二月後半に入ると、五月に開かれる帆船模型展のことが気になりだした。出品を予定しているので、今までのようにのんびり構えていると、間に合わなくなる。
甲板上に、小さな構造物を順次取り付けていく。甲板は、すでにオイルで塗装しているので、小さな部品を甲板に直接接着しても、すぐに外れてしまう。そこで、接着する部品の底面に径0.7ミリ程度の穴を開け、これに径0.5ミリのシルクピンを垂直に差し込んで、接着する。甲板にも、径0.7ミリの穴を開け、これに部品につけたシルクピンを差し込んで、部品を甲板に接着する。
白色に塗装した手すりを甲板の外周に立て、これに、黒色に塗装した径0.5ミリの真鍮の針金を通していった。小さな手すりをピンセットでつまんで、取り上げるとき、誤って床の上に落とした。これが、床に敷いた白いマットの上に落ちたので、もう見つからない。キットには、手すりは一本も余分に入っていない。他にも小さな部品を1点なくしたので、キットのメーカーに連絡して取り寄せた。
このヨットは1965年の建造だから、古い時代の帆船のように、マストは継ぎ目がなく、上から下まで一本の金属棒である。キットの丸棒を削って、銀色に着色する。マストには、ヤードと呼ばれる横棒も取り付ける。
後部のミズンマストには、大きな三角形の帆を一枚取り付ける。前部のフォアマストと中央のメインマストの間には、それぞれ三枚の帆を取り付けている。これが終わるとフォアマストの二本のヤードに、それぞれ帆を取り付け、さらに、フォアマストの前方に三角形の帆を四枚取り付けて、合計13枚の帆を取り付けた。
帆の取り付けとロープ(糸)張りが終わると一応完成した。
このヨットは現代の船であるから鋼鉄製である。模型は木製であり、幅4ミリ、厚さ1.5ミリのヒノキ板をフレームに貼り付けて船腹を作っていく。フレームの曲面に幅4ミリの板を貼り付けると、どうしても板の継ぎ目に少し隙間が生じる。船腹を鉄鋼のように見せかけるために、船腹表面を削って、出来るだけ滑らかに仕上げる必要があった。
今年の帆船模型展は、5月10日から15日まで、福岡市のNHKのギャラリーで行われた。私のヨットも展示させて貰った。期間前半は雨だったが、10日のNHKテレビで紹介されたこともあって、後半は来場者は多かったようだ。
ヨットは、全長61センチ、高さ55センチ、幅20センチである。大きく、立派な模型の横に置かれると、なんとなく貧弱に見えるが、これは大きさの差だけによるものではない。新しく製作にかかるときには、今度こそはと意気込むのだが、出来上がってみると、いくつか不満な点も出てくる。
しかし、これから先の技術の向上は、殆ど期待できないから、模型展の期限を気にせずに、ゆっくり楽しみながら、丁寧に作って、納得出来るものに仕上げることを目指すつもりである。夢中で作っているときは、結構楽しいものである。
今年は、PRINS WILLEM という17世紀のオランダ船を作ることにしている。すでにキットも購入した。長さ73.5センチ、高さ58センチ、幅30.5センチの模型だから、かなり大きい。図面も10枚あって、かなり手がかかりそうである。1年で完成するかどうか疑問である。場合によっては、来年の模型展はお休みにして、2年がかりになっても良いと思っている。
ヨットの横に展示されている模型は、日本丸である。全長1.5メートル以上はありそうである。
日本丸は、今年の4月、長崎港で開催された、帆船祭りで見てきた。模型では、喫水線より下の赤い塗装が、際立って見えるので、実物と異なる船のようだが、船体に描かれた青い横線は同じである。
長崎港に停泊する日本丸
4月24日に長崎帆船祭りに行った。近くで見る日本丸のマストやヤードは、太く、逞しく見える。
帆船祭りに来たのは、これで2度目であるが、今回は天気が悪かった。 ロシアの帆船も参加したそうであるが、放射能騒ぎで、早々に引き上げたらしい。韓国の帆船は岸壁につながれていて、まだ残っていた。
船内見学は、午後1時30分からと聞いたので、岸壁のレストランで昼食をとり、近くにあるグラバー邸を見に行った。
岸壁まで帰ってくると、雨が激しく降りだした。傘を差して濡れながらの見学だったので、カメラを出して、写真も撮れなかった。晴天だったら、船内の見学が出来たかも知れないが、甲板だけの見学だった。
船尾には、直径1メートル以上はある大きな舵輪が、軸を同じくして、二個並んで設置されている。説明役の実習生に聞くと、普段は一個の舵輪を二人で操作するが 、荒天時には、四人で二つの舵輪を操作するという。
マストの高さは、60メートル近くあるらしい。甲板にいた実習生の一人に、マスト登りについて聞いてみた。マストの上まで登るのに、慣れると4分位で登ると言っていた。初めは、怖いので、もっと時間がかかるらしい。マストに登り、さらにヤードを横方向に移動するのは、大変だと思う。航海科の学生には必修だが、機関科の学生はやらないそうである。
甲板から上を眺めると、ロープを通した滑車は、すべて木製である。説明役の学生に、これについて聞いてみた。帆船だから木が基本になっているのでは、という話だった。後で考えると、金属製の滑車は木製に比べて、重く、錆や落雷の問題があるとも思ったが、本当のことは分からない。