私はいままであまり容貌に注意せず、ゾンザイな点が多かった。
ところがたまたま銀座のある有名な理髪店に行ったところ、そこのお店の人から次のように言われたことがあった。
「あなたは自分で自分の顔を粗末にしているが、これは商品を汚くしているのと同じだ。
会社を代表するあなたがこんなことでは、会社の商品も売れません。散髪のためだけでも、
東京に出てくるというような心がけでなければ、とても大を成さない」
まこともってもっとも千万で、至言なる哉と大いに感心し、それ以来、多少容貌に意を用いるようにもなった。
私はその人から貴重な当世哲学を教えられたのである。
※松下幸之助【一日一話】より