ロシアの北都 サンクトペテルブルク紀行

2005年秋から留学する、ロシアのサンクトペテルブルク(旧レニングラード)での毎日を記します。

犯罪多発地帯

2005-10-28 18:50:21 | Weblog
2005年10月24日
【今日の写真:ブリーニーを求めて並ぶ人々。バシレオストラフスカヤ駅の向かいで】

今日の主な動き
11:47 出かける
11:53 ケンタッキーのATM
11:57 マヤコフスカヤ駅
12:04 ガスティニードヴォル駅
13:18 洗濯屋
12:34頃 日本センター
14:08頃 ネフスキー大通り カザン聖堂近くのバス停
14:38 大学の事務室のある建物
14:58 コピー屋
15:08 バシレオストラフスカヤ駅前の店でブリーニーを食べる
15:15 バシレオストラフスカヤ駅
15:26 ガスティニードヴォル駅
15:41 洗濯屋
15:48 洗濯屋向かいのレストラン
16:24 洗濯屋
17:04 日本センター 領事館主催の安全情報に関する集会
18:00頃 ガスティニードヴォル
18:37頃 ガスティニードヴォル駅
18:46 マヤコフスカヤ駅
18:59 帰宅
19:10頃 出かける
19:13 薬局
19:17 帰宅

 今日は先生の都合により授業がお休み。昼前から出かける。

 11月分のホームステイ費用を支払うため、ケンタッキーのATMで現金を引き出した後、まずは洗濯屋へ。アントンが店番をしていた。最近ここでの会話は、英語を使わなくてもロシア語だけでなんとか成立するようになってきた。そのこともあってか、彼はまた私のロシア語が上手くなっているとほめてくれた。

 洗濯の間に日本センターでインターネットを利用し、その後大学へ向かうためにバス停でバスを待つ。メトロでも良かったのだが、たまにバスに乗ってみようかなと思ったから。ここのバスやマルシュルートカには路線別に番号がついていて、どれに乗ればいいのか分かりやすい。大学近くのバス停とネフスキー大通りを往復するには、147番のバスが便利で、これまでも何度か利用している。
 ネフスキー大通りは市内で一番大きな通りだけあって、バスやマルシュルートカ次々にやってくるが、なかなか147番のバスが来ない。15分近く待ってようやくバスに乗る。
エルミタージュ美術館を右に見て、ネヴァ側にかかる橋を渡ると大学は近い。が、バス停が大学から結構離れたところにあるため、そこからさらに10分近く歩かねばならない。 ようやく大学の事務室に着いたはいいが、手続きをしてくれるコワレンコ先生が不在のため、今日は支払いができず。来たついでなので、同じ部屋にいたオリガ先生に、12月にヨーロッパに行くため、冬休みと重複しない期間は授業を欠席する旨伝えた。

 帰りはメトロでと思い、バシレオストラフスカヤ駅まで歩く。駅前の通りをはさんだ所にはちょっとした飲食店が並んでいる。昼食がまだだったので、ブリーニーを食べることに(【今日の写真】の店)。ブリーニーは私の好物で、日本で言えばクレープとほぼ同じ食べ物。りんごやスメタナ、蜂蜜、チーズなどを入れて食べる。今日はりんごのブリーニーを注文。35ルーブルと安い上、結構大きい。出来立てのブリーニーはとても熱くて、こんな寒い日には最高の食べ物だと思った。

 ところで、今日は日本センターで、在ペテルブルク総領事館主催による安全情報に関する集会があったので、私も行ってみた。
「サンクトペテルブルク市 治安情勢概況」というタイトルで、領事館の警備担当者が説明をしてくれた。
 それによると市内で発生した2004年の一般犯罪は71,140件。今年の1月から8月までの犯罪件数は62,462件(解決率は30.3%)で、そのうち殺人が585件(同74.1%)、路上・街頭における窃盗・強盗は25,686件(同19.4%)。一番犯罪指数の高い地区は中央地区で、この地区における外国人被害も最も多い。

 特筆すべき犯罪として3つが挙げられていた。
 1つ目は住居侵入による窃盗・強盗。犯人は手当たり次第にドアや窓などを破壊して住居に侵入し、金品を窃取していくのだという。
 2つ目は公道上での「当たり屋」による窃盗で、1日平均10件発生しているらしい。当たり屋といっても日本のように保険金目的の犯罪ではない。車をぶつけて、当事者が車外で話し合っている間に犯人の仲間が車内からなんらかの財物を窃取していくという方法。実に単純なやり方で、さすがロシアだと思った。ダッシュボードから盗んでいくことが多いため、犯人は「ダッシュボード盗人」とよばれるらしい。
 最後はやはり外国人を狙った犯罪。今年は既に703件発生しており、前年同期の350件と比べて2倍以上に増えているという。警察に申告しない人もいるため、実際には少なくともこの数字より3割は多いそうだ。中でも市内の地下鉄構内での襲撃が65回と多い。 
 外国人目当ての犯罪は、捕まった犯人の92%が所持金品目当てだったというが、担当者は残りの8%に注意する必要があると話していた。言うまでもなくこの数値は人種的・民族的理由の犯罪があるということを示唆しているわけで、具体例として話に出てきたのは、9月にコンゴからの留学生が殺害された事件(このブログでは9月17日付けの記事でこの事件について触れた)。日本人が殺人事件に巻き込まれたり、人種的・民族的理由で狙われた犯罪は現時点では報告されていないが、いつ起きてもおかしくないと注意を促していた。
 担当者いわく、ペテルブルクでの犯罪は「なんでもあり(この言葉は新聞の日本語訳なのだそうだ)」でロシア人、外国人問わず犯罪被害に遭うことは少なくないという。

 これだけなら特に驚くことはなかったが、最後に「注意すべき地区」として挙げられた場所を見てショックを受けた。
 地図を表示しながら担当者が挙げたメトロの駅名はネフスキー通り駅、ガスティニードヴォル駅、マヤコフスカヤ駅。「今日の主な動き」に掲載しているとおり、いずれも私がほぼ毎日利用している駅である。確かにこれらの駅には、いずれも出入り口が複数あって中も入り組んでいるため、犯罪者にとっては好都合なのかも知れない。
 私が利用している路線は、ネフスキー大通りの真下を通る路線(「リニヤ3」と呼ばれる)で、ガスティニードヴォル、マヤコフスカヤ、アレクサンドルネフスキー広場の3駅が連続してそれぞれ他の路線との乗換駅になっていることもあって、多くの人が利用している。いわば「地下のネフスキー大通り」である。ラッシュ時の混雑は激しいし、私自身や先生もメトロの中でそれぞれデジカメ、携帯電話を盗まれているから、犯罪が多発しているということは容易に想像がつく。
 メトロを利用する際の注意事項として、「混雑した車両は避ける」「乗降時に自分の荷物を確認する」などが挙げられていたが、毎朝のラッシュを考えれば、混雑していない車両などない。せいぜい荷物やポケットに十分注意して犯罪被害の防止に努めるのが限度である。しかしだからといってメトロを利用せずに生活することは、私には無理。
 147番のバスで通学することも不可能ではないが、バスで通学することになったら、寒いバス停でいつ来るか分からないバスを待たなければならなくなるうえ、所要時間が長いので大遅刻の常習犯になってしまう。バスには地上の風景を楽しめるという、メトロにはないメリットがあるが、それでも暖かく、2分おきに次々にやって来て、所要時間が決まっているメトロは通学には最適である。もうラッシュや押し合い合戦にも慣れたし、自分自身が必要な注意を怠らなければ、被害に遭う可能性はかなり減少すると考えている。

 他に注意すべきとして挙げられた場所はモスクワ駅周辺、セイナヤ広場、カザン寺院、イサク寺院周辺、エルミタージュ美術館の館内やその周辺など。要するに人が集まるところ犯罪ありというわけである。これは日本でも、おそらく世界どこへ行っても同じであろう。

 ちなみに領事館の人の説明によると、ペテルブルクにおける10月現在の日本人(長期)在留者は165名で、このうち90名が学生だという。学生のネットワークも活用して情報交換し、自分独りでも事態に最低限対応できる心構えを持って学生生活を楽しんで下さいと言われた。
 
 説明会は45分くらいで終わった。今日の説明を聞いていて意外だったのは、ちゃんと内務局による犯罪の統計があるということ。よく考えれば当然なのだが、あれだけ犯罪が発生していてもきちんと把握出来ていることに不思議と安堵感を覚えた。ということは、私のデジカメ事件も未解決事件として今年の犯罪件数にカウントされるわけだ。しかも地下鉄車内での外国人の被害という、典型的な犯罪として。

 そんな説明会の後だったが、ガスティニードヴォルに寄った後の帰り道は今日も、注意すべきとしてご指名を受けたガスティニードヴォル駅からメトロに乗る。
 相変わらず人は多かったが、それもいつものこと。犯罪も多いかもしれないが、これだけ人が密集すれば無理もなかろう。これから寒くなる時期、車内はもちろん、駅構内も暖かく、速いメトロはやはりありがたい交通手段、私の足でもある。