40年程前の忘れられない事例です。
カウンセリングを学び始めて出会った来談者のことです。
A夫人とします。
毎週一回、面談をしました。
A夫人は、座るとすぐに、いつも同じ話・同じ内容でした。
私も初心者であったので、一生懸命傾聴しようと努力したことを覚えています。
ところが、ケースが継続するに従い、「何で?」と思うようになり、新鮮な気持ちで聞くことができなくなりました。
カンファレンスの席で、精神科医や先輩のカウンセラーの方々は、「毎回新鮮な気持ちで聞きなさい」とのアドバイスでした。
いまの診断ですと、統合失調症ということだと思います。
話は飛びます。
『蓮如聖人御一代記聞書』に次の言葉があります。
「ひとつことを聞きて、いつも、めずらしく、初めたる様(ヨウ)に、信のうえには、有るべきなり。ただ、珍しき事を聴き度(タ)く思うなり。一事(ヒトツコト)を、幾度(イクタビ)聴聞(チョウモン)申すとも、めずらしく、はじめたるようにあるべきなり」
二つのことを併せ、〈聞者・くりのみ〉としては、「めずらしく、はじめたるようにあるべき」ということをしっかりと押さえて臨みたいと思います。