「それじゃ今日から三日間、毎日ここに来て泊まって行っていい」
「嬉しいよ。多分僕は辛くなると思うけれど、そうしてくれると嬉しいよ」
「私、高志の食べたいもの何でも作るわ」
「ありがとう」
後は何も言えない。
別れはさばさばしたもので、取り立てて語ることは何もないと思っていた。
久美も「じゃあね」と言って別れて行った。
例え初めて知った恋だって、それだけで終わって仕舞った。
だから話しなど何もない。
ただ美奈子は最後に、久美とは別の言葉を残した。
「あなたはやっぱり、ジャコシカだった」
その言葉は、胸の奥に残った。
今度の行き先もできるだけ遠くへと思った。
狩勝峠を越え、海の見える街に行きたいと思っている。
見送る人もいないホームから特急に乗り、ガランと空いた座席の窓際に座ると、さすがに寂莫の
思いに捉われた。
やはりどんなに言いくるめようとしても、別れには迷いと未練と後悔がまとわり付く。
美奈子への未練は消しようもなく切ない。
一体自分は何をやっているのか。
何の考えもなく、唯ぼんやりとホームを行き交う人々を見ている。