やま建築研究所

私が感じたこと、気になった建築などを書き留めたノートです。

地元の名所「杉並区立大田黒公園」に行ってきました。

2008年12月19日 02時01分35秒 | 建築の歩き方

今回の「オレ流建築の歩き方」は私の住む街、地域の拠所、荻窪の名所「杉並区立大田黒公園」です。2008年12月3日に行ってきました。

公園の名前にもなっている大田黒。
もともとこの公園は音楽評論家大田黒元雄氏の屋敷があったところ。
氏意向により、没後は杉並区に寄付されました。
園の広さは約9000㎡、2720坪。総額53億2800万円!!(平成20年度地価公示価格より)
こんな俗なことを考えてしまうのは私だけでしょうか。
大田黒氏の太っ腹、いや偉大さに我が身の小ささを省みます。

さて正面入口は、大名屋敷のような立派な門に築地塀。
さぞかし格式の高い庭園がひろがっているような表向きです。


             正門

庭園までのアプローチは御影石の敷石が延び、両側にはイチョウの大木が並びます。
ちょうど落葉の時期で、なんだかいい感じに落ち葉が地面を覆っています。


        庭園までのアプローチ

そのまま回遊式庭園を歩いて見ることにしました。
起伏のある地面に植木や門、燈籠、池といった日本庭園お約束のボキャブラリーが配置され、住宅街の中とは感じさせられないほど落ち着いた雰囲気です。


          味のある中門


             庭園

この日は晴天でしかも夕暮れ時。
赤味がかった空に木々の紅葉がいっそう引き立っています。
透きとおった池に落ちたもみじの葉と、鯉の色彩の共演はさながら絵画的な印象です。


       池も透きとおっています

せわしない日常を忘れ、しばし感慨にひたってしまうほど、ゆったりできる環境でした。

この公園に大田黒氏が仕事場として使っていた洋館が、現在は記念館として公開されています。



昭和8年の完成。70年以上前の建物ですが前時代的な古さは感じません。
一見、洋風の山荘スタイルに見えますが、庇が出ていたり、屋根が桟瓦葺であったり日本的な要素も併せ持った奇妙な形。


       敷地南西部に建つ洋館

デザイン上あえてこのような形にしたのか、それとも日本産の材料を使って日本人の大工が建てたからこの形になったのでしょうか。
勾配の違った屋根の重なりが外観表情のアクセント。
和洋折衷と言っていいのか、なんだか国籍不明な様式美です。


       洋風?和風?和洋折衷?

あずき色の外観は、ちょっと微妙な色使いですが、この時期にこの効果をねらったのかと思うほど、木々の紅葉に溶け込んでいます。

室内はリビングのみ公開されています。
かなり暗めですが、クラシックな雰囲気が好きな人にとってはこの上ない空間です。

室内は撮影禁止なので窓の外から撮ってみました。


       窓の外から撮った室内

オーナーの大田黒氏は音楽評論家。
時にはピアノを奏で、時には蓄音機から流れる音楽を鑑賞し、時には評論家として執筆する。
落ち着いてかしこまった音楽を聴きながら過ごす日々にはちょうどいい薄暗さじゃないでしょうか。

主だった照明は白熱灯。ランプと言ったほうがしっくりくるレトロな照明器具です。
特に暖炉の両サイドの照明を見て下さい。
船の帆先にランプが垂れ下がったデザインは奇抜というか秀逸というか判断が分かれると思いますが、独特のセンスが光っています。
写真で見せられないのが残念。

光沢のある壁は赤、青、緑のまだら模様。
タイルのように見えますが、壁紙です。


        外から撮った室内

一歩間違えば悪趣味ともなりかねませんが、薄暗さに溶け込んでほどよい気品が出ています。
明るすぎると全く違った印象になるこの雰囲気、周囲を囲む木々は薄暗さを作り出す舞台装置の役目です。


     周りは木々に囲まれています

文化財でもなく、有名建築家の作品でもありませんが、また行ってみたいと思う掘り出し物でした。