雪が止み厚い雲が割れて、ぱあっと明るい陽が差す日もあるが、海は相変わらず不機嫌で時化(しけ)
ている。
鉄さんは毎日必ず、船着場まで船の様子を見に行く。このため玄関から渚まで、渚から船着場ま
での合計30メートルばかりの、道作りはやる。
道作りといっても積雪はしれているので、大体は踏み固めだ。船の上に積もった雪のかき出しは
やるが、こちらは大概は強風で吹き飛ばされているので、大したことはない。
だから屋根の上の雪下ろしはやらない。
この入江で冬の問題は、雪よりも風なのだ。
毎日山が鳴り海が吠える。
雪は降っているのか、吹き上げられているのか分からない。
しばしば激しく渦巻く濃霧に閉じこめられているようで、眼の前の渚も海も見えない。
そんな日は窓の外を見ることもなく、打ち寄せる波の轟きを聴き、不気味な山のどよめきに身を
まかせるばかりだ。
こんなちっぽけな家など、いつ吹き飛ばされてもおかしくない。
最初の頃は家が揺すられる度に、真剣にそのことを心配したが、眉一つ動かさない鉄さんを見て
いるうちに、次第に心が落ち着き、仕舞いに何も感じなくなった。
人は何でも慣れるものだ。
麻痺してしまうのかも知れない。
2月も半になる頃には、例え朝眼が醒めた時に屋根がなく、空が開けていてもさして、驚かない
に違いないと思っていた。
ている。
鉄さんは毎日必ず、船着場まで船の様子を見に行く。このため玄関から渚まで、渚から船着場ま
での合計30メートルばかりの、道作りはやる。
道作りといっても積雪はしれているので、大体は踏み固めだ。船の上に積もった雪のかき出しは
やるが、こちらは大概は強風で吹き飛ばされているので、大したことはない。
だから屋根の上の雪下ろしはやらない。
この入江で冬の問題は、雪よりも風なのだ。
毎日山が鳴り海が吠える。
雪は降っているのか、吹き上げられているのか分からない。
しばしば激しく渦巻く濃霧に閉じこめられているようで、眼の前の渚も海も見えない。
そんな日は窓の外を見ることもなく、打ち寄せる波の轟きを聴き、不気味な山のどよめきに身を
まかせるばかりだ。
こんなちっぽけな家など、いつ吹き飛ばされてもおかしくない。
最初の頃は家が揺すられる度に、真剣にそのことを心配したが、眉一つ動かさない鉄さんを見て
いるうちに、次第に心が落ち着き、仕舞いに何も感じなくなった。
人は何でも慣れるものだ。
麻痺してしまうのかも知れない。
2月も半になる頃には、例え朝眼が醒めた時に屋根がなく、空が開けていてもさして、驚かない
に違いないと思っていた。