第3章 経営危機の乗り越え方
資金繰りに困ったり、急激に売上が落ちてきたら、この章をお読みください。
(2) 再建に成功する人はこれができた
① 成功させる経営再建の第一歩は、「どんな苦しくてやりたくない対策でも実行し、継続し、絶対に再建させる」という経営者の強い決意決意
これまで関与させていただいた企業の中には、
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再生・再建がうまくいって健全企業化できた企業、
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健全企業化できたのみではなく、無借金企業など優良企業にまでのぼりつめ、『長寿幸せ企業』への道を歩んでいる企業、
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再生・再建を諦め、会社を清算や廃業させて、今は幸せな第二の人生を歩んでいる経営者
がある一方、
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健全企業化できたのに、また元の状態に戻ってしまった企業、
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再建プログラムを途中で挫折して、「最悪の倒産」に至ったしまった会社、
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音沙汰がなくなり、連絡が取れなくなった会社
などその結末は多岐にわたります。
棺桶の蓋が開いているどころか、もう棺桶に入っている状態で、私の力では再生・再建は不可能に近いと思っていた企業が不死鳥のごとく蘇ったケースがある一方、この会社はひと通り再建プログラムをやってもらえばほぼ100%再生できると思っていた会社が何年たっても経営危機状態から抜け出せないばかりではなく、じわじわとその財務状態が悪くなってしまったケースがありました。
再建プログラムのスキームは100社あれば100社とも違いますが、基本的な戦略は大きく変わりありません。それなのになぜ結果に天と地の違いが出てくるのでしょうか?
それは、経営者が私のアドバイスする再建対策をどんなに苦しくて、やるのが嫌であっても、実行できることです。また、簡単であっても毎日継続しなければならないことを繰り返し、繰り返し継続して「習慣化」できること以外に考えられません。
経営再建の対策は経営者の見栄やプライドが吹き飛んでしまうやりたくないことばかりです。
口では
「言われたことは何でもやりますので、助けてください。」と言われるのに、いざ具体的な対策の実行の段階になると
「そんな恥ずかしいことは出来ない。」
「そんなことをするくらいなら倒産してもいい。」
「私にもプライドがあります。」
等と言って逃げる経営者に困難を極める経営再建など達成すべくもありません。
成功させる経営再建の第一歩は経営者が「どんな苦しくてやりたくない対策でも実行し、継続し、絶対に再建させる」と決意することです。この決意は家族や社員さん方に伝わります。
経営者に本物の決意が感じられるとき、私も「この人、この会社をなんとか助けたい。」という強い思いが湧いてきます。
経営危機に陥った企業が健全企業化できたのみではなく、無借金企業など優良企業にまでのぼりつめることができるのは、再建プログラムの期間に身についた経営の原理原則を行動に移すことを「習慣化」できた結果に過ぎません。
しかし、一度健全企業になった企業が、再び経営危機に陥るのは、慢心して、「習慣」を無視して再び「奢り」が現れたことに原因があると言い切っても過言ではありません。
② 「外科手術」より「内科治療」がいつまでも健全な企業体への秘訣
再建や再生に「魔法の杖」はありません。少なくとも私は持ち合わせていません。
私の元で、再建から優良企業の道を歩んでおられる経営者の皆様のすべてが再建対策とは優良企業対策とほとんど同じだという事を理解されています。
外科手術(会社分割など)や輸血(借り入れやリスケ)で一時的に危機から逃れても、短期間で経営危機に陥る企業が跡を絶ちません。少なくとも優良企業になることは出来ません。 なぜなら外科手術や輸血をしても、経営能力が伸びるわけではありません。経営体質が変わるわけでもありません。
本当は、内科治療や体質改善が再建から優良企業の道の王道なのです。 今ある売上で最大の利益やキャッシュフローを上げられるための「知識」を習得し、実践することにより、社内で当たり前に行われる「しくみ」という「知恵」に変えていくのです。
残念ながら、経営危機におちいている中小・零細企業経営者はその「知識」を知らないか、「優先順位」をご存知ありません。
「売上さえ上がれば・・・」
「借り入れさえ出来れば・・・」
こう考えているうちは、一息つく間もなく再び資金繰りが悪化します。永遠に経営危機から脱出し、健全企業化するどころか、債務超過さえ解消できません。そして、そう遠くない時期に、再び倒産という言葉も現実味を帯びてくるでしょう。
私も外科手術に頼ることがありますが、その第一目的は内科治療のための「時間」を稼ぐためです。
経営コンサルタントの中には、つじつま合わせの再建計画書を作成し、金融機関からの新規借り入れやリスケが成功した時点で、再建成功といっておられる方がおられるのは残念なことです。
会社分割をして第二会社を出発させても、分割成功であって、再建成功ではありません。なぜなら、経営能力などの中身は全く変わっていないからです。
私がアドバイスする知識・技能の習得は、はじめ少し戸惑いますが、まじめに継続して取り組めば誰でもできることばかりです。
しかしそれらの「知識や技能」は「習慣」になるまでは面倒くさい、やりたくないことばかりです。簡単なことも継続することは非常に難しいのです。
私はクライアント様から課題が提出されなければ、こちらからお電話やメールを差し上げたり、手を差し伸べることはしません。これ【経営再建プログラム】のお約束事の一つです。
そのため、残念なことですが、「困難を厭わず、必ずやり遂げるので力を貸してください。」と言って私の『経営再建プログラム』に参加された経営者の多くが音沙汰もなく脱落していきます。
経営再建の現場にいると、次の二宮尊徳翁の言葉1の重要性がよくわかります。
「成功させるには、成功する条件を整えてからスタートしなければならない。(略)困難を乗り越えるには、非常なる決意が必要である。困難な事業が失敗するのは、当人がその苦難に悲鳴をあげ、当初の決心がぐらつき、難事業を放棄してしまうからである。」
次に大事なことは、最初に気づかなければならないことなのですが、経営者が「徳性」を取り戻すことです。 残念なことですが、経営危機に瀕し、資金繰りに窮した経営者は、この「徳性」を失いかけて、正常な判断ができにくくなっています。私もそうでしたが、この段階の経営者は周りから見て会社を守ることだけしか眼中に無く、まるで狂ってるように見えるくらいになってきます。
まさに、「恒産なければ恒心なし」、「衣食足りて礼節を知る」、「貧すれば鈍する」です。
これら「徳性」「知識・技能」「習慣」をクリアーされた企業のみが短期間で危機脱出し、正常企業→健全企業→優良企業→『長寿幸せ企業』へと着実に歩めるのです。
菜根譚に「徳は事業のもとなり。未だ基の固からずして、棟宇の堅久なるものはあらず。」2とあります。
私がクライアント様と目指したいのは単なる経営危機脱出ではなく、二度と資金繰り難などの経営危機に無縁の優良企業になり、「お客様、従業員、経営者のご家族など企業にかかわる全ての人が幸せになることが出来る『長寿幸せ企業』なることなのです。
あなたは、なぜお金を借りてもすぐに苦しくなるのでしょうか?
あなたは、「あと△△万円借りられれば、経営危機から脱出できる」と考えたことはありませんか?
それは大きな間違いです。
なぜなら、借りたお金は返さなければいけないからです。金融機関などからお金を借りて当面の資金繰りが楽になったとしても、事業で十分な利益が出ていなければ、すぐに再び経営危機がやって来ます。
お金を借りた当初は、確かに資金繰りに困ることはないでしょう。しかし、金融機関は何度もお金を貸してくれるわけではありません。たとえ借りられたとしても、返済すべきお金や利息はどんどん膨れ上がっていきます。
お金の工面に奔走してばかりいて、気がついたら取り返しのつかない状況に陥っていた」という例は、たくさんあります。みなさんは、そうならないよう気をつけてください。
経営難から逃れる方法はただひとつ。それは、「返済金以上に利益を出す」、そのためには「入るを量りて出ずるを制す」3ことに集中するです。
もちろん、「返済金以上に利益を出す」ことは簡単ではありません。非常に難しいことです。しかし、経営者の方が本気でこれからお話しする対策に取り組めば、不可能でもなんでもありません。大変な経営危機から脱出された経験のある俯瞰塾会員企業様はすべて「入るを量りて出ずるを制す」の実践者です。
具体的には、次の対策を行うことが「経営難を逃れ、資金繰りに悩まなくてもいい会社」に変革することにつながります。
まずは、【経営再建プログラム】で
- 緊急資金繰り対策 と 金融機関対策
- 資産・負債対策
- 経費削減対策
- 仕入(原価)対策
- 月次決算対策 と 経理改革
ここまでくれば、続いて【俯瞰塾】で
- 経営理念・行動規範の確認
- 経営戦略・マーケティング戦略
- 売上対策 と 新規事業開発
- 働き方改革・人と組織(就業規則と賃金規定の再構築)
- 出口戦略・事業承継
1三戸岡道夫「二宮金次郎の一生」栄光出版社
2「事業を軌道に乗せるためには、それなりの経営手段を必要とすることは言うまでもない。問題はその中身である。どんなに手腕があっても、ひとを泣かせるようなことをしていたのでは、長続きしない。そこで必要になるのが徳である。これが合ってこそ周りの支持が得られることを忘れてはならない。」守屋洋・守谷淳共著 「菜根譚の明言ベスト100」 PHP
次回は、第3章 「経営危機の乗り越え方」 (2)再建に成功する人はこれを知っている-その③から です。
このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。
井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。
1.「経営救急クリニック」
- 井上雅司の経営改善講座
- 経営改善プログラム(俯瞰塾プレップ)
- 経営再建プログラム(憤啓塾)
- 廃業プログラム(第2の人生のために取り組む「最善の廃業」)
- 無料経営相談
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- 1日経営ドック(初回問診)
2.「長寿幸せ企業への道」
3.「事業承継・M&A」