ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

「虚」と「実」

2018年12月30日 11時13分33秒 | 独り言
世間に「虚実とりまぜて」と言う言葉がある。
この言葉は世の中には真(マコト)や嘘が混ぜ合わさっているという意味であろう。
いまさら、世間に「虚実」が混在していることを非難もしなければ指摘もしたくはない。
だが、今年の政界内の「虚実」には呆れ返りました。
年末にあたり、私が印象に残ったのはこのことでした。

さてそれに関連して、思い出したことがあります。
2年前に赤坂のスナックで飲む機会がありました。
そこの店には以前は会合で一年に一回は顔を出すことがあったのです。
ママさんは東北出身で実直そうな方でした。
銀座や赤坂で店を持っているのは大変な苦労があるのだろうとかの話題になりました。
彼女は60歳ぐらいで穏やかな話しぶりで、いかにも赤坂のお店にふさわしい方との印象を持ったことを覚えています。

さて、そこでの会話の中で「夜の蝶」とはなんだろうかと聞いてみました。
店で働く女性たちが華やかな衣装をまとっているから「蝶」なのかと尋ねたのです。
ママの言葉は違っていました。
『蝶蝶は蜜を求めて、花から花へと休みなく飛び回るでしょう。私たちもカウンターやボックスにいるお客さんの間を飛び回っているから、そうなのでしょう』との答えでした。
『私たちだって、気に入ったお客さんのそばには長くいたいと思うことはあるのよ。でもそれは出来ないでしょう。一人の客のためにお店があるわけではないのだから』
そこで私は次の言葉を続けてみました。『ママさんは自分のしている仕事が<実業>だと思いますか、それとも<虚業>だと感じていますか』と。
彼女はそれに対して応えました。
『銀座や赤坂の高級店の若いママさんの中には自分の仕事が<実業>だと思っていいる人は多いと思います。それはお店のお客さんが<実業界>のお偉いさんが多いこともあるからなんでしょう。でも私は自分の仕事が<実業>だと思ったことはありません』と言ったのです。
『自分は<虚>の仕事をしているのだけれど、その中にも少しばかりの<実>はあるからこそ、こうして店を続けられているのでしょうね』

なかなかこうまで言える人はいないな、とそのとき私は感じてきました。
自分のしている事が<虚>であることを自覚することは、簡単には出来ることではないでしょう。
ひるがえってみれば、私たちの日常の全てが<実>で満たされている訳ではない事は誰もが知ってはいるのでしょうが、実生活では「今自分が行っていることは<実>である」と思ってしまいます。
人間は錯覚や勘違い、そして自覚的な「嘘」からは逃れられないのでしょうか。

年末に、自分のこの一年を振り返ると「至らぬ事だらけの一年であった」ことが思い起こされて、憂鬱な気分にもなってしまいます。

来年は私の干支の年です。さて、どんな年になるのやら。

そうそう、忘れてはいけないことがあります。
今年一年のブログを締める意味でも、読者の皆さんには感謝を申し上げます。
つまらぬ独り言や愚痴にお付き合いして頂き、有難うございました。

来年が皆様にとっても実りある年であることを祈ります。

2018年12月30日




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