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金沢ミステリ倶楽部

金沢ミステリ倶楽部の公式ブログ。

参加・見学してみたい方はメッセージを送ってね。

『金沢殺人事件』

2015年11月05日 23時05分00秒 | ミステリin金沢
『金沢殺人事件』 内田康夫 光文社 1989
東京の神社で商社員が「オンナ二…ウ・シ・ク」という謎の言葉を遺して殺された。第一発見者の女子大生も金沢の「美術の小径」で突き落とされ殺されてしまう。 


県立美術館から本多公園の一角にある中村美術館に通じる坂道を「美術の小径(こみち)」といい、春から秋にかけては格好のデートコースである。
 美術の小径は、美術館から公園に向けて下る、長く急な坂道が名物のひとつだ。
(略)目撃者の話によると、朋子(ともこ)さんは「美術の小径」の急な石段の上から突き落とされたものと見られ、ただちに救急車で病院に運ばれたが、三十分後に全身(ぜんしん)打撲(だぼく)で死亡した。(p52)




美術の小径はとても急な階段で確かに落とされたら死にそうです。でも金沢の街中で滝が流れ、木々や草の緑に囲まれ、素敵な場所です。
本多町から美術館や兼六園に行くのに近道となっています。




12月の例会

2015年11月04日 23時58分00秒 | 例会
毎日更新が…。

12月の例会は
12月21日(土)13時半から金沢市内で開催します。
短編ミステリをその場で読んでその場で合評します。

流れとしては
近況報告:最近読んだ本、観たドラマ・映画など 5分以内で報告。
これが次読む本の参考になったり、自分のおすすめを紹介できたりして
楽しいです。

短編ミステリを読む。

その感想を話す。

という感じです。

見学・体験募集しています。

『失踪症候群』

2015年11月03日 06時30分00秒 | ミステリin金沢
『失踪症候群』貫井徳郎 光文社 1995

先日石川県立図書館で講演をされた貫井徳郎さんの『失踪症候群』に金沢が出て来ます。

「そういうこと。だからおれは、明日は広沢良美の本籍地である金沢に飛びます。出張費は認めてくださいね」(p97)

失踪者を求めて金沢へ行くというセリフですが、それだけで
実際に金沢へ行ったシーンは出て来ません。
でも貫井さんが金沢と書いたことがうれしいですね。




『太宰治の辞書』

2015年11月02日 06時00分00秒 | ミステリin金沢
『太宰治の辞書』北村薫 新潮社 2015
円紫と私シリーズの最新作が十数年ぶりに新潮社から出ました。
以前『朝霧』の続編はと聞かれて、
結婚させたくないと北村さんはおっしゃいました。
でも『太宰治の辞書』で、私は結婚していて、しかも子どももいます。
出版社に勤めているんですね。

さて三つの中編が入っている中、
「女生徒」には金沢のある文学館が登場します。

 --文学館…と言えば。
 昨年の夏、家族旅行で金沢に行った。定番の観光コースだけでなく、子供の勉強になる--という理由を付け、文学館巡りもした。私のような母親を持った運命と、子供にはあきらめてもらった。無論、徳田秋聲記念館にも行った。
 息子の方は、炎天下の道を歩く途中のお店に入って食べた醤油アイスクリームや、浅野川にかかる橋の上で結婚式の写真撮影用の写真撮影をしていた和装カップルの方が印象に残ったようだ。(p.117-118)



 そして徳田秋聲記念館の学芸員が問い合わせに解答し、「遠く離れた石川県金沢にも、手助けしてくれる名探偵がいたのだ」と私は書きます。
 「女生徒」の最後に北村さんが徳田秋聲記念館の学芸員に感謝を述べておいでます。
 北村さん、最近金沢にこられたんでしょうか。




『ゼロの焦点』

2015年11月01日 10時25分00秒 | ミステリin金沢
金沢が舞台のミステリや金沢が出てくるミステリを紹介したいと思います。
2009年の金沢ミステリツアーの資料が元になっています。

『ゼロの焦点』松本清張 光文社 1959
 ひとり残された若妻、禎子は、夫の行方をさぐるため、深い謎の中に踏み込むべく、西の古都金沢へ旅立つ。
 夫はなんのために失踪したのか、あるいは失踪させられたのか?
 著者が自ら「僕の代表作」だと宣言する作品である。

2時間ドラマの最後に断崖で犯人と対決するシーンがよくありますが、その元祖だそうです。
小説中ではただの断崖でしたが、映画化の際に石川県志賀町の「ヤセの断崖」でロケをしたため、『ゼロの焦点』と言えば、「ヤセの断崖」と思われています。
他にも金沢の旅館に泊まったり、鶴来が出てきたり、と金沢度が高いミステリです。
以下、夫を探して若妻の主人公が断崖に立つシーンです。


 禎子(ていこ)は、断崖への道を歩いた。それは十分とかからなかった。閉ざされた雲の中に陽が沈みかけ、荒涼(こうりょう)とした海にわずかな色彩を投げていた。
 断崖の上に立つと、寒い風が正面から吹きつけ禎子の顔を叩いた。髪が乱れたが、彼女はそのままにして海と向かいあっていた。
 その辺は岩と枯れた草地で、海は遥か下の方で怒濤(どとう)を鳴らせていた。雲は垂(た)れさがり、灰青色(はいあおいろ)の海は白い波頭(はとう)を一めんに立ててうねっていた。
 陽のあるところだけ、鈍(にぶ)い光が溜(た)まっていた。

 なぜ自分がここに立っているのか、禎子には合理的な説明ができない。とにかく、海が鳴っているという断崖の上に立ってみたかったのだ。北陸の暗鬱(あんうつ)な雲とくろい海とは、前から持っていた彼女の憧憬(どうけい)であった。
 禎子は暗い海の凝視(ぎょうし)を続けているうちに、夫の死がこの海の中にあるような気がしてきた。あの泡立(あわだ)っている波の下に、夫はひっそりと横たわっているのではなかろうか。海の暗い色が自然にその錯覚(さっかく)を起こさせた。
 たった一人で、このような場所に佇(たたず)んで、北の海を眺めている自分はいったいなんだろう。消えた夫を探し求めて彷徨(ほうこう)している可哀想(かわいそう)な妻だった。頼りなげな、あわれな若い妻がここにいる。――(p84~89)


あなたの金沢ミステリを教えてください。