二人は未だに三角波の残る海を渡り、漁港に入った。顔見知りが明るく声をかけてくる。
こちらも笑い顔で応え、気分が弾んでくる。
溜まった買い物を済ませた後、赤間家に顔を出す。みやげの干物と冷凍の鱈を渡し、誘われた夕
食を、海が心配だからと断る。
トキさんと千恵が慌てて、手作りの大きなふかしパンを手渡してくれる。
「汽車で行けるようになったら、山菜採りに連れていってね」
千恵は暫く振りの二人に、名残り惜しそうに言った。
漁協に用事があるからと言って、猛さんが馬橇で送ってくれる。
漁協の休憩所前で降りる時、鉄さんがふらりとよろめき、次いで前のめりに倒れた。
駆け寄った高志の問いかけの反応に、呂律が回らない。
二人がかりで再び馬橇に乗せて、病院に駆け込んだら脳血栓だった。
町の病院から直ぐに、駅で三つ先の総合病院に救急車で移された。
幸い処置が早く症状も軽かったので、点滴と薬だけで一週間の入院だけで退院することができた。
高志はその間病室のベット脇の、折り畳みの簡易ベットで過ごした。
入江に帰った後、一週間ほど鉄さんはおとなしくしていたが、その後は海に出ると言って、高志
を困らせた。
せめて4月に入るまでは我慢してくれと、説得するのに手を焼いていたが、漁船を仕立てて見舞い
に来てくれた猛さんと、二人の娘達にも説得されて、やっと収まった。
若い娘が二人、ストーブの前に座ると、洞窟は俄(にわか)に春が訪れたように、明るく華やかになった。
こちらも笑い顔で応え、気分が弾んでくる。
溜まった買い物を済ませた後、赤間家に顔を出す。みやげの干物と冷凍の鱈を渡し、誘われた夕
食を、海が心配だからと断る。
トキさんと千恵が慌てて、手作りの大きなふかしパンを手渡してくれる。
「汽車で行けるようになったら、山菜採りに連れていってね」
千恵は暫く振りの二人に、名残り惜しそうに言った。
漁協に用事があるからと言って、猛さんが馬橇で送ってくれる。
漁協の休憩所前で降りる時、鉄さんがふらりとよろめき、次いで前のめりに倒れた。
駆け寄った高志の問いかけの反応に、呂律が回らない。
二人がかりで再び馬橇に乗せて、病院に駆け込んだら脳血栓だった。
町の病院から直ぐに、駅で三つ先の総合病院に救急車で移された。
幸い処置が早く症状も軽かったので、点滴と薬だけで一週間の入院だけで退院することができた。
高志はその間病室のベット脇の、折り畳みの簡易ベットで過ごした。
入江に帰った後、一週間ほど鉄さんはおとなしくしていたが、その後は海に出ると言って、高志
を困らせた。
せめて4月に入るまでは我慢してくれと、説得するのに手を焼いていたが、漁船を仕立てて見舞い
に来てくれた猛さんと、二人の娘達にも説得されて、やっと収まった。
若い娘が二人、ストーブの前に座ると、洞窟は俄(にわか)に春が訪れたように、明るく華やかになった。