
その細い流れの先端に行ってみると、上流に行くにしたがって細くなりそこで消えていた。
先端は小さな池のようになっているが、誰かが石を橋のように積んで遊んだようだ。
前方には両岸に大きな階段があるので、そこから下へ下りたのだろう。

そこから下流側を振り返ると、合流地点の方は水があるが、その手前は両岸に僅かに水があるだけである。
それも途中で途切れていて、水たまりのようになっている。
広い水面のあたりには、先ほどの園児たちの姿がまだ残っていた。

上流側には水は全く見えない。
大きな階段まで行って川へ下りてみようと思った。
両岸には園児たちがいて、何やら大きな声を掛け合っている。
その園児たちとは、階段の所ですれ違った。

何十年ぶりかで、この川の底へ下りた。
少し歩いてみたが、石がごろごろしているだけで、水の気配は全くない。
下流側の左側には、さきほどの細い水面がわずかに見える。
土手の上を別の園児達が合流点の方へ歩いていた。

上流側には全く水は見えない。
毎年見ている訳ではないが、最近は冬でも流れていると思っていた。
この冬は異常に雨が少ないため、また昔のように干上がってしまったようだ。
このまま石の上を歩いて行けそうだったが、また土手に戻って上流へ歩く。

最初の橋に出ると、「しんいっぽんはし」と書いてある。「」
新一本橋の下流側は、さっき下で見た通り川底が白い帯になってゆるく蛇行している。

上流側も同じ様ようだが、その先に東武東上線の鉄橋が見える。

鉄橋の近くも同様に水はない。
ちょうど川越駅の方へ行く電車が通過した。

鉄橋の下を潜れないわけではなく、たとえ落ちても溺れる心配はないが迂回することにした。
すぐ近くのガード下を潜り、国道254号(川越街道)に出る。
橋のたもとに青い看板が立てられている。

大きな看板には「不老川(ふろうがわ)」と書いてある、隣の小さな看板には「としとらず橋」と書いてある。

また、橋には「としとらずはし」の銘板がある。

橋の対角の位置にも同じような看板があり、橋の銘板には「不老橋」となっている。
つまり、「不老橋(ふろうはし)」がこの橋の名前である。
当然、「不老川」も「としとらずがわ)」と読む。

この川は、雨が少ない冬になると干上がってしまい、水が流れなくなる。
昔は年のはじめに皆な1歳ずつ年を重ねたが(数え年)、その時に川の姿を現さないため「年とらず川」と呼ばれていたらしい。
それに「不老川」という字を当てたため、「ふろうがわ」と呼ばれるようになってしまった。
「ひとごと」に「他人事」という字を当てたため、「たにんごと」と言う人が増えたのと同じである。
もう、この橋の名前にしか「としとらず」は残っていない。
「としとらず橋」から上流を見ると、川底に少し水が見える。

ここで止めても良かったが、ついでなのでもう少し上流へ遡ることにした。