くつろぎ日記

ストーリーとセリフに注目したドラマレビューです。

香港国際警察 NEW POLICE STORY

2006-10-09 11:48:22 | ドラマ

2004年公開ですから2年前の映画です。

いやもうとにかく面白かった。実に見事です。

香港映画・ジャッキー・チェンと言ったら、アクションコメディーしか思い浮かばない

私でしたが、どうもそれだけではないという評判を信じてよかった。

ジャッキー、このとき50歳ですからアクションシーンは少ないです。

代わりに内容的に見せるものがありました。

 

銀行を襲ったゲーマー達は皆裕福で親はそれなりの地位を持つ家庭環境。

本当は金が欲しいわけではない。

頽廃的日常に嫌気がさしていたこと、親子関係の葛藤などそれぞれが

心理的に抱えた問題がこういう犯罪へと向かわせたのですね。


序盤の警官をゲーム感覚で次々殺戮していくシーンは本当に悲惨。

3時間で解決してみせると豪語して出たチャン警部@ジャッキー・チェンが

ものの見事に部下を失っていく様は想像を絶するほどの残虐さ。


それからは失意のチャン。

婚約者の弟が犠牲者の中にいたために事実、結婚も無期延期状態。

酒びたりになり、自堕落な日々を送ることになります。


そんなところに現れた巡査1667・シウホン。

彼の存在が目を引きますね。

例のごとく酔っ払って潰れているチャンにチンピラが襲ってきます。

散々痛めつけられ転がっているチャンのそばに忽然と現れるシウホン。

きらりとした存在感がありました。

  「兄弟、未来にはまだまだ素晴らしいことが待っている。

  過ぎた事は忘れて辛い気持ちを力に変えるんだ。」

この台詞ってもしかして過去にチャンがシウホンにかけてあげた言葉だったのかも。

 

このシウホンがチャンにハッパをかけてタッグを組み事件の解決へと向かいます。

どうもシウホンは本当の警官ではなかったのですが、

その後の警察内部が目をつぶって協力するところなんぞ

日本の人情物にも通じてなかなか見所があります。


それからは壮絶なアクションシーン満載。

チャンの老骨にムチ討って(笑)の頑張りが随所に見られます。

バスのシーンは痛そうで・・ガラスの破片は大丈夫かと??

CGなんでしょうけど(笑)

この人はスタントを使わないらしいのですが、けっこう危険なシーンも多いので

下手すると本当に危機一髪というところがかなりあります。

 

ゲーマーたちが目をつけたのがチャンの婚約者ホーイー。

ホーイーの弟が序盤でゲーマー達に殺された警官の一人。

ホーイーのもとに顔を出せないチャンですね。

シウホンが二人を結びつけようと工作するのが微笑ましいのですが

今でもチャンを待つホーイーに「自分が許せない」と言い、去ってしまうのです。

そしてこれもゲームだとゲーマー達はチャンを徹底的に弄ぶのですね。

そして騙してホーイーの手に爆弾を持たせてしまいます。

水平にしていないと吹き飛んでしまう。

外側がケーキの箱に見えたので信じてしまうその心理を付くのが恐ろしい。

しかし首にコードを巻くのには戦慄してしまいます。

爆発のショックのなか間一髪で病院に運ばれ命は助かりました。

 

チャンとシウホンはゲーマー達を追いつめ一人またひとりと倒していきます。

ラストの亀の建物はこの前の「喰いタンスペシャル」でも見ました。

あれの屋上は見事にアーチですから滑って危険この上ない場所です。

よくもまあ、撮影できたものだと感心してしまいますね。

ここに最後のゲーマーが出てきますが、父親が警察高官。

「親のメンツをつぶして・・」

こればかりなんですね。子供が何を考え求めているかわからない。

この親子の歪んだ幼児体験、葛藤が映画を覆う、一つの側面ともいえるでしょうか。

でも、狂ったようなゲーマーたちが序盤で殺戮をしていく様があまりにも

強烈すぎるのでこの親子には全く同情できません。



事件はほぼ解決し、病院に向かうチャン。

しかしホーイーは一人ひっそりと退院するところでした。

恐らく顔半分の爆発の後遺症が深い傷となって残ったから。

そんなホーイーのことを見事に感じていたのがチャン。

この時こそとプロポーズを決行するのです。

最後はちょっとした美談ですね。

でもロマンチックであることも確か。

警察や病院の皆が薔薇を手にしてひざまずくなどやや大げさで楽しいシーンです。


そして気付きます。

シウホンが脱ぎ、手すりにかけて行ったカーキのコートは自分のものだったこと。

遠い昔、父親が目の前でトラックにはねられた。

金がない父親がコンビニに食料を盗みに入り逃走した途端に事故にあってしまった。

おなかがすいたと父に訴えていた幼い子がシウホン。

若き日のチャンは自分のコートを死んだシウホンの父にかけてあげていたのです。

坊や、名前は?僕シウホンです。泣く幼い子にしみじみと言って聞かせます。

  「この世は決して公平ではない。辛い事もたくさんある。

    過ぎた事は忘れて辛い気持ちを力に変えるんだ。」

最後のこの台詞がこの映画のテーマだったのですね。

シウホン親子と、警察高官の二組の親子の対比を入れながら。

シウホンはこのチャンのコートを手にいつかチャンのもとに返そうとここまで

きたのでしょう。

最後、ほろっとしました・・

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【ストーリー】
一年前。アジア銀行を襲った集団は、犯行後大胆にも意図的に警察へ通報し、駆けつけたパトカーや警察官たちを撃ちまくる。彼らは香港警察が考える以上に重装備だった。半ばゲーム感覚で犯行を企てるジョーは犯罪集団の指導者。香港警察のチャンは集団のアジトを特定していた。彼は「3時間で事件を解決してみせる」と豪語し、特捜部を引き連れてアジトへと向かった。だが、そこに待ち受けていたのは、チャンら香港警察を陥れる残忍な罠だった。ジョーら犯罪集団の攻撃の前に、一人一人倒されてゆくチャンの部下たち。チャンはかろうじてその場を生き延びたが、彼の心の中で、自身を支えていた何かが崩れ去った。殺された部下の中には、チャンの婚約者ホーイーの弟もいた。信頼する友、部下を失い、生きる希望すべてを失ったチャン。かつては、正義という盾のもと、任務を遂行し決して負けることのなかった男。だが今や、薄汚い路地裏を泥酔して這い回るような人生を送っていた。そんなチャンの前に新たな相棒として任命された巡査1667ことシウホンが現れる。警官として精気を失ったチャンに何とか立ち直ってもらおうと懸命に説得するシウホン。その一方で、香港警察には犯罪集団の新たな挑戦状が叩きつけられる。そして今、香港の存亡を賭ける壮絶な戦いが始まろうとしていた…。

   <10/9 日曜洋画劇場>



2 コメント

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こんにちは (ikasama4)
2006-10-09 13:48:34
感動でした( ;∀;)





今までと違って

犯人側の動機の背景も描かれていて

豊かな社会が彼らを生み出していったという部分が

この物語だけの話じゃない感じがして

ちょっと怖いなと思うとこもありました。





シウホンのコートを見た時、

日本の映画の青島かと思ってしまいましたけど(;^∀^)



十数年前、チャン警部補が「きみの名前は?」と尋ねた時

「ぼく、シウホンです」と今のシウホンが応える。



最後の最後であの演出にヤラれました。
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ikasama4さま♪ (かりん)
2006-10-09 18:18:47
私も感動しましたっ!!

香港映画に感じていた偏見つかイメージですね、

そういうものを覆してくれました。



豊かな社会のひずみがこういう事件を起こすという点。香港らしからぬようで急激に世界は犯罪も均一化を辿っているみたいですね。



そうそうあのコートは青島のものみたいでしたね。

まねしたかと思ったわ。

刑事モノでコートのエピといったらさらにコロンボまでもさかのぼることもできますね。



君の名は?シウホン・・・

そうか・・これが伏線だったのですね。

本当にうまい演出でした。

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