原題:FACES IN THE CROWD (PG12)
2011年・アメリカ(102分)
監督&脚本:ジュリアン・マニャ
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、ジュリアン・マクマホン、サラ・ウェイン・キャリーズ、
マイケル・シャンクス、セバスチャン・ロバーツ、デヴィッド・アトラッキ
マリアンヌ・フェイスフル ほか
鑑賞日:2012年5月21日 (渋谷)
女性を殺害してレイプする、シリアル・キラー「涙のジャック」。
すでに5人の女性が犠牲となっているが、
目撃者がおらず、
警察は何ひとつ手掛かりをつかむことができずにいた。
ある夜、小学校教師のアンナは、クーガー仲間との飲み会の帰り道、
運悪く涙のジャックの犯行現場に出くわしてしまう。
そのまま追いかけられ、ナイフで切りつけられるが、
すんでのところで川に落下して逃れられる。
だが、その際のショックで
人の顔の識別が不可能になる相貌失認という障害を抱えてしまう。
警察に協力するため、
目撃した涙のジャックの顔を懸命に思い出そうとするアンナだったが……。
橋から転落する際、頭を打ちつけるシーンが痛い!!
ゴン!という効果音が強烈で、
あれほどの強打なら間違いなく即死だろっ!!
・・・と思ってたら、
ミラ演じるアンナは奇跡的に軽傷。
ただし、相貌失認という記憶障害なってしまう。
相貌失認・・・現実にある記憶障害らしい。
他人の顔が認識できない。
瞬きのたびに見知らぬ顔に見えてしまう。
友人、知人、恋人さえも顔が分からなくなってしまった。
それどころか、
鏡に写る自分の顔さえも、見知らぬ他人の顔に見えてしまう。
ジュリアン・マニャ監督は、
この相貌失認の演出に徹底的にこだわり、
観客もまた主人公同様に相貌失認に付き合わされる。
なにせ、
恋人のブライスだけでも、瞬間ごとにまったく違う顔に見えるのだから、
もう誰が誰やら?
(あれ?恋人の本当の顔って、どんなだったっけ?)と、こちらまで困惑。
全くのお手上げ状態。
*ブライス役のキャストだけで、15人の俳優名がクレジットされてました。
クーガーの友人いわく、
「毎晩違う男に抱かれるなんて夢のようじゃない?」
そう言われ、
ブライスの顔がラテン系の男に見えたまま抱かれていた自分を思い出すが、
「ない、ない。」と、アンナは照れながらかわす。
・・・という、この作品で唯一のジョーク・シーンもあるが、
事態は深刻。
顔が思い出せないのに、
“連続殺人犯唯一の目撃者”とTVで報道されれば、
ただで済まないのは必至。
確実に忍び寄る、連続殺人犯の影。
だが、誰が犯人なのか?
アンナ同様、観客にしても顔では判別がつかない。
今、隣に立っている男なのか?
柱の向こうから見つめてくる男なのか?
それとも、すれ違って行った男なのか?
まさか、恋人プライスなのか・・・?
いやいや、まさかまさか???
相貌失認という記憶障害を疑似体験しながら、
アンナの視点で翻弄される・・・、
そんな作品。
それでも、サスペンス映画らしく、ヒントはちゃんと差し挟まれていて、
注意して観ていれば、犯人が示されているという面白さも。
ただし、ラストを肯定できるか、どう受け止めるかで、評価は分かれると思う。
男の視点で言わせてもらえば、
まさかのオチに、口があんぐり!!
ミラの錯乱度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
相貌失認の恐怖:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
日本の禅、無の境地になりなさい:★★★★★★★
所詮、男なんて?:★★★★★★★★★★★★
女性のためのサスペンス映画度:★★★★★★★★★★★★★★★★
鑑賞後の総合評価:★★★☆
相貌失認・・・この特異な記憶障害になってしまったら、つくづく厄介だと思う。
女優ミラ・ジョヴォヴィッチの演技力が光る。