どうも、こんにちは。
仕事などオフの多忙が続き、前回記事から長いこと更新を滞らせてしまいましたが、ぼちぼちと、少しずつでもシリーズ再開していきたいと思います。
今回は、かつては京都と外の世界とを隔てる境界のひとつであり、小野篁が京都を霊的・呪術的に守護する為に創った六地蔵のうちの一体が置かれていたという、深泥池地蔵堂を訪れます。
まずはいつもの通り、交通・アクセスから。
京都市営地下鉄「北山」駅から。
もしくは、京都市営バス「北山駅前」停留所か、同「上賀茂榊田町(かみがもさかきだちょう)」停留所から。
そのいずれかから、京都府道103号上賀茂山端線(きょうとふどう103ごう・かみがもやまばなせん)を北へと進みます。
途中分かれ道がありますが、そこを向かって左(西方向)へと進みます。
ちなみに、ここを右(東方向)へ進むと、心霊スポットや妖怪伝承地としても全国的に有名な深泥ヶ池へと行けます。
(※深泥ヶ池は、本シリーズでは第140回から第142回で紹介したことがあります)
住宅街の中を通る道を進んでいきますと、左側(西側)に目指す深泥池地蔵堂の入り口が見えてきます。
元々は、小野篁が木幡山にあった一本の桜の大木から創られた6体の地蔵菩薩像、通称「六地蔵」のひとつが祀られていたと伝えられています。
最初は6体とも木幡の大善寺(※シリーズ第210回で紹介)で祀られていました。後白河天皇の時代、都に疫病が流行した時天皇は、平清盛に当時都に6カ所あった出入り口に守り神として祀るように命じます。清盛は6カ所それぞれに六角堂を建て、「廻り地蔵」と名付けました。そこから「六地蔵」と、毎年8月22・23日の「六地蔵巡り」の風習が始まったとされています。
(※六地蔵巡りについてはシリーズ第209回で紹介)
六地蔵のうち一体に、現在は鞍馬口・上善寺に祀られている「鞍馬口地蔵」(※シリーズ第210回で紹介)がありますが、明治期の廃仏毀釈により移転されるまでは、「深泥池地蔵」としてここに祀られていたそうです。
つまりこの地はかつて、京の都の出入り口、都の内と外の世界との境界線のひとつであったのです。
まずは本堂へ礼拝。
こんな看板も。
安産のご利益があるのでしょうか。
廃仏毀釈により1869年に地蔵菩薩像が上善寺へと遷された後、明治2年(1869年)と明治16年(1885年)と深泥池村は2度の火災に遭い、明治28年(1895年)に五条の十念寺から新たに地蔵菩薩像を迎えられ、現在まで「深泥池地蔵」として信仰されています。
おそらく当時村の人々は、2度の火災を、村の守り神でもあったお地蔵さんを追い出してしまった祟りか仏罰であるかのように恐れたのではないでしょうかね。
なお、境内に掲げられた説明書きによりますと、十念寺から迎えた地蔵菩薩像もまた、小野篁の手による作品だという話ですが、こんな驚くべき偶然が・・・というより、この地はよほど地蔵菩薩か小野篁と縁が深いのか・・・。
ところで境内の片隅にこのような石仏が。
何か曰くなどがありげな石仏だと思ったので、調べてみると。
この石仏は、鎌倉時代末期から南北朝時代に造られたという弥勒菩薩像だということがわかりました。
しかもかつて境内には、この弥勒菩薩像だけでなく、釈迦如来像、文殊菩薩像、薬師如来像、金剛界台如来像、延命地蔵菩薩像、勢至菩薩像と、全部で7体の石仏が祀られていたそうです。
しかし先の大戦で防空壕設置を理由に他へ遷された後は行方知れずとなり、弥勒菩薩だけが現在まで残されているという話でした。
この弥勒菩薩像をよく見ると、首の辺りが折れたのを修復した跡が。
まさしく廃仏毀釈以来の、激動と混乱の近・現代日本史に翻弄されてきたという感じですが。京都には他にも、その時代の人間の勝手な思惑や欲望の犠牲となった、破壊や破損、強制移転や行方不明などの酷い目に遭った仏像がたくさんあります。石垣などの建築資材に転用された石仏もありました。実際に筆者も、本シリーズの取材などで京都各地を巡ってそのような石仏や石塔などをたくさん見てきました。
ところで、民族学の研究などによりますと、妖怪や幽霊などの怪異に遭遇する場所は、橋や町や村の入り口など、人の住む世界とその外の世界との境界線にあたる場所であるそうです。
京の都と外の世界との境界線であったこの辺りも、人と怪異が遭遇する場所のひとつであったと言えるのでは。
事実、この近くには「深泥池」という古くから怪異などの伝承が遺されている魔所もありますし。
さらにこの地蔵堂のすぐ近くにも、鬼や異世界の伝承が遺されている霊場魔所があるのですが・・・その話はシリーズ次回とします。
今回はここまで。
また次回。
※ところで2024年の目標で、「(本シリーズでの)新規スポットの記事を最低でも20以上、出来れば30以上書く」としましたが、今回で10カ所目。
目標まであと10本(10カ所)です。
*「深泥池地蔵堂」へのアクセス及び周辺地図かこちら。
*『京都妖怪探訪』シリーズ