猫ひろし氏の五輪出場に僕は当初、困惑していた。これは賞賛すべきことなのだろうか?
確かに、初マラソンから3年で2時間30分台まで記録を出したことは凄いことである。彼の初マラソン時の年齢は僕の初マラソンの時とほぼ同じだっただけに余計にそう思う。
しかし、国籍を変えてまで五輪に出場する、というのはどうなのだろうか?国籍を変えて五輪に出場したアスリートと言えば、バレーボールのヨーコ・ゼッターランドさんにフィギア・スケートの川口悠子や井上怜奈といった人がいたが、彼女たちと猫氏を同列に見ていいものかどうか。
それで僕も有森裕子さんの
「これが本当にいいことなのかを考えると複雑な気持ちだ。」
というコメントに同意する、というような事を別のところで書いた。しかし、有森さんのこのコメントは言わば「大人のコメント」だと思えてきた。裏事情も当然彼女も耳にしているのだろう。本音を言えば、もっと激しい言葉も出てくるところをぐっと抑えたのではないか。時が経つにつれて、彼女のコメントは、
「現地の選手に出て欲しい。」
と変化してきた。それも涙声だったという。
以前放映されていた、宝くじのテレビCMを思い出した。日本人の若い女性が宝くじの当選金で、オペラ座を借り切ってカラオケを歌う、というものだ。そんなおバカな道楽に近いものじゃないのか?
カンボジア最高記録保持者のヘム・ブンティンが出場するパリ・マラソンの3日前、週刊文春と週刊新潮の2誌が揃って、猫ひろし氏の代表決定の裏側を暴く記事を掲載した。新潮はブンティンのインタビューを中心に、文春は猫氏のスポンサーの実態を解き明かしていた。フリーライター鈴木智彦氏による署名記事だった。
両誌を読むことで、僕の疑問も解けた。
ブンティンのインタビューも面白かった。彼がカンボジア陸連と対立した原因は、北京五輪の翌年、取材に来たBBCとCNNにカンボジアのナショナルチームの実態を洗いざらい喋ったためだという。
そして、猫氏のスポンサーの代表者は、あの、現在は収監中のIT企業の元社長の右腕を自称する人物だというのだ。そして、猫氏の国籍変更を支援したのは、その妻が代表だという。
文春にはその元社長の獄中インタビューも掲載されていた。彼が猫氏に冗談半分で、
「カンボジアに帰化すれば?(五輪に出られるよ)」
と言ったことがあったのだという。
「なんで猫さんが批判されるの?ラモス瑠偉や呂比須ワグナーが帰化してサッカー代表になったのは問題ないじゃん。」
長年、日本に居住してサッカーを続けて、日本人女性と結婚している彼らと猫氏を一緒にするなよとツッコミを入れたくなったが、ともあれこんな人物がプロ野球のオーナーになっいたらどんなことになったやら。
8年前からカンボジアでビジネスに携わっていたスポンサー氏はなぜ猫氏の支援を決めたのか?文春によると、
「経済成長著しいカンボジアでは自国民しか土地を購入できず、中国や韓国の投資家がこぞってカンボジア国籍を取得したがっている。」
その国籍を取得するために動いた金は5万ドルだという。カンボジアは「汚職国家」ランキングで、183ヶ国中164位の国なのだそうである。
もうこれ以上はいいだろう。僕は前の記事で、カンボジア五輪委員会の選択を「間違っていない」と書いたが、決して彼らを擁護しているわけではない。これは、我々の常識があてはまらない世界の出来事だと思ったのだ。本当に、日本の代表選考が基準があいまいだの公平ではないだのと真面目に考えるのがバカバカしくなってきたのだ。所詮、スポーツマンシップだのフェアプレーだのって、金持ちの国だけで通じるキレイ事に過ぎないのじゃないかと空しく思えてきたのだ。
4月15日の日曜日、パリの朝で燃えた魂が一つ。ブンティンは力走した。従来のカンボジア記録を更新する2時間23分29秒でゴールした。中間点は1時間9分4秒で通過していたから、明らかに五輪参加B標準記録の2時間18分を狙っていたようである。
それと同時に、国際陸連が猫氏の代表選出に疑問を呈し、
「国籍取得後1年が経過していない場合は(1)連続した1年の居住実績(2)国際陸連理事会による特例承認-のいずれかが必要」
とカンボジア陸連に説明を要求してきた。実は、カンボジア陸連が国際陸連に、猫氏が国籍変更者であるということを申請するのを忘れていたのだという。そして、「特例承認」がなされるケースというのは、例えば、自国が内戦状態にあるとかいったケースに限定されるのだという。
一部のメディアの報道によると、それでもカンボジア陸連は猫氏を代表とする方針に変りは無いという。もし、猫氏の国籍変更を国際陸連が承認しなかった場合には、マラソン以外の種目に選手を派遣する、とのことである。
確かに、初マラソンから3年で2時間30分台まで記録を出したことは凄いことである。彼の初マラソン時の年齢は僕の初マラソンの時とほぼ同じだっただけに余計にそう思う。
しかし、国籍を変えてまで五輪に出場する、というのはどうなのだろうか?国籍を変えて五輪に出場したアスリートと言えば、バレーボールのヨーコ・ゼッターランドさんにフィギア・スケートの川口悠子や井上怜奈といった人がいたが、彼女たちと猫氏を同列に見ていいものかどうか。
それで僕も有森裕子さんの
「これが本当にいいことなのかを考えると複雑な気持ちだ。」
というコメントに同意する、というような事を別のところで書いた。しかし、有森さんのこのコメントは言わば「大人のコメント」だと思えてきた。裏事情も当然彼女も耳にしているのだろう。本音を言えば、もっと激しい言葉も出てくるところをぐっと抑えたのではないか。時が経つにつれて、彼女のコメントは、
「現地の選手に出て欲しい。」
と変化してきた。それも涙声だったという。
以前放映されていた、宝くじのテレビCMを思い出した。日本人の若い女性が宝くじの当選金で、オペラ座を借り切ってカラオケを歌う、というものだ。そんなおバカな道楽に近いものじゃないのか?
カンボジア最高記録保持者のヘム・ブンティンが出場するパリ・マラソンの3日前、週刊文春と週刊新潮の2誌が揃って、猫ひろし氏の代表決定の裏側を暴く記事を掲載した。新潮はブンティンのインタビューを中心に、文春は猫氏のスポンサーの実態を解き明かしていた。フリーライター鈴木智彦氏による署名記事だった。
両誌を読むことで、僕の疑問も解けた。
ブンティンのインタビューも面白かった。彼がカンボジア陸連と対立した原因は、北京五輪の翌年、取材に来たBBCとCNNにカンボジアのナショナルチームの実態を洗いざらい喋ったためだという。
そして、猫氏のスポンサーの代表者は、あの、現在は収監中のIT企業の元社長の右腕を自称する人物だというのだ。そして、猫氏の国籍変更を支援したのは、その妻が代表だという。
文春にはその元社長の獄中インタビューも掲載されていた。彼が猫氏に冗談半分で、
「カンボジアに帰化すれば?(五輪に出られるよ)」
と言ったことがあったのだという。
「なんで猫さんが批判されるの?ラモス瑠偉や呂比須ワグナーが帰化してサッカー代表になったのは問題ないじゃん。」
長年、日本に居住してサッカーを続けて、日本人女性と結婚している彼らと猫氏を一緒にするなよとツッコミを入れたくなったが、ともあれこんな人物がプロ野球のオーナーになっいたらどんなことになったやら。
8年前からカンボジアでビジネスに携わっていたスポンサー氏はなぜ猫氏の支援を決めたのか?文春によると、
「経済成長著しいカンボジアでは自国民しか土地を購入できず、中国や韓国の投資家がこぞってカンボジア国籍を取得したがっている。」
その国籍を取得するために動いた金は5万ドルだという。カンボジアは「汚職国家」ランキングで、183ヶ国中164位の国なのだそうである。
もうこれ以上はいいだろう。僕は前の記事で、カンボジア五輪委員会の選択を「間違っていない」と書いたが、決して彼らを擁護しているわけではない。これは、我々の常識があてはまらない世界の出来事だと思ったのだ。本当に、日本の代表選考が基準があいまいだの公平ではないだのと真面目に考えるのがバカバカしくなってきたのだ。所詮、スポーツマンシップだのフェアプレーだのって、金持ちの国だけで通じるキレイ事に過ぎないのじゃないかと空しく思えてきたのだ。
4月15日の日曜日、パリの朝で燃えた魂が一つ。ブンティンは力走した。従来のカンボジア記録を更新する2時間23分29秒でゴールした。中間点は1時間9分4秒で通過していたから、明らかに五輪参加B標準記録の2時間18分を狙っていたようである。
それと同時に、国際陸連が猫氏の代表選出に疑問を呈し、
「国籍取得後1年が経過していない場合は(1)連続した1年の居住実績(2)国際陸連理事会による特例承認-のいずれかが必要」
とカンボジア陸連に説明を要求してきた。実は、カンボジア陸連が国際陸連に、猫氏が国籍変更者であるということを申請するのを忘れていたのだという。そして、「特例承認」がなされるケースというのは、例えば、自国が内戦状態にあるとかいったケースに限定されるのだという。
一部のメディアの報道によると、それでもカンボジア陸連は猫氏を代表とする方針に変りは無いという。もし、猫氏の国籍変更を国際陸連が承認しなかった場合には、マラソン以外の種目に選手を派遣する、とのことである。
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