伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ29

2018-04-14 16:29:21 | ジャコシカ・・・小説
 セーラー服を着て鞄を持った千恵は、2人の会話を無視して割って入り、ペタリと母の隣に座っ

て言った。

 せわしなく話す間も、彼女は残りの茶をすすりながら、柱の時計を見ている。

 「お前、そんなことより早く行きなさい。汽車に遅れるしょ」

 トキも時計に眼をやり、いつもの通り末娘を急かし始める。

 「大丈夫、ね、お父さんその変な人、名は何て言うの」

 「聞いてどうする」

 「学校でその人のこと知っている人がいるかも知れない。だって、変な人って案外知られている

もんよ。既に挙動不審で人目に触れているかも知れないもの。私、やっぱり、吹雪になっているの

に峠越え止めないで歩き続ける人って変だと思うの」

 「お前も物見高い娘だね」

 トキは少こし苛立って娘を見た。

 「変かも知れないが、馬鹿には見えなかった。言葉遣いなんかお前より、よっぽどしっかりして

いる。まあ、言えば変人かも知れないかな」

 「うん、変人か、変人が野木小父さんの所にころがり込んだのね。私、なんか面白いわ」

 「馬鹿なこと言ってないで、本当に遅れるんだから」

 「はい、はい」

 千恵は残りの茶を一息に空けると立ち上がった。

 玄関の敷居の前で振り返って言った。

 「それで名前は?」

 「いいから行け」

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