合衆国の片隅で新館 2006~

5人と4頭プラスαと2羽と1匹とその他大勢だったアメリカ暮らしは2人と1頭と1匹になりました。

半年間の成果

2009-05-09 | 日本語教師の日々
フーの体調不良、ブーの奨学金オーディション(の伴奏)、キッチンキャビネットの完成と、家中に積み上げられたその中身の移動、何故か始めてしまった新しい仕事、そして趣味のグループのボランティア、学校のボランティア、戻ってきた5月の咳(アレジー)…と怒濤の一週間がようやく過ぎ去り……


半年間、一生懸命育てた生徒さんグループを見送り、身に余る「お礼」としてステキなランの花とチョコレートをいただきました。


蘭とバラとセントポーリアにだけは手を出さないようにしてたんだけど(奥が深すぎるから)、なし崩し的にデビューが続いています


最初はどうなることかと思われた、全く初心者の6人組。多くの場合、「○ヶ月後、日本へ赴任」みたいに、お尻に火のついた状態の生徒さんが多い中、「もしも日本語が話せたら日本の顧客との関係も良くなるだろうし~」みたいな緩いノリだったので、エンジンがかかるまでは大変でした。週に1度、1時間半のレッスン時間以外、一切日本語に接する時間がないという環境。

「ハジメマシテ」の発音にも苦労したっけなあ。「よろしく」も「ヨロコシコ」になっちゃったり。説明なんかすぐ頭からぶっとんじゃって、3週目あたりに元気よく「ハジメマシテ!」って挨拶されたりもしました。「えー、ハジメマシテってHow are youのことじゃなかったっけ。」ってがっかりしていたJさん。日本語に、アメリカ人のHow are youにあたる表現はないよって何度も説明したんだけど、発音が精一杯で余裕なかったのね。

「これは誰のペンですか?」って一ヶ月くらい練習した後聞いたら「ハイッソウデス!ペンノワタシハコレハデス!」って張り切って答えてくれたHさん。「お子さんはいくつですか?」と聞いたら「おくさん」の年齢を答えてくれちゃったBさん。「こども」を食べてしまった(正解は「くだもの」)Oさん。でも、地道に、とにかく身の回りのことを少しずつ言えるように、繰り返し練習を続けてきた結果、


その人達が今では、
「私は去年の夏、ハワイに行きました。ハワイにビーチがあります。」
なんて言えちゃって、もう感涙。

「そうですか、誰とハワイに行きましたか?」
「カ・・・・”カズコ”ト イキマシタ。」


・・・・・・カゾク・・・・・・ですね。カゾク。カズコは日本の女の人の名前ですよ~。←こういうことはすぐ覚える。次からは「カズコと」が大流行。何やってるんだか。

「Jさん、お財布はどこにありますか?」と聞けば、
「ワタシノ サイフガ、アリマセン」
「ドコにありますか?」
「ツマノ カバンノ ナカニ アリマス。ワタシのサイフハ、ツマノデス」
「ワタシノ サイフノ ナカニ、ナニモ アリマセン」
「ワタシノ クルマノ ナカニ、シタイガ……アリマセーン」←他のみなさん、せっせと新しい語彙の「シタイ」をメモ。そんなの覚えなくていいってば。

「オーストラリアニ、ナニモアリマセーン」←オーストラリア人をおちょくるアメリカ人 耳まで赤くなるオーストラリア人
「カンガルーガ アリマスッ」←ドイツ人が援護射撃
「ハイ、カンガルーが『います』」←すかさず訂正
「コアラガ イマス!」
「コアラ『も』います、ね」←しつこく訂正
「コーラルが イマス!」
「あー、コーラルは動かないから『あります』ね。」「タスマニアタイガーはいますか?」
「タスマニ アタイガーハ、イマセン」
「そうですね『もう』いません」←導入済みの新表現を確認
「タスマニア タイガーモ イマセン」
「あ、これは『も』じゃなくて『もう』ね」←やっぱり「もう」は難しいねえ。
「タスマニアタイガーは、もういません」

「グレートバリアリーフガ アリマス!」
「ウルルガ アリマス!」
「ウルルッテナンデスカ!?」←これまたしつこく練習してきた表現。よくできました。
「エアーズロック デス」
「エアーズロックッテ ナンデスカ」

「オマエ、そんなことも知らないのかよ~!」「そういえば、オマエ、この前日光のサルのことも知らなかったよなー」「アメリカ人は何も知らないなー」←すでに英語でアメリカ人を袋だたきにする外国人たち。人数逆転すると怖いよね。


…なんて勝手に盛りあがってくれたりして、実に楽しい生徒さんたちでした。アメリカ人3人ドイツ人1人オーストラリア人1人台湾人1人。国際色豊かだったのも良かったです。ちなみに、上の会話は、しつこくしつこく繰り返しているうちに、

PlaceにNounが あります or います (There is NOUN at the PLACE) ex.オーストラリアにウルルがあります。 ホワイトハウスにオバマさんがいます。
NounはPlaceにあります or います (Noun is there)ex.ウルルはオーストラリアにあります。 去年、ブッシュさんはホワイトハウスにいました。

の構文が自然に使い分けられるようになるのが狙い。やはり、自分の知っていること、言いたいことを、その日に習った文型で言えるようになる「リアルドリル」が一番身に付くようです。使える日本語!せっかくここまで来た彼らの日本語、これからも続けてくれるといいな。



髪が伸びたよ~


フーがちょきちょきしてくれました。

あっ、ウィルソーン!あのときはごめんよ~~~~(キャストアウェイを見てない方、意味不明ですみません)


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母を料理しました

2008-12-03 | 日本語教師の日々
私「サンクスギビングはどうでしたか?」

生徒さん(以下S)「楽しかったです。両親のうちへ行ってターキーを食べました。」

私「そうですか!誰がターキーを料理しましたか?」

S「母料理しました!」

私「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

私「お、お、お母さん料理しましたか?」

S「はいっ」

私「・・・・・・・爆」←笑っちゃいけないと最初に我慢したのがアダになり、ここで笑い炸裂」

S「あ・・・・・母・・・・・・料理しました。」


ハイ、正解。ああ苦しかった。
「お母さん」ではなく「母」と口に出せたところで一瞬気が緩んだんでしょうね。日本語の助詞は外国語話者にはとても難しいようです。先日は、自己紹介しようとした生徒さんが「ジョンさんの東芝(仮名)です」と言いました。語順が入れ替わっただけでジョンさんは東芝(仮名)のオーナーになっちゃうんですね。それにしても、自分に「さん」つけちゃダメだってば。


「なんつーか、オマエ、愉快なお仕事だな。」


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銀座を食べませんか?

2008-09-10 | 日本語教師の日々
今日は子ども達が出かける頃になっても薄明かりもなく、真っ暗。こんなに日が短くなったんですねぇ~と感心していたら、お天気が悪かったのでした。落ちてきそうなくらい重く澱んだ低い空です。

オットはそんな中、自転車で通勤しようと、例によってウルトラマンみたいな格好(部外者の認識なんてこんなもんよね)で下に降りてきましたが、そこで天気に気付き、テレビを付けたところ、予報は見事に雨。ガッカリして着替えて車で出かけました。

植物には嬉しい雨だけど、秋の初めの雨はちょっと気分が落ち込みます。


それでも、気分を明るくしてくれるのは楽しい日本語・初級のクラス。
今日のお題は「Verb(動詞)+ませんか ましょう ましょうか」

A:金曜日の夜、(私と一緒に)ご飯を食べませんか?
B:いいですね。食べましょう。
A:どこへ行きましょうか?
B:銀座はどうですか?
A:いいですね、銀座へ行きましょう。

…日本語ネイティブの耳には些か不自然に聞こえるかもしれませんが、この段階で習っている表現で混乱なくできる文章にしてあります。教師が説明の中で使う言葉も、その段階で習った文法に合わせるので、日本語としては不自然な、ティーチャー・トークと言うものになります。これでも「と」「を」「で」「へ」などの助詞が次々出てくるので、慣れない生徒さんにとっては大変なんです。

ま、とにかく。
教科書の練習問題は、状況がイラストで描かれており、そこにセリフを入れるようになっているのですが…。

優秀な生徒Tさんの教科書を覗き込むと、あらあら、やっぱり混乱してる。相撲の絵を見ている二人の会話。「相撲を見ませんか?」が正解なのだけど(ちなみに、「見に行く」というのはもっと先で習う文法)イラストの下に「相撲をしませんか?」と書き込まれていました。うんうん、ちょっとわかりにくいよねー。これでも表現の練習にはなるからTさんの解答もOK、だけど一応正解も教えておこうかな、と。

私:Tさん、これは「相撲をみませんか?」ですよ。普通の人は相撲をしませんから。(ここもティーチャー・トークです。相撲”は”しません、というのが自然な日本語ですが、この「とりたての『は』」の用法は、もっと後から勉強します)
T:トントン(…とイラストを指す。よく見てください、のジェスチャー)

なんと、相撲を見ている二人の頭に、大銀杏が描き込まれていました!

なるほど・・・これは、確かに、相撲をしませんか?になりますね。ちなみに、下の方のちゃんとした解答欄には、しっかりと「すもうをみませんか」と正解が書き込まれていました。やられた~!

よく見ればもう一カ所
「銀座に行きませんか?」
「はい、行きましょう」

この会話にも何やら落書きが…

よーく見れば、AさんBさんそれぞれがゴジラとモスラに化けていて、

「銀座食べませんか?」
「はい、食べましょう」

なんて世にも恐ろしい会話を交わしていました。不覚にも大ウケ。恐るべし、優秀な生徒さんです。ややこしい助詞を完全に自分の物にしていない限り、できないジョークですからね。

ウケたと同時にかなり嬉しかった瞬間なのでありました。

しかし、Tさん、アナタはご存じないでしょうが、実は相撲は「する」ものではなく「とる」ものなんですよー。日本語って本当に厄介ですねぇ。ふふふ。

「モスラは銀座を食べません。繭を作るだけですよ。」なんてマニアックなツッコミはしないように。



Tさんの教科書再現図。もっと上手だったなぁ。


おまけ
助詞が如何に大切かを検証してみましょう。


その犬にハゲがあります。



その犬はハゲであります。



その犬はハゲはありますが、優秀な警備係です。
「噛みまちよ。」


ほらね?

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人間として親切です???

2008-08-21 | 日本語教師の日々
日常はボケボケと進んでいきます。先週は涼しくて、もう夏は終わったと思っていたら今週はまた焦げそうな陽射し。学校再開まであと一週間弱です。いよいよですねぇ。スクールサプライもほぼ揃えたし、フーのアレルギー注射や、新しく始める予定のオーケストラのオーディション、ブーのオーケストラの顔合わせなんかも着々と進み、Back to School モードに変わってきました。

それにしても、あのウー君が高校生になるとは、いやはや…信じられません。今日はオリエンテーションで朝から出かけています。初めて自分でお弁当を作って出て行きました。いよいよ弟くんも、お姉さんたちの仲間入り。すなわち、「学校のランチ代1カ月分にちょっと足りない程度のお金をもらって、自分でお昼を作るなりカフェテリアで買うなりする。残ったお金が自分のお小遣い」というシステムです。こうするとイヤでも自分で自分のお弁当を作るようになりますからね。お姉さんたちは小学校の頃からこうしていたような気がするけれど、果たしてウー、毎月のお小遣いが赤字にならないでしょうか?それに加えて、朝のキッチンに気が立った若者が3人ひしめくことになるのかと思うとちょっと行き先不安ですが…まあなるようになるか。


私もそろそろ真面目にお仕事モードに入らないと。
お仕事方面でわりと最近悩んだこと。「~としては」の使い方。(ええ、私、日本語教師のきれっぱしのようなことをやっております) 中級も後半の生徒さんなので、ほとんどのコミュニケーションは日本語で取ることができる相手ですが、やはり文法の使いこなしは難しい。新しい文型を導入して、理解、納得したら、こちらからいくつかの例文を提示し、最終的に生徒さんにも例文を作ってもらうようにしています。

教科書の例文はこうでした。
「あの人は学者としては立派だが、人間としては尊敬できない。」
これを受けて生徒さんが作った例文
「あの人は人間としては親切だが、ビジネスマンとしては怠惰だ。」

な、なるほど…”立派”も”親切”も同じ”な形容詞(形容動詞)”だから入れ替えは可、同じく”尊敬”も”怠惰”も名詞だから入れ替えができるはず…という発想。

でもね、でもね、でもね。
「人間としては親切だ」の時点でアウトですよねぇ。確かに文法的には合ってるんですが…原因はいろいろありますね、”親切”というのは人間以外の生き物にはあまり使わない言葉だから、「人間として親切」が既におかしい、ということも言えるし、文の対比を見ても、”親切”と”怠惰”は呼応していないというか…うーん でも確かに「人として親切」なら言わないこともないような気がするし…うーん

彼にしてみれば、
[He is a nice person, but as a business man, he is a little lazy.]
って感じで完璧な入れ替え文だと思ったのでしょう、なかなか納得がいかない様子でした。


こういうのは説明すればするほどドツボにはまるので、とにかく正しい(と日本語ネイティブに聞こえる)日本語の例文を次々出してニュアンスをわかってもらうようにするのですが、この時はちょっと焦りました。「人間としては親切だ」に影響されすぎて、だんだん何がまともな文なのか何がおかしい文なのか、私の方がわからなくなってきちゃうんですよ。

とりあえず、その日はそこそこに切り上げて、その後ことあるごとに、会話の中にわざとらしく「クッキーはペットとしては優秀ですが、警察犬としては無能ですねー」なんて文章を挟んだりしていますが果たして。

いやいや、日本語も難しいです。

さて、旅行記にかまけてほったらかしだったブログネタを一気にご紹介!
…と思ったけど、長くなりそうなので、ちょっとだけ。


「もう季節も終わりだし、スイカで〆よう!」と勢い込んで娘たちが買ってきたスイカ。ショーック!もちろん、返品しました。昨今ガソリン代の方が高いですが。納得いかないし。



食欲の秋近し!って、まだ来てもいない秋を口実に食べまくる今日この頃。
きなこクッキーとおだんごに、”なんちゃってお抹茶”おいしゅうございました。




「オマエ、さっきどさくさにまぎれてなんかひどいこと言わなかった?」



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お風呂に入ってもいいですか?

2006-10-06 | 日本語教師の日々


「今日は日本語の話だっつーから…」


「オレはここから先読みません。あーウマかった」



「なんだかむかつくわー」



さてさて。久しぶり、日本語教育のお話しです。

初級のクラスで「ないフォーム」を教えました。今まで「ますフォーム」「てフォーム」をやってきて、今度は「ないフォーム」


日本語が母語の私たちとは違い、一つ一つの動詞を活用ごとにグループ分けして、一つずつルールを覚えて活用できるようにしていくメソッドです。

規則動詞の第2(一段活用)グループ、「○○ます」の「ます」の前の文字がエ段のグループです。
食べます・覚えます・忘れます・見せます・教えます・つけます・寝ます・開けます・閉めます・止めます・あげます…などなど

これだけなら単純なんですが、第2グループには【例外】があります。
起きます・降ります・借ります・見ます・います

これらはエ段じゃないけど第2グループ。「ええ?どうしてぇ?」と言いたくなる生徒さんもいますが、とにかく今まで習った動詞の中で第二グループ例外に入るのはいくつもないからとにかく覚える!と強調してドリル。第2グループ、ないフォームの活用では、ただ「ます」を取って「ない」に変えるだけ。

ホラ、簡単でしょ?

生徒さんもまだ余裕。

次、不規則動詞の第3グループです。
勉強(を)します・練習(を)します・食事(を)します…などの「します」シリーズと「来ます」「持ってきます」などが不規則動詞。
これも第2グループと同じ活用なので楽勝。

さて、問題の第1(五段活用)グループ。これはちょっとクセモノ…ということは「てフォーム」で苦しんできた生徒さんはすでに覚悟しています。でも「ないフォーム」は「てフォーム」に比べたらずっと簡単。
ア行の動詞はとりあえず避けておいて、
行きます→行かない
座ります→座らない
急ぎます→急がない
待ちます→待たない
休みます→休まない
などなど、イ段をア段に変換して「ない」を付ける練習。苦しみながらもなんとか。

そして問題のア行です。
もらいます→もらわない
使います→つかわない
言います→言わない
手伝います→手伝わない
ここは何故かイがワ行ア段のワに変化するんですね。

更に例外
あります→ない

・・・生徒さんってお気の毒。

いや~、でもえらいなあと思います。これを覚えるんだもの。日本に住んでいる外国人ならともかく、日本語との接点がほとんどない人たちが一生懸命動詞を覚えて活用まで練習するって尊敬してしまいます。

さあ、この調子で張り切って「プレーンフォーム(辞書型)」「たフォーム」「コンディショナルフォーム(行けば・食べれば)」「Volitionalフォーム(行こう・食べよう)」…と勉強していきましょう!…なんてことはこの段階では言わないように(笑)。


さてさて、ないフォームの活用練習を繰り返した後は、いよいよ文型練習に。
まずは「~ないでください」の場面を導入、口慣らしから入れ替えドリル、指示ドリル、条件ドリル、リアルドリル…と進んでいきます。

いろいろな状況の写真や絵を使って会話練習。
「芝生に入らないでください」とか
「寒いですから窓を開けないでください」とか
「ここに車を止めないでください」とか

ところがここで意外なことが起きたのです。私が場面を設定して、状況を説明します。
「ここは病院です。(あなたは)熱があります。お医者さんに聞きます。『お風呂に入ってもいいですか?』」
本来ならここで「(お医者さんの絵を指さし)『いいえ、2,3日、入らないでください』」と進むところなんですけど…

生徒さんがパッと手を上げたんです。眉間に皺を寄せて質問の合図。
「どうしてお医者さんに聞きますか?」(「聞くですか」なんて高等な表現はまだ習っていません)

ハッとしました。そうか、彼らは熱があるからってお風呂を諦めたりしないし、ましてや医者に指示をあおぐなんてことはない?

聞いてみるとやはり「熱があるからお風呂に入らないなんて聞いたことがない」とのこと。


そっかぁ・・・・・
覚えてますか、みなさん、先シーズンの冬、熱を出して寝込んでいたフーにバレエの先生クロちゃんが教えてくれた熱冷ましの秘訣文化が違うんです。


せっかくなので、日本では風邪を引いたらお風呂を控えるようにする、子どもの予防接種の後もその日はお風呂には入らない、と教えると今度は彼がびーっくりです。

「どうして?」

うーん…いろんな可能性を考えてちょっと答えあぐねていると、

「わかった!たぶん、だけど、えーと、これは昔の話ね、(と日本人の私に気を遣っている)昔日本は何人もの人が同じお湯に入ったでしょう。だから汚れたお湯でばい菌がはいったりしたら困るからじゃないですか?」(←もう英語)

うーん…そ、そ、それは…うーん…でもそれあるかも。

だけど基本的には、湯冷めが弱った身体を悪化させるから、ってことじゃないのかなあ?それに熱いお湯は体力を消耗させるし…どうなんでしょうね。あまり考えてみたことがなかったですが、「熱があるからお風呂に入ってはいけない」というのは確かに世界共通のルールではないんですよね。

教える方もそういうことをよく理解した上で謙虚に「教える」態度が大切かもしれません。


…と真面目にまとめてみましたが、実はそのギャップに気付いたときは生徒さんと
「えーっ!?」「は?」とか言い合っちゃっておかしかったです。


アメリカ人、理解に苦しむの巻


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頭に挿す箸と梅干しと

2006-08-24 | 日本語教師の日々

思わずグチりたくなるほどお疲れモードです。ヘロヘロヘロヘロ~


light日本語の生徒さんと、ある日の会話light(英語での会話です)


生徒さん(以下S)「ボク、去年、何度も日本へ行ったでしょう。娘に、箸を買ってくるようにたのまれちゃってねえ。」

私「あら、そうなんですか?」

S「ウチの娘、日本の文化が大好きなんですよ!」

私「へえ~。じゃあ娘さん、喜んだでしょう?」

S「ええ。本物の日本の箸だって、もう大喜びで…」


私「うんうん」

S「大喜びで、髪に挿してますよ。yellow16

私「・・・・・・nose4




その後確認したところ、生徒さん自身はちゃんと箸の使い道を理解してました。でも可愛い娘さんには何も言えなくなっちゃうみたいですねー。だけどさ、それなら「娘は日本の文化が好きで」って言うのはやっぱりちょっと間違っているような…気がしませんか。


すみません、既にいくつかコメントを頂いたところで補足情報。
アメリカではどこからどう見ても箸!にしか見えないものが本当にヘアアクセサリーのコーナーで売られているんです(涙)。箸にしか見えない、というよりも「滑り止め加工付き!」なんて日本語で書かれていたりして、完全に箸として日本で売られているものがどういうわけか、もうかんざしになりきっちゃってるんですよ。これはもういちいち訂正して回るのが不可能なほどです。着物の人形やイラストがほぼ9割以上の確率で左前なのと同じく、もう既成事実になってしまっています。ちょっと複雑…と言いつつ、簡単に「長いものには巻かれちゃえ!」な私でごめんなさーい。




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こんな時だから…

空くん“ち”の日記の「かあちゃん」さんから頂いた嬉しい嬉しい贈り物

特大の南高梅、しかも昔ながらの味付けでしっかりと漬けられている本物の梅干し!


とっても癒されます~~~~!私が ものほしそうに梅干しの記事にコメントしたので 超超梅干しラバーだと知ってお手製のフレッシュなのを送ってくださったのです。更に、去年、一昨年のバックナンバー(?)まで。大事に大事に頂きます。ありがとうございました>かあちゃん!

symbol7もしかしたらしばらくの間更新が少々不定期になるかもしれません。大忙しの今日この頃です。
→ランキング応援ありがとう!!

テンテンに悩む日々・セミリンガル物語

2006-05-18 | 日本語教師の日々

日本語の授業中、プライベートレッスンで1対1なので一人の生徒さんにとことんつきあえるのは良いことなのだけど、今日はちょっと困ってしまった。

「改めて、どうしても気になることがあるのでじっくり教えてほしいのだけど」

と切り出されて、気軽に「何ですか?」と聞いたところ…

「jiという音は『し』にテンテンと『ち』にテンテンとどうやって使い分けるのか」
と。さらに
「『す』にテンテンと『つ』にテンテンの使い分けも教えてください」
って。
もう生徒さん、「今日こそ疑問解決!」って感じでメモを取る姿勢で私の答えを待ってるんです。

限られた語彙(まだまだ初級)の中では普通、「何を教えるか」と同じくらい「その段階で何を教えないか」というのが大切とされていて、そのために綿密に組み立てられた教科書の通りに文法を積み上げて教えていくのですが…正直言って、文字を教えるための訓練は私、一切受けたことがございません!(きっぱり)

小学1年生が悩むところの「くっつきのは(わ)」「くっつきのを(お)」なんていうのはまあなんとか、Particle(助詞)という英単語を使って切り抜けたものの、実を言うと、なぜ「ありがとお」ではなくて、「ありがとう」と書くのか、というのも未解決の問題なのであります。

「前の文字が、あいうえお表の【お段】の時、【う】は【お】という発音になる」

と説明はできるのだけど、「じゃあ、どうして最初から「ありがとお」と書かないのですか?という疑問にはもうお手上げです。大体、まだ初級の初級だから、説明に使える日本語もものすごく限られているし。

で、【じ】と【ぢ】の違いに戻るわけだけど、基本的にはテンテンを付けない、元の言葉によるもの…ですよね?缶詰とかお小遣いとかは、もともとが【詰める】【遣う】だから、ほら【つ】にテンテン。

でも、鼻血(はなぢ)の時はそれで説明が付くけど、地面(じめん)の時、【地】という文字は大地(だいち)の地なのに、何故【しにテンテン】になるのかは、私にもわかりません。…というようなことを限られた語彙の日本語と限られた能力の(悲)英語でグルグルと考え…プチパニック


私がどうやってその場を切り抜けたのかと言うと…


日本人でも間違ってる人、いっぱいいるから!(^◇^;)


・・・orz・・・いいのか、これで。(良いわけないでしょう)



更に続けて「ミラーさん」とか「ビジーさん」(どちらも教科書の登場人物)のときはどうして「ミラア」とか「ビジイ」さんではなく音引きになるのか。「ああ、田中さん」は「あー田中さん」ではなく「ああ」だと、何故日本人は区別できるのか!?

カタカナだったら基本的に音引きよー、と言っちゃうのはあまりにも無責任?でもひらがなではあまり音引き使わないですよね?「ええ、そうです。」と書くけど「えー、そーです。」と書いたら全然違う印象になるし。

これを全くの外国語として習ったら「えー、そおです。」になっちゃってもしょうがないというか…。

これはきっと、その段階で突っ込んで教えてはいけない領域にうっかり足を踏み入れてしまったことになるんでしょうね。あー、どおしよお。

本線の文法積み上げの方は頗る順調なものの、こっちの分野のつまずき(あ、これも【つく】なのに【すにテンテン】だわー)が痛いです。

国語が得意だったなんて…もう言えないなあ。


そういえば、テンテンで思い出しましたが、我が家のセミリンガル君、ウーは日本生まれで6歳まで日本で育ちましたが、言葉の発達が比較的ゆっくりで、特に苦手な発音がたくさんありました。


小さい頃は、よくKYOさまにいじめられていた(笑)ものです。

KYOさま 「ウー、今日はどこに行くの?」

ウー   「あのねっ、やちにくやさん!(((≧∇≦)))」(翻訳:焼き肉屋さん)

KYOさま  「何だって?ウー、ドコに行くって?」

ウー   「やちにくやさん行くの(((≧∇≦)))」

KYOさま  「ふーん、ウーは何を食べるの?」

ウー   「やちにくっ!(((≧∇≦)))」 

KYOさま  「なんだって?何を食べるって?」

ウー   「あのね、やちにくっ!(((≧∇≦)))」

KYOさま  「もういっかい言って!」

ウー   「うん、やちにくっ!(((≧∇≦)))やちにく食べるのっ!(((≧∇≦)))やちにくっ(((≧∇≦)))」

KYOさま  「え?」

ウー   「やちにくっ(((≧∇≦)))」


・・・KYOサマしつこいし・・・応える方もしつこいし・・・
その後しばらくして無事、「き」が言えるようになったウー、次なる挑戦はサ行でした。「さしすせそ」がことごとく「はひふへほ」になってしまう。

「あのひゃー、うーひゃー、おはひみ、あんまりふちやないの。」(翻訳:「あのさあ、ウーさあ、お刺身、あんまり好きじゃないの。」これを即座に理解できていた私ってバイリンガル?)


最後に残った難関は「し」でした。幼稚園年長になったある日、一人つぶやくのです。


ウー  「あのさあ。ウーさあ、【ひ】って言えないんだよね。」

私   「【ひ】って言ってるじゃない」←重々承知の意地悪

ウー  「ちがうよ、【ひ】じゃなくて【ひ】って言えないんだってば。」

私   「ちゃんと【ひ】って言ってるよ。」

ウー  「【ひ】だってば!【ひ】じゃなくて【ひ】!」(翻訳 「【し】だってば!【ひ】じゃなくて【し】!」)

遂に業を煮やしたウーは言ったものです。
ウー  「わかってないなー、ママは!【ひ】だよ!テンテンつけると【じ】になるやつだよっ!」

母はこの時初めて、彼がひらがなをマスターしていることを知ったのでした。なにしろ文字を一切教えない方針でやっていたので…。

彼のセミリンガルっぷりは今でも大したものですが、この頃から比べたら進歩してます。格段に。なんたって、先日はこんなことを言いましたから。

「ママ、庭にさまざまな花が咲いているね!」

・・・間違ってはいないよ、確かに文法的には合ってるよ。でもね・・・。
他人様に日本語を教えている場合ではないかもしれません>私



おばーちゃんおなやみちゅう。
らんきんぐもおちてるみたいなのでくりっくでげんきづけてあげてください。


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質問は尋問のごとく

2006-04-26 | 日本語教師の日々

日本へ行って戻ってくる生徒さんへの質問一覧を準備中

日本はどうでしたか?(暑かった、寒かった、暑くなかった、寒くなかった、賑やか…etc.)
お天気はどうでしたか?
日本語はわかりましたか?
何で行きましたか?
誰が飛行機の切符を買いましたか?
誰と行きましたか?
ひとりで。どうしてですか?(理由はすでに聞いているので、「~ですから」とつなげさせる)
いつアメリカに帰りましたか?
誰と?何で帰りましたか?
日本でタクシーに乗りましたか?
○○から○○までいくらぐらいでしたか?
日本のホテルはどうでしたか?
日本で何を見ましたか?
何を買いましたか?いくつ買いましたか?
日本のテレビを見ましたか?日本の音楽を聴きましたか?
どこに行きましたか?何で行きましたか?
デパートに行きましたか?コンビニに行きましたか?100円ショップに行きましたか?
何を食べましたか?どこで食べましたか?レストランに行きましたか?どうでしたか?
お酒を飲みましたか?ビールは安かったですか?
日本のご住所は?アパートの部屋は大きいですか?静かですか?駅の近くですか?便利ですか?どの駅の近くですか?どんなアパートですか?社宅ですか?今、部屋に誰かいますか?
電車に乗りましたか?バスにも乗りましたか?電話をしましたか?
△△はどんな町ですか?××町(住むところ)はどんな町ですか?
日本で仕事をしましたか?英語の新聞を読みましたか?買い物をしましたか?日本語の練習をしましたか?
日本人と話しましたか?会社に行きましたか?
誰に会いましたか?
アメリカ人はいましたか?何人いましたか?
友達はいましたか?
○市に何がありますか?


…今までの時点で習っている範囲の知識を全部使って、最大限答えられるように教案を作っていたら、娘たちに
「尋問ですか(^◇^;)」
と言われてしまいました。うむ、確かにものすごい質問の量だ…。


いや、でも別に生徒さんは何も本当のことをすべて答える必要はないわけですから、でも聞き取って返事をすることが大切なんだよー。しかし、疲れるでしょうね。これだけ聞かれたら。

でもねーやっぱりQAは避けて通れないのです。練習練習、また練習。たった2週間、日本語を勉強しただけでこれだけの質問に全て答えられる(はず)というのがすごいです。


でもこの前は大失敗してしまいました。理系の仕事をする生徒さんで、数字を重点的に勉強したい、というので分数の言い方に慣れる練習をしていました。英語だと2/3はTwo-Thirdで、日本語は順番が逆になるので馴れが必要なんです。それにアメリカは分数の国だから、分数は大切!反射的に言えるようになるまで反復練習します。

さて、生徒さんへ問題です。

「50%は何分の何ですか?」
「ah~……ニ…ブンノ…イチです」

「そうです!2分の1です。では100ccは1リットルの何分の何ですか?」
「uh~…ジュウ…ブンノ…イチ!です!」

「はい、そうです!100ccは1リットルの10分の1です。では、1パイントは1ガロンの何分の何ですか?」
「ア…I don't know!」
「えっ?・・・『わかりません』?」(あれ~?どうして?)
「わかりません」
「わかりませんか?」
「・・・わかりません」

おかしいなあ、算数苦手なのかしらん(まさか、アンタじゃあるまいし、と自分に突っ込んでみる)。ちょっとズルして英語で聞いてみました。「何パイントで1ガロンになります?」すると生徒さん、

(英語で)「よく…わかりません」
「えー、(そんなバカな!理系なのに!)どうして??アメリカ人でしょう?」(もう日本語を忘れて英語の会話になってます)
ぼく、カナダ人だから、メトリックシステムしかわからなくて…。」

( ̄▽ ̄;)ガガーーン…そ、そ、そ、そうでした。失礼いたしました。むっちゃくちゃ教師失格です。

生徒さんに合わせて、個人的な質問は変えているつもりだったけど、これには気付かなかった~。いや、もうホント厄介ですよね、ポンド法って<エ?

ちなみに1パイントは1ガロンの8分の1。1クォートが1ガロンの4分の1です。



黄昏れる親子の後ろ姿


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サバイバルコース2週間を終えて(前編)

2006-04-18 | 日本語教師の日々

約3週間ぶりのホッとくつろげる朝です。


はぁ~



コトは3週間前の木曜日、突然の電話で始まったのでした。全く唐突に、緊急で日本語を教えないか、という話が来たのです。全くゼロの状態から2週間でサバイバルレベルまで持っていく、というので、「とても無理」と一度はお断りしたのですが、その後何故か断り切れない状況になり、もう心臓が縮み上がる思いで教科書やら参考書やら資料一式を地下室から引っ張り出し、日本にいた頃の先輩や同僚(笑)にも電話やメールで助けを求め、必死の日々が始まりました。


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それからの2週間は、寝ても覚めても日本語のことで頭がいっぱい、夢の中にも教案が追いかけてきました。これホント。眠れなかったですよ。その段階段階で習う文型や新しい単語、表現をどうやって現実の生活で使えるようにしていくか、がカギになるので、とにかく常に頭の中に例文が浮かんでは打ち消され、書き留めては吟味して、という状態。

それとは別に文型や文法の導入の仕方、スムースにドリルへ持っていく流れの作り方も常に頭の中をぐるぐると渦巻いていました。すっかり錆び付いていた頭の中、どの課でどんな単語や文型が出てくるのか、この文型がその後何課でどのように発展していくのか、そんなことも見事に忘れていました。


しかも、日本で使っていた教科書と今回指定された教科書は違うもの…。文法が出てくる順番も違うし、基本になる助詞の使い方もちょっと違う。不安でバクハツしそうでした。

以前の教科書と今回の教科書を照らし合わせて、必要な項目を整理するだけでも軽く2日、その後各課の教案を組み立て、更に2週間で、ある程度動詞の活用ができるところまで持って行く(「…と一通りの応用が効くわよ」と日本の先輩にアドバイスを受けて「なるほど!」と思ったのです)となったら、本当に必要なところと、時間をかけずスキップしていくところをよく把握しておかなくてはいけない。時間が飛ぶように過ぎていきます。


当然、準備に余裕ができるはずもなく、初日を迎えてからはまさに自転車操業でした。その日と翌日分の教案だけはかろうじて作り、翌々日からの分は授業が終わって、その日の様子を見ながら組み立てていく…。立ち止まる余裕が全くない、文字通りの自転車操業の日々が始まったのでした。

そして緊張の初日。現れた生徒さんは、今月末から日本へ行くと言うのに、本当に何の誇張もなく日本語の知識がゼロの状態。


アメリカ人のお約束 「コニチワ!」 はどうした!?

「オハイオ!」(オハヨウのつもり) くらいは知ってるでしょう、普通(涙)。



…と一瞬泣きたくなったのですが…しかし…逆に考えればこれが強みにもなるのです。まっさらな状態から余計な情報なしでキチンと積み上げていける、ということだから。実際、この生徒さんの場合、乾いた砂が水を吸うようにものすごい勢いで知識を吸収し始めたので私の方が慌てるくらいでした。

1日目は、日本へ行く事情や、日本についての基礎知識、日本で行きたい場所や楽しみにしていることを英語でおしゃべりした後、教科書を渡して授業に入り、日本語の発音の特徴や文字の種類、五十音のしくみ、自己紹介や挨拶ことば、教室ことばや、「はい/いいえ」の使い方など、そして1~20の数字を教えて、電話番号を読み合う練習をしました。


翌日、なんと生徒さんは前日に教えたことをほぼ全部きちんと覚えて来たのです。自分でフラッシュカードを作って勉強したと言います。教科書の予習・復習も完璧!学生時代以来の勉強がとてもエキサイティングだと言ってくれるので教える側の意欲が一気に高まってしまいました。

前日のレビューをしつつ、大きい数字や時間の表現、カレンダー用語などを勉強しました。数字は4と7と9が要注意です。場合によって、よん/し なな/しち きゅう/く、と読み方が変わるので。そして百の単位になると今度は「さんびゃく」「ろっぴゃく」「はっぴゃく」とまた例外が出てきます。千の単位は「さんぜん」と「はっせん」が例外。数字をチャートにして例外のところを色分けで強調してあげるとわかりやすい。

時間の表現も1時、2時、3時、4時…4時だけ「よんじ」じゃないのですよね。それに5,15,25…と5のつく数字は「ふん」だけど10、20、30…と10の単位は「ぷん」 しかも、1~10分までの間の「ふん」と「ぷん」の読み分けは大変に複雑です。2週間のサバイバルでここまで完璧にするのは無理なのでノートにチャートを書いて、余力があったら自分で練習できるようにします。

この日は、基本的な場所の名前(病院、銀行、スーパー、デパート、レストランなど)も導入して、「病院は何時から何時までですか?」「午前9時から午後5時までです。」という会話を練習、そして自分に当てはめて「仕事は○時から○時までです。」「今日、日本語のクラスは○時から○時までです」といえるところまで練習しました。ここで間違っても、教える側が「今日の○時から○時までが日本語のクラスですね。」なぁんて、習っていない文型で言ってはいけません。慣れるまではこういうところが結構大変なんですよー。


その翌日は、更に数字の練習や、分数、小数も導入、丁寧にしつこく(笑)ドリルを繰り返していきます。疲れてきたあたりで「箸の使い方を練習しましょうか」と喜ばせておいて、箸でマシュマロを箱から箱にうつしながら、「ひとつ、ふたつ…」と数える練習。ここで、このひとつ、ふたつ、みっつ…の数え方でカレンダーの「ついたち、ふつか、みっか…」を思い出せたら大成功、うまくいきました。そうそう、ちゃんと共通点があるのですよー。

このあたりから、生徒さんは日本語を「なんてロジカルな言語なんだろう」と言うようになり(いや、実はこの段階ではそう思えるようにうまいこと誘導されているだけなんだけど)、ひとつひとつの手がかりが頭の中で繋がるたびに感心していました。教える方も嬉しくてたまりません。その後も授業は順調に進み、新しい表現が入るたびに否定形や過去形、助数詞(一本、一枚、ひとつ、など)を含んだ数の表現をドリルしながらレストランの注文会話の練習もしました。


一通りの基本単語や表現が出てきた後でようやく動詞の練習に入ります。いきなり動詞を入れてもそれを使いこなすだけの語彙が入っていないと練習が身に付かないのです。でもここまできれいに文型が入っていれば大丈夫。

初級最初の山場(?)
「スミスさんは2005年の8月にアメリカから日本に(へ)来ました」
の文型。この一文のなかに助詞が5つも入ってます!しかも、[去年/先週/昨日]のように、時を数字で限定しない場合助詞の[に]は入りません。これを間違いなく使えるようにするのは大変!と思っていたのですが、お見事!よく仕組みを理解してくれて応用も効いてきました。すごい!

ところがここでやはり初級の、いや日本語教育の山場、【[は]と[が]の違い」】が出てくるんです。
「誰が田中さんのうちに来ましたか?」

ね?今までの疑問文は「これ[は]何ですか?」だったのです。
この段階ではあまり引っかからずにサラッと通り過ぎて欲しかったのですが、さすがにきちんと勉強しているだけあって、突っ込まれてしまいました。

仕方なく(笑)、一応こういう違いがあるのだけど…と、念のために準備しておいたたくさんの例文を紹介し、英語の説明文も何種類か見せたのですが、この段階でこれが完璧に理解出来る人がいたら大天才です。というか、あり得ません。とにかく今は慣れて!と先へ進みました。そういうことも含めて(今は突っ込んじゃいかんと)よく理解してくれる生徒さんで助かりました~。

それにしても、

「病院は9時[から]6時[まで]です。」
なのに、どうして
「スミスさんはカナダ[から]日本[まで]来ました。」
じゃないの?

というような「よ、よ、よ、よく気がつきました(ひゃぁ~、現段階でそこまで気付かないで欲しかった!)」ということにもよく気付いてくれたので本当に私にも良い勉強になりました。そうそう、切符売り場では、「名古屋[から]東京[まで]の切符」を買うのよねぇ、日本語って。今度からここはもうちょっとうまく(気付かれないように)流さなくては。(つまり「~に来ました」の導入があまりうまくいっていなかったということかな)


下の記事「サバイバルコース2週間を終えて(後編)」に続く

サバイバルコース2週間を終えて(後編)

2006-04-18 | 日本語教師の日々
上の記事「サバイバルコース2週間を終えて(前編)」の続きです)

さて、このあたりまで来ると自分に当てはめた簡単な作文ができるようになります。1人の生徒さんをつきっきりで毎日教えるのは初めてのこと。ここまで来ると感動的でした。簡単な、とは言え、自分が全く新しい言語を勉強し始めてわずか1週間でここまでできるだろうか、と思うと、笑ってごまかすしかない感じ。努力とやる気に脱帽です。

難しい位置詞も導入した翌日にはほぼ完璧に覚えてくるのです。準備するこちらの自転車操業にも力が入るではないですか(笑)。

「○○ます」という、ますフォームでの基本動詞が一通り使えるようになった頃、形容詞へ。「い形容詞」(日本人が国語で教わる形容詞)と「な形容詞」(形容動詞)に分けてそれぞれの活用が使えるようにします。
「この本は難しいです。」「このリンゴは赤くないです」
「コンビニは便利です。」「○○空港はあまり便利ではありません」

そして、2つの文に矛盾がないときは「そして」でつなぎ、矛盾があるときは「が」でつなぐ。こんな複雑なことも拍子抜けするくらいにすぐに飲み込んで(天才かも)、

「日本語の勉強はむずかしいです[が]とてもおもしろいです。」
なんて言ってくれちゃうのです(涙)。

形容詞の肯定文と否定文が使えるようになって嬉しそうな生徒さんを「実は、日本語の形容詞には過去形もあるのよん」と突き落とすのは本当に気の毒なんですが、仕方ないです。覚えておくれ~。


ここまで来ると覚えるものが本当に多すぎて、完璧というわけにはいかなくなります。「昨日は寒かったですか?」「いいえ、寒いではありませんでした、Oops!寒くないです、Ah~!寒かったです、No!No!!寒くなかったです!」
というふうになってきました。

いくら覚えようとしても量が多すぎて追いつかない。それでも今は詰め込むしかない!覚えきるのは無理でも、耳と口が慣れていれば応用が効くはず。生徒さんもそれがよくわかっているのでとにかく一生懸命。

そして、できる作文の幅もぐっと広がってきました。なんたって形容詞が使えるんですから。習った範囲の動詞や形容詞を使って、旅行の経験を話したりもできるようになります。「○年の○月に、コスタリカに、誰々と飛行機で行きました。コスタリカは暑かったです。○月でしたがぜんぜん寒くなかったです。人は親切でした。食べ物はとても美味しかったです。そして安かったです。高くなかったです・・・etc.」この段階で習った範囲なので不自然なところもありますが、立派ではないですか!

この頃、覚えるべき言葉が多すぎて、単語がスッと出てこない自分にいらだち気味だった生徒さん、そう言うと「そう言えば先週の月曜日まで(日本語で)「ハロー」も言えなかったのに、今はコスタリカ旅行のdescribe(描写)が出来るようになっている!」と感動していました。教える方はもっと感動ですヨ!

最終的に動詞のフォームの基本形を全部入れてあげられれば…と思ってはいたのですが、ちょっと時間が足りませんでした。でもなんとか動詞の活用のためのグループ分けをして(五段活用動詞と下一段?かな?そして不規則動詞の3つのグループに分けるのです)「てフォーム」の作り方だけは勉強ができました。

例えば、
[食べます]→食べて
[行きます]→行って
[来ます]→来て

のような、日本人が全く意識せずに使っている動詞の活用。これゼロから習う場合はきちんとグループ分けして法則を理解させた方が覚えやすいのですが、この導入の仕方は難しくもあり、またとても楽しいところでもあります。この方法についてはまた機会があれば♪


今回は本当に生徒さんに恵まれて超ラッキーだったのですが、毎回こんなにすんなりといくわけではないでしょうね。でも本当に楽しくて、充実した2週間でした。生徒さんの方からも

「今までの人生でこんなに2週間が短く感じたことはたぶんなかった。素晴らしい2週間だった。」

と言ってもらえて、こんなに嬉しいことはなかったです。

私にもっと実力があったらこの短い期間を更に充実したものにできたかも、もっと多くを身に着けられたのかもと申し訳ない思いもあります。日本に行ったらきっと習ったことと実際の生活に出てくる日本語のギャップにめげることでしょう。だけど出来る範囲で精一杯のことをしたつもり。そういうギャップについても一応説明したつもり。あの生徒さんなら日本での1年間をきっと積極的に楽しんで納得のいくものにしてくれると思います。日本語の勉強、続けてくれるといいな。

こうして私もなんとか一歩を踏み出しました。日本での日本語教師初級養成講座以来ずっと面倒を見てくださった先輩方に感謝です。

そして、この生徒さん「アメリカ人は世界中で英語を押し通そうとする、と思われているようだけど、そういうふうに思われたくない、だからそうでないところを見せるためにも自分はがんばって日本語を勉強します。」と言っていたらしい。ああ、アメリカ人もえらい!こんな生徒さんに恵まれて私は本当にラッキーでした!



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