ほんとうは
ひとりで歩ける。
振り返らず、
ひとりでどこまでも行ける。
だけど
行かない。
あのひとは
心配するのが趣味だから。
そして
あれこれ役に立たない世話を焼くのが好きだから。
心配させてあげるため、
世話をさせてあげるため、
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ーあの時は、 ごめん、なんて言って、ごめんな。
あの時、おまえが 「どうしてここにいるの」 っておれに訊いた時、
「ごめん」、なんて言ったら、おまえのこと、悪者にしてしまう、ってわかってたのに。
謝ったりしたら、おまえのこと、傷つける、って、わかっていたのに。
「なんでここにいるの?」
「歌手になりたかったから . . . 本文を読む
ベッキョニヒョンに訊いてみた事がある。
「どうして、ここにいるの?」
そのとき、僕はべつに深い意味で訊いたわけじゃなかった。
なんていうか、
大学受験をしようとしていた人が、どうして、それを放棄して、
今、僕らと同じ場所で、練習しているのかが、ちょっと不思議に思えたから。
どっちがいいとか悪いとか、上とか下とかでなく
単純に、どうしてこちらを選んだのか . . . 本文を読む
夢を見た。
それは悲しい夢だったので、
目が覚めたら、泣いていた。
そんなふうに目覚めて、
「ああ、夢で良かった…」と
涙を拭いながら思えたらいいのに。
悲しい夢のあとの現実も、悲しいものだから。
やり切れないな . . . 本文を読む
スホヒョンが俺の部屋を訪ねてきた。
話がある、って。
「ほんとはぼくの部屋に呼べばいいのだけど、ごめんね、床が洋服ダンスだから」
…根に持ってる。
ラジオで、ヒョンの部屋が汚いって言ったこと、このひと、根に持ってるんだ。
平静を装って椅子をすすめる。
椅子に優雅に座って、そしてゆっくり俺を手招きする。
&h . . . 本文を読む
ドアをノックする音が聞こえて、
スホヒョンが現れた。
「どうしたの?」
「約束を守りに来た」
「約束?」
「この前、おまえ、言っただろ。『他のひとの前で泣くな』って。」
そう言うと、突っ立ったまま、涙が床にこぼれ落ちる。
慌ててその辺にあった椅子を勧めたけど、下を向いたまま . . . 本文を読む
カイが夜眠れてない、ということは皆もうすうす感づいていたみたいで、
翌朝ぼくがリビングへ行くと、心配そうに様子はどうだったと聞いてきた。
いや、先に寝ちゃったからわからない、と答えると、皆口々にぼくを非難した。
セフンなんか舌打ちしたし、タオに到っては天を仰いで「信じられない!」と叫んだ。
「もう1日、チャンスをあげます」と、ギョンスが真顔で言う . . . 本文を読む
「今日はEXOのカイとスホではなくて、ただのジョンインとジュンミョンでね。少しなら、タメ口でもいいよ。」
ー…はい。
「どうしたの、気のない返事だな」
ーいや…どんなだったっけ、と思って。
「最初に会った頃を思い出せよ。」
ーそうだけど…。もう7年もまえのことだし。
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夜が来るのが怖い。
そんなことを思ったのは、生まれて初めてかもしれない。
あの、真っ暗で、ぱっくりと口を開けたような穴が、オレを飲み込みに来るから。
…眠れない。
このオレが、夜、眠れないなんて。
やっと眠りについても、
夢ばかり見る。
暗い、暗い穴に落ちる夢。
落ちながら . . . 本文を読む
そうこうしているうちに、デビューが決まり、
ぼくも卒業を迎えた。
兄さんたちがたくさん駆けつけてくれた。
もちろん、あなたも。
わざと膝を曲げて、ぼくの背に自分の身長を合わせてくる。
やだな。
なんだか子ども扱いされてるようで。
あなたが見ていないところで練習もたくさんした。
そんな . . . 本文を読む
たった88日か87日。
それだけの違いなのに。
ぼくたちは、永遠に、ともだちにはなれない。
ぼくがどんなにタメ口をきいても、
良くて、ふざけてると取られるか、最悪、怒られるか。
だって。
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カイと同室になって驚いたのは、彼の寝起きの悪さだった。
目覚まし時計が鳴っても起きない。
耳元に置いてやっても布団にもぐってまだ寝てる。
そのうち音のうるささに、こちらが根負けして止めてやるのだ。
いよいよ起きなきゃまずい時間に布団を剥ぎ取ると、
こちらに向けて長い両腕を躊躇なく伸ばしてくる。
まるで 「起こしてくれ」 とでも言うように。
いくら俺の方が年が上でも、背 . . . 本文を読む
ねぇ、ヒョン、知ってた?
宇宙がはじまったころ、あたりは塵ばかりで、
それらが集まってひとつの、さいしょの星ができたんだ。
その塵が、今の僕たちの元なんだよ。
でもね、
その塵の、ほとんどが、
ダークマターっていう
目に見えない物質なんだって。
だからかな。
だから、僕らの心も、見えな . . . 本文を読む
星座は
幾千もの 人の想いがつないで
星の瞬きは
幾億もの 人の命が還った場所
遠い
遠い
暗闇を見つめていると
生きる力が 湧いてくる
こんな ちっぽけなわたしたちでも
この宇宙から生まれた
だから
嘆くことはない
今日も地上で
わたしたちは 輝く
&nbs . . . 本文を読む