another TOKYO ~もう一つの東京探検~

「周縁」の東京を探索します。下町アルキストのための町歩きブログです。

水元公園「菖蒲」文学散歩~芝木好子『葛飾の女』を歩く(6)

2010-06-07 | 水元公園「菖蒲」文学散歩
■水辺の道を通って森の中へ■


とりあえずビール、じゃなくて、位置確認から。

(↑すみません、ベタで。わたしのなかの下町魂がどうしても
言えと命じたのです。抵抗したのですが、無駄でした)

で、今、わたしたちは、正面入り口方面から「森」へ向かう
途中の水辺にいます。

小説の一行は、そこでひとしきり写生に没頭した後、
再び歩き出します。

わたしたちもかれらに倣って、さらに奥へと奥へと
水辺に沿って進みましょう。

物語はこんな描写になっています。


「水郷に沿った道は次第に細くなりながら、くねくねと続いた」


くねくね? しかし、今では水辺沿いの道はそれほど
くねくねと曲がりくねってはいません。きっと整地された
のでしょうね。

それでも途中からベンチがなくなるエリアへ入りますと、
いよいよ「森」の雰囲気が漂ってきます。

水元大橋からはるかに臨んだあの「森」が今やすぐそこに
あるというわけです。思ったほど遠くない、というのが
わたしの感想ですが、みなさんはどうでしょうか。

しかし、

この散歩の「真打」はここからなのです!

今までは、ま、「前座」みたいなもの。

(↑ちょっと比喩が適切でないですが、気にしない気にしない。
なんとなくわかりますよね。下町はそれでいいんです)

とにかく、そのまま、遠くから見えたあの「森」の中へ入り
ましょう。

メタセコイアの林【注】のあたりから本格的な「森」が実感されてきます(たぶん)。


【注】
メタセコイアの林は、わたしのお気に入りスポットです!
その手前の水辺のある空間も、思わず写生したくなるような
風情があります(写生なんてしたことないけど)。残念ながら
今回はゆっくり紹介できませんけど、いつかまた!


道は舗装されているものの、周囲はすっかり樹木で覆われて
います。

しかも、水辺にはバードウォッチング用のコーナーもあります
から、野鳥観察も可能です。トリ好きにはたまらないですよ。

都心だとカルガモが珍しがられますけど、このへんじゃ、全然
珍しくありません。カモなんてふつうにいますから。

水元で散歩の小動物といえば、

 イヌ、ネコ、カモ

が三羽ガラスといわれています(←すみません、ウソです。
わたしはいやだと言ったのですが、下町魂が……。でも、
カモなのにカラスだなんて、くっ、ちょっと笑っちゃいますよね。
やっぱり、下町魂は洒落が効いてるなあ。←この時点でわたし
の下町魂のレベルの低さにあきれたあなたは真っ当な感性の
持ち主です)



脱線事故発生。すぐ軌道に戻ります。

さて、位置確認、位置確認。(←これ、水元公園を歩く基本中
の基本です)

わたしたちは、今、芝生が敷き詰められた広い広い「中央広場」
の外周を大回りしている格好になります。

こうして「森」の中にいると、樹木が鬱蒼と生い茂っている
ために、すぐ近くにある水辺も中央広場もあまり視界に入りま
せんが、現状の位置関係は、進行方向の右手に水辺、左手に
中央広場があります。


■森の中の菖蒲園■


小説はやがて、ようやくのこと(というか、わたしが脱線した
だけ?)、延地滋オススメのスポットに到着します。

その一節は↓


「(…)水際を離れた雑草の野辺や、少しばかりの田畑を
越えた先の、小さな神社の奥に辿りつくと、そこが滋の
自慢の菖蒲だまりであった」


そのとおり現在も、先ほどの水元大橋のたもとの菖蒲園とは
別に、この森の中にも菖蒲園があるのです。

作者は、こちらの菖蒲園については細かく描写しています。

実際、ここは作者のお気に入りスポットでもあったようです
(この点は作者がべつのエッセイで述べています)。

連載第4回目で、小説の一行が水元大橋のほうの菖蒲園には
見向きもせずにあっさり通り過ぎたのはなぜか、と疑問を投げ
かけましたが、そのわけは、こちらの森の中の菖蒲園こそが
メインだから、ではないでしょうか。


つづく




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