そっぽ向かれても猫。
なんか観光客がいなくなって、猫たちにエサが行き渡らなくなったせいか、いつもの場所に行くとどこからともなく猫が集まってくる。
それも一匹、二匹ではなく、風が落ち葉を巻き上げるように猫がざわざわーっと集まってきて、ぐるぐるとまわりを取り囲まれる。
「なんも持ってへんにゃ、ごめんな」
そう言うとまたざわざわーっと去って行く。
猫たちにとってはエサをくれる人は良い人で、エサをくれない人は枯れ木と同じ。
どうでもいいよって顔される。
当然、猫なで声なんていうのもない。
ただ寒さに耐える猫。
警戒はしているものの、動くとおなかへるから動かない。
誰か良い人がきてくれないかな、と待ち続ける。
紅葉はもう終わってしまった。
冷たい風が冬が来たことを知らせる。
哲学の道はいつもと同じ静けさを取り戻し、猫たちが枯れ葉のベッドに身を沈め、ただ人を待ち続ける。
「もう春まで人はこないよ」
そう言っても猫たちはこの場所を動こうとはしない。
身を寄せ合い、冬の寒さが過ぎるのを待っている。
そんな猫たちが面白い。