第3章 経営危機の乗り越え方
資金繰りに困ったり、急激に売上が落ちてきたら、この章をお読みください。
(4)再建に成功する人はこれができた その④~⑥
④ 必ず反対する人がいる
経営再建や新規事業開発などで企業が大きな変化を必要とするときには必ずと言ってもいいくらい反対する人が出てきます。
あまりに反対が多いので、経営再建がうまくいかないと悩む経営者がいる一方、従わないのならやめてしまえと怒鳴りだす経営者もいます。これはどちらもいけません。
人は基本的に「変化を恐れる生き物」です。また、人には 「自分をよく見せたい」という欲求があるため、失敗する可能性がある挑戦を避けたがります。ですから、そのような従業員に対して過剰にならないで、冷静に対応することが重要です。
また、反対する人の多くは古参の経営幹部です。
典型的なパターンは社長は2代目で、反対する経営幹部は創業社長の右腕で会社を気づきあげた功労者の一人で、現社長は生まれたときから知っており、鼻水を垂らして泣いていたのも知っています。中には粗相の処理までしたガキが社長になっているだけと思っている従業員もいます。このような経営幹部で流れについていけなくなっている人は、自分の存在が希薄になっているのを寂しく思っています。
第1章(4)戦術のところでもお話しましたが、従業員というものは、何か命ぜられると、二言目には「できません」と言う人種です。できないと反対する経営幹部には、「私も難しいと思うが、君だからこそ無理を承知でお願いしているのだ。」と言って、経営再建の重要課題のリーダーにしてしまうことです。
『経営再建プログラム』では幹部はもちろん、従業員も各部署やを代表して参加してもらい、プログラムチームを作ります。少人数の会社は基本全員参加です。
それでも、提案した再建策に反対するのなら、「どうすれば再建できるのか、その方法を教えて下さい。」と、代担案を考えさせることです。その上で、まだ反対だと言って協力しないのなら、そこではじめて
「その方法を見つけられないうえに、任せると言っても無理だの一点張りなら、会社の指示に従ってもらいます。それでも反対されるなら、会社はリストラを考えていませんので、会社を退職することもお考えください。」
と言うべきです。
⑤ 守りたいモノと守らなければならないモノ
とりあえず応急的な止血ができたら、すぐに再建(改善・再生)対策に取り掛かる必要があります。
しかしその前に、経営者ご自身が本当に望んでいるのはどうすることなのか、「本人はどうしたいのか?」を見極めなければなりません。口では再建したいといっていても、本心は出来れば辞めたいのかもしれませんし、再建する方法が見つけられないので、廃業や倒産をするしかないと思い込んでいる場合もあります。
その背景には「守りたいもの」があります。ですから、再生スキームを決めるために一番最初に確認しなければならないのは、本人やご家族が守りたいものは何なのかということです。経営コンサルタントなどのアドバイザーは、本人が納得してないのに
「この方法しかありません。」
「絶対にこうすべきです。」
と押し付けることは避けなければいけません。
私自身の倒産体験やわたしの再建プログラムの体験者の話などから、経営危機に陥った人の多くが守りたいモノと守らなければならないモノは違うということを繰り返し説明します。しかし、「この方法しかありません。」「こうすべきです「」とは絶対に言いません。
再建か、廃業か、また自己破産申請かを選択しなければならないときに、同じような財務内容でもその経営者の年齢や健康状態、環境などによって私の答えが違う場合があります。
例えば同じような経営環境や財務状況でも、
1)経営者が35~45歳で守るべき、愛する奥さんや子供があり、経営者本人も精神的にも体力的にも相当の苦労に耐えられるというようなケースでは【経営再建プログラム】に着手を選択する
2)経営者が20歳後半独身で、自宅も何もないのであればソフトランディング型で自己破産して、捲土重来十分な準備してから、倒産をバネにして再起業に挑戦するというスキームを選択する
3)経営者が65歳以上で高齢者の場合は、会社が亡くなった後の第2の人生をどう成り立たせるかという個人の再生を前提とした廃業プログラムや任意整理を選択する
という判断をすることも少なくありません。
逆に私は、もちろんこの再建活動は血を吐くような苦労が必要であるということを繰り返し申し上げた後の話ですが、本人が万が一倒産に至っても、廃業より経営再建、事業再生をやりたいというのであれば、
「再建の可能性が殆どゼロにちかく、私も自信がない。しかし、私に出来る限りの力を絞って、再建活動に着手します。」
と申し上げて再建プログラムに着手させていただくようにしています。
人が後悔するのはやって失敗したことよりも、なぜあの時やらなかったのかということなのです。
「人生の決断において後悔しないこと」が大切です。
⑥ 経営再建プログラム開始の三条件
初回問診の事前資料として相関図とともに
実際に「守りたいもの」を問診票で記入して頂きますが、その殆どは、
今の街での家族との安寧な生活
自宅
連帯保証人の財産
などです。
「ここで自己破産を選択すれば、これは頑張れば守れる可能性がありますが、これとこれは失う可能性が大きですよ。」
「もし廃業するのであれば、これとこれだけは守れる可能性があります。」
というふうに説明していきます。
これを確認して初めて経営者に再建できるかどうかの最大ポイントである
①「経営者に何としても再生させるんだという強い意志があること」
という再建の第一条件をクリアーすることができるのです。
再建の第二条件は
②「家族や従業員の協力を得られること」
です。
経営者だけでは再建どころか何一つ出来ません。従業員の方々に現状を嘘偽りなく開示説明し、再建への協力を取り付ける必要があります。会社に携わっていない家族も同様です。
家族の協力が得られない経営者が、苦しみ疲れ果てて帰ってきた自宅で「お疲れ様」の一言もなくテレビを見て大笑いしているのを見れば「俺がこんなに苦しんでいるのに、もうどうなってもいい」とヤケを起こすこともあります。
実際に、私の俯瞰塾会員の再建プログラムでの話ですが、「経費削減対策」の話を横で聞いていた小学生の子供さんが、「お父さん、僕、お小遣いもういらないから頑張ってね」と言われたとその経営者は涙を流しながら「絶対この子のために再建させます」と私に誓ってくれました。
果たして現在、その会社は私の【俯瞰塾】会員です。
私は小さなお子様がいる経営者には、
「再建活動は心身ともほんとうに大変で逃げ出したい毎日ばかりですが、帰宅されたらこどもさんの寝顔を見て、『この子を不幸にしてなるものか』と念じてください」
と申し上げています。
三番目の条件は、再建計画書で営業利益が出る見込みがあるか、ということです。
【経営再建プログラム】で
緊急資金繰り対策
資産・負債対策
経費削減対策
仕入(原価)対策
を実施すれば、営業利益を出すことが出来るのかを【連動式財務三表】を作成して見極めていきます。
次回は、第3章 「経営危機の乗り越え方」 (3)【連動式財務三表】を作成して自社の問題を把握する です。
このブログ、「中小零細ファミリー企業版 『長寿幸せ企業』の実践経営事典2017」は井上経営研究所が発信しています。
井上経営研究所(代表 井上雅司)は2002年から、「ひとりで悩み、追いつめられた経営者の心がわかるコンサルタント」を旗じるしに、中小企業・小規模零細ファミリー企業を対象に
- 赤字や経営危機に陥った中小零細ファミリー企業の経営再建や経営改善をお手伝いする「経営救急クリニック」事業
- 再生なった中小零細ファミリー企業を俯瞰塾などの実践経営塾と連動させて、正常企業から、健全企業、無借金優良企業にまで一気に生まれ変わらせ、永続優良企業をめざす「長寿幸せ企業への道」事業
- 後継者もおらず「廃業」しかないと思っている経営者に、事業承継の道を拓くお手伝いをし、「廃業」「清算」しかないと思っている経営者に、第2の人生を拓く「最善の廃業」「最善の清算」をお手伝いする「事業承継・M&A・廃業」事業
に取り組んでいます。詳しくはそれぞれのサイトをご覧ください。
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