前回の続きです。
家に戻ると直ちに地図を手に取り、先程のアパートの位置が、現在ルナが通っている小学校の学区内かどうかを調べました
さて、学区内なんでしょうか
どうなんでしょうか
心臓がドキドキ・・・
・・・しかし期待は外れました
学区内ではなかったのです。
あたしは迷うことなく次の日の午後、るんるんの小学校のNAPクラスコーディネーターの先生に会いに行くことにしました。
引っ越しを決めたい家があるけれど、なんとかるんるんを転校させることなく、今までどおりこの学校に通わせてください、とお願いするために。
家探しを始めた頃にその旨はお話ししてあったので、顔を見るなり
『家が決まったのね~』
と先生。
30件以上周ってようやく一件受け入れてもらえたこと。
そこが学区内ではなかったこと。
この先も学区内(CITY内)でお家を見つけるのは難しいだろうということ。
るんるんが転校しないことを強く希望している事など・・・
とにかく全身全霊で伝えました。
そして答えはNOでした。
先生も
『決まり事だから仕方がないの、ごめんなさい。』
と申し訳なさそうでしたが
それでも諦められず
『住所だけを今のところにおいたままにしても無理ですか。』
としつこくお願いしました。
『昨年まではできました。でも今は見ての通り生徒がすごく増えていて、無理な受け入れは避けなければならない状態なの。』
との答え。
そうなんだ・・・
衰退しきったあたしがなかなか席から立とうとしないので、
『私があなたに出来る事は、新しい住所先の学区内にあるNAPクラスのある小学校を紹介することだけです。』
と先生が切り出しました。
これ以上お願いしてもきっと答えは変わらないだろう空気が漂っていたので、あたしは肩を落としたままスタッフルームを出ました。
どうしよう。
どうするべきなんだろう。
奇跡とも言えるこのご縁を諦め、再び確かな学区内での家探しの旅に出るべきなのか。
もしくはるんるんに今の小学校を転校させてでも、あのお家に決めるべきなのか。
悩みました。
本当に悩んで悩んで悩みまくりました。
せっかく慣れた学校。
つたないカタコトで作った友達。
優しい先生。
るんるんからそれらを取り上げてまで、あのアパートに引っ越すべきなのか。
本当にそこまでするべきなのか。
・・・やっぱり諦めよう。
でも、じゃあ、一体この奇跡の出会いは何だったの。
るんるんが導いてくれた、YおばあちゃんとHさんとのあの偶然の出会い。
その全ては意味のないものだったということ?
これまでも私達親の都合に引っ張り回されて、それでも文句一つ言わずに付いてきてくれたるんるん
暑くて死にそうな日も、一緒にがんばって歩き続けてくれたるんるん
日本に居る時と違って、この一ヶ月半は、我慢することの方がずっと多かったはず。
そのるんるんの悲しむ顔が見るのは親としてすごく辛い・・・
でもその片方では、この先いいなと思えるお家に出会えるとは限らないという現実問題。
例え出会えたとしても、オージーの申込者が殺到する中、外国人学生家族の私達がその闘いに勝つのははっきり言って簡単なことじゃない。
それに、あと二週間以内にお家が決まらないと、今月末に日本に帰国してしまうみきちゃんご家族に家具を譲ってもらうお話しを見送らないといけなくなってしまう・・・
一体どうしたらいいんだろう・・・
そして悩んだ挙句、決めました。
るんるんに事情を話すことにしました。
8歳のるんるん。
事情を話しても十分理解できる年です。
なので、少し酷だとは思ったけれど、何一つ隠すことなく、嘘なくすべてを話しました。
ベッドに座り向き合った格好で、黙ってトマトの話しに耳を傾けるるんるん。
何も言わないるんるん。
そのまっすぐな瞳から、涙があふれ出し、そしてこぼれ落ちました。
言いたいことが痛いくらい伝わってきます。
一生懸命あふれる涙を堪えながら、
『今日おやすみ時間に外でひとりぼっちで座ってた子にアメあげたんよ。
そしたらその子が ”You are my best Friend”って言ってくれたん。
今日初めてその子と友達になったとこやったん・・・』
『そっか、そうやったんや・・・』
短い中にも暖かい物語のある言葉に胸が熱くなり、思わずるんるんを抱きしめると
『皆とお別れするの寂しいよ・・・』
と、初めてそこで声を出して泣き出しました。
そしてしばらく泣いた後、自分に言い聞かせるように
『うん』
とうなづいたるんるんは
『でも・・・三人で力合わせてがんばって行こうってお約束したから、皆とお別れするのつらいけどがんばる・・・』
と言ってくれました。
『ありがとう、えらいね。』
気持ちのままのトマトの言葉でした。
我が子ながら逞しい。
知らない間にこんなに成長していた彼女の強さと深さに逆に励まされ、あたしも小さいことでくよくよしていてはいけないな、と身を引き締めさせられました。
『今はやっぱり寂しいと思う。ママたちもるんるんの気持ち、よーく分かる。ごめんね。
でも三ヵ月後には、前の学校も楽しかったけど、今はもっともっと楽しいなって思えるようになってるよ。絶対やから。約束する
』
『うん
』
ありがとう、るんるん。
大丈夫、何もかもうまくいくからね
明日新しい小学校の視察に行ってきます。