セーラー服を着て鞄を持った千恵は、2人の会話を無視して割って入り、ペタリと母の隣に座っ
て言った。
せわしなく話す間も、彼女は残りの茶をすすりながら、柱の時計を見ている。
「お前、そんなことより早く行きなさい。汽車に遅れるしょ」
トキも時計に眼をやり、いつもの通り末娘を急かし始める。
「大丈夫、ね、お父さんその変な人、名は何て言うの」
「聞いてどうする」
「学校でその人のこと知っている人がいるかも知れない。だって、変な人って案外知られている
もんよ。既に挙動不審で人目に触れているかも知れないもの。私、やっぱり、吹雪になっているの
に峠越え止めないで歩き続ける人って変だと思うの」
「お前も物見高い娘だね」
トキは少こし苛立って娘を見た。
「変かも知れないが、馬鹿には見えなかった。言葉遣いなんかお前より、よっぽどしっかりして
いる。まあ、言えば変人かも知れないかな」
「うん、変人か、変人が野木小父さんの所にころがり込んだのね。私、なんか面白いわ」
「馬鹿なこと言ってないで、本当に遅れるんだから」
「はい、はい」
千恵は残りの茶を一息に空けると立ち上がった。
玄関の敷居の前で振り返って言った。
「それで名前は?」
「いいから行け」
て言った。
せわしなく話す間も、彼女は残りの茶をすすりながら、柱の時計を見ている。
「お前、そんなことより早く行きなさい。汽車に遅れるしょ」
トキも時計に眼をやり、いつもの通り末娘を急かし始める。
「大丈夫、ね、お父さんその変な人、名は何て言うの」
「聞いてどうする」
「学校でその人のこと知っている人がいるかも知れない。だって、変な人って案外知られている
もんよ。既に挙動不審で人目に触れているかも知れないもの。私、やっぱり、吹雪になっているの
に峠越え止めないで歩き続ける人って変だと思うの」
「お前も物見高い娘だね」
トキは少こし苛立って娘を見た。
「変かも知れないが、馬鹿には見えなかった。言葉遣いなんかお前より、よっぽどしっかりして
いる。まあ、言えば変人かも知れないかな」
「うん、変人か、変人が野木小父さんの所にころがり込んだのね。私、なんか面白いわ」
「馬鹿なこと言ってないで、本当に遅れるんだから」
「はい、はい」
千恵は残りの茶を一息に空けると立ち上がった。
玄関の敷居の前で振り返って言った。
「それで名前は?」
「いいから行け」