「あの世とこの世とを自由に行き来した」とか「地獄でえんま大王の補佐をしていた」などの伝説が残る平安時代の超人・小野篁。
彼が開いたという、地獄のえんま大王を祀る「千本ゑんま堂(引接寺)」。
本シリーズで何度もとりあげたスポットですが、今回はここに伝わる『千本ゑんま堂大念仏狂言』をとりあげます。
昨年5月にも、シリーズ第181回で紹介しましたが、毎年5月の連休頃に、千本ゑんま堂にて上演される伝統芸能です。
今年も観に行きましたが、今回はそのうちのひとつ『鬼の念仏』という演目を紹介します。
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まずは、『千本ゑんま堂大念仏狂言』とはどういうのもかを説明しましょう。
シリーズ第181回の復習になりますが、まずは大まかな説明を。
シリーズ第180回でも少し触れましたが、この寺を開山した定覚上人が「えんま王の御心によって起された奇跡を伝えるため」に、つまり布教と、京の葬送地に葬られた人々の供養のために始めたものです。
こうした布教の進める中で寺社勢力が興した狂言を「念仏狂言」と言います。
これはら時代が経るにつれて宗教色も次第に薄れ、現在に至っています。
現在京都には、「壬生狂言」「神泉苑狂言」「嵯峨(清涼寺)狂言」、そして「ゑんま堂狂言」の4つの念仏狂言が残されており、それぞれ登録無形民俗文化財や無形重要文化財に指定されています。
ほとんどの念仏狂言が、囃子に合わせての無言劇なのに対して、この「ゑんま堂念仏狂言」にはほとんどの演目に台詞があります。
しかも現代人の我々にも平易でわかりやすい言葉ですので、鑑賞もしやすくなっています。
今回は、その演目のひとつ『鬼の念仏』の様子をお届けします。
当日の千本ゑんま堂の様子です。
5月にしては寒い夕方でしたが、連休期間と言うこともあってか、多くの観客が集まっていました。
では早速、狂言『鬼の念仏』の様子を。
まずはオープニングの、「わに口」と呼ばれる鉦による囃子です。
この念仏狂言の囃子は、わに口と呼ばれる鉦と、しめ太鼓、篠笛により行われ、素朴なメロディー、リズムが特徴です。
場所は地獄や極楽などに通じる「六道の辻」。
「罪人どもを責めて、責めて、責め倒してやる!」と息巻く地獄の鬼が、亡者を待ち構えています。
そこへ一人の亡者がやってきます。
亡者は鬼に見つかり、鬼が手にした鉄杖で責め立てられます。
しかし、亡者が鉦を鳴らしながら「なんまいだ、なんまいだ」と念仏を唱えると、鬼は苦しみだし、倒れます。
鬼は再び亡者を鉄杖で責めますが、亡者の唱える念仏の力にはどうしても勝てず、倒れされてしまいます。
鬼は亡者に「おまえは一体何者か?」を尋ねます。
なんとその亡者は、「生前に釈迦やえんま大王の子守をしていた」という人物だったのです。
それを聞いて鬼は驚き、かしこまって「あなた様はこのような場所に居る方ではありませんので、どうぞ極楽へ」と極楽行きを勧めます。
しかしそれに素直に従う亡者ではありません。
両者の立場はすっかり逆転し、亡者は鬼を脅し、鬼の持つ鉄杖を捨てさせようとします。
鬼は嫌がり、鉄杖を隠してごまかそうとしますが。
しかし結局は見つかって、亡者の念仏に懲らしめられます。
鬼は嫌々ながら、鉄杖を捨てさせられます。
亡者はさらに、鬼の着ている虎皮の上着も捨てるように要求します。
鬼は捨てるのを嫌がって、捨てたフリをして股の間に隠そうとします。
しかしこれも見つかり、またもや念仏で懲らしめられ、虎皮の上着も結局捨てさせられてしまいます。
亡者は鬼に、自分が着ていた墨染めの法衣を着せます。
さらに、自分が持っていた鉦も、鬼の首にかけさせます。
それから亡者は鬼に、自分がしていたように、鉦を鳴らしながら念仏を唱えるように命令します。
もちろん鬼は嫌がりますが、亡者には逆らえないので囃子をしながら念仏を唱え始めます。
最初は嫌がっていた鬼ですが、次第にのせられていきます。
亡者「鬼が念仏唱えたら♪」
鬼「なんまいだ、なんまいだ♪」
念仏を唱える鬼の様子を見て安心した亡者は、地獄で苦しみ続ける多くの亡者を救うために、自ら進んで地獄へと向かっていきます。
このラスト部分の一部を、以下の動画でご覧いただきましょう。
【動画】千本ゑんま堂大念仏狂言『鬼の念仏』(ラスト部分)
今回はここまで。
シリーズ次回ではあとひとつ、この念仏狂言の演目を紹介します。
それでは、また次回!
*「千本えんま堂狂言保存会」のHP
http://www.geocities.jp/e_kyogen/
*「千本えんま堂」の公式HP
http://yenmado.jp/
*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm
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