フツーの見方

フツーの論理で考えれば当然だと思うことが、なぜかマスコミでは出てこない。そんな意見を書き残しておきたいと考えてます。

FMチューナーはオワコンか まとめ編-3

2022-03-30 | Weblog

・Victor T-X900 '83発 \64.8K

 Victorは聴いたことなかったし、高級帯のチューナーが人気ないのか安かったので落札してみた。
 型番がヤマハと似てるため情報検索で紛らわしく、旧いためHitも少ないが、Specは価格に見合う優秀さだ。
前にも書いたが、Victorは Aurexと共に1974年に初のシンセチューナー(JT-V20 \160K)を発売した開拓者で、技術基盤はしっかりしていると思われる。
(オーディオ懐古録) ~非常に凝った仕様でデザインもマニアック過ぎ,価格的に一般向けではないので技術者の趣味がフルに出たのだろう。

 ひろくんHPに調整記事があったが、2階建て基板で部品交換は面倒という記述があり、故障していたら厄介だなと恐れたが、到着後に ANT-Aで Muteオフにしたら低感度ながら受信でき、致命的な故障は無かったと分かり一安心。ANT-Bに替えたらAuto-tuneも可能で fズレもなく拍子抜け。ANT-Aの接触が悪かったようでコンタクトスプレーしたらA/Bの差もほぼ解消した。動作は一通り確認できたが、気づいた問題は①時々ブチっとノイズが入る点と②電源オフで局メモリが消えてしまう点。
原因追求は先送りして、まず受信調整を行った。調整だけなら基板を外さなくても出来るように基板は巧く設計されていた。記事に沿って一通り調整後ブチノイズは一応消えた。一応というのはまだたまに出る気もするが、再現性も不明で頻度はごく少ないので当面無視。メモリに関してはオフしなければ正常に局メモリは効いてるので試聴には支障ない。

 本機はクォードラチュア検波なので2コアのコイル調整でKT1に極力音質を近づけたが、最終的にKT1比、線はやや太めで弦は艶があり、Sonyに似たしっとりした音色+深い響も少し感じた。情報量は十分。低音がやや強めに感じるが引き締まって力強い低音だ。ソニーだとズーンと鳴ってるベースがビクターだとズンやドンという感じで聴こえる。同社の別機でも似た音の傾向と感じたので、この締まった低音がビクターの特長と思われる。重低音が気持ち良く響き、キレやSNも良いので十分定価に見合った高音質と思う。
ただダンピングが強く効いた音は長く聴いてると、私は少し堅苦しく感じる事もあった。と言っても注意して長く聴いた時の話で、普通に聴き流している分には問題ない。
 83年発売ということは Sony ST-S555ESの翌年で、ライバルを十分意識して出してきたと思われる。デザインはヤマハを意識してる感じもするが、バブル中期は他社でも黒が主流(オーディオが黒物家電と呼ぼれる様になった所以)だったので偶然似ただけかも。青色LEDは開発前で赤以外のLEDは暗かったし。
 最近 Victor T-X5(79頃)の写真を見たら、あまりにYAMAHA T-5(79頃、但し77年の T-1からデザインは踏襲)と外観の印象だけでなく LED表示によるTuningのアイデアもそっくりで驚き。
本機もYAMAHA T-950(83頃)と雰囲気が似すぎている。業界事情は詳しくないので不明だが、ここまであからさまで、ほぼ同時期なのでデザイン盗用というより提携かOEMでもしてたのだろうか?中の回路は完全に違ってる(Victorの方が先進的)ので技術提携は無さそうだが。
T-X7(80.8)は YAMAHA T-6(80頃)と似てる…とは言えないな。
そういう目で見ると FX-711(87頃)は SANSUI α707(86)と似てる。ただこちらは Sony ESXシリーズが源流かも。うーむ、一体何でこうなったのか。
 なお「足跡」では本機の発売は'85年頃となってるが、ひろくんHPでは'83年だし、アンプA-X900も'83年発売らしいのでこっちが正解だろう。

 さて、音はイイのだが実用するにはメモリが電源オフで消えてしまうのが大問題。オートSCAN機能はあるが受信条件を全部切替えながら判定するためにやたら時間がかかるから毎回やるのはシンドイ。
テストを繰返して、たまにANT-Bがメモリできる時はオフ・オンしても消えない。一方ダメな時はANT-Bでメモリ登録すると勝手にANT-Aに切り替るので、ANT-Bメモリとの相関は判明した(オフしなくても験証可)が、その再現条件が不明で、一時良くなっても暫く使ってオフにするとまた消えてしまう。

まずスーパーキャパシタ劣化を疑って交換してみたが無効。基板で目立つIC:MN1203 を検索したらCMOS-SRAMで、本機はこれでメモリしてると推定。このICピンに電源オフ時も電圧が掛かっている事をテスタで確認できたので、キャパシタは基本停電対策であり今回は関係なさそう。
SRAM故障も考えたが、ディスプレイ表示を見てるとオン時にオフ時の局が瞬間的に出て直後リセットされる感じなのでリセット回路が誤動作してる疑いが濃い。しかしデジタル回路は弱いので、どこを直せば良いのかがさっぱり。電源ケミCにも少し液漏れの疑いがあるが関係性は不明で、正直お手上げ状態。
 本機は基板が複数に分かれ、構成が複雑かつ基板間をリボンワイヤのコネクタが多数這い回っているのが構造的弱点と思われる。部品点数・工程が増えるしメンテも面倒だからコストダウンが難しい筈だ。
そのコネクタも多種類あって、スーパーキャパシタを交換するために上部基板だけをひっくり返すのにもコネクタの外し方の解読に最初は苦労した。コネクタに慣れ、手順を守れば割と簡単に分解できるよう設計されていると判ったが、それでも十分手間だし、コネクタ接触不良の発生率は高くなる。
実際コネクタの接触不良でホワイトノイズが出た事もある。調整中になぜかWNが乗ってきて ANTや局を変えても消えず悩んだが、たまたま P502コネクタに触った時にノイズが変動する事に気付き、コンタクトスプレーしたら消えた。
この際に同型の P501も共に接点スプレーして挿抜を繰返していたのだが、直後、メモリ機能が直ったのでコレか!と期待したが、暫く経って電源オフオンしたらまたダメになった。これを数回繰り返したが、この周辺に原因がありそうだとは思うものの結局コネクタ原因とも断定できず、解決失敗。
 という感じで面倒になってきて、イイ音ではあるけれどKT1&2を置き換える必然性までは感じないのでお蔵入り機となった。

・SONY ST-J75 '80発 \67K

 ひろくんHPによればESシリーズの前身となる機体で、音も絶賛されてたので狙ってみた。
 Sonyは初出こそ遅れたが ST-J88(78年 \160K), ST-J60(78年 \54.8K), ST-J55(79年 \49K)とシンセを着々と開発・普及してきた歴史があり、本機はその一連の完成形ともいえる。この後はESシリーズに移行した訳だし。

 この頃の機種で中古出品されてる物は大体ボタン類が青緑色の錆で覆われているものが多い。時代的にプラスチックが主流でなく真鍮系合金でできてるためだろう。出品機は錆の他にもボタンが押し込まれて戻らない所もあり、見た目が悪いためかソニーの割には安く落札できた。
 到着後、通電すると表示はクッキリ、Auto-tuneも効く、不揮発メモリだから昔のプリセットが残ってた程で、正に完動品。余程大事にされていたのか部品の品質が高いのか。音もクリヤだったが、よく聴くとヌケが悪くバランスが悪い気もして、やはり調整ズレはあるようだ。
 ESシリーズと違い本機は穴なしカバーなので内部はキレイだった。中古だとこの差は大きい。
 基本的な故障はないと思われるので、先にパネル部を分解してボタンの錆取り修理を優先。分解して見たら、何と各ボタンに押し棒がバネ機構付で設置されており、それで本体基板に付いてるタクトSWを押す構造。それらは個別にフィラーエポキシで接着されており、恐ろしく手間暇の掛かる製造法だ。到底量産向きじゃない。当時の加工精度ではこうするしか無かったのかな。さらに組立誤差を緩和するために厚手のゴム円板がタクトSW前に置かれており、これが落っこちたためボタンが戻らなかったようだ。穴あきカバーでなかったので失われず幸い。構成的には似たようなものだが、F-120のスポンジと違い、ゴムの劣化は無さそうなので拾い上げてSW前に置くだけで直った。
 ボタンの緑青錆は「自転車用サビとり」で磨いたらキレイになった。ボタンがピカピカになるとプラスチックと違い全体にグッと高級感が出る。しかし油断してるとすぐにくすんでくるから高級感を保つには定期的に布(マニアならセーム革)で磨く必要がある…そう言えばこの当時のオーディオ機器ってこういう手間の掛かる大人のオモチャだったかも。

 機構部を直した後、ひろくんHPに添って調整。劣化は小さくほぼ微調整レベルで優秀なSpecが確認できた。多分良い部品を使っているのだろう。
 本機は出力レベルも調整できるので比較試聴がやりやすい。ESX(PLL検波)と比較したら少ししっとりした音色で重低音がややボンつき気味なところがよく似てる。これがソニー技術陣の好む音なのだろう。クラシックには合う。あえて差異を探すと、J75はホールの雰囲気感がやや上、高域の滑らかさはESXが勝るという印象~何度も切替えて比べないと判らない程度だが。
あと本機は電波の弱い局で少しWNが目立つ気がした。但しESXやKT2でもツイータに近づいて聴くとWNが無い訳では無く、高域が巧いフィルタ処理で滑らかになっててWN感が抑えられているようだ。J75は高域までストレートに出してる印象で寧ろフラットなのかもしれない。上述の印象の差とも整合する。スペアナで見ると18kHzまでキレイに伸びて18kHz超でストンと落ちてる。ひろくんが「聴き方によっては SONY ST-S333ESG より良好」と書いたのも肯ける。電波が強ければ非常に良い音だ。
 残念なのはSメータで、5LED表示だが点灯が完全にデジタル的で低レベルで飽和傾向+温度依存もあるようなので、感度VRいじっても強い局/弱い局の差別化ができなかった。この点ESXのSメータはしっかり判別できて優秀。
ランダム8局メモリというのも現在の常用機とするには不足で残念。オートサーチが超高速なので使えない訳でもないが。
 AMは付属してたバーANTが意外に高感度で実用的。こちらもほとんど調整ズレは無かった。
 という事で、電波状態がよく、ボタン磨きを苦にしなければ愛着の持てるチューナーだ。


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