独自の思考法
プロ棋士は通常、対局中に手を読む際は脳内に将棋盤を思い浮かべ駒を動かして思考するが、藤井は脳内将棋盤を使わず符号が浮かんでくると語り、プロ棋士からも驚きの声が上がった。
また、短手数の詰将棋は見た瞬間に解けることがあると述べており、「意識的な思考を始める前に、バックグラウンドというのか、そこで既に読んでいて、ひらめきにつながるのかなと」と語っている。
棋士からの評価
羽生善治は、2017年1月4日、藤井の29連勝が話題になる前、谷川浩司とのトークショーで「元々名をはせたのは詰将棋だが、順調に成長している。最短コースで寄せ切る(詰ませる)のは谷川先生の"光速の寄せ"に似ている。」と評した。ま
た、藤井の29連勝が注目を浴びていた2017年6月15日にも、羽生は、藤井の将棋は「光速の寄せ」を思わせるとコメントした.
増田康宏は、2018年のインタビューにて、藤井の序盤力について「研究してるからではなく、その場で考えてうまく指しているので、それはなかなかマネできないですね。」と語った。
渡辺明は、2019年2月16日の藤井との初対局で敗れた直後に読みが深く、序盤の理解も優れており、(現時点では)弱点を見つけることができない」という趣旨をブログで述べた。
さらに「藤井の棋風は谷川に似た終盤型であり、序盤型の棋士が増えている現状を考えると、藤井のような終盤型の棋士は貴重になっていくかもしれない」という趣旨を、インタビューで述べた。
渡辺はその後第91期棋聖戦五番勝負で藤井と対局し、第1局の藤井について「谷川先生のような勝ち方」とした上で、
第2局について「中盤で(中略)地味な手で決定的な優位を築く(中略)羽生さんのような勝ち方」と評し「どんな展開でも勝ち切れる」と述べた。
谷川浩司は、「プロになった頃の藤井さんは、詰将棋で鍛えた終盤力による"苦しみながらの逆転勝ち"が多かった。
しかし最近(2021年10月現在)の勝ち方は、序盤の精度が高くなっていることや局面の急所を捉える直感("ひらめき")に磨きがかかったことで勝ち方が変わってきた」と評している。
また、藤井聡太の棋士としての最大の強みは、長い時間集中して考えられることとしている。
集中力と考える力が優れているプロ棋士たちの中でも藤井はずば抜けており、対局の時は一日集中力を切らさずに考え続けることができると評している。
永瀬拓矢は、2022年1月のインタビューで、藤井のどこが強いと思うかと問われ「終盤力。それからとんでもなく負けず嫌いなところですね」と語った。
また、藤井の強さの根源が才能なのか、努力によるものなのかについて「私は藤井さんが強くなる過程を見てきたので、努力だと思います。
もちろん才能もすごいですよ。例えば私が『努力9、才能1』だとしたら、藤井さんは『努力10、才能10』です」と述べた。
他の棋士からの影響
「憧れの(プロ棋士の)先生はいないんです。いい部分を勉強するというか。」と語るとともに、谷川浩司の『光速の寄せ』は「小さな頃からの憧れ」であったという。
奨励会時代は大山康晴の『大山康晴全集 第1巻 五冠王まで』で勉強しており、後に「大山先生は駒の配置が非常に巧みで(自陣を)堅くするよりもバランスの良い陣形で相手の攻めに対応する。
今から見ていても先見性を感じるところはあります」と語っている。デ
ビュー後に羽生善治について尋ねられた際には、「遠い存在として憧れていただけ」であったが「憧れから抜け出さないといけない」と語っている。
永瀬拓矢は、デビュー間もない時期から藤井とVS(一対一の研究会)を定期的に行っている唯一の相手である。
頻度は月に一、二度で、藤井が東京に出向くこともあれば、永瀬が愛知まで出向き師匠の杉本の実家で指すこともある。
永瀬は藤井の才に驕らず謙虚な姿勢に感銘を抱いている一方で、藤井の方もまた「練習量は絶対に裏切らない」という永瀬の信念に深く共感しており、タイトルを争う間柄ながら互いに認め合う仲である。
トップ棋士がタイトル戦で様々な戦型で立ち向かって来ながらも藤井が時間をかけて課題を克服しようとすることから、谷川浩司は「寄ってたかってみんなで藤井さんを強くしている」と指摘。
藤井は羽生善治との第72期王将戦において毎局違う戦型で挑まれており、勝又清和は第81期名人戦における藤井の手を第72期王将戦における羽生の手と比較し、羽生の「最善手を指すのが難しい局面にして手を渡す」ことや「緩急をつけて局面のスピードをコントロールする」ことを藤井が習得したのではないかと分析している。
人物
学歴
藤井は三段リーグの都合を考慮し、高校受験を避けられる中高一貫校の受験を選択する[247][248]。決断が小学6年生の12月と遅かったが、塾に行かずに名古屋大学教育学部附属中学校に合格する。
中学2年で棋士となったが、義務教育最後の年度である2017年度の活躍により藤井の日程は過密となった。
藤井は高校に進学するか否かを悩み、世間も藤井の決断に注目した。
2017年10月25日、藤井が名古屋大学教育学部附属高等学校への内部進学を決断したことが日本将棋連盟から発表された。
卒業間近となった2021年1月末に高校を自主退学。
本人は「タイトルを獲得できた事で将棋に専念したい気持ちが強くなりました。秋に意思を固め、数回学校と話し合いをした上、1月末日付で退学届けを提出いたしました。
一層精進していく所存ですので、今後ともよろしくお願い申し上げます」とコメントした。
読書・藤井語録
読書家で、文学作品のほか新聞も良く読む。培われた語彙力・文章力により、デビュー当時には終局後のコメントで「望外」などの中学生離れした言葉を使うことが話題になったり、自戦記を『将棋世界』の編集長に評価されるなどした。
「僥倖としか言いようがない」「茫洋とした局面」「白眉の一局」「勝敗に拘泥したくない」「隘路に嵌まり込む」などがあり、
王将を獲得して五冠を達成した際には、自分の立ち位置を富士山に例えると何合目か聞かれて「森林限界の手前」と答えたことが知られている。
趣味
鉄道好きとして知られている。タイトル戦などでの地方への移動で新幹線の代わりに在来線特急を利用して鉄道を楽しんだり、トレインシミュレーターで遊んでいるという。
国鉄189系に乗りたかったとも語っている。
叡王防衛を決めた第8期叡王戦五番勝負第4局の翌日の2023年5月29日には、岩手県出身の小山怜央と共に三陸鉄道の宮古駅で一日駅長を務めた。
藤井の要望により実現した訪問で、車両基地の見学や車両の運転も体験した。
将棋関連のエピソード
幼少期の負けず嫌い
負けず嫌いな性格で、幼い頃は負けるたびに号泣して周囲の目を惹いた。
将棋教室の文本塾長によると、子供の頃は対局で負けるとシクシクとよく泣いていたが、ひとしきり泣いたら負けを引きずることなく笑顔に戻る子だった。
普段から泣き虫だったわけではなく、藤井が泣くのはいつも将棋で負けた時だったという。
また、藤井は子供ながらに当時から記憶力、集中力、思考力に秀でており、将棋の定跡を次々に覚え、詰将棋を解くのもすごく速かった。
加えて文本は、藤井がもう一つ人より抜きんでていたのは負けん気の強さとしている。
「負けん気の強さがずば抜けていたからこそ負けた時の悔しさをバネにして、その後将棋の腕を磨いて強くなったのでしょう」と評している。
小学2年の頃、2010年の将棋の日イベントで憧憬を抱いていた谷川浩司に、二枚落ちで指導対局を受けた。
谷川の玉が入玉模様となり、谷川の勝勢となったため、谷川は引き分けを提案した。
すると藤井は猛烈に泣き始めて将棋盤から離れなくなってしまい、居合わせた杉本昌隆が対応したが、最終的には母親が抱き抱えてその場から引き離した。
杉本によれば対局で敗れると同様の光景が繰り返され、「尋常ではない勝負への執着」に驚いたと述べている。
8年後の2018年、既にプロ七段になっていた藤井は、この時の心境について「子ども心にまだ勝てるチャンスがあると思っていたのか、泣きだしてしまった。
悔しいという気持ちをうまくコントロールできなかった。」と語っている。プロになってからは谷川と2019年9月1日の王将戦2次予選決勝で初めて対局し、57手で勝利した。
藤井が将棋ソフトを使用するパソコンを自作していることはパソコン業界などでも注目されて話題になった。
2018年12月1日にはAMD社の「Ryzen 7」をCPUとして搭載したパソコンを研究に用いていること、AMD社が開発中のCPUアーキテクチャである「Zen 2」に興味があることを述べた。
これに対してAMD社のCEOであるリサ・スーはTwitterで藤井がRyzenファンであることを嬉しく思っているという趣旨の発言をした。2
020年8月21日には第61期王位戦での王位獲得翌日の記者会見において、さらなる棋力向上のために「落ち着いたらパソコンを1台、組みたいなと思います」と語った。
2020年9月のインタビューによれば、読みの速さを決めるCPUを重視しており、当時では「将棋用途で一番最適」である「Ryzen Threadripper 3990X」を使っている。
2020年度の王将リーグが終わった頃にはGPUを用いて動かすディープラーニング系の将棋ソフト「dlshogi」を導入したことに伴い、パソコンのGPUを自分で交換し。
2022年9月8日、日本AMDは藤井がAMDのブランド広告に出演すると発表、特設ページが公開された。
同時に公開されたAMDによる藤井へのインタビュー動画にて、リサ・スーCEOから藤井宛に動画メッセージが送られた。ブランド広告出演を記念し、AMDから将棋トレーニング用マシンとして「Ryzen Threadripper PRO 5995WX」と「Ryzen 7000シリーズ」の二つのCPUが提供された。
以前使用していたパソコンは師匠の杉本に譲渡され将棋教室で利用されている。
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