく、「日本の国家(きみがよ)を歌うせん手たち」と、背景の中央に日の丸が大きく掲げられ、日本人が表彰されている「オリンピックのひょうしょうしき」のものなのである。


 この項には、さらに大きな問題が存在している。この項の本文中には、次のようなことが書かれている。


「オリンピックのひょうしょうしきでも、国旗がかかげられ、国家がえんそうされます。」



 上記は明らかな間違いである。

オリンピックにおける旗は、仮にそれが国旗と同じものであっても、それはあくまでNOC-各国オリンピック委員会(選手団)の旗であるというのが、オリンピック憲章における位置づけであり、それは、過剰なナショナリズムを防ぐためにとられた規定である(注3)。

つまり、「オリンピックのひょうしょうしき」で「かかげられ」ているのは「国旗」ではない。

したがって、上記・記述内容が、「謝った知識や一方的観念を子どもに植えつける」内容であることは、あまりにも歴然としている。



<教材4>  2年生【みにつけよう れいぎ・マナー】


 この項では、「公共の場でのマナー」などと共に、「国旗・国家を大切にする」ことを、子どもたちが「みにつける」べき「マナー」としている。

また、「日の丸」を、1ページのスペースの中に、目立つ形で、四カ所にわたって掲載している。

そして、「国家や国旗を大切にする気持ちのあらわし方」として、以下のような行為を、まるで、それが普遍的なきまりであるかのように断定的に示している。



「き立して国旗にたいしてしせいを正し、ぼうしをとって、れいをします。」



 
 個人ならぬ「全体」である国家の「国旗や国歌を大切にする」かどうか、国旗に対して「起立して姿勢を正し、帽子をとって、礼をする」かどうかは、あくまでも「個人の意思」に基かなければならない。

それが、憲法上の規定であり、要請である。

 しかし、上の教科書記述は、子どもたちに、この憲法上の規定―原理を全く知らせないまま、それが普遍的なきまりであるかのように断定的に提示している。

これは、「個人よりも全体―国家(の象徴)を大切にする―尊重する」姿勢・観念の「一方的」強要である。

したがって、この記述内容は、「個人の尊厳」という憲法の核心原理、及び「個人の尊重」を義務付ける憲法13条に、真っ向から反するものである。


 さらに、この項では、「国家(きみがよ)のいみ」として、次のように記している。



「小石が大きな岩となり、その上にこけが生えるまで、いつまでも日本の国がへいわでさかえますように、というねがいがこめられています。」



 大日本帝国政府が児童・生徒や臣民に強制する以前の時代における「君が代」は、政府が押し付けたような意味・性格をもつものでなかったとするなどの諸説・研究が存在する。

しかし、大日本帝国においては、次のような意味で使われていたことは明白である。



 「君が代」の歌は、「我が天皇陛下のお治めになる此の御代は、千年も万年も、いや、いつまでもいつまでも続いてお栄えになるように」といふ意味で、まことにおめでたい歌であります。
(国定教科書『小学修身書  巻四』1937年より抜粋)



 そして、上のような歌詞―解釈が戦後憲法とは矛盾するものとなって以降も、日本国家がその解釈を、上の「教育出版記述」のように、公式に変えた事実はない。

また、歌詞の言葉ひとつひとつに即しても、「へいわ」というような意味は、どこからも導き出しようがない。

 つまり、ここでも教育出版教科書は、明らかに「誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつける」内容を記載しているのである。



<教材その他> 安倍首相を東大阪市長の写真掲載


 以上に付け加えれば、道徳教科書に、安倍首相と野田東大阪市長という当該政治機構の最高権力者の写真を掲載しているのも、教育出版だけである。


 下の「三」で述べるが、教育出版教科書は、育鵬社関係者によって監修・執筆されたものである。

安倍首相は、その育鵬社版教科書を強く支持する者であり、野田東大阪市長は、当自治体における育鵬社版教科書採択に大きく貢献した者である。

教育出版道徳教科書は、このような二人の写真を、本文内容とは直接的な関係がないにもかかわらず、掲載しているのである。 



[教育出版教科書の内容・特色のまとめ]

 ここで、上記以外の記述内容もふくめて、その全体的特色を整理しておきたい。

①個人よりも全体(集団・国家)に価値を置き、後者を尊重させようとする姿勢が顕著である。
 
 個人を、<全体(集団・国家)あっての個人>―<全体に貢献すべき個人>と位置づける姿勢・立場から作成された「教材」が多い。


②「個人の意思」や「個人の尊重」の大事さに触れることなく、「全体」としての社会や集団の「きまり」を一方的に守らせようとする「教材」がとても多い。


③多角的・多面的な見方、考え方を知らせぬまま、その「教材」の目指す目的・徳目―到着点に向け、一方向的に誘導していく記述の形・方法を多用している。

 したがって、「一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育」をスムーズに行える教科書となっている。



二  教育出版道徳教科書は憲法に反する

 教育出版教科書は、憲法の原理、13条・26条、そして19条に反するものである。

(1)教育出版教科書は、憲法の基本原理に反する

 日本国憲法の核心にある価値は<個人の尊厳>である。これは、個人よりも集団や国歌に価値を置く「全体主義」に対して、全体よりも個人に価値を置く、個人を価値の根源とする原理である。
 このことについて、憲法学者の高橋和之は次のように述べている。



 今日では、人権の根拠は「個人の尊厳」という思想に求められている。

それは、社会あるいは国家という人間集団を構成する原理として、個人に価値の根源を置き、集団(全体)を個人(部分)の福祉を実現するための手段をみる個人主義の思想である。

個人主義に対立するのは、価値の根源を集団に置き、個人は集団の一部として、集団に貢献する限りにおいてしか価値をもたないとする全体主義であるが、

「個人の尊厳」を表明した日本国憲法(24条参照)は、全体主義を否定し個人主義の立場に立つことを宣言したのである。(高橋和之『立憲主義と日本国憲法(第2版)』)


 したがって、教育も、「個人の尊厳」を原理とし、その原理に基いて行わなければならない。
 
 しかし、教育出版教科書は上記「内容・特色のまとめ」で示したように、個人を全体のなかに位置づけ、個人よりも全体を尊重させようとする姿勢・立場の記述で一貫しているので違憲である。


(2)教育出版教科書は、憲法13条・26条に反する

 子どもたちは、憲法13条及び26条により、「個人の尊厳」に基づく教育を受ける権利を有する。

 「すべて国民(人民)は、個人として尊重される。」と謳った13条が、個人ひとりひとりを独立した存在ー人格ととらえ、その個人を尊重し、その価値を最大限に評価しようとする規定であることは言うまでもない。

 そして、26条が規定する「教育を受ける権利」にいう、その「教育」の内容は、当然ながら、憲法の基本原理である「個人の尊厳」と13条にいう「個人の尊重」に基づく教育でなければならない。

 つまり、「教育を受ける権利」とは、尊厳ある個人が「個人として尊重される」教育なのである。

 このような立場から、26条は、次のように解説される。


 個人が自己のもっとも価値あると思う生き方を自律的に選択し実践していくことができるためには、それに必要な成熟した判断能力と教養等をみにつける必要がある。

子どものそうした基礎的な能力と知識を育てる過程が教育であり、子どもが「個人として尊重」されるために不可欠の権利として、本条(26条―請願者)は「教育を受ける権利」を保障した。

…個人の尊重いう観点から重要なことは、子どもが主体的に学んでいくことであり、学んでいく能力を獲得し鍛錬していくことである。

教育の役割は、それを助けることにすぎない。

このことを見失わないために、教育を受ける権利を考える場合には、子どもの「学習権」を常に中心に置いていく必要があると指摘されている。

判例もかかる学習権の観念の存在を認めている(旭川学力テスト事件判決参照)。(高橋和之『立憲主義と日本国憲法(第2版)』)




 上に言うように、「子どもが『個人として尊重』されるために不可欠の権利として、26条は『教育を受ける権利』を保障した」のである。

 したがって、子どもを「個人として尊重」するのではなく、個人を全体のなかに位置づけ、個人よりも全体を尊重しようとする教育出版教科書は、憲法13条及び26条に反するものである。

 また、教育出版教科書が「誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容」のものであることも、上記「一」で、具体的教材に即して示したとおりである。

このような内容の教科書が憲法13条及び26条に反していることは、すでに紹介した『最高裁大法廷「旭川学力テスト事件」判決』が判示したとおりである。



(3)教育出版教科書は、憲法19条に反する

 まずは、憲法19条についての解説・学説を引用・紹介する。



 思想は人間の内面的精神活動であり、特定思想をもつことを政府が強要することは一見不可能のようにもみえる。しかし、特定思想の強要は、実際には、その形成過程においてなされる。

典型例として、政府が特定思想を教育・宣伝などの手段によって強制・勧奨することがあげられる。政府が行うマインド・コントロール(洗脳)である。(渋谷秀樹『憲法』)



 上記のように、「特定思想の強制」―<個人の内心への介入・干渉・操作>を可能とする時期は、「その形成過程」、つまり、児童や生徒の時代なのである。そしてそれは、「教育などの手段によって」、「強制」のみではなく、「勧奨」といったレベルの行為によっても可能であることを、上記「解説」は述べているのである。

 憲法19条についての解説・学説を、もうひとつ紹介したい。




<内心の操作>…思想・良心の自由な形成を妨げることも、思想・良心の自由の侵害となりうる。

たとえば、個人を特定の思想・良心にしか接しえないような環境下におき、その思想・良心によって「洗脳」するとすれば、思想・良心の自由の侵害と言わざるをえないであろう。

学校・監獄(刑事収容施設)・精神病院・軍隊などのように、多かれ少なかれ「囚われの聴衆」的性格を帯びやすい「施設」には、常にこの種の危険がある。

こうした危険を回避するには、施設内で「対抗言論」に接しうるよう配慮する必要がある。(高橋和之『立憲主義と日本国憲法(第2版)』)



 上記「解説」に出てくる「囚われの聴衆」とは以下のことを指す。

 たとえば、地下鉄の車内で、ある広告の放送などが流されるとき、乗客は、自分の意思とは関係なく、その放送を聴かされることになり、その車内にいるかぎり、その放送が耳に入ってくることを拒否できない。

仮に、放送を流す側に、聴くことを強要する意思がなかったとしても、乗客を、そこから逃れることができない密室(「囚われの状態」)に置いた状態で流す放送は、乗客に、それを聴くことを強要したことと同じ意味を持つこととなる。


ここでの乗客のような状態に置かれている人びとを指して「囚われの聴衆」と呼ぶ。そして、憲法学において、学校の児童・生徒は、「囚われの聴衆」の見做されているのである。


 上記の「解説」も、軍隊や監獄と並んで学校もまた「囚われの聴衆」的性格を帯びやすい「施設」であるとし、

そこにいる児童・生徒らは「特定の思想・良心にしか接しえないような環境下」で、内心を操作され、「思想・良心の自由」を「侵害」される「危険」が常にあるとしているのである。



 そして、その「危険を回避するには、施設内で「対抗言論」に接しうるよう配慮する必要がある」とする。



ここでいう「対抗言論」とは、その「施設」―学校・教室・教科書から一方的に流される「特定の思想」に対し、それを批判したり、相対化し得る別の「思想」―「ものの見方・考え方」のことである。

 したがって、上の【教育出版教科書の内容と特色】のところで具体的に例示して説明した「教材」のように、ひとつのテーマにおける多様な「見方・考え方」を示すことなく、

あるいは、あらかじめ、それを考え得る可能性を封じて、「特定の見方・考え方」のみ示し、そこに誘導しようとすることは、子どもたちを、「対抗言論」の存在しないまま、

「囚われの聴衆」状態に置くことなのである。

上記「解説」は、そこには、「常にこの種の危険」―「思想・良心の自由の侵害」があるというのである。


 繰り返すが、教育出版教科書は、多角的・多面的な見方・考え方を知らせぬまま、その「教材」の目指す目的・徳目―到達点に向け、一方向的に誘導していく記述の形・方法を多用している。

上記から、このような教科書が憲法19条に反することは明白である。



三  教育出版を育鵬社関係者が執筆


 教育出版教科書の監修・執筆には、森友学園問題等で有名になった「日本会議」(改憲推進団体)系育鵬社教科書関係者が大きく関与している。


 教育出版道徳教科書の三人の監修者のうちの二人は、貝塚茂樹氏と柳沼良太氏である。


 貝塚茂樹氏は、育鵬社『13歳からの道徳教科書』(中学校道徳教科書パイロット版)の編著者である。

日本会議系の教育学者で、文科省の中央教育審議会委員を歴任した安倍政権の道徳教育政策ブレーンでもある。


 柳沼良太氏は、育鵬社『はじめての道徳教科書』(小学校道徳教科書パイロット版)の編著者である。


 上記の二人以外にも、育鵬社発行『学校で学びたい日本の偉人』の執筆陣の多くが教育出版道徳教科書の執筆者に名を連ねている。



 育鵬社教科書の実質的作成団体である「日本教育再生機構」及びその作成に大きく関わり、その採択運動を進める「日本会議」は、

ともに現憲法を大日本帝国型の憲法にかえることを信条・目的とする者たちが集まった右翼・国家主義団体である。


 そして、子どもたちをそうした自分たちの「信条・目的」の方向に教化すること、

あるいは、極めて強い日本ナショナリズムの心情に基づいて、日本(のみ)を過剰に賛美する教科書を子どもたちに使わせること―。

育鵬社教科書は、もともと、このような他社の教科書にはない「大人の政治的欲望」とイデオロギーと明確な政治目的をもって作り始めた教科書なのである。

 
 教育出版道徳教科書は、そのような育鵬社関係者が大きく関与する形でつくられたものなのである。



 以下のとおり、教育出版道徳教科書は、憲法の基本原理、そして、13条・19条・26条に完全に反するものである。

したがって、貴教育委員会は当教科書を決して採択してはならない。               

以上



(注2)
 請願者らの調査・検討によれば、そもそも憲法に反する「道徳教科化」体制で使われても、「憲法等に反する程度」が「最も小さい」程度ですむ可能性のある教科書は、光村図書だと考える。

本教科書は、子どもを特定の価値観―徳目へと一方的に誘導することを避け、子ども自身が考えられるような仕組みにしている。

また、「日本の伝統と文化」を扱う場合でも、それが、過剰な日本賛美や偏狭なナショナリズムにつながらないよう配慮している。

 あるいは、子どもの権利条約や世界人権宣言を取り上げ、その意義と内容を自ら考えることができるようにしていたり、また、差別と共生について深く考えることができる教材も多い。

言葉自体としては、小学生にはまだ抽象的でわかりにくいだろう<人権>の大切さを、実感として感じ、理解していくことができるような工夫がなされている。



(注3)
 オリンピック競技大会は、以下の憲章が規定するように、もともと、国家間の競争ではなく、選手間の競争なので、「国旗」という概念が成立しようがない。それゆえに、当大会で使われる旗もNOC-各国オリンピック委員会の旗なのである。以下、関係するオリンピック憲章の条文を挙げておく。

31.NOCの旗、エンブレム、讃歌
NOCがオリンピック競技大会を含む自身の活動に関連して採用する旗、エンブレム、讃歌はIOC理事会の承認を得なければならない。

6.オリンピック競技大会
1 オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない。大会にはNOCが選抜し、IOCから参加登録申請を認められた選手が集う。
選手は関係IFの技術面での指導のもとに競技する。

9月5日 松山市議会の傍聴

2017-09-20 16:58:15 | 傍聴日記
2017年9月5日、杉村ちえ議員が松山市議会で、教科書採択問題について質問しました。

(以下、事務局スタッフが書き起こしです)



(質疑応答)
1.教育を受ける権利の主体は、子どもであるという認識はあるか?

「主体は、子どもにある。」


2.教科書は、教師や有識者、保護者をはじめ、市民の幅広い意見を反映し、より良いものを選択すべきであると考えるか?

「校長、教師、有識者、保護者の意見を反映すべきである。」
(市長への答弁の要請に対して、教育長は拒否)


3.懇話会は何回開かれたか?

「5月と7月の2回。個人の意見としてうけとめる。」


4.教育委員は、懇話会と直接意見交換をしたか?

「直接の意見交換はない。」


5.どのような方針・観点・指標をもって臨んだのか?

「基本方針は、学習指導要領、調査研究の成果に基づき、児童生徒の実態並びに学校及び本市の実情に応じた教科書を採択する。

 観点は、考え、議論する・いじめ・情報モラルについて中心に考えた。」


6.事前に採択方針を明らかにすべきだと思うが?

「事前に出す考えはない。」


7.採択委員会が、答申した教科書と異なる教科書を採択した事実はないか?

「平成23年(2011年)まで答申。平成26年(2014年)要綱をつくって懇話会になった。平成23年まではない。」


8.採択委員会が答申することにどのような問題があったのか?

「文部省の通達通知には、「教科書採択にあたっては、採択権者の責任が不明確になることがないよう、採択手続きの適正化に努めること」と示されており、
採択手続きの適正化に真摯に取り組み、現在に至っている。」


9.採択委員会の廃止について、どのように検討し、決定したのか?

「平成24年9月の文部科学省の通知で、採択手続きの適正化を図るよう示されたことから、平成26年3月の第4回松山市教育委員会臨時会で

採択委員会は、広く意見を出していただく懇話会形式で行う方が望ましいと議論され、松山市教科書採択委員会規則を廃止する規則を定めた。」


10.調査部会への指示権を教育委員会が持つことは、採択の趣旨に違反するのではないか?

11.学校報告書について、いつ・どこで・どのような議論で決めたのか?

12.従来通り、現場の希望を明らかにするために報告を求める考えはあるか?

13.教育委員による恣意的判断が可能になる、一連の制度改悪は教育委員の指示があったのか?それとも、事務方の考えたものか?外部からの働きかけがあったのではないか?

14.教科書採択委員会を再設置する考えはあるか?

「学校報告書には、序列をつけたものをもとめるのではなく、拘束力がないものにした。

 一連の変更は、事務局で審議し、教育委員で決定した。外部からの指示はない。採択の権限は教育委員にあるので、教科書採択委員会を再設置する考えはない。」


15.採択時の投票を記名とすべきと考えるが、その考えはないか?

「松山市教育委員会会議規則第10条に基づいて無記名にしたものであり、今後も規則に基づいて採択する。」

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教科書採択を、思惑通りに進めるためのシステム変更だとしか思えないいやらしいやり方だと思いました。

子どもたちの前で、道徳はこういうものだとか、いじめがダメだとか言えるのでしょうか?

言われた子どもたちはどう思うでしょうか?



そして、懇話会・調査部会・報告書については「個人的な意見」として、意見を採用するかどうかも教育委員任せになっています。

これでは、真摯に意見を表明した懇話会・調査部会・学校や保護者、市民に失礼であることはもちろん、本当に責任を取るべき事態が起こった場合に、5人の教育委員でどう責任が負えるのかと不思議でなりません。


わたしたちは、もっと民主的なシステムで採択がなされることを訴えます。

8月8日 松山市教育委員会の道徳教科書採択 傍聴記録

2017-08-18 10:47:10 | 傍聴日記
お待たせして申し訳ありません。

8月8日の松山市教育委員会定例会での小学校の道徳教科書採択の経緯、傍聴参加者の書き起こしです。
◆の部分は、はっきりしない部分です。

時間不足で、最後の方は、詳細にできていませんが、発言が重要でないので、おゆるしください。

文責は事務局のYさん。

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2017年8月8日 15:00~
松山市教育委員会定例委員会議事録
出席者  教育長   藤田 仁   (前教育委員会事務局長)
     教育委員  一色 昭造  (企業代表)
           松本 真美  (保護者代表)
           牛山 眞貴子 (愛媛大学創生学部教授)
           豊田 克文  (元松山市教育委員会学校教育課長)



藤田教育長  定例会の開催  29名の傍聴を許可する

日程第1  請願第1号「教育出版の道徳教科書を採択しないことを求める請願書」  別紙参照

請願事項 この議案に関する請願が請願者の内容を確認 趣旨説明の時間を設けるが委員の皆さんよろしいでしょうか。

1名の方は説明者席があるので、5分以内に趣旨説明を行ってください。

請願者の説明、請願趣旨を5分以内で非公開の事項があったら「教育出版の道徳教科書を採択しないことを求める請願書」

 請願者 趣旨説明   説明時間5分の予告は、なかったように感じる

予定時間を終了しているので終了しているので、終了してくださいと教育長から強い口調で発言を制止される。

育鵬社の教科書と同じ執筆者が教育出版でも記述している旨を、請願者が発言しようとしたが止められる。




(藤田)請願についての審査に入ります。傍聴の3名の追加。本件に関するご意見はございませんか。

(豊田)事前に頂いていたものを見せていただきました。
    先程説明があったこと以外にも請願書にあることをを読ませていただいたのですが、個人の尊厳。
    確かにその通りだと思います。

    教育基本法の前文にもこれをまず重視するという形で述べられていますし、それから旭川学力テスト事件の最高裁判決を例に挙げて、
    誤った知識を一方的に押し付けるようなものはいけない。本当にその通りだと思います。

    ただ、学習指導要領の道徳編の解説の中に、特定の価値観を押し付けたり、主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることが
    内心、道徳教育の目指すところと対極にある。おっしゃった通り、道徳は個人の考えや感じたことを大事にする、一番大事にしなければならない。

    内心を大事にする。その通りだと思う。

    でも、国が検定制度を設けて検定に合格している、教育基本法や学校教育法がめざしている普通教育の、趣旨に沿って、
    個人に関すること、周りの人に対すること、身近な人々に対すること、命や自然にかかわることの4つに分けてさらに22の内容項目に分けて、
    道徳の価値として、教育しようということになっている。教科書は会社によってその軽重、重きをおいている差があるのは事実だし、特色がある。
    著しくそれを損なうものは、検定で指摘され、チェックされているはずである。

    それに合格している教科書の中から採択するようにとなっていますので、合格した一覧表の中にある1社のものをこれは合わないと
    検定に合格しているものを除くわけにはいかないのではないか。

    こういう請願は認められないのではないか。

    また、私たちが選ぶのは、そういう趣旨に沿って選んでいきますので、すべての教科書を比較しながら選んでいきますから、
    それをすべて説明してというのも合致しない。あるのは、教科書検定に合格しているのだという立場にたたないいけないので、
    1番と2番について認められないのではないか。と私は思います。

(藤田)その他、ございませんでしょうか。一色委員。
  
(一色)豊田委員のご見解のご主旨でございますけど意見と同じ。

    今回となっているすべての教科書は法令に基づいて国の検定の合格しているという前提がございますので、
    踏まえて今回の8つの教科書はまず平等に取り扱うべきものであろうと思います。それから、権利条約に違反しているかどうかも
    私ども判断する前に国の方で審議をしたうえで、請願について理解しかねるととらえている。

(牛山) 同意見。請願については、こうした趣旨説明の時間を設けるか否かはこれまでと同様に請願内容を理解する。
    教育委員会が必要と認めて私は請願と考えています。私は請願は不採択と考えています。

(松本)私も3委員の方と同意見で1,2,3とも不採択です。

(藤田)それでは採決をいたします。
    「教育出版の道徳教科書を採択しないことを求める請願書」について、委員から不採択とする意見が出ましたが、
    それでは意見を聞きます。不採択に賛成の方。挙手をお願いします。4人全員挙手しましたので、不採択とします。





それでは、日程確認第2号最多を議題とします。(別紙参照)

(大本学校教育課長)
  議案第19号 平成30年度使用小学校教科書「特別の教科 道徳」の採択について
地方教育行政の組織及び19号小学校の採択21条 義務 13条 平成30年度使用の小学校特別の教科道徳


資料1 8社 いずれも教育基本法や学校教育法
一つ目は、調査部会による報告書です。資料作成委員は、道徳において優れた知見を持つ教員にお願いしました。
     実際の授業では、考え、議論する道徳の授業が展開できるよう適切な教材の◆◆がある、問題解決的な学習や
     体験的な学習等多様な学習につなげることができるかなどの観点について報告書をまとめています。

二つ目は、教科書採択に関する懇話会の報告です。今回では、校長先生および教員、ならびに保護者の方や有識者の方が委員として集まり、
     すべての教科書についてご意見をいただき、事務局が記録を作成し、まとめています。 

三つめは、松山市内のすべての小学校に依頼し、すべての教科書を研究し、児童の実態を踏まえ、各教科書の優れた点について学校ごとに教員が報告書をまとめています。

四つ目は、教科書展示会場において一般の方からのアンケート等による意見を回収し、事務局がアンケート結果をまとめています。

説明は以上です。ご審議のほどよろしくお願いします。



(藤田)ありがとうございました。それでは、採択する教科書の審査を行いたいと思います。
    本日まで、それぞれの委員が、実際の教科書をご覧になるほか、調査部会や学校報告書、懇話会の記録、教科書展示会のアンケートなどを参考に
    研究を重ねられたことと思います。まずは、各社の教科書について、順に各委員のご意見やご感想を伺っていきたいと思います。
    採択する教科書の決定は、その意見なども踏まえ、無記名の投票により決定したいと思いますがよろしでしょうか。
    それでは、それぞれの教科書について議案第19号の教科書目録の順にご意見などを伺っていきます。東京書籍から順番にご意見を伺います。


<東京書籍に対する意見>
  
(牛山) 私の立ち位置としては、道徳の教科書は今回初めてでしたので、懇話会や現場で当たってらっしゃる先生の
    調査部会のご意見も私の考えをまとめる作業といたしました。

    東京書籍さんの「新しい道徳」は、学習活動や人と自然、特に指導手順が分かりやすく示していて、キャラクター、考える手順、キャラクターをはずさない
    ように配慮しています。素晴らしい教科書だと思いました。その点についてはいて調査部会の報告でも高く評価されていましたし、
    懇話会からは、道徳の教科書というよりは国語の教科書のようだと言う印象というコメントでした。
    これはプラスにもマイナスにもとれるコメントであると思いました。
    これは悩めるところです。日本の伝統文化、多方面の力が養える教科書だと思いました。

(一色) 私は、東京書籍さんは非常によくまとまっているという感想をもちました。
    特に、いじめをなくする問題、これついては「いじめのない世界」として非常にスペースをとって、
    重点課題として真剣に向き合っているのではないかという印象を持っている。

    ただ、残念なことは、今、SNSの関連がいじめの世界でもSNSが非常に大きな役割を果たしている、
    それについての記述が若干少ない、残念だなあという気持ちです。

    それと社会参画に関する記述ももう少しあったらいいのではないかとをもっと多くふるさと学校の地域教材としては、道後の伊佐庭如矢さん。
    これは5年生の巻末に資料として載っていますし、子規博が4年の資料編として載っている、
    これはコメントする必要がないくらいのものかなあという考えを持っています。


(豊田) 8社の教科書すべて目を通してみて、それぞれ特色があり、素晴らしいところがある。
    正直、これは困ったなあ。この 中から1社を選ぶのはたいへんなことだなあと思いました。

    調査部会の報告書や各学校からの報告書をみてもその特色をとらえていてこれはいいと絞っていくのは非常にむずかしいと思いました。
    
    それで、私は教員OBですので教職の立場にあったものなにか、何か特色を見つけたいと思いまして、共通教材を比べました。
    8社がすべて取り上げていたのが、8教材あった。

    そのうち、3教材が同じ学年で使われている。
    1年生の「かぼちゃのつる」「はしのうえのおおかみ」。
    それから4年生の「雨のバス停留所で」は、8社とも取り上げている。
    高学年ですべて取り上げているのは「手品師」。
    これは5年生3社で、6年生5社。

    こういう違いがあるんですが、一応、低・中・高、「かぼちゃのつる」「はしのうえのおおかみ」「雨のバス停留所で」「手品師」
    この4つの教材を並べて、もう一度丁寧に見比べてみました。

    若い先生、新しく採用された先生が、どんどん増えている時代になっていますので、ある程度の指導していただきやすい教科書、という観点から、
    見直してみようと思って見直してみました。
  
    東京書籍ですが、「はしのうえのおおかみ」が「かぼちゃのつる」よりも先に出ています。
    
    多くの出版社は、「かぼちゃのつる」の方がはやいのですが。「はしのうえのおおかみ」が6番目に来ています。

    他の所とちがう特徴的なのは、文章でいじわるをして「えへんえへん」が前半と後半に出て来るが、
    やさしい、思いやりのある行動をします東京書籍は後半の「えへんえへん」がありません。

    なぜかなと思ったら、1年生の早い時期にもってきているので、たぶん、親切にした後、同じように「えへんえへん」と取り上げると
    子どもが混乱するから省略したのかなと思いました。

    それから、「かぼちゃのつる」についても上手に書いているなあという感じですが、導入のところに周りの人はどう感じますか。
    節度・節制につなげる投げかけかなあと思いました。

    4年生の「雨のバスの停留所で」もまた東京書籍だけ特徴がある。
    他社はすべて軒下で雨宿りしている絵がありますが、東京書籍にはそれがありません。
    そのかわり、文章で東京書籍では、「早く来た人、早く来た順に並んでいるようです」と文字で書いてあります。

    それから1年生のとちがって、発問の例として2つ、中心発問、価値観を深めていく中心発問になるものと実践に向けての
    なげかけるものと2つあります。それから6年生「手品師」東京書籍は6年生で取り上げていますが、やはり発問2つ、
    非常にシンプルで、先生の工夫が随所に入れることができる内容かなあと思います。
    
    ただそれは、良さであると同時に、最初に言ったように若い先生がふえていくなかで、
    中心発問に行くまでの基本的な発問がうまく構成できる、そこが試される教科書だなと感じました。


(藤田) ありがとうございました。申しあげておきます。一人、傍聴を希望していますので、これを許可します。


(松本) 今までにどこからも出なかった小さなことなのですが、2点ございます。東京書籍は、教科書の紙が一番薄かった。
    2枚いっしよにめくりそうになったので、めくりやすい厚さも検討課題かなあと思いました。
    他の7社は文の作者だったり、物語の題名だったり、あとはイラスト、絵の作者まで載せているところもあるのですが、
    東京書籍は一切なかったのでせめてその物語、それがどういうものであるかがあればいいかなあと感じました。以上です。



(藤田) 私も簡単に。
    いじめの対応、情報モラル等の現代的な課題という点で見てみると、いじめをなくす、生命の尊重、よりよく生きる、いじめの対応、
    多面的・多角的に考える教材ということで、生命の尊重に特に重点を置いていたなあという気がします。
    問題意識を持たせるという配慮をされていると感じました。よりよく生きる態度や心を学ぶことができる。工夫がされていたのではないだろうか。
    その反面、少し、国語の教科書のような印象を受けたのと、一つ、情報モラルに関する記述が発達段階に少しあっていないという気がしました。




<学校図書の感想>

(牛山) 同じ観点で見ていかないと確認できなかったので、同じような観点の発表になります。
    学校図書さんは2分冊になっているために、特に読み物が充実していました。

    調査部会の報告書でも示されているように、いじめ問題の対応「学ぼう」が全学年入っていることが評価できる点でした。
    懇話会からのコメントの中に2分冊になっているのは使いづらい。
    低学年は忘れ物や紛失の懸念があってその点は私も同意見です。
    
    道徳の教科書、どの出版社さんも初めて取り組まれるということで、みた感じでは国語が強い出版社さんが取り組まれているのかな。
    これは学校図書さんだけではなくて、全体的にすりあげていくかなあ、中身、本文128ページ、別冊12ページ。押し付け的ではない。
    さまざまな視点。目線が持てる。
    やってみよう、考えてみよう、見つめてみよう、自分の4つのポイントなどで自分で考える、「いじめ」を議論は道徳 むずかしいのかなあと思いながら


(一色) 私は、学校図書の特色は2分冊、別冊はむずかしい。1冊の方が良い。2分冊をどう評価するかに尽きる。
     二部構成になっているけれど、低学年になると物忘れする子どもが出て来る、評価する際に、中身、本文と別冊の順序が統一されておりません。

     一例をあげますと「一朶の雲」。
     それは本文では128ページという後ろの方に出ておりますが、別冊では、12ページに出ているということで出て来る順番と別冊の順番が。
     そこが問題ではないかと思う。一致しない。整合性が取れていない。活動低学年は別冊2冊になっていると私はできれば1冊の方がいいのではないかということが1点です。
     それから、私個人としては1冊の方がいいのではないかという気がします。以上。


(松本) 今回道徳の教科書の採択にあたりまして目新しかったことが別冊ということです。

     今、一色さんから出ましたが、別冊をなくしたり、忘れたりして使いにくいんじゃないかというご意見だったんですが、
     私は全く違った意見を持っておりまして、道徳というのは物事のやっていいこと悪いことそういうことを知ってもらうために様々な物語・話が載っています。
  
     自分が体験できなくてもその立場・その主人公になってどういう風に対応するか、どういう風に考えるかが大事だと思うんですが。
     だいたいのところが最初の所に見出し、こういうことを考えてみよう、とかあとキャラクターこうではないだろうか、
     あと導き、最後に、あなただったらどうするかというような押し付け的なものが多い中で、この東京書籍さんの2分冊だけは、全くそういうものがない。

     純粋な物語だけを載せているので、子どもが見た時に◆◆に対してもいいものに対しても視点が違えば。すみません。間違えました。

     学校図書さんの本には物語が純粋にのっているので、◆◆、様々な目線、いろいろな解釈がまずはその物語を読むことによってできて
     そして、別冊のノートの方でこういったことも考えてみよう、その時はどうしたらいいかということもなされていますので、
     道徳としては先入観なしで物語が読めるこの2冊分冊というのがとてもいいのではないかと私は感じました。

     そして一色委員さんも言われたように本と別冊がリンクしていないということなんですが、物語にはノートの何ページということがありまして、
     そのノートを見るとそこにはいじめに関することがある、結城に関する物語だけを集めているとか、すごくわかりやすいノートの仕分けがされている。

     これは、分冊ではとても優秀な分け方、本とノートという分け方、実際に使っていくうちに難しいことも出て来ると思いますが、
     こういうものもあるんだなということを学ばせていただきました。

     とても物事、やっていいこと、悪いことどう対応する、見出し、キャラクター、導き、押し付けがい。ノートと本がリンクしていないということなのですが。


(豊田) 最初に言ったように、教師の経験があるものとして、見ました。
     さっきから話題になっている分冊になっていることの是非、分冊が◆しているのは、
     やってみよう、考えてみよう、見つめてみようという3つのはが発問になって基本になっています。

     基本になる発問があるのはやりやすいのかなあという気がしました。

     読み物と活動ノートで分かれている。価値項目でそろえている。
     「かぼちゃのつる」の場合、3つの教材で、節度・節制。そして「かぼちゃのつる」の後、よい生活ということでよい生活ができていたら色を塗りましょうということで、その項目。

     5つ目は自分でまた決めて、3回、自分で評価する「はしのうえのおおかみ」も「親切・思いやり」という項目で終わった後、親切を見つめよう、
     「温かい心がたくさん隠れていますね。探してみようというふうになっています。

     「雨のバス停留所で」でも同じように3つの教材の後、社会の決まりを◆ということで3つ取り上げています。

     それから「手品師」のところ、5年生でありますが、これも同じように「◆みつめてみよう」この正直、誠実 種教材だけですので、
     手品師の次のページ「正直・誠実」自分と向き合おうということでページが用意されている。非常に深めていくのは役に立つまとめ方。

     でもこれはたいへんな欠点でもある。

     というのは、1時間、例えばですよ、自分と向き合おうという前に、コラムがあって、人は長生きせんと虚言を言うべからずというのがあって
     その説明を読んだ後、これだけで1時間かかるだろう。

     今、小学校、特に、英語が導入されてくるので、授業時間確保することが大変な時に、どう確保していかなくてはならない。
     だったら教材を早く終わらせといて、ここにいく、むずかしいのかな。そういう欠点を持っている。すっきりしてうまくまとめているが、そういう欠点がある。



(藤田) 私の方からも簡単に。
     まず、いじめについてですが、いじめについて考える教材を多数掲載されている。
     「いじめに向き合う心を育てる」ということを総合的に◆◆だと思いますが、残念なことにいじめをを題材にしたものを目次から拾えないのはちょっと残念な気がしました。
     それと一番児童に生きる喜びでは、防災や人権やキャリ教育など多様なアプローチを行いながら、生きる喜びを与えるような工夫がされていたのではないかと思いますが、
     それを引き出すイラストが分かりづらかったり、絵が親しみにくい。2分冊になっているのは現実的には使いにくい。
     特に、低学年は使いにくいのではないかという思いがしました。



<教育出版の感想>

(牛山) 学びの手引きがあって、発問の仕方が教師にとって参考にしやすい、パッと思い浮かべるようなしやすさが教科書に示されていると思いました。
    投げかけ。調査部会の報告を見ると、情報モラルに関する。

    色でマークされるなど、内容の示し方が充実していること、それから愛媛や松山に関する教材があって2回出て来る。

    子どもたちが身近に感じる和田重次郎さんや「青い目の人形」の2教材が入っていることが挙げられました。
    その点は私も調査部会の報告と同意見です。懇話会にコメントに3年以上むずかしい。
    挿絵見づらく、紙の白さが目につき、疲れる。道徳の教科書は、他の教科書もそうなんですが、が、読み物としての役割が大きいので、その点は私も非常に気になりました。


(一色) この教育出版につきましては他の教科書会社と比べまして、日本の社会に貢献した人や各分野で活躍した人が私は数多く取り上げているように思いました。

    その結果、生き方や社会への関心を高める内容になっているのではないかいうのが1点です。
    それから2点目は、私は、やはり道徳の基礎である礼儀やあるいはあいさつ、あるいは学びについてここはきちんと各学年でと記述されているのではないかと思いました。以上です。


(藤田) わたしもかぶりますが、命、いじめ、情報モラルに関するテーマが重視されていると感じました。
    教材の中でスキルが身に付けられるような工夫もされていました。
    学年のはじめには、自分自身に関する教材が多く配置され、学級びらきとともに学習が展開できるように配置も配慮もされてると思います。

    児童に「よりよく生きる」喜びや勇気を与えられるについては各学年に分散、スキル、マーク表示。計画的・体験的を通して、
    人間としての行動について考えさせているのではないかというような工夫がされているのではないかと思います。

    特にかぶりますが、いじめ、モラル等色マークされていたというのは非常にわかりやすいと思いました。
    和田重次郎さんについては関心がある題材かなと思いましたが、やはり、少し国語の授業、国語の教科書かなという懸念も少しはございましたし、
    さし絵がすこし見にくいかなという気もありました。


(豊田) 同じように、4つの教材で述べさせていただきたいと思いますが。
    まず1年生の「かぼちゃのつる」で、6つの場面に分けているて、簡単な説明文は3つだけ。
    大きな絵の中で会話する形です。
    3番目の教材ですからそういう配慮がされているのかなと思いました。

    さっき委員さんが言われた中に、「学びの手引き」が誘導のような印象を受けるというような発言がありました。
    確かに、教育出版が一番発問の例が多い。

    この1年生も6つあります。
   「はしのうえのおおかみ」も5つある。「雨のバス停流所で」も5つ。「手品師」は4つ。

    でも、発問の内容を検討すればわかるのですが、最初は、教材文の意味理解を深めるもので、途中から変わるんですよね。
    いわゆる中心発問になっていきますけど、友達の意見を聞いて、ああそういう考えもあるのか、先生の投げかけで気づいていくのか。

    そして、自分と重ねて考え直してみる、自分の実生活の中に生かそうというような発問になっています。
    いわゆる考え、議論する道徳、言語活動を充実させるという意図でそういう風にしているのではないかという感じがします。

    「はしのうえのおおかみ」の場合には、ジャンク、いわゆる役割演技、これも研究授業でされているのが紹介されています。
    4年生の「雨のバス停留所で」のところでは、他の教科書にない発問があります。待っているとき、主人公はどんな気持ちでいただろうか。
    これは非常に大事な発問かなあと思いました。他のには無いのですが。

    それから、「手品師」のところで気がついたのですが、1年生の「かぼちゃのつる」には無いのですが、「はしのうえのおおかみ」にもある、
    その後の教材にもあるのですが、主題があって、「はしのうえのおおかみ」の温かい心のあとに、「人に親切にされるとうれしくなりますね。

    親切にすると、自分はどんな気持ちになるでしょう」。
    それを見てから教材に入っていく。「雨のバス停留所で」ところにも社会の決まりを守るというのが主題で、みなさんの周りにはどんなきまりがありますか。

    基本的発問「きまりはどうしてあるのでしょう」「決まりの大切さについてかんがえてみましょう。
    「手品師」についても、「誠実に明る心で」が主題で、「みなさんは誠実で明るい心で過ごしていますか」「誠実に生きるとはということはどんなことでしょうか。」

    いわゆる導入、今日の授業はそういうことについて考えていくんだなあ、とよく課題であるとかめあてであるとか言われますけれど、教科書で先に意識する。

    道徳に限りませんけれど、問題解決的な学習といわれている、道徳でもそれをとり入れてある教材なのかな。
    教師としては役に立つ、この通りしなくてはいけないというわけではないのだけど、参考に、基本的な発問も用意されて教師には役に立つ、しっかりした手引きになっていると私は思いました。




<光村図書の感想>

(牛山) 懇話会のコメントが、1時間の授業をイメージしやすい教材構成になっている。など一例に過ぎないがよい点もあがっています。

    反面、命についてのお話が1,2年生は少ない。
    高学年になると、話が長くなり、子どもの負担になるのではないかという指摘もあって、小学生なんだから話が長いと疲れて話の長さも気になるということだと思いました。
   
    調査部会のコメントでは、「いじめや情報モラルの現代的な課題について、ユニット化した優れた部分が多く指摘されていました、
    私も充実した教材がそういう面で改めて読み直すとそういう面が多いなあと思いました。

    ユニット化は多面的は子どもたちが多面的に考えることができるように配慮につながりますし充実した教材でたいへんよいと思います。
    あと、学校生活の実態と児童の1年の成長を考慮して、1年間を4つに分けていることも、教師にとっては区切りをつけて、自分の中で考え、成長を確認できるのではないかと思いました。


(一色) この教科書は他の教科書とちがいましてB5版で小さな教科書でございますが、そこが他社と違う所だなあと思います。
     外見的にですね。小さいものですから、内容を非常にコンパクトにまとめられている。

     先ほど牛山委員もおっしゃられたように、1年間を4つに区切っている。
     生徒の成長度合に合わせて、内容を◆しているのは非常にいいと思いましたが、B5版と小さくまとめているので文字が小さいのではないか。
     特に1年については、文字が小さくて目次も小さい。という点が欠点としてあるのではないか。

     それから、インターネットについて関する記述について、高学年、特に4年から6年に記述があるわけですけど、
     その中にインターネットの◆についての記述があるわけですけれど、物語風になっておりませんので、
     行政文書のような注意書きみたいな感じを受けるもんですから、これでは、逆に興味がわかないのではないだろうかという印象をもっております。以上です。


(豊田) 教育出版のところでも言いましたように、主題があって、めあてみたいなものが、この光村出版の場合もあります。
     「かぼちゃのつる」の場合は、早い時期なのでありませんが、「はしのうえのおおかみ」からあります。
     「はしのうえのおおかみ」の特色として、考えようというようなこと、「かぼちゃのつる」も4つ。「はしのうえのおおかみ」も3つも載っているんですが、
      はじめの「えへんえへん」の気持ちと比べてみましょう。研究授業の中で、よく出て来るというような感じがしました。

     で、特に1年生のこの2つの教材を他社のものと比べてみて光村図書は一番言葉に対してていねいな感じを受けました。
     低学年の子たちが読んでいくうえで、読みやすいようにとか教科書としての配慮されているなあという感じがいたしました。

     それから、4年の「雨のバス停留所で」の中で、考えようということで3つ用意されているのですが、他の所にない発問が一つありました。

     「あなたが雨宿りをしている一人だったら主人公をどう思いますか。待っているんだとどう思うかという視点が用意されている。
     つなげようという発展的なものがあって、6年生で「手品師」がありますが、これも同じように、非常にコンパクトに用意されていると思いました。


(松本) 道徳の教科書におきまして物語に添えられている挿絵もとても重要だと思いました。
    同じ物語を扱っていてもその挿絵一つで少し変わっていくように思えます。

    光村出版は、内容はとてもいいのですが、残念なことは表紙はさわやかな、子どもが好きそうなアニメーション、アニメーションから抜け出たようなものですが、
    開けてみると昔話のような少し古さを感じるような挿絵だったので、そこが残念でした。

    あと、その挿絵というのは重要なポイントなので工夫が必要だと思いました。


(藤田) いじめや情報モラルなどの現代的な課題について多面的に考えられるように配置をしていたと思います。

     1年間が4つのまとまりに分けられて学校生児童の成長の実態に合わせて、内容項目が配列をされていてよかったんですけれど、
     題材を入れ替えて使うときに使いづらいのではないかという気がしました。それと偉人や現在活躍している人を取り上げて、彼らの生き方にふれることにより、
     よりよく生きる態度や心を学ぶことができるような配慮を慮をしていたと思いますが、1年生にとってはちょっと字が小さいかなと思いました。全体的に。

     国語の教科書のような印象が強い感じを受けました。



<文教出版の感想>

(牛山) いじめ防止、これは今回、道徳としての大きなテーマとしては、現在の教育の抱えるテーマとして、いじめ防止を最も重要なテーマとして位置づけている。

    複数の教材が用意されていて生活との関連がしっかりと考えられている点が調査部会からあげられている。私も教材準備が素晴らしいと思いました。

    愛媛・松山に関するもので、特に潮見小学校のダンが教材に入っていて、これはいろいろな人の意見があると思うんですが、私は子供たちの身近なもので大変良いと思います。


    懇話会の皆さんのご意見を見ると、書く分量が多くて、特に1年生にはつらいのではないか、教科書自体が持ちにくい、大きすぎるなどが挙げられていて
    付属のノートについても様々な意見があって、二分冊、これは親切だとは思うけれど、そこが、低学年はランドセルが重かったりすることもあるので考慮しなければならない点かなあと思いました。


(一色) 今、牛山委員の意見とダブる点もあるのですけれど、この文教出版は別冊スタイルなので、先程から申しあげていますように、文教出版は本に挟むタイプの別冊ですから。
    時間が伸びますけど、私は1冊の方がいいという基本的な考えを持っていますので。評価が分かれるのではないかというふうに思えます。

    情報モラルについてはこの本は子供の発達段階に応じて取り上げられているのではないかと評価しております。
    ただ、小学生についてはきついのかな。
    手紙が書くことがございますが、小学生が手紙を書けるのかという懸念を持っている。


(豊田) 文教出版が主題とめあてが一番ていねいに準備されていること、ノートが2つ。
     そして、「かぼちゃのつる」、それから、学習の時間の自己評価、がすべて。これが特徴かなあという感じがします。

     新しい道徳で記録を残していくということが大事になります。
     これまでも評価をしていたんですけれど、指導要録に残していく、当然、通知表にもという形になりますから、その評価を記録に残すことは非常に大事になってくる、
     ですから、2つの観点または、友達の意見を書いていて、それを見て、自分はどう思ったかを書く。

     評価する上で、大変参考になる。役に立つ考えかなと思います。

     量的な問題、確かに1年生の最初からかなり。書かないといけないわけではないけれど、用意されていると埋めていかなくてはいけないという印象をどうしてももってしまう。


(藤田) 文教出版は「いじめ」が最も重要なテーマに位置付けられている。

     身近な事例、複数生活と関連付けながらしっかりと考えられると思います。
     情報モラルについても、発達段階に応じて取り上げられている。

     ただ、みなさんご意見がありましたように、教科書自体が持ちにくい、使い勝手がどうなのかと懸念に思いました。



<光文書院への感想>
(牛山) まず、調査部会があげているように、学年ごとに考えさせたいことが示されていて、◆◆親切な教科書だと私は思いました。懇話会の方もそういう風に書いていました。
    授業の組み立てがしやすいので、若い先生たちにも便利かなと思いました。

    ただ、会の指摘にもありますように、内容が多すぎて、特に低学年にとって、文字のサイズが小さいのではないか、同様に重くて大きいと感じました。

    子どもにとって優しい教科書かどうかも大切なことだと思います。
    男の子と女の子のキャラクターなくてもいいのでは。

    キャラクターで〇〇さん、〇〇さん第三者的な感じで考えさせられるのではないかと思ったのと、5年生の◆◆は必要ないと思うし、社会科なので上手なものはないかなと思いました。
    で、松山に関するものが少なくて薄い感じがしたので、身近なものが資料でもいいからあるといいと思いました。



(一色) 光文書院については懸念する点が2点ございます。

    一つは4年生の教材で、漫画のドラえもんが「ぼくが生まれた日」があるが、ぼくの生れた日に、親の期待にこたえたいという記述があるわけですけれど、
    やはり子どもさんの中には、自分、片親しかいない子どももおいでるわけで、そういう子どもさんにとってパパとママの願いを考えるということがきびしいのではないか、
    かわいそうではないかということが1点あります。

    もう1点は、今いじめの問題、スマートフォンもちろん上手に使わなくてはいけないわけですが、マイナス面・プラス面あるという記述が5,6年生にあるわけですが、
    いじめに絡んでくる問題もありますので、もう少し書いていただいた方が良かったのではないかという気がします。

    5年生の教材で「弱い心」ということで、どうコントロールするかということでその中でスマートフォンや携帯電話の使用時間調査から、
    こんなに使っているのか、もう少し少なくてもいいのではないか、子どもたちに気もちを植え付けれるのではないかという懸念を持っておりまして関心を持ちました。


(豊田) 「かぼちゃのつる」「はしのうえのおおかみ」「雨のバス停留所で」「手品師」の4つの教材に共通するのは、
     後ろに、発問が2つずつ用意されているのですが、それ以外に、実は、この教科書だけ、下の枠外にヒントになるような形で書かれている。

     例えば、「かぼちゃのつる」でいうと、「つるが切れてしまってカボチャはどんなことを考えたのかな」で、つまり、教材を読み深めていく、
     本来であれば、教師が発問で深めていく、ヒントのような形で、文章の下に書かれてある。というのが、特色かなと思いました。

     それから、1年生の2つの教材はどちらもの場合も「家で話し合いましょう。」「家の人に伝えましょう。」2つに絞って用意されているように見えて、
     欄外にヒントになるような発言が用意されている。

     これは教師にとっては参考になるが、子どもにとっては枠外、本文の下にあるから気が散ってしようがないという気もします。


(藤田) 情報モラルに関しては具体的な事例をとらえており、◆考えることができるのではないかと思います。
     多様な考え方や設置する工夫について、「やってみよう」でより良い人間関係の構築をさまざまなワークを提示されていて多様な考え方や感じ方ができるように工夫がされていると思えます。

     私も豊田委員と同じでちょっと気になったのは、枠外に課題があるのはいいんですけど、下にも注釈あり、読んでいて、戸惑ったり目移りするのではないかという懸念があり、
     少し、本が大きくて持ちにくいかなあという気がいたしました。




<学研教育みらいへの感想>

(牛山) 最重要テーマが命の複数扱いしていて、調べてみたら、調査部会の先生方も同じように 命の教育を高く評価されておられました。

   展開の仕方は「ふかめよう、つなげよう、やってみよう」になっており、指導過程が指導方法が提示されていて、教師の指導の自由度を十分生かせる、
   教師の自由度の活かし方については、たぶん豊田委員は初めて教員になった方は戸惑うのではないかというご意見なんですが、

   私はどちらかというと子どもたちが身近に現場教師のやりがい臨機応変に創意工夫があってできるということもある。
   自由に生かされると思いました。

   調査部会でも挙げられていましたが、松山市立潮見小学校のダンが3年生の方で取り上げられているのは、とてもいい。
   懇話会の皆さんのコメントにあるように有名人・著名人があるが、生きている著名人の懸念もあるわけで、そこにいい注目を集めなくてもいいのかなと思いました。


(一色)いじめについて扱っている。マラソンの高橋尚子、ソフトボールの上野・先人の業績。SNS ラインー画面に出ている。


(豊田)これといった特徴を見つけれない。




<廣済堂あかつきへの感想>


(牛山) 調査部会 道徳ノートを用いる。学びの痕跡。本の紹介をしている。

     懇話会では課題について、文が多いという意見。2分冊でメリットが挙げられている。子どもへの負担。教師が文章で評価。活動に重きを置いている。


(一色) 本文とノートの2分冊。本文とノートの順番がリンクしている。4年生「ぼくの生れた日」両親に聞いてみよう、欲張りすぎている。1年6ページ。規則正しい。聖人君主的。


(松本) 挟み込むタイプ。厚くて重い。なかなか書きづらい。バランスよい。


(豊田) 特徴を見つけられない。4年生「雨の日のバス停留所」―お母さんを中心に展開。よし子さんになにかいうことは。6年生「ぼくにとっては」誠実。相手、自分にとっては。


(藤田) 命の尊重、命について考えよう(6年)分冊、使い勝手が悪い。国語的な多さが目立つ。


以上です。