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『空気人形』 不覚!切なさにまさかの涙が・・・

2011年04月19日 | しみじみした映画

(R-15)
2009年・日本(116分)
               
原作:業田良家
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:world's end girlfreind
出演:ぺ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、オダギリジョー、富司純子、
   高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真理、寺島進 ほか

鑑賞日:2011年4月17日 (自宅)

鑑賞前の期待度:★★★


R-15で、空気人形とくれば、ある種のイメージが頭に浮かび、
しかも人形を抱いているのが中年男(板尾創路)で、
その人形が心を持つとなれば、
「う~ん?どうだろう?」
と、手を出すのを躊躇ってしまう印象だったのですが、
キャスティングを見て、考え直しました。
「もしかすると、いい作品かもしれない。」
そんな、是枝監督には申し訳ない理由で鑑賞してみました。

 

古いアパートで、ひとり暮らしをしている中年男の秀雄。
部屋には“のぞみ”という名の人形、
代用品としての空気人形がいた。
ある雨上がりの朝。
秀雄が出かけた後、人形はベッドから起き上がり、窓辺へ。
物干し竿から滴り落ちる雨の雫に触れた人形は小さくつぶやく、
「キ・レ・イ」と。
洋服に着替え、外へと出かけた“のぞみ”は、
好奇心に導かれるように、はじめて町中を歩き回る。
そして、レンタルビデオ店で働く純一に出会い、
心惹かれていく。

登場する町の人たちは、
一見普通だけれど、みんな虚しさを抱えて生きている。

そんな中、
公園で出会った老人と“のぞみ”が交わす会話が胸に痛い。

老 人「きみ、蜻蛉って虫、知ってるかな?
    蜻蛉はね、親になると、一日か二日で死んでしまう。
    だから体の中は空っぽで、胃袋も腸もないそうだ。
    そこには卵だけが詰ってる。
    ただ産んで、死ぬだけの生き物だ。
    人間も同じようなものだ。くだらんよ。」
のぞみ「わたしも空っぽなの。」
 胸元を押さえる、のぞみ。
老 人「こりゃ奇遇だねぇ。わたしも同じさ。空っぽだ。」
 老人もまた、自身の胸を指す。
のぞみ「ほかにもいるのかしら?」
老 人「今どきは、みんなそうだろう。」
のぞみ「みんな?」
老 人「ああ。特にこんな町に住んでる人たちは。」
    君だけじゃないよ。」
そう言って、老人が見つめる先には、
30階以上の超高層マンションが、いくつも立ち並んでいる。

 

人形が心をもち、人間と恋に落ちて・・・
なんて
、よくあるファンタジーだし、
人形の目を通して、人間社会を風刺するのもよくある話と思いつつ、
「こうした大人のための寓話は、
 リアルな世界に、
 ファンタジーな要素を、いかに違和感なく溶け込ませるかだ・・」
などと批評家ぶった目線で終始冷静に、客観的に観ていました。
いや、観ていたつもりだったのですが、
いつの間にか、
“のぞみ”を演じるぺ・ドゥナの芝居に魅せられていたのか、
あるいは是枝監督の世界に引き込まれてしまっていたというべきか。

このまま終わりかと油断した刹那、
「ウグッ!!」
最後の最後にギュッと胸が締め付けられ、
涙腺のスイッチをグイと押され、
ダーッと涙が溢れてしまいました。

「不覚!!
 まさか、このタイミングで、そういう演出とは!」
その瞬間まで、全く予想できませんでした。

持ってはいけない「心」を持ってしまった空気人形の、
嬉しくて切なく儚い愛の物語に、心を打たれました。

是枝監督の不意打ちに、完敗です。

出演者全員に拍手。
カンヌ映画祭で絶賛も頷ける、いい映画でした。


全編を漂う孤独感:★★★★★★★★★★★★
“のぞみ”の独白の哀切度:★★★★★★★★★★★★★★★★
ぺ・ドゥナの好演度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
共演者たちの説得力:★★★★★★★★★★★★★★★★
監督・脚本・編集の是枝監督のワザ:★★★★★★★★★★★★★★★★

鑑賞後の総合評価:★★★★

                    

<My Favorite Scene>
自ら[空気入れ]を捨てた“のぞみ”が、
アパートの部屋の中で、
フワフワと漂うシーン。


ちなみに、
本作の美術監督は、リアルとファンタジーを融合させる名手、
種田陽平。
『キル・ビルVol.1』(’03)、『ザ・マジックアワー』(’08)や、
『借りぐらしのアリエッティ』(’10)でも、その才を発揮。

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