大天使と天使長

2016-12-06 | 天使・シリーズ
まだ明けきらない空に、薄く筆を走らせたような雲が幾筋も流れている。 早朝の、凛としたこの空気が、とても好きだ。 昼の日射しよりも優しい朝日を浴びて、人も車もビルも、なんとなく輪郭がぼやけてる。 行き交う人もまだ少ない。 僕はビルの天辺から、地上を見下ろす。 目の前に広がる街並み… いったいどれだけの人がこの地上で暮らしているのかな… その人々を見守って、もうどれ程の時が経ったのだ . . . 本文を読む

Happy Virus

2016-09-24 | 天使・シリーズ
物心ついた頃から、ずっと彼が見えていた。 たいてい、機嫌の良さそうな顔で笑っているその人が、家族の誰にも見えていないとわかって驚いた。 同時に、家族もそんな私に驚き、何より母が心配するので。 家族を心配させないために、そんな『彼』を、見えない振りして生きてきた。 たとえば、運動会のリレーに選ばれた時、吹奏楽部で全国大会に出場した時、受験の当日、発表の当日… 私が嬉しい時も、苦し . . . 本文を読む

天使なの?

2016-08-27 | 天使・シリーズ
今の仕事、向いてないのかもしれないなぁ。 そんなことを、日に何度も考える。 だからって、辞めてどうするのか、ビジョンはないし。 ただ、失敗するたび、心臓がきゅうっ、ってなって、ああ、この場から消えちゃいたい、って思う。 人と接することに、ものすごく負担を感じる。 誰もいない山奥へ行って、自給自足の生活がしたい。無理だけど。そんなこと出来ないくせに、そんなこと考える。 誰にも . . . 本文を読む

天使って、

2016-07-09 | 天使・シリーズ
ねぇ…、信じる?   *** バスを待っていたら、今までの夏空が嘘みたいに、急に辺りが薄暗くなり、雷と共に大粒の雨がアスファルトを叩き出して。 傘も持ってきてないし、何より、雨宿りする場所も見当たらない!って焦ってたら、 「ほら、あの木の下まで走って!」 急に手首を掴まれ、ぐいって、引っ張られるように走ったの。 「少し、濡れちゃったね?」 って、私を覗き . . . 本文を読む

天使なのに、

2016-07-08 | 天使・シリーズ
鼻をすすり上げる音が、さっきからずっと私の後ろで聞こえる。     昨日、久しぶりに会った友だちと些細なことで言い争いになって、謝るタイミングを失って。 今日、上司に出した報告書は不備も指摘されずに突っ返された。 彼から、週末のデートは延期にしよう、ってさっきラインがきた。 ちょうど良かった、私もこのところ忙しすぎたから、週末は一人でのんびりしたいなって思ってたから . . . 本文を読む

あるいは天使。

2016-07-07 | 天使・シリーズ
飼い犬を散歩させてる時に出会ったその人の腕には、 翼があった。 小さな、小さな翼。 いつもの散歩コースでは、初めて見るひとだった。 とても背が高くて、目鼻立ちもハッキリしているのに、どこか、寂しそうな印象で…。 私は、意を決して声をかけてみた。 もしかして旅行者ですか、と声を掛けたのだ。 すると、その人は、とても柔らかく微笑んで、 「ええ、まぁ、そ . . . 本文を読む

内緒だよ、

2016-07-06 | 天使・シリーズ
ルゥハン先輩は、頭が良くて、背が高くて、サッカーが上手くて、正義感が強くて、さっぱりした性格なのに、誰にでも分け隔てなく優しくて、おまけに顔がいい。 こんな完璧な人が、本当に実在してるというのが、奇跡。   と、学園中はおろか、他校にまでその評判は轟き渡ってる。 でも、 ちょっと、 気になる噂がある。 『ルゥハン先輩、人間じゃないらしいよ。』 &nbs . . . 本文を読む

天使でしょ。

2016-06-13 | 天使・シリーズ
え! だれ?! 『天使でしょ、どう見たって。』 いやいやいや! 見えない!全然見えない! 『…マジで。』 突然、私の部屋に現れた青年は、困ったな、と言うのだけど、全然困ってるようにも見えない。 何しに来たの? と聞いてみると、 『いや、別に…』 とか言う。 『やばいなー、こりゃ、怒られるかなー』 とかも言う。 誰に?ときくと、 ごにょごに . . . 本文を読む

天使かも、

2016-06-12 | 天使・シリーズ
    「さよなら」をした、   その夜。   ふと気配を感じて振り向くと、   街灯の真下に青年が立っていた。 私と目が合うと、ふふ、と笑って、 いきなり踊りだした。     ちょうど街灯がスポットライトの代わりをしているようで。     次の瞬間、 そこは劇場だった&he . . . 本文を読む

天使だよ。

2016-06-11 | 天使・シリーズ
『おい、あんた、』 「…わたし?」   振り向くと、真っ黒い髪で、真っ黒い瞳の青年が、偉そうに私を指さして立ってた。 『あたりまえだろ、お前以外誰がいるってんだよ、周り見てみろよ、こんな遅くに一人でこんな暗い道歩いてるなんて、気が知れないな。』 残業で、深夜に近い時間の駅から家までの道。 誰も歩いていないから、さすがに怖くて早足だった。 &n . . . 本文を読む

天使かな、

2016-06-07 | 天使・シリーズ
「なにしてるの?」 『お願い事してるの。』 「…手に持っているもの、何?」 『見てわからない?星の欠片だよ。』 「ふぅん。だって、初めて見るもの、それ。」 『星の欠片にお願い事を書いて、こうして神様に見せるんだ。そうして、運良く神様が見てくれたら、叶う。それが僕の仕事なんだ。』 「…よくわからないわ。」 『わからない?僕、君の傍にいつもいるでしょ。君の願い事が叶うよう。いつも祈っ . . . 本文を読む