ロシアの北都 サンクトペテルブルク紀行

2005年秋から留学する、ロシアのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)での毎日を記します。

国際列車を見送る

2005-10-11 20:21:39 | Weblog
2005年10月11日 最新の出来事
・昨日まで日本センターが休みで、今日ようやく日本語入力ができるようになりました。10月5日の記事(「太っ腹男の駆け込み乗車」)は昨日アップしたのですが見づらくならないようにするため記事の日付順に掲載してあります。
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2005年10月09日
ロシア滞在39日目
【今日の写真:ヘルシンキへ帰るフィンランド人(左)と見送りに来たロシア人(右)(ラドガ駅で)】

今日の主な動き
07:30過ぎ 起床
09:00過ぎ頃 朝食
13:39 出かける
13:47 マヤコフスカヤ駅
13:55 ガスティニードヴォル駅 乗り換え→ネフスキー通り駅
14:03 セイナヤプロシャチ駅
14:14 洗濯屋
14:18 洗濯屋の向かいのカフェで昼食
14:59 ネフスキー通り駅
15:15 アレクサンドルネフスキー広場駅 乗り換え→アレクサンドルネフスキー広場駅
15:25 ラドシュスカヤ駅
   ラドガ駅の構内を観察
16:43 ラドシュスカヤ駅
16:50頃 アレクサンドルネフスキー広場駅 乗り換え→アレクサンドルネフスキー広場駅
16:59 マヤコフスカヤ駅
17:05頃 インターネットカフェ
17:44 薬局
17:49 帰宅

 今日も午後から出かけた。最初洗濯屋へ行く。アントンが店番をしていたが、今日は混んでいるうえ、機械が故障しているらしくかなり待たなければならないらしい。アントンは「すまない」と申し訳なさそうな顔をしていた。仕方ないのでまた出直すことにして、駅を見に行くことにした。

 せっかくの休みなのでラドガ駅まで足をのばす。昨日の記事でも触れたが、ラドガ駅はロシア北東部やフィンランドへ向かう列車のターミナル駅。実は冬のヨーロッパ旅行、アメリカにいる友人K太の情報によると、フィンランド経由で往復した方がモスクワ経由よりもいくらか安いらしく、ヘルシンキまでの値段を調べるのも一つの目的。

 ラドガ駅構内の電光掲示板は、モスクワ駅のよりも幾分新しいようだった。壁面に掲示されていた時刻表を見て感動したのは、列車番号の末尾にアルファベットがついていたこと。パブロフスクで時刻表を見たときから思っていた疑問が一つ解決した。やはりロシアの鉄道の列車番号も、数字だけでは終わらないようである。ちなみにアルファベットは"с"(英語で言えばsに相当)と"п"(同じくpに相当)の2種類。どう使い分けているのか、今後の研究課題である。
 その時刻表によると、ヘルシンキまで行く列車は1日3本出ていることが分かった。所要時間は5時間50分。きっぷ売り場の窓口で値段をたずねるが、よく聞き取れない数字。私がまだ聞き取れないということは4桁以上の数字である。ぐずぐず考えていると、係の女性は「1900」と紙に書いて見せてくれた。フィンランドまでは2等車でこの値段(1900ルーブル、日本円で約8000円)らしい。日本の感覚で言えば廉価だが、交通料金が激安のロシアにしてはかなり高めのお値段。ヘルシンキよりも遠いはずのモスクワまでは350ルーブルくらいだから、その差はかなり大きい。国境を越えると一気に値段が上がるのかな。
 
 一日たった3本のヘルシンキ行きのうち、16:28発の36с(「シー」ではなく「エス」)「シベリウス号」がもうすぐ発車する時間だったので、ホームに列車を見に行った。
 8番線に停車していたシベリウス号の車体には、英語で「ヘルシンキ-サンクトペテルブルク」と書いてあったからこの路線専用の客車なのだろう。先頭は昨日モスクワ駅で見たオーロラ号と同じような、巨大な電気機関車。この列車がわずか6時間足らずでペテルブルクとヘルシンキを結ぶのである。
 ふと、入国審査はどこでやるんだろうかという疑問がわいた。そこで車掌に「パスポートはどこで見せるのか?」と聞くと、駅名を教えてくれて、その駅に着いたときに車内で提示するのだと説明してくれた。
 私が車掌と話していると、年輩の男性が英語で話しかけてきた。「何か聞きたいことがあるのか?」と声をかけてきてくれたので、「パスポートをどこで見せるのかたずねたところだ。」と英語で答えると、「電車の中で見せるのだ」と車掌と同じことを言っていた。「入国審査」という単語が通じなかったので、その男性の英語もちょっと怪しかったが、ロシア語と英語を混ぜながら会話をする。
彼はロシア人ではなくフィンランド人。私が日本人であることを告げると、「ナホトカに1年半行っていたから日本は近くだ。」とご機嫌の様子。札幌という地名も知っていた。「今度フィンランドに行くかも知れないが、ビザはいるのか?フィンランドはEU加盟国だが?」と聞いてみる。すると「(正確には)分からないが、いらないと思う。うちらの大使館に聞いてくれ」とのこと。後から思えばアホな質問だったが、フィンランドでは何語を話すのかも聞いた。フィンランド語はあるらしいが、英語も通じるという。彼はフィンランド語、英語、ロシア語の3カ国語ができる。ハイテンションで終始上機嫌な人だった。
 彼を見送りに来ていたのはカザフスタン生まれだというロシア人。名前はヴァレンチン=アレクセイビッチ。私のノートに携帯電話の番号を書いてくれた。2人は仕事仲間のようである。ヴァレンチン氏の説明によるとそのフィンランド人の妻はカザフスタン人なので、彼はフィンランド語とカザフ語の2つの名前を持っているらしい。ホームで話をしているうちに発車時刻になった。
 16時28分、定刻にシベリウス号は発車した。「ロシアの鉄道だからどれだけ遅れてもおかしくない」という先入観を持っていた私は、これだけの正確さに驚いた。発車と同時に、ホームに音楽が流れた。駅の中へもどる階段を上りながら、見送りのヴァレンチン氏に「この音楽は何か?」と聞いてみた。が、どうやら彼も知らないようだ。「フィンランドの国歌かな?」と言っていた。

 初めて見る国際列車、堂々としていてとても素敵だった。
 私が夕方見送った列車が、夜には国境を越えたヘルシンキに着いているのだ。今日出会ったヴァレンチン氏とその友人にとって、フィンランドとロシアの距離感はどんななのだろう。
 鉄路の彼方に異国がある世界。また一つ、日本とは違うんだなあということを感じた。