国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

なれる!大学生(実践編)

2023-05-29 13:31:50 | 国語

元は2018-09-09の記事です。なもんで、

なれる!大学生(入門編)」の続きみたいなものです。未完の参考書の一部です。読んでないという人は長いけどこの文章を読んでいただければ幸いです。

一応、思考法やパクリ方を教えた後での展開です。

 思考法では『小論文を書けるようになるために』に類似の内容が書かれています。もっと詳しく細かい内容になりますが。

 パクり方に似ている内容としては本ブログの内容としては『小論文の上達法(メモ活用)』に近いか。

 ドリル方式で書くつもりでした。完成していたら、画期的な参考になったやもなあ。

 関心のある出版社はないものか。具体的に形にするもの前に病気で臥せってしまった。


●パクリ方は私の小論文の十八番なんですが、著作権的に表に出せないので、気になる方は連絡してください。

解答は「小論文入門」の解答を使います。ちょっと異なるアプローチを楽しんで貰えたら幸いです。

長いけどな。


     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「さて、課題文のない小論文を実際に解いてみよう。発想法を忘れずに、思考法を忘れずに取り組んでくれよ」
「はい。今までのノートはあってもいいですか」
「いいよ、もちろんだ。練習だからじっくりと考えていこうか」

  
課題
若いときに外国で1年間暮らす機会が与えられたとします。あなたは次の2つのうちどちらを選びますか。600字であなたの考えを書きなさい。

 a)できるだけ多くの国・地域を訪ねる  b)1つの国・地域にずっと滞在する



「さて、気をつけないことは何だい」
「いきなり結論を出さないこと。考えることです」
「よし、そのためにはどうする」
「まず、解答の条件を考えることです」
「メモにしてごらん」
 Kは画面に入力した。


① 「どちらか」を選ぶ。
② 600字なので、複雑な構成は無理。


「まあ、いいかな。しかし、肝心な条件が抜けているぞ。少し加えるよ」
Kは緊張しつつ、画面を見る。小論文の怖さは自分の存在が否定されるような気がすることだ。自分の一部の考えにすぎないはずなのに。


①  「どちらか」を選ぶ。
② 字数も大事な情報である。600字なので、複雑な構成は難しい。今回は主張→理由→反対意見(譲歩)→最大理由(逆接)→結論あたりで練習したい。
③ 「若いときに」が条件。


「先生、②で複雑な構成は無理と書いた割にはきつくないですか、この構成」
「お。いい指摘だな。そうかもしれんが、最大でも5段落程度だし、今回は、ついでに譲歩逆接の練習をしたいんだ」
「譲歩逆接?」
「なるほど・たしかに~しかし・だがなどを使うパターンだよ」
「よく現代文で見ますね」
「大人の考え方ってことだ。ほら、全否定より、ちょっとは認めた方が悪い気はしないだろ」
「なるほど」
「親と話し合いをするとき、『なるほどあなたの言いたいことはわかったわ』と言われたら、その後で否定されるのわかるだろう」
「はいはい、『たしかに、あなたは優しくていい人なんだけど…』と言われたら『…』の部分は省略してもわかりますもんね」」
「お前の失恋話は聞いていないぞ」
「体験談じゃないし!」
「で、だ。ここでは、③が重要だ。「若いとき」ってどういうとき?」
「えと、高齢者でなく、壮年でもなく・・・」
「誰がおっさんやねん」
「なんで関西弁? つか、先生のことじゃないし」
「若いときとは、君のことだろう。大学生の卵たる君のことだ。君が当事者として、若いときをどう捉えるんだ? むろん、俗に言われているような意見を考えるなよ」
「俗に言われているようなことって、その国をじっくりと理解するために一年間いる方を選びますとかですか」
「そう、よくわかっているじゃん」
よかった。そう答えるつもりだったのだ。しかし、一般論を疑うということができているかもしれないぞ。
「むろん、ユニークな根拠があると一般論も立派な答えだぞ、念のため」
「はい。次は自由に考えれば、いいんですか」
「うん、けど・・・」
「制限や条件を守ってですね」
「ということは」
「aとbについて、どんどん考えていけばいいんですね」
「OK。どんどん入力していって。なお、どちらでもかまわないはだめだぞ」
「どちらを選びますかという条件があるからですね」Kはそう言いながら、入力し始めた。



ア たくさんの国を知ることができる
イ 気候とか地理はたくさんの国を見ないとわからない

ア 深く知ることができる
イ たくさんの国だとたくさんの言語を知らないと無理。現実は一ヶ国語でも大変。


 Kの手が止まった。
「どうした」
「すいません、意外と考えが浮かびません」こんなに自分は発想が狭いのか。
「どうした大学生の卵。もっと高度化してみろ」
「高度化って、大学のHPや現代文で使われている言葉や考えを利用するんですよね」何が、何がある。今までノートにメモっていた語句をさがしてみる。あー、同じ内容を別の表現にしてみよう。



ア たくさんの国を知ることが多様性の理解につながる。
イ 気候とか地理はたくさんの国を見ないとわからない

ア 深く知ることができる
イ たくさんの国だとたくさんの言語を知らないと無理。現実は一ヶ国語でも大変。


「お。かっこいいな、多様性か」
「この調子でいけそうな気がしてきました」きっかけが大事なんだな。aに偏るかもしれないが、もっと書いていこう。



ア たくさんの国を知ることが多様性の理解につながる。異文化理解。
イ 気候とか地理はたくさんの国を見ないとわからない。身体レベルの理解。

ア 深く知ることができる。本質を知ることができる。
イ たくさんの国だとたくさんの言語を知らないと無理。現実は一ヶ国語でも大変。


「おー、レベルをあげてきたな。高度化できているわ」
「なんか、aの方がよくなってきましたね」
「勢いというのもあるから、気にするな。aを主張にすればいいことだけのことだ。ところで、両方について考えないといけない理由はわかる?」
「反対意見を考慮するためですかね」
「そう、反対意見をつぶすことを念頭に考えを深めるといい。ところで・・・」
「あ。若いときという条件を忘れていました」
「たぶん、これを利用すると面白いぞ。どちらを利用すべきか見えてくる」
うん、なるほど、思わず、表情がゆるむ。自分が考えることができているという実感がたまらなくいい。



ア たくさんの国を知ることが多様性の理解につながる。異文化理解。若いときは多くの経験が重要。
イ 気候とか地理はたくさんの国を見ないとわからない。身体レベルの理解。

ア 深く知ることができる。本質を知ることができる。本質? 国の本質を若いときに理解できるか?
イ たくさんの国だとたくさんの言語を知らないと無理。現実は一ヶ国語でも大変。いや、英語と身振り
手振りも若いときにはいいんじゃないか。
ウ 移動時間が少なく、実際に外国にいる時間が長いのではないか。


「bがつまらないものになりましたね。むしろ書いていて、疑問が出てきました」たまたまかもしれないが、Kにはbが魅力的にならない。
「ついでにサービスだ。グローバル社会とか、グローバリゼーションって言葉を知っているか」
「はい、地球が一つなるような意味ですよね。よく大学のHPにありますね」ノートにもあったのに、見過ごしていた。失敗した。
「この単語も使って思考してごらん」



ア たくさんの国を知ることが多様性の理解につながる。異文化理解。若いときは多くの経験が重要。現代はグローバル社会=一つの地球=多様化をつぶす→よくない面。グローバルに対応していない国を知る機会は減るし、多様性がなくなっていく。
イ 気候とか地理はたくさんの国を見ないとわからない。身体レベルの理解。

ア 深く知ることができる。本質を知ることができる。本質? 国の本質を若いときに理解できるか?
イ たくさんの国だとたくさんの言語を知らないと無理。現実は一ヶ国語でも大変。
ウ 移動時間が少なく、実際に外国にいる時間が長いのではないか。


「うん、弱者への配慮もできそうだな。構成をそろそろしてみようか。さっき書いたけど、以下のパターンで書けるかな」
主張→理由→反対意見(譲歩)→最大理由(逆接)→結論
「はい、わかりました」主張は、理由は、「たしかに・・・しかし」を使う。意識すべきことを念頭に思考を進めていく。


1 aを選ぶ
2 ア 多様性の理解。グローバル=多様性× 多様性の肯定(正しさ) 
イ 気候、地理  身体での理解
3 短期間になるので表面的。本質×
4 若いとき=本質を理解できないとき
5 bのために、まず、aを。


「おお、bのために、まず、aをって展開いいな。単純に全否定していないから、大人の知性を感じるぞ。これで書いてみよう。」
 ふう。「大人」の入り口に立たせる小論文を習ってよかったと思う。
1 aを選ぶ
 私はaのできるだけ多くの国を訪ねる方を選ぶ。
「あなたはという指定があるから、私という主語を置くのは大事だぞ。Good」
 うん、小論文は出題者とのキャッチボールなんだ。あなたといわれたら「私」がくるんだ。
2 多様性の理解。グローバル=多様性× 多様性の肯定(正しさ)
気候、地理→身体での理解
「ここを文章にするには、グローバリゼーションの処理が面倒くさいかな。また、多様性の正しさを説明することが重要になる」
「極端な話、一つの地球としてみんな同じような文化だと、多様な生き方ができないんですよね」
「そうそう、全ての国がファーストフードになったら、どうさ? 全員が似たような生き方になったら、どうさ?」
「いやですね。ある程度、自由な生き方があるべきですよ」
「自由っていいねぇ。解答に入れてほしいね」
余談だが、ブラック企業を全員がいやがっている中で、ブラック企業で働かなかったら、Kの劇的なまさに個性的な成長はなかっただろうし、その後の自由な人生も歩めなかっただろう。もっとも、それが幸せかはわからないが。
「3、4、5段落はいけそうかい」
「がんばります」ここまでヒントをもらったのだから、最後はしめたいものだ。




【Kの解答(助言あり)】

 私はa)のできるだけ多くの国を訪ねる方を選ぶ。
 それは、文化の多様性、人間の多様性を理解できるからだ。現代は時にグローバリゼーションの名のもとに多様性が見えにくい。しかし、多様な文化のある世界の方が多様な生き方ができる社会であり、全員が決まった生き方をするより自由な分、望ましいと私は考える。また、多くの国に行くことで様々な地形や自然に触れ、身体の感触で世界を実感できるからだ。一つの国と自国では体験できる世界に限界がありすぎる。外国に行くことを選ぶのなら、経験は豊富な方がいいだろう。
 たしかに、短期間の滞在で理解できることなど表面的なもので、ずっと滞在する方がその国の本質を理解できるという意見もあるかもしれない。
 しかし、若いときに本質がわかるだろうか。むしろ、本質を知りたい国を探すべきなのだ。なぜなら、本質を知りたい国を選ぶことは経験や知識不足から難しいからだ。
 だから、若いときはできるだけ多くの国を訪ねることで経験や知識を深めることが望ましく、もっと深く知りたいと思える国を探す機会にすべきなのだ。
 






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