死者が住むという黄泉(よみ)の国、昔の日本にはそこへ通じる黄泉道があったと言われている。
そして、その名残らしき場所は今でも島根県松江市で見る事ができる。
それが黄泉比良坂(よもつひらさか)だ。
松江市から山陰道を東に向かって車を走らせると、その場所はある。
人気のない山道を歩いていくと、突然鳥居の様に立つ2本の石柱が表れ、柱と柱の間には結界を示すしめ縄が掛けられている。
このしめ縄の下を潜り抜けると、そこに大きな2つの岩がある。
これが『古事記』や『日本書紀』の中で伊邪那岐(いざなぎ)が黄泉の国へと通じる道をふさいだ岩なのではないかと言われているのだ。
黄泉比良坂にまつわる伝説とはこうだ。
夫婦神である伊邪那岐と伊邪那美(いざなみ)は、本州をはじめとする8つの島と35の神々を産んだ。
だが、最後の火の神を産んだ時、岩邪那美は陰部に大やけど負って死んでしまう。
伊邪那岐はその死を諦められず、黄泉の国に伊邪那美を追いかけたが、そこで見たのはウジがたかり、体のあちこちに雷神がとりついた妻の姿だった。
醜い姿を見られた伊邪那美は怒って伊邪那岐を追いかけたが、わずかの差で伊邪那岐は黄泉比良坂にたどり着き、現世に戻ることができた。
そして、その入り口を大きな岩で塞いだと言われているのだ。
この岩の先には伊邪那美が住んだ死者の国が有るのだろうか。
ちなみに、伊邪那美は黄泉の国の大神になったといわれ、ここに祀られている石碑には、子宝のご利益があるとされている。