そろそろ次のネタに行きたいのだが、マスゴミが総括してくれそうにないので、自分で調べてみた。本来は「生き物の命の問題」も含むので不遜な気もするが、哲学では議論が進まないので経済の面で問題を見てみよう。
和牛輸出の規模がどれぐらいあるのか検索して、関係ありそうなニュースを二つ抜き出してみたので読み比べてみて欲しい。
口蹄疫で和牛輸出急落、月83トン→8・7トンに (読売新聞)07月26日
http://news.biglobe.ne.jp/economy/853/ym_100726_8537669468.html
政府は、農林水産物の輸出額を2009年の4454億円から17年までに1兆円に倍増させる計画で、和牛を「重点商品」と位置づけている。牛肉輸出量は06年の74トンが09年には565トンに急増したが、口蹄疫発生後の今年5月の輸出量は8・7トンと3月(83トン)から急減した。
和牛輸出ピンチ、口蹄疫で「非清浄国」認定 販路開拓も水泡の恐れ (サンケイビズ)2010.5.26
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100526/mca1005262038020-n1.htm
輸出量は平成18年の74トンから年々増え、21年には約8倍の565トンに拡大。輸出金額では37億7300万円になった。このうち、取引が停止している主要6カ国の合計は、輸出額の約8割を占める。
どうだろうか。上の記事だけを読めば、「和牛輸出規模は数千万から1兆円に昇るのか、輸出停止は大損害じゃないか」と思わないだろうか。しかし良く読めばこれは農林水産物全ての輸出額の“農水省の目算=予算確保のために上ぶれさせた数字”である。さらに下の記事を読めば、現状38億円だから規模比例なら将来でも85億、重点化で10倍(!)に化けたとしても380億円に過ぎない。
見事なレトリックでしょ。恐らくマスゴミ記者の腕と言うよりは官僚の作文の引き写しでしょう。レジ袋ゴミ問題でも同じような「部分と全体のすり替え」があり、自称環境運動家の方々もコロッとだまされてましたが、官僚の得意技ですから。
一方、今回対策に掛けた税金は本予算からの支出については使途区分がハッキリしないため総額はよく分らない。ただ緊急の追加支出分だけでも、国が概算1000億円で、県の補正予算も500億円程度らしい。
※7/27のNHKニュースで被害総額が1300億円に上る というコメントもあったが範囲や根拠は不明瞭。
2010年宮崎口蹄疫被害対策に国庫支出1000億円の明細は?(2) (武田信弘のジオログ)2010年7月18日
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/taked4700/view/201007?.begin=16
被害額の算出では、下記のサイトによれば畜産の直接被害で数百億、商業関係の損害や生活が不便になった損害は確定困難であろう。さらに宮崎から子牛を買っていた和牛農家に及ぼす影響はまだ見えていない。
以上、非常に曖昧ながら額の桁から言って、輸出再開がどうこういう様な割合ではあるまい。
そしてこれから農家や商店主の再起にかかる費用はどれほどになるか。と考えた時、本当に他の解はなかったのかという問題提起をマスコミにして欲しいのだが。輸出や国内の畜産業の非関税障壁を守るためにこれほどの税金を使う必要があったのか。
宮崎の口蹄疫ようやく終息へ 旅館、外食など観光に深刻な打撃 (J-CASTニュース)7月17日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100717-00000001-jct-bus_all
検証!口蹄疫被害 2010年07月23日
http://blog.canpan.info/fmdmiyazaki/category_6/
上のまとめサイトで見つけて気になった記事。
知事、農相対立 関係悪化に県職員不安、焦り (宮崎日日新聞)2010年07月23日
http://www.the-miyanichi.co.jp/special/kouteieki/index.php?id=41&paging=3
こうした状態に、7月臨時県議会では議員から苦言が相次いだ。「知事がネットやマスコミを通じて不満をぶちまけることが、果たして県の利益につながるのか」「今回のブログを見て、政府が金を出そうという気になるか。(職員は)なぜいさめないのか」。野党である自民党県連関係者でさえも「殺処分した家畜に十分な補償を出してくれた農相を怒らせてはだめだ」との声を上げた。
一方の知事は「僕は地方として言うべきことは言う姿勢。感情的ではなく、理不尽な強要に一石を投じただけだ。問答無用に命令して対立しようとしたのは山田大臣だ」と悪びれる様子はない。「個人的な意見の対立が、国と県の関係悪化につながらなければいいが…」。県職員の一人はつぶやいた。
こんなへつらった発言が地方議員や職員のモラルなんですね。「補償を出してくれた農相」…金を出しているのは国民です。政党関係者(議員?)なら最低限認識すべきでしょう、大臣ではありません。国民の金という意識がないから利益誘導ができるのです。
記者も ~と悪びれる様子はない。 という表現は意識的に貶めているとしか思われません。辞書的には間違いとは言えないまでも受ける印象は“悪”でしょう。~と反論している。とでも書けば中立に聞こえます。 県職員の一人はつぶやいた。 という結び方も客観的なようで、自らの主張への結論誘導ですね。「だからこの知事はダメ」か「だから国に逆らっちゃダメ」か。
洗脳はこう言う些末な所から始まりです。
わるびれる…おどおどしたり、恥ずかしがったりする。(出典:infoseekマルチ辞書)
新聞でも何でも“情報”には必ず“発信者の意図”が入るモノです。中立・客観的な報道なんて現実にはあり得ないと考えます。だから偏った情報を多数集めて、読み手側が取捨選択するしかないでしょう。
これまでは記者クラブによって主要メディアがカルテルを組んでいたために、複数のようだが実は全体に偏向していた情報源しかなかったので見えない暗部があった訳です。ネットによって、それ以外の情報が入ってくるようになったので、色々見えることも増えてきました。自分で積極的に情報を集めて考えてみて下さい。名も無きネットの噂がマスゴミ記事より当たっていた例は多数あります。ただし単なるデマや中傷もゴロゴロしてます。自分の判断力が問われます…だからこそオモシロイ。
なお記事をほぼ仕上げた後、大体同じ趣旨のブログを見つけました。マネしたわけではないのでご容赦下さい。
口蹄疫と算数の問題 ニュース記事に関連したブログ (Septemberのブログiza版)2010/07/30
http://nagatsuki07.iza.ne.jp/blog/entry/1716538/
さらに、ここの関連リンクで見つけたメルマガは実に衝撃的な内容でした。
[GEN 764] 宮崎口蹄疫騒動を検証する【第11回】 (原田 和明)
http://www.melma.com/backnumber_90715_4914912/
他のバックナンバーも興味深く読みました。(ぜひ一度目を通してみて下さい。)
これまでの報道とは異なる驚くべき事が詳細なデータを元に書かれており、これらが真実なら大変なことです。農水省と家畜衛生試験所は自らの失敗を隠蔽するため1000億以上の国民の金を無駄にし、宮崎県民の生活を無茶苦茶にしたということになります。
その真偽の追究は正にジャーナリストの出番だと思うのですが、2000年の事件から現在まで話題になっていなかったのでどうにも期待は薄いです。
最低限、ウイルス検査は牧畜の盛んな地域でも並行して行えるようにすべきでしょう。緊急時に一カ所だけで対処するのは無理があるし、相互検証は科学では当然必要な措置です。
今回の件で、国の権限を強化しようと言う動きがあるようですが、全くの焼け太りです。隠蔽や無駄遣いがやりやすくなるだけです。地方のことはまず現地で責任を持って行う。これが基本でしょう。
さらに口蹄疫自体、口内炎程度の病気に過ぎず、子牛はともかく成牛は放っておけば勝手に治ってしまう病気で、抗体検査により実は何度も発生しては自然治癒していた、という説も説得力が有ります。だとしたら今回の騒ぎは一体何だったのでしょうか。一種の非関税障壁である「清浄国」に拘らなければ、初めの頃に指摘があったように、何もしなくても良かったのかも知れません。
※これらの検証記事の中でも東国原氏のブログが現場の生々しいやり取りの記録として大いに役立っていることは注目である。情報開示しておけば後々役に立つのである。
宮崎日日新聞も記事はあからさまに農水省よりですが、それでも詳細なデータを載せていた点は原田氏の検証に役立っています。読み手の力が問われますね。
情報がどんどん公開されれば改ざん・隠蔽しきれなくなって不正が暴かれる可能性が高まります。情報公開の徹底が官僚支配を終わらせるために最も有効な方法だと考えます。
(オマケ)
宮崎県口蹄疫拡大。官僚クーデターの疑惑は深まる。 (瓶詰伝言)2010年6月15日
http://binzumedengon.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-1b78.html
ちょっと下品な表現があるのが個人的にマイナスだが、なぜ農水省が暴走したかの原因について触れている内容は一理ある。
OIEの清浄国、清浄地域についての4つのカテゴリーに関しても初耳であった。なぜ国民に説明されないのか。
宮崎牛が全滅したら日本各地の畜産業は本当にやばいの? (教えて!goo)
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/5917633.html
【口蹄疫】宮崎牛のクローン?霜降り「韓牛」忽然と出現 (やま1)2010/07/07
http://yama1.iza.ne.jp/blog/entry/1688076/
まぁこういう見方も当然出てくるだろう。直接証拠も今の所ないが、否定するには状況が符合しすぎる。農作物の種苗が盗まれコピーされたことがあるのは遺伝子検査で証明もされている。ただクローンは正確じゃなくて精子を元に繁殖した同系統の牛であろう。
そもそもこういう犯罪が起きうる素地は国内外の価格差(非関税障壁)があるからだ。畜産業も世界と対等の条件で戦える様にならなければ、またいつか起きるかも知れない。
中国・台湾に向けた日本の農林水産物の輸出とブランド保護
農林水産省の受託研究調査(ダイヤモンド社)2006.03.15
http://www.kosuke-ogawa.com/?eid=291
7 育種権侵害の実態と保護対策 ←各国の無法ぶりの例が載っている。
地方自治の改革に関しては下の記事の指摘が鋭い。
政権交代後も総務省主導から逃れられない?
骨抜きになった“地域主権改革”の顛末
――慶応義塾大学 片山善博教授インタビュー 2010年6月29日
http://diamond.jp/articles/-/8581
今の地方財政のシステムは、“護送船団方式”だ。これは、総務省が枠組みを決め、財源を保障し、予算を確保、借金の面倒みるというやり方で、本来主役であるはずの住民や議会が全く登場しない「異常なシステム」である。
地方自治の本質は、自分たちで仕事を決め、それに必要なコストを税として負担するもの。毎年、仕事の量や質は変わるのだから、当然税率も毎年変わるべきである。米国やオーストラリアがそのよい例だ。だが、日本は基本的に税率を固定してしまっている。
日本は、そのメカニズムが全く作動しておらず、住民も無関心のため、財政破綻が起きるのだ。財政破綻は、議会や住民による税率調整が働いていれば、基本的に起きない。税率を可変的にさせるだけで物事は解決する。無駄な「箱物」もなくなる。つくるかつくらないか、借金するかどうかは、国ではなく、地元で決めるべきだ。