まずは、お詫びから申し上げなければならない。7月20日付けの記事において、女子マラソンがメダルを取る可能性について、なでしこジャパンよりは低いが、女子バレーよりは高いと書いていたことだ。先ほど、男子サッカーが勝てなかった韓国を下して、女子バレーが28年ぶりの銅メダルを獲得した。おめでとう!そして、我が不見識を恥ずかしく思っている。このブログ、炎上していないところを見ると、よほど見ている人が少ないようだ。
さて、明日はいよいよ男子マラソンのスタートである。言うまでもなく、今回一番楽しみにしていた競技だ。陸上競技のというよりも五輪全体を締めくくる男子マラソン、どんなレースになるであろうか。
女子のレースを見た上で、レース展望記事を書こうと思い、エントリー・リストをチェックしてみて驚かされた。
http://www.rikujouweb.com/taikai/2012/london-olympic/entry%20list%20LONDON%202012_page8-mmar.pdf
エントリー人数が109人。女子の人数が119人だったが、マラソンにおいて男子のエントリー人数が女子を下回ったのは初めてではないかと思う。リストはシーズン・ベストの順に記されているが、やはりケニアとエチオピアの3人が突出している。全員が持ちタイム2時間5分以内!シーズン・ベストのランキングでは藤原新が8位、山本亮が16位、中本健太郎が18位であるが、僕が驚いたのは、かつてのマラソン強豪国の代表選手の記録の悪さである。過去の五輪や世界選手権でメダルを獲得している国がサブテン・ランナー(自己ベスト2時間10分以内のランナー)を代表として送り込めなくなっている!
男子サッカーと女子バレーで、日本と激しい銅メダル争いを繰り広げた韓国。バルセロナで金、アトランタで銀を獲得しているが今回は2時間9分台のランナーが一人だけであとの2人は2時間14分台がベストである。両大会では3人全員サブテンランナーが出場していたのであるが。
最後の「世界最速の金メダリスト」、カルロス・ロペスや'90年代の都市マラソンで強さを見せたアントニオ・ピントを生み出したポルトガル、'90年代後半の世界選手権で3連勝したスペイン、第一回の世界選手権優勝者であるロバート・ド・キャステラや、賞金マラソンよりも選手権大会にこだわり続けた名ランナー、スティーブ・モネゲッティーを生み出したオーストラリア、'90年代前半の都市マラソンを席捲したディオニシオ・セロンやヘルマン・シルバらを輩出したメキシコ、これらの国の代表選手にサブテン・ランナーがいないのである。'80年代、何度も来日し、日本のトップランナーと名勝負を繰り広げたジュマ・イカンガーを生んだタンザニア代表は、「ペースメイカー職人」サムソン・ラマダーニが2時間8分台のタイムを持っているがシーズンベストは26分台。ほとんど「過去の実績重視」の選考で選ばれたようである。
「スポーツ大国」である中国だが、男子のマラソン・ランナーは育てていない。今回もエントリーしているのは2人だけで自己ベストは11分台である。開催国である英国。古くは東京五輪でゴール直前に円谷幸吉を逆転して銀メダルを獲得したベイジル・ヒートリー、ロス五輪銅メダルのチャールズ・スペディング、そしてスピード・ランナーのスティーブ・ジョーンズといった名ランナーを生み出しているのだが、今回は2人しかエントリーさせていない。もちろんサブテンではない。
今や世界のマラソンの上位を独占しているのはケニアとエチオピアである。シーズン中は毎週、世界のどこかで「ケニア選手権」が開催されていると言ってもいい。昨年の世界50傑中40人がケニア人、上位20人全員がケニア人である。「選手層が厚い」なんて生易しいものではない。彼らが、世界の都市マラソンで勝ち続けて、多額の出場料と賞金とベスト記録更新ボーナスを得て、多額のドルやユーロや円を母国に持ち帰り続けている。彼らの所得税が、ケニアの税収全体のどのくらいの割合を占めるのであろうか?そして、日本国内の国際大会と違って、欧米の都市マラソンの大半は、彼らによって「世界最速マラソンコース」という栄冠を得て、翌年に多額のスポンサー料を獲得することを第一の目標として運営されている。それらの大会の関係者には、自国のランナー育成しようという発想はひとかけらも無いに違いない。高速マラソン大会として知られるロンドン、ロッテルダム、ベルリンだが、現在の英国の男子にサブテンランナーはいないし、オランダとドイツは今回マラソンに代表を出していない。女子の代表も、夫の国籍に変更して代表入りした帰化ランナーだった。シーズン・ベストのトップはエチオピアのアエレ・アブシェロの2時間4分43秒。今年の1月、現在賞金額が世界最高と言われるドバイ・マラソンで出されたもの。ちなみにアブシェロはこれが初マラソンである。そして、開催地であるアラブ首長国連邦からは男子も女子もマラソン代表選手を生み出していない。すっかり有名となったが、中東の産油国にとって、スポーツ選手は「育てるもの」ではなく、「金で買ってくる」ものなのだ。
かつてのマラソン強豪国は、ケニアやエチオピアがトップを独占し続ける現在の都市マラソンに嫌気がさして、選手の強化を止めてしまったのだろうか?そんな中、長年低迷していたアメリカは今回、全員サブテンランナーを送り込んできた。かつては、代表選考レースの記録が低迷して、優勝タイムがA標準記録を越えられずに、代表を一人しか派遣出来ないくらいまで落ち込んでいたのが、よくぞここまで立ち直ったものである。今回も男子10000mではケニア勢を抑えて銀メダルを獲得している。
日本のマラソンも決して馬鹿にしたものでもない。自虐的になる必要はない。1984年のロス五輪以来、五輪代表選手は全員サブテンランナーである。五輪本番での結果は褒められたものではなくとも、代表選手の実力レベルは一定ラインを維持している。胸を張ってもいいんだ。誇りに思ってもいいんだ。そして、メダルを期待してもいいんだ。
さて、明日はいよいよ男子マラソンのスタートである。言うまでもなく、今回一番楽しみにしていた競技だ。陸上競技のというよりも五輪全体を締めくくる男子マラソン、どんなレースになるであろうか。
女子のレースを見た上で、レース展望記事を書こうと思い、エントリー・リストをチェックしてみて驚かされた。
http://www.rikujouweb.com/taikai/2012/london-olympic/entry%20list%20LONDON%202012_page8-mmar.pdf
エントリー人数が109人。女子の人数が119人だったが、マラソンにおいて男子のエントリー人数が女子を下回ったのは初めてではないかと思う。リストはシーズン・ベストの順に記されているが、やはりケニアとエチオピアの3人が突出している。全員が持ちタイム2時間5分以内!シーズン・ベストのランキングでは藤原新が8位、山本亮が16位、中本健太郎が18位であるが、僕が驚いたのは、かつてのマラソン強豪国の代表選手の記録の悪さである。過去の五輪や世界選手権でメダルを獲得している国がサブテン・ランナー(自己ベスト2時間10分以内のランナー)を代表として送り込めなくなっている!
男子サッカーと女子バレーで、日本と激しい銅メダル争いを繰り広げた韓国。バルセロナで金、アトランタで銀を獲得しているが今回は2時間9分台のランナーが一人だけであとの2人は2時間14分台がベストである。両大会では3人全員サブテンランナーが出場していたのであるが。
最後の「世界最速の金メダリスト」、カルロス・ロペスや'90年代の都市マラソンで強さを見せたアントニオ・ピントを生み出したポルトガル、'90年代後半の世界選手権で3連勝したスペイン、第一回の世界選手権優勝者であるロバート・ド・キャステラや、賞金マラソンよりも選手権大会にこだわり続けた名ランナー、スティーブ・モネゲッティーを生み出したオーストラリア、'90年代前半の都市マラソンを席捲したディオニシオ・セロンやヘルマン・シルバらを輩出したメキシコ、これらの国の代表選手にサブテン・ランナーがいないのである。'80年代、何度も来日し、日本のトップランナーと名勝負を繰り広げたジュマ・イカンガーを生んだタンザニア代表は、「ペースメイカー職人」サムソン・ラマダーニが2時間8分台のタイムを持っているがシーズンベストは26分台。ほとんど「過去の実績重視」の選考で選ばれたようである。
「スポーツ大国」である中国だが、男子のマラソン・ランナーは育てていない。今回もエントリーしているのは2人だけで自己ベストは11分台である。開催国である英国。古くは東京五輪でゴール直前に円谷幸吉を逆転して銀メダルを獲得したベイジル・ヒートリー、ロス五輪銅メダルのチャールズ・スペディング、そしてスピード・ランナーのスティーブ・ジョーンズといった名ランナーを生み出しているのだが、今回は2人しかエントリーさせていない。もちろんサブテンではない。
今や世界のマラソンの上位を独占しているのはケニアとエチオピアである。シーズン中は毎週、世界のどこかで「ケニア選手権」が開催されていると言ってもいい。昨年の世界50傑中40人がケニア人、上位20人全員がケニア人である。「選手層が厚い」なんて生易しいものではない。彼らが、世界の都市マラソンで勝ち続けて、多額の出場料と賞金とベスト記録更新ボーナスを得て、多額のドルやユーロや円を母国に持ち帰り続けている。彼らの所得税が、ケニアの税収全体のどのくらいの割合を占めるのであろうか?そして、日本国内の国際大会と違って、欧米の都市マラソンの大半は、彼らによって「世界最速マラソンコース」という栄冠を得て、翌年に多額のスポンサー料を獲得することを第一の目標として運営されている。それらの大会の関係者には、自国のランナー育成しようという発想はひとかけらも無いに違いない。高速マラソン大会として知られるロンドン、ロッテルダム、ベルリンだが、現在の英国の男子にサブテンランナーはいないし、オランダとドイツは今回マラソンに代表を出していない。女子の代表も、夫の国籍に変更して代表入りした帰化ランナーだった。シーズン・ベストのトップはエチオピアのアエレ・アブシェロの2時間4分43秒。今年の1月、現在賞金額が世界最高と言われるドバイ・マラソンで出されたもの。ちなみにアブシェロはこれが初マラソンである。そして、開催地であるアラブ首長国連邦からは男子も女子もマラソン代表選手を生み出していない。すっかり有名となったが、中東の産油国にとって、スポーツ選手は「育てるもの」ではなく、「金で買ってくる」ものなのだ。
かつてのマラソン強豪国は、ケニアやエチオピアがトップを独占し続ける現在の都市マラソンに嫌気がさして、選手の強化を止めてしまったのだろうか?そんな中、長年低迷していたアメリカは今回、全員サブテンランナーを送り込んできた。かつては、代表選考レースの記録が低迷して、優勝タイムがA標準記録を越えられずに、代表を一人しか派遣出来ないくらいまで落ち込んでいたのが、よくぞここまで立ち直ったものである。今回も男子10000mではケニア勢を抑えて銀メダルを獲得している。
日本のマラソンも決して馬鹿にしたものでもない。自虐的になる必要はない。1984年のロス五輪以来、五輪代表選手は全員サブテンランナーである。五輪本番での結果は褒められたものではなくとも、代表選手の実力レベルは一定ラインを維持している。胸を張ってもいいんだ。誇りに思ってもいいんだ。そして、メダルを期待してもいいんだ。
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