■『葛飾の女』のその後■
前回で、わたしたちの所期の目的である菖蒲散策は終了しました。
とはいえ、
せっかくここまで小説のストーリーを追いかけてきたのです
から、この物語を最後まで見届けたいとは思いませんか?
そうですか、思いますか。よかったよかった。
で、実は、この後、菖蒲はもう出て来ませんが、まだまだ
水元が重要な場面として再登場するのです!
とても哀しい場面ではありますが……。 . . . 本文を読む
■団子より花?■
一行はやがて「小高い場所に敷物をひろげて、花見」と
あいなりました。
しかし、
清澄は宴会よりもすぐに、またしても写生を始めてしまいます。
(いったい、どんだけ写生好きなんだ)
引用するとこんなかんじです(↓)。
「時の立つのを惜しんで、場所を替えては描きつづけた。
真紀は堀切の菖蒲園へ行ったことがあったが、人工的に
調ったそれと比べて、葛飾のあやめはなんと自然で、 . . . 本文を読む
■菖蒲の鑑賞■
さて、次に、肝心の菖蒲そのものに注目しましょう。
小説は森の中の菖蒲をこんなふうに描写しています(↓)。
「見渡すかぎり、湿地一面に色とりどりの菖蒲の群生が現われた。
江戸小紋の優雅な花柄をひろげたようであり、また白鳥が重なり
ながら紫の鳥を抱いて飛ぶような、浮世離れの清らかな眺めであ
った」
芝木好子の面目躍如たる流麗な文章ではありませんか。
こういう一節に接する . . . 本文を読む
■森の中の水生植物園■
前回、やっと、森の中の菖蒲園に到着しました。
小説はこの菖蒲をじつにイキイキと活写しています。
ですが、それを見る前に、
水元公園歩きの基本(覚えていますか? そうです、位置確認
です)、わたしたちの現在地を確認しておきましょう。
まずわたしたちはずっと森の中を歩いてきました。
小説ではやがて菖蒲園に到着したとあるのですが、じつは、
わたしたちの場合はちょっと違 . . . 本文を読む
■水辺の道を通って森の中へ■
とりあえずビール、じゃなくて、位置確認から。
(↑すみません、ベタで。わたしのなかの下町魂がどうしても
言えと命じたのです。抵抗したのですが、無駄でした)
で、今、わたしたちは、正面入り口方面から「森」へ向かう
途中の水辺にいます。
小説の一行は、そこでひとしきり写生に没頭した後、
再び歩き出します。
わたしたちもかれらに倣って、さらに奥へと奥へと
水辺に . . . 本文を読む
■オニバス■
さて、
滝川清澄はここで「川」(=小合溜井)のなかに何かを
見つけたようです。
「川の中に一抱えしきれないほど大きい水蓮の葉が叢生
している。
『大きな葉ですね。花が咲いたら見事でしょう』
『これは鬼蓮と言います。花も大きく、まことに見事です』
『咲いたら、描いてごらん』」
清澄たちはオニバスを見つけたようです。
オニバスとは、一年草としては世界最大の葉を広げる水草の
. . . 本文を読む
さて、小説では、水元公園の内側の様子がどんなふうに
描かれているでしょうか。
少し長くなりますが、とりあえず引用します。
「堤に立つと、眺望はひらけた。葦の生えた沼地の先は見渡す
かぎり水郷で、鏡のように水が湛えられている。その先は森で
ある。道が細く水際をまわっている。葦の叢で葦切りが鳴いて
いた。途中の木橋の際に菖蒲が咲いている。水際をめぐって
ゆくと、水は岸にすれすれに溢れて、川のよう . . . 本文を読む
■水元公園までのあらすじ■
すぐにも公園散策を始めたいところですが、もう少しお待ちを。
文学散歩のための「準備運動」としてこの物語の中に水元公園が
登場するまでのあらすじを簡単に紹介しておかねばなりません。
時代は明治。
主人公の真紀は東京・本郷の紙問屋のひとり娘です。
彼女は病弱なため活発な性格ではないものの、
絵を描いているときだけは「自由」を感じていました。
母親の俊はそんな . . . 本文を読む
芝木好子『葛飾の女』は、わたしたちがこれから歩く
水元公園界隈が舞台となっています。
明治の女性のはかない運命を描いた切なく哀しい物語なのですが、
この小説には、現在水元公園となっているあたりの菖蒲が
印象的な場面で登場します。
というわけで、以下、小説の中の菖蒲の描写を紹介しながら、
該当箇所のストーリー展開に合わせて、わたしたちも実際の
水元公園を歩いてみることとしましょう!
なんだかワ . . . 本文を読む
今年も6月1日から葛飾区では、水元公園と堀切菖蒲園で
「葛飾菖蒲まつり」
がスタートしました!(たぶん)
じつは、わたし自身はまだ見に行ってませんけど…。
でも、過去に何度も見物していますから、わかります、大体。
このアバウトさが下町アルキストには不可欠なのです。
でなけりゃ、のん気に歩いてらんないでしょ、
こんな平べったい土地なんか。(意味不明のつぶやき)
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で、菖蒲まつり . . . 本文を読む