Do’nt go

2015-04-27 | ordinary world

ドアをノックする音が聞こえて、

 

スホヒョンが現れた。

 

「どうしたの?」

 

「約束を守りに来た」

 

「約束?」

 

「この前、おまえ、言っただろ。『他のひとの前で泣くな』って。」

 

そう言うと、突っ立ったまま、涙が床にこぼれ落ちる。

 

慌ててその辺にあった椅子を勧めたけど、下を向いたままのヒョンには伝わらない。

 

手を取って座らせようとしたのに、動かない。

 

肩に触れると、すごく力が入っているのがわかる。

 

こうやって、いつも生きているのか。

 

ヒョンは。

 

泣く時くらい、肩の力を抜いて泣けばいいのに。

 

 

どうしよう。

 

本気で泣かれると、さすがにどうしていいかわからない。

 

背中をさすってやっても、なんの役にも立ってなさそうで…

 

「ヒョン、なにかオレにできること、ある?」

「…」

「なんでも言って?オレ、ヒョンの役に立ちたいんだ…」

「…」

「なんか飲む?ミネラルウォーター、持って来ようか?」

「…」

「あのさ、」

「…て…」

「え?なに?なんかオレにしてほしいこと?」

「…だまって。」

「あ、…」

「泣いてるときに話しかけないで。」

「…はい」

 

 

泣く兄の背中をさする。

 

 

…遠くにいる兄も、きっと泣いてる。

 

だれか近くで背中をさすってくれるひとが、いますように。

 

 

 

だれよりも寂しがりやで、

 

だれよりも甘ったれな、ぼくらの、大切な兄弟が、

 

ひとりで泣くことがありませんように…。

 

 

 

 



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