峡中禅窟

犀角洞の徒然
哲学、宗教、芸術...

「適者生存」を考える...「ベストアンサー」は「ファイナルアンサー」か?

2016-11-28 22:00:32 | 哲学・思想

初めに、こちらを...

*弱者を抹殺する。と題してYahoo知恵袋に投稿された質問へのベストアンサーが秀逸!

Temita

 

これはとても良いですね....

そして、まさにその通り!
で終わらせないで、この回答者に対して、あなたは次にどのような質問をしますか?

 

この回答者は、とても明確な答えを出しています。
複雑多様な生き物の世界という、とても難しい問題を、これだけ綺麗にすっきり説明できるのは、回答者自身がとても明確な前提を持っているからですね。

ああだこうだ紛糾しようと思えばできないことはないけれども、結局、基本的にはこういう考え方に行き着くのではないか...
どんな議論も、最後はこうした考え方を前提することになるのではないか...
そんな考え方の枠組みをあらかじめ前提として、そんな前提から答えているのです。だから、すきっと一貫した明確な話になる...

それでは、その前提を代表する思想が、どのようなものか、あなた自身のなかで整理できますか?
これを知るには、この回答のなかに登場する用語を少し踏み込んで考えてみる...調べてみれば、すぐにわかることです。誰が、どのような使い方をしているのか...

そうすれば、この回答者が前提としている考え方の骨組みがわかります。
まずは、あなた自身がそうした前提を受け入れることができますか?


生き物の生存戦略...それは、「生きる」ということの根本にかかわる問題です。
あなたが、私が、この地球上で生きていく...そのことの意味を、こうした観点から説明して、果たして語りきれるのか...

前提そのものは確かにその通りだし、その前提を一旦受け入れて考えるならば、あとはそのとおり..という場合であっても、そもそも「生きる」、という深く重大な問題を、この回答だけで終わり...すべて問題ありません...こうした観点からの議論で尽くされている...本当にそうなのか?


前提が違えば議論は嚙み合いませんから、ここで違う前提の議論(たとえば宗教的な信仰や個人的な信念など...)をぶつけることが取り敢えずは適切ではない場合であっても、違う側面から、「~という観点からの問題は、どう考えるべきですか?」 という質問を、共通の会話ができるように、できれば具体例を引きながら問いかける...
こうすれば、考え方の前提そのものに肉薄する、とても深い対話が可能になるかもしれません。


次に、前提に関しては同意する場合、こうした説明ではカバーできないような事例はありますか?
生き物の生存戦略...生きるということの根本にかかわる問題ですね。
いろいろな事例を考え、調べてみて、例外はあるのか...ケースそのものは少ないにしても、重要だと思われるような例外はあるかもしれません。
場合によっては、その「例外」を基に、ここでの回答の前提に、ある一定の条件を加えて考える必要が出てくるかもしれません。こうすれば、議論がとても膨らみます。

 

なぜ、このようなことを言うのか...


自然の世界はとても豊かで複雑で、驚きに満ちています...
それを、とてもシンプルで明快な法則で説明し、理解する...
これはとても素晴らしいことです。そして、とても大切なことです。科学的な思考というのは、まさにそうしたものです。
しかし、同時に、世界には今の科学では説明できないようなものが、山のようにあるのです...
将来、わたしたちの科学的な能力がさらに進歩し、それまでは、ただの偶然、あるいは乱雑でこんがらがっているとしか思えなかったような現象にも、実はきちんとした論理的法則性がある...そんな風に一つ一つの物事が説明されて行くにしても、いまの時点では、実はわたしたちの科学の力ではお手上げのケースは、ほんの身の回りに、いくらでも転がっているのです。
ですから、この回答の、すきっとした説明に対して、いや、こんな面白い問題がある...こんな例は、例外のように思われるけれども、どうなのか?
そんな質問が、とても大切なのです。


この回答者、もちろん、素人ではないですね(笑)

ですから、わたしたちが、この回答に満足してしまうのではなく、さらに突っ込んで、良い質問を繰り出せば、「基本的には、こうなのだが、実はね...こんな例外があってね、これは学会の大問題なんだよ...」「こんな考え方の人がいてね、少数派だけれどもね、間違っているとも言えなくてね、こうした事例に関しては、この人たちの方が優れた見解を出せるんだよ...」

そんな素晴らしい話を聞かせてもらえるかもしれません。

素晴らしい学者、素晴らしい教師ほど、難しく、困難な質問を喜ぶのです。
せっかくこの明確で見事な回答を寄せた人がいるのですから、さらに踏み込んだ質問を考えるべきなのです...


*ちなみに、写真は「適者生存(Survival of the fittest)」という言葉の祖とされるハーバート・スペンサー(1820-1903)。