あるいは天使。

2016-07-07 | 天使・シリーズ


飼い犬を散歩させてる時に出会ったその人の腕には、



翼があった。




小さな、小さな翼。






いつもの散歩コースでは、初めて見るひとだった。

とても背が高くて、目鼻立ちもハッキリしているのに、どこか、寂しそうな印象で…。


私は、意を決して声をかけてみた。



もしかして旅行者ですか、と声を掛けたのだ。


すると、その人は、とても柔らかく微笑んで、


「ええ、まぁ、そんなところです。」

と、答えた。


この辺はそんなに見て歩くような名所もないでしょう、と言うと、


「でも、公園が多いし、住んでいる人たちも穏やかで、良いところですね」

と答えた。


答えながら、その人の優しい眼差しは、私にではなく、私の飼い犬に注がれていた。


短髪で、長身のその人は、今まで私が会っただれよりも、優しい眼差しをしている。


他愛もない会話を少しだけ交わして、私たちは別れた。



ふと、振り返ると、


その人は、もう、どこにもいなかった。







あるいは、


天使だったのかもしれない。








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