空手道へっぽこ稽古日誌 An ordinary person's karate practice diary

いい歳こいて空手を学ぶおっさんの備忘録。
23年7月2日に二段になりました。
まだ続けるのこれ?

彼らの流儀 (単行本)

2010年03月11日 | 【紹介】書籍
彼らの流儀 (単行本)
単行本: 302ページ
出版社: 朝日新聞社 (1991/11)
ISBN-10: 4022564024
ISBN-13: 978-4022564023
発売日: 1991/11

コラムであってコラムではない。様々な人生をそれぞれ異なった文体で描く33編のノンフィクション。不思議な雰囲気を漂わせつつ、相変わらず人を逸らさない文章です。登場する人たちは皆、一様に個性的で魅力的です。生き方が多様化する時代だからこそ、読んでおきたい一冊です。



特に印象的だったのは…

冒頭の掌編「ナチュラル」はロバート・レッドフォード主演の映画を見ながら語る母子の情景を描いています。「これだよね」と口にするのは野球界伝説的名選手で監督だった人を父に持つ息子。その伝説の人を夫に持ち、これから同じ世界に入っていこうとする息子を案じる母の姿を静かな語り口で綴っています。

バルセロナ五輪のレスリングのアメリカ代表に選ばれるかもしれない若者二人を描いた「青春」では、そのひとりエリックは、父親の都合で日本に住んでいたとき、幼稚園で「柔道の時間」があり、そこで格闘技のおもしろさにであったというエピソードが紹介されています。

「日本の日」と「ライク・ア・ヴァージン」という掌編には、ハッシーこと橋本茂男という日本人男性が登場します。橋本氏は、生家が長野県で剣道の道場を営んでおり、幼い頃から剣道や空手を嗜む。商船学校を出て、船員になり、アメリカ人女性と結婚。のちに離婚訴訟を起され、アメリカに渡り、慰謝料の関係で帰国が困難になってしまう。アメリカ国籍を得るため、警察に入り覆面捜査官(アンダーカバー)を務めたあと、マンハッタンで私立探偵を営むことになる…という波乱万丈の人生を歩んでいる人です。まるでハード・ボイルドの主人公のような。スティーブン・セガールが、初期の主演映画で黒のタートルネックに黒の革ジャンを着こみ、白いマフラーをしているのは、この方のスタイルをまねたそうです。
「ライク・ア・ヴァージン」では、橋本氏曰く、当時通っていた美術学校のヌード・モデルとして来ていたオンナノコがのちに"マドンナ"としてアーティスト・デビューしたと語っているのですが、「金髪ではなかったよ」とも。

文庫版もあります。

彼らの流儀 (新潮文庫)
沢木 耕太郎 (著)
文庫: 310ページ
出版社: 新潮社 (1996/03)
ISBN-10: 4101235120
ISBN-13: 978-4101235127
発売日: 1996/03