島根県安来市の郊外に、2003年から18年連続で庭園ランキング日本一に選ばれている美術館があります。国内外から年間50万人以上が訪れる、人気の秘密を探ります。
「日本庭園と日本画にかけた創設者・足立全康の思い」
足立美術館がこれほどまでに庭園に情熱を傾ける理由は、どこにあるのでしょうか。それは、創設者・足立全康(あだちぜんこう)の、日本画と日本庭園に対する強い信念から来ているのです。足立美術館は、実業家として成功した足立全康の「郷土に恩返しがしたい」という思いから、昭和45年に設立されました。横山大観をはじめとする日本画に深い思い入れを持つ足立全康は、まず日本庭園を通して四季の自然の美を感じてもらい、その感動をもって横山大観などの作品にふれることで、日本画の魅力を理解してもらおうと考えたのでした。館内に入るとまず「枯山水庭」や、「白砂青松庭」など趣の異なる美しい庭園が広がっているのはこのためだそうです。
「日本一の庭園の秘密」
口語短歌
「庭園の おもてなし姿勢 日本一 年中無休 朝の掃除に」
足立美術館は、横山大観をはじめとする近代日本画や北大路魯山人の陶芸などを中心に総数約2000点を所蔵しているほか、5万坪の日本庭園は、米国の日本庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」による庭園ランキングで、18年連続日本一に選ばれています。特に足立美術館は、広大な庭園の細部にまで維持管理がゆきとどいている点が高く評価されているそうです。このように高い評価を得た背景には、毎朝開館前に職員総出で約1時間かけて掃除をするなどの、美術館の徹底した「おもてなし」の姿勢があります。年中無休のため、掃除は365日休むことなく続けられ、雨の日にもカッパを着て行われています
「年中美しい庭園を観ていただくため」
口語短歌
「赤松の 鮮やか幹肌(みきはだ) 現れる 手箒(てぼうき)でこすり 古皮はがし」
年中美しい庭園を観ていただくため、夏季には専属の庭師による赤松の剪定作業も行われます。古葉を手作業で摘み落として樹形を整え、最後に竹製の手箒ぼうきでこすって古皮をはがしていきます。こうすることで、赤松の鮮やかな幹肌が現れるそうです。毎年7月末から約2ヶ月かけて行われます。園内には赤松が約800本植わっていますが、太くなり過ぎたり状態が悪くなった際にすぐ交換できるようスペアの松が用意され、赤松だけでも約400本があるそうです。庭園に使われている苔も、雨が降った際に木から落ちたしずくが苔に穴をあけて痛めてしまうのを防ぐため、炭が埋め込まれています。さらに松同様、苔にもスペアが準備されているという徹底ぶりには驚くばかりです。
「四季折々の姿を魅せる多様な庭園」
口語短歌
「大観の 白砂青松(はくしゃせいしょう)を イメージし 白い砂と 松で作庭も」
枯山水庭の中心部分には大きな3つの立石があり、そこから流れ落ちる滝水がやがて手前に広がる白砂の海へ流れ込む様を水を用いずに表現しています。また、背後の山を借景とすることで、庭園を実際以上に広く、奥行きあるものに見せています。「白砂青松庭」は、横山大観の名作「白沙青松」をイメージした庭。白い砂と松のコントラストが印象的です。庭の奥には「亀鶴の滝」があって、その渓流が手前の大きな池へと注がれるイメージで作庭されています。この滝も横山大観の「那智乃瀧」という水墨画をモチーフとしています。
「庭園もまた一幅の絵画である」
口語短歌
「全康の 深い愛情 信念が 一幅の絵画 庭芸術に」
「庭園もまた一幅の絵画である」という信念のもと、足立全康は91歳で亡くなるまで庭園に深い愛情と情熱を注ぎ続けました。館内には、日々刻々と変化する庭園を絵画に見立てて鑑賞できるよう、「生の額絵」や「生の掛軸」などの楽しい仕掛けがあります。池庭の近くには足立全康の生家が残されており、掛軸を飾るための床の間の壁を、足立全康自らが周囲の反対を押し切り金槌で穴をあけて「生の掛軸」が誕生しました。
参照
https://www.kankou-shimane.com/pickup/2901.html
「2021年軽井沢レイクガーデンに咲いた薔薇たち」
「レイニー・ブルー」2021年8月7日撮影
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