いわゆる入管法が改正案として衆議院を通過した。自民党や公明党などの与党が提案し数に任せて可決したのだ。この法案は以前から大きな問題を抱えており、国内だけではなく 外国 あるいは国連人権委員会からも 警告を受けている問題だらけの法案だ。
今現在も民事裁判で継続中のスリランカ人のウィシュマン さんの死亡 問題について、日本のメディアでも何度も 報道したので、この入管法の問題がかなりクローズアップされた。国会においても野党側からこの問題が取り上げられ、いわゆる難民を認定する基準、あるいは認定の可否にかかわらず、少なくとも日本に在住している人たちに対する扱いをどうするのかということで、問題提起がなされ、論議がされてきた。しかし与党側が出してきた「 改正案」なるものが明らかに後退した内容であって、難民認定の申請を行った上で不認可となった場合、3回目で強制的に本国送還になるという内容のものになっている。容赦なく送り返すということだ。
現状でも難民認定を巡っては、該当する多くの人々が母国での迫害や処罰を逃れて、はるか遠い日本までやってきたのに、その日本で受けた仕打ちというのが、出入国管理局の収容所に収監されるという仕打ちなのだ。あるいは仮放免で収容所から出されても何の支援もない。つまり住むところもないし、収入もないし、子供がいる場合学校へ通うこともできない、などと言った基本的人権が全て奪われた状態で、日本社会に放置されるということなのだ。
スリランカ人のウィシュマさんが死亡した経緯も100%、入管のなぶり殺しによるものだと言わざるを得ないと思う。スリランカの大学を卒業し、明るい 志を持って日本にあこがれ、日本の人たちに語学を教えるという目的でやってきた。しかしビザの関係で収監され 結局、その監獄の中で入管職員から徹底的に人権無視の扱いをされ、病気を起こしても医者にも診せられず、しかも暴言を浴びせられ、最後は痩せ細った瀕死の状態で無残にも死んでいった。これを殺人と言わずして一体何と言ったらいいのか。当たり前の人権感覚で扱っていれば、彼女は死ぬことはなかったはずだ。しかし苦しんでいる様子を演技だとか、笑いものにしたり馬鹿にしたりして、あげくの果て見殺し。これが日本の入管の実態なんだろう。 そんなものは一部の入管に過ぎない、などとはとてもじゃないが思えない。何箇所かある 入管のほとんど全てで同じような扱いがなされているだろう。
対象者はほとんどがいわゆる先進国の人ではなく、アジアやアフリカ、中南米アメリカなどと言った発展途上国や政治的な課題を抱えている国の人々が多い。人種で言えば日本人と同じ黄色人種や黒人などがほぼ100%近くを占めるだろう。もしこの該当者が白人のアメリカ人やイギリス人フランス人だったりしたら、こんな扱いは絶対にないはずだ。第一そういった国々が黙っていない。日本人の入管の職員はそのことを100% 承知の上で、分かった上でやっているのだから、日本よりも「後進国」だと思い込んでいる劣化感覚の入管職員にとってみれば、絶好の「いじめの対象」なのだ。別に死のうがどうなろうが何とでも言い訳はできるのだ。
インターネット上の SNS 、あるいは YouTube などを見ていると、日本がいかに素晴らしい国か、日本人の民度がいかに高いのか、といったことが誇らしげに紹介されるナレーションや映像が数多く流されている。そして コメント欄を見ると、さすが日本人、と言った自画自賛の歯が浮くような内容のものがずらりと並ぶ。そして隣国、韓国をバカにするような内容のものが極めて多いのも事実だ。
でも現実は日本はもうすでに、「後進途上国」なのだ。今や個人所得も30年間全く伸びず、隣国の韓国にも抜かれているというのが実態。一部の分野において世界的なレベルの技術はあるものの、そのようなものづくりの点でも、もうすでに韓国や中国を含むアジアの国々にも勝てない有様になっている。そして深刻なのが言うまでもなく、「 少子高齢化」だ。これから毎年毎年、労働人口が50万から60万人ずつ減っていくという。コロナ明けのインバウンドの回復で、各観光業では人手不足が深刻な状況になっている。それだけではない。商業流通の面でも人手不足。生産業でも人手不足。さらにその中で手足、体が汚れるような仕事は嫌だという身勝手な理由で、ホワイトカラーだけが仕事だと思うような若手が増えている。
しかし社会を動かすためには、汚れる仕事も多々あるし社会そのものがそれを必要としている。しかし日本人の特に若者は、それを嫌がる。こういったものの穴を埋めるために日本の国が考えたのが、「外国人技能実習制度」というものだ。経済的に発展途上にある国々においては貨幣価値も含めて、全体的に収入が低い。しかし日本に行けば少なくとも 本国よりは高い報酬が得られるということで、条件と期限を区切って特定の分野で日本で働いてもらい、技能を学んで本国で生かしてもらおうというものだ。ところがその受け入れを担当する業者を日本政府は民間に丸投げしてしまった。その結果何が起こるのかは、火を見るよりも明らかだ。本国で聞かされていた仕事の内容とは全く違うような、劣悪な環境の下での仕事であり、報酬もピンハネが横行し約束通りの報酬が得られない。あるいは職場での上役や同僚からの暴力や暴言、セクハラなどなど、されるがままの人権侵害のオンパレードという実態が明らかになってきた。従って中には職場から脱走し、 不法滞在扱いになる元技能実習生が日本中に散らばるような状態になっていく。このようになっていくことなどは、ちょっとした想像力があればわかることだ。にもかかわらず日本政府は、そういった人たちを逮捕して収監する。収監先でも非人間的な扱いを受け、結局は日本という国そのものの「民度の低さ」がますます明らかになっていく。そして一定の人々が国連に訴えかける。日本には人権はないのか。
コロナ禍の後の観光客の回復を見ていると、メディアが外国人にインタビューして日本の何々が素晴らしいなどと、浮ついた言葉を引き出して報道する。実に心地よい インタビューだ。ここぞとばかりに美味しいもの、旅館でのサービス、観光地でのサービスなどで 懸命の 「お も て な し 」なるものをする。見事なまでの日本の国民・政府の「二面性」つまり「 ジキル博士とハイド氏」が姿を現すのだ。これの一体どこが日本人の民度が高いと言えるのか。全くバカバカしくなってくる。日本が東京オリンピックの招致に成功した時に、プレゼンテーションで「 おもてなし」との賜ったあの言葉は、日本にいかに大金を持ってきてくれるのかが基準であって、南アジアやアフリカ、南米などの貧しい国々の人々には関係のない話だったのだ。
「基本的人権」というのは、日本国憲法にも明確に規定されている。そして世界中の大半の国で同様に規定されている。一部の独裁国家を除けば、一人一人の人間に対して生きる権利というものが保証されているのだ。そして国連の人権委員会では世界の基本的人権に対する実態を常に調査している。その中で日本に対してはかなり問題があるということで、何度も何度も警告が行われている。日本が「人権後進国」であることは明白な事実であり、少なくとも 先進国と言われる国では、その日本の実態が広く知れ渡っている。入管の問題や技能実習生の問題だけではない。 LGBT についても頑強な保守主義者がいて、G 7を前に決めるものも決められない。島国根性のこの日本の昔からのていたらく。つくづく嫌になる。一部の上辺だけいい顔して、その内面はクソに等しい。これではこれから先、人手不足のことも含め、日本は外国からの様々な支援を受けながら国の運営が求められる中で、そのうち 友好国は見限っていくのではないだろうかと思わざるを得ない。
もちろん日本国民全員がそんなわけではないことは当然だ。良心を持って様々な活動に携わっている人々も大勢いることは承知の上だ。しかし結局は政治の力というのは、日本という国を上記のような情けない姿にしてしまっている。これを変えていくのはやはり国民でしかないのだ。その国民による投票行動がどうであるのか、ということがますます問われていくことになる。政治家たちの不祥事を横目で見ながら、誰が当選したって同じだという諦めにも似た言葉はよく聞くが、それではいつまでたっても何も変わらない。それどころかますます困難な状況に陥っていくだけではないだろうか。やはり様々な行動でアピールする必要があるのだ。
(画像はTVより)
内閣提出法律案は内閣官房ホームページ(https://www.cas.go.jp/jp/houan/211.html)に掲載されますが、それが未だ掲載されていません。
ということは、中身について、詳細を我々は知りえない状況にあります。
だからいくら国会中継、インターネット審議中継で国会議員の熱心な質疑応答を聞こうが、討論を聞こうが、何とも判断のしようがない訳です。
それが現段階でここまで熱を入れられるというのは、その理由を理解できません。